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本校の教材教具

225 弁別用木枠(2択用)

「弁別」と言っても、「机上で自分で分ける」「紙の上に置き分ける」「箱に入れ分ける」など様々な方法があります。机上に紙がある、というだけでも子どもは分けやすくなります。

  
また、「箱がある」と、一気に弁別がしやすくなります。箱を色分けするとさらに弁別しやすくなりますし、箱の高さが違うと難易度が変わってきます(基本的に、箱が深ければ深いだけわりやすくなる)。

 
一方、手の操作が難しい子どもにとっては、「箱に入れる」ということが大きなハードルになってきます。むしろ、「机の上で自分で分ける」方がやりやすいかもしれません。この辺はケースバイケースということになるのですが、一工夫したのがこの教材です。

 
5センチの厚みの板(5mmのMDF板を10枚重ねる)を丸くくりぬき、弁別用の枠にしてあります。穴を開けるために使用したのは電動糸鋸です。こうすることで、子どもは教材を「落とす」ことで弁別できるようになり、こどもの負担が大きく軽減されます。

(本校支援部)

224 3×3円柱入れ

220、221で紹介した円柱入れをさらに発展させたものです。3×3。ここまでくると、必要とされる子どもの空間把握力は相当なものになってきます。

  
また、221で紹介した3×2の円柱入れですが、2つ並べて、「見本と同じように入れる」位置把握の課題としても用いることもできます。ここで、円柱が枠に完全に埋まりこんでいるということが重要です。円柱が「入っている/入っていない」ということを、触って確かめやすくなるからです。

(本校支援部)

223 具体物の型はめとその選択

皿、はさみ、スプーンなど、身近な具体物を型はめ化したものです。それぞれ、具体物がぴったりと入るだけの高さになるように、土台の高さを調整してあります。

  
この教材は単に「型はめ」として用いるだけでなく、視覚障害のある子の「選択」のための教材としても考えています。つまり、「お皿を取って」「はさみを取って」などと言われても、子どもにしてみると「選ばなければならない」ということが曖昧です。そのため、具体物を型はめ化し、「この枠に入れるものを選ぶ」と活動の目的を明確化することにより、子どもの「選ぼう」とする意欲を引き出すことができます。

(本校支援部)

222 3×2円柱入れ

前回紹介した円柱入れの発展版になります。3×1で終わらず、奥行きを追加して「3×2」の円柱入れになっています。


横置きにして使うことを想定していますが、縦置きにした場合、2×3となります。こうすると「点字」と同じ配置になります。視覚障害のある子の、点字の習得に向けた基礎教材としても考えています。

(本校支援部)

221 2×1 3×1円柱入れ

直径40mm、高さ40mmの円柱を用いた教材です。厚さ5mmのMDF板を8枚重ねて、土台にしています。「206ボール落とし(5連)」などよりも、より細やかな手指の操作が必要となります。


ペグの高さと土台の高さがそろえてあるため、ペグがぴたりとはまりこみます。そのため、見え方につまずきがある子も、「ここに入れた」「ここに穴がある」ということを、触って確かめるということがしやすくなります。この教材は、横に入れていく数が増えれば増えるだけ、難易度が上がっていきます。

(本校支援部)

 

220 〇の型はめ用ガイド

218と同様、子どもが型はめをしやすくするための工夫になります。手が動かしにくい子の場合、枠の中央にペグを持って行くのが大変で、枠から落としてしまったり、頑張れば頑張るだけ全身の緊張を強めてしまったり…ということがあります。

ガイドの第1弾としては、枠を入れ子状にして、ペグが落ちないようにします。入れ子状にすると枠そのものが重くなるので、安定するという効果もあります。

そしてさらに、もう一つのガイドを追加します。枠の面を限定することで、子どもが穴に向けて手を動かしやすいようにしていきます。このように子ども一人一人の、その時の状況に応じた支援を行うことで、子どもの「できた」「やってみよう」という気持ちを引き出すことができます。

(本校支支援部)

219 中心に支柱の入った、正三角形の型はめ

今回紹介するのは、中心に支柱が入っているため、「ぐるぐる回していれば、いつかは入る」正三角形の型はめです。

 

「型はめパズル」は子どもにとって「はまった」「できた」ということが分かりやすい教材ですが、手を動かしにくい子にしてみると、入れようとしてもなかなか入らない…ということがあります。今回紹介する型はめの場合、「ペグがどこかに行ってしまう」ということがなく、少しの操作で型にはまりこみます。そのため、これならできる!と子どもの主体的な手の動きを引き出しやすい教材になります。

 

なお、中心に支柱を入れる型はめは、どの図形でもできるというわけではありません。正円ではできませんし、正方形も難しいです。やはり正三角形、あるいは長方形が向きます。

(本校支援部)

218 枠に完全に埋まりこむペグさし/弁別用

前回の続きになります。ぴったりとはまりこむペグさしですが、これをさらに発展させたものが円柱と、角柱のペグさしです。形の2択になります。いずれも高さは5センチ、穴の深さも5センチで、ぴったりとはまり込みます。また、円柱と角柱の大きさを調整してあり、円柱は丸い穴に、角柱は四角い穴にしか入らないようにできています。

 

形の弁別ということであれば、わざわざペグさしにしなくとも、型はめパズル(下の写真は厚さ1センチでピッタリとはまるもの)で十分ではないか、と思われるかもしれません。

しかし子どもによっては1センチくらいの深さでは「はまった」感覚が足りず、活動が「終わった」とわかりにくく、一度はめたものをまた取ってしまうということがあります。ペグさしのように深さ5センチともなれば「入れた」感覚、「終わった」という理解はより明確になります。そのために用意している教材です。

(本校支援部)

217 枠に完全に埋まりこむペグさし

肢体不自由の特別支援学校には身体の動かし方が苦手な子どもたちが在籍していますが、「見え方」についてもつまずきのある子どもたちがいます。さて、「ボールを落とす」「型はめをする」といった学習を行う場合、基本的には「見て」できたかどうかということを確認していきます。

 

しかし、見ることそのものが難しい子どもの場合、どうでしょうか。見ることが難しいわけですから、この場合は「触って」確認することになります。

ところが、多くの教材には凹凸があり、触っただけではなかなか「入っている/入っていない」「まだある/もうない」といったことが確認しにくいということがあります。

 

そこで、ペグさしなどでは、土台の穴の深さをペグと全く同じにしてしまいます。そうすると全部入れ切ったときに教材の表面の凹凸がなくなり、できたかどうか、こどもが自分で触って確かめやすくなります。

(本校支援部)

216 ステンレスのボウルを入れたダストボックス

例えば、プラスチック製のボール(『くるくるチャイム』で用いるもの)を入れるとして、「布袋に入れる」のと、「金属製の缶に入れる」のとでは、どちらの方が子どもは「入った」ということに気づきやすいでしょうか。これはほぼ間違いなく、「金属製の缶に入れる」方が気づきやすいはずです。入れる際に音、振動といった結果が伴うためです。気づきすぎて、びっくりしてしまうかもしれません。

 

子どもが物を「入れる」ということを学習するにあたっては、この「自分の行動」とその「結果」がわかりやすいということ、すなわち因果関係が明確であるということが重要になります。そのためには同じ「ボールを入れる」ということであっても布製のボールよりもプラスチック製、木製、金属製のボールの方がわかりやすいです。また、箱の側としても、できるだけ硬い素材、そしてできるだけ深いものの方がわかりやすい、ということになります。深ければ深いだけ、落ちる際に勢いがつきます。

 

そうすると、昔ながらの金属製のダストボックスが候補としてあがってきます。しかし最近ではなかなか見かけませんし、子どもの手が触れる部分が金属だと、冷たさから子どもが手を引っ込めてしまうかもしれません。

 

そこで工夫したのがこの教材になります。百円均一の店で購入したプラスチック製のダストボックスの底に、同じく百円均一の店で購入したボウルを敷いてあります。ちょっとした工夫なのですが、子どもが見通しを持って手を使っていくための支援のひとつです。

(本校支援部)

215 多種多様な型はめ

これまでに紹介しきれなかった様々な型はめパズルです。同じ形をいくつも入れていくような型はめパズルは市販品を探すのも難しく、自分で作ってしまった方が早いようです。

 

これらの型はめにも、いくつかの明確なステップがあります。

  

・1個だけの方はめと複数の型はめでは違います。

これはパズルの量的な問題です。

・正多角形→左右対称→左右非対称で表裏がある→左右非対称で表裏がない では違います。

左右対称であればぐるぐると回していればいつかは入りますが、非対称の場合、表裏を間違ってしまうといつまでたっても入りません。これはパズルの、質的な問題となります。

正多角形のパズル

 

左右対称のパズル

 

左右非対称のパズル(表裏あり)※市販されているパズル

左右非対称のパズル(表裏なし)

教材の質と量を見極め、いま、その子に合っている教材を提示していきます。

(本校支援部)

214 色の箱 各色

学習していくうえで、意外と手に入りにくいのが赤、青、白、黄色などの「原色」の教材です。白、黒のものは手に入っても、その他の色が手に入りにくいですとか、パステルカラーのものはあるのだけれど…といったことがあります。

今回紹介するのは、色の箱です。色の弁別のほか、様々な用途で用いることができる、基本的な教材となります。市販されているとよいのですが、なかなか手に入りにくいため、自作されています。

 

教材のベースとなっているのは、百円均一の店で売っていた木箱です。サンダーや紙やすりで木目を整えた後、原色のアクリル絵の具を塗り、毛羽だった部分を紙やすりで削り…といった工程を幾度も繰り替えし、最終的にニスを塗っています。手間はかかるのですが、使用頻度の高い教材となります。

(本校支援部)

213 星の形の型はめ(大)

これまで〇、△、□。それぞれの大小。並び方の違いといったさまざまな型はめを紹介してきました。型はめパズルは市販品をよく見かけますが、「形が複雑すぎる」「枠が浅くて『入れた』感覚がつかみにくい」「選択肢が多すぎる」といったことから子どもにとって難しい課題になっていることがあるようです。ですので、一旦「〇だけ」「1つだけ」「深い」型はめに立ち戻り、丁寧に子どもの学習を整えていきます。

 今回紹介するのは、星の形です。ここでは型はめのペグの形について紹介しますが、型はめのペグの難易度は、「〇」「△□のような正多角形」「ハートのような左右対称の図形」「左右非対象の図形」といった順で難しくなっていきます。楕円などは〇と正多角形の間に入るでしょうか。

星の形も正多角形の仲間で、星型正多角形となります。△や□もそうですが、それぞれの角に区別がないので、ぐるぐると回しているうちになんとなく枠にはまるということがあります。また、表裏の区別もないので、子どもがあれこれと試しているうちに裏返ってしまった、ということもありません。複雑な形に進む前に、順を追って学んできます。

また、型はめのペグは形も重要ですが、その大きさも重要となります。小さいペグだと指先での操作となりますが、今回紹介したものは約10センチの大きさになります。このくらいの大きさになると、自然と子どもの手首の動きが引き出されてきます。

学習の目的に応じ、教材の大きさも調整していきます。

(本校支援部)

212 電動台車

  

こちらは、自作の電動台車になります。

クッションチェアーに子どもたちが座り、スイッチを使うことで移動することができます。

スイッチは、押すと前に動き、離すと止まるようになっています。

 

実際に使用した子どもは、もともと手を使うことを嫌がっていましたが、これに乗るためにスイッチを押すようになったそうです。その後、手を使うことへの抵抗が減り活動の幅が広がりました。そして、自信に満ちた態度がたくさん見られるようになり、大きな声で意思表示するなどの成長が見られたようです。

 

自分で押せば動く、離せば止まるという、「自分の力でできる」ことが重要です。

(本校支援部)

211 絵本の立体化の工夫 その3

前回までは、絵本のキャラクターを積み木にしていく教材を紹介してきました。今回は、イチからぬいぐるみとしてつくりあげたものです。ぬいぐるみの中には大量のビー玉が入っていて、重みがあります。子どもたちは実際にぬいぐるみに触り、重みを感じる中で、「ぬいぐるみがそこにある」ということを学べます。

  

また、重みがあるため、ぬいぐるみを積み、倒したときの響きも、ドスンと、重みのあるものです。見る・聞くだけでなく、実際に触り、感じ、子どもたちは学んでいきます。

(本校支援部)

210 絵本の立体化の工夫 その2

前回の続きです。今回紹介するのは、これもみんなおなじみの絵本を立体化したものです。前回は立体化することで「表裏ができる」ことを生かした教材でしたが、今回は立体化することで「積み上げられる」ことをいかした教材になっています。

ぞう→かば→わに→かめ だけでなく、その逆といったように絵本のストーリーを再現することもできれば、オリジナルの積み方をすることもできます。

(本校支援部)

209 絵本の立体化の工夫 その1

前回、絵本のキャラクターの立体化を紹介しました。制作にあたっては、塗料の下塗り→紙やすりでなめらかにする→また塗料を塗る→また紙やすりで削る…という工程を幾度も繰り返して木の表面を整え、最終的に絵を描いていっています。

 

今回紹介するのは、塗装の仕方を工夫したものです。これもみんなおなじみの絵本のキャラクターですが、立体化することで表裏が発生することをいかし、表は無地のワンピースに、裏は花模様のワンピースにすることで、絵本の流れが追えるようにしてあります。

 
では、このパンダの裏側がどうなっているのかというと…。パンダ以外には秘密になっています。

(本校支援部)

 

208 図書コーナーと絵本の立体化

本校では、全長140メートルほどの中央廊下の中央、全校の児童生徒がもっともよく通る場所に、「図書コーナー」を設置しています。最新の絵本などを、子どもたちが手に取りやすくするためです。

 

季節ごとに様々な掲示が工夫されているのですが、絵本のキャラクターを立体化したオブジェも置かれています。MDF板を重ねて厚みを出し(25ミリほど)、電動糸鋸でくり抜き、塗装したものです。子どもたちの本への興味関心を引き出すためです。絵本を視覚情報として「見る」だけでなく、立体化することで実際に手に取れるようにする、触れるようにする、というのも重要です。

 
みんなおなじみのキャラクターを中心に、様々なキャラクターたちが図書コーナーのあちこちにいます。来校時には探してみてください。

(本校支援部)

207 ボール落とし(5連)改造版

206で紹介したボール落としの改造版になります。ボールを落とした先にシロフォンを敷き、♪コロンコロンと綺麗な音が鳴るように工夫されています。「ゴトン!」と大きな音を立ててボールが落ちるのもわかりやすいのですが、得意な音、苦手な音も子どもそれぞれに異なります。

 

今回の教材は越陽祭の学習発表の中で使われたものです。ちょっとした工夫で、子どもが自分自身で楽器を演奏することができます。

 (本校支援部)

206 ボール落とし(5連)

176や177において、「ビー玉落とし」の教材を紹介しました。子どもにとって活動の終わりがわかりやすく、手の動きを引き出しやすい教材なのですが、なにぶんビー玉が小さくて、かなり細かい指先の動きを必要としました。

今回紹介するのは、「ボール落とし」です。教材の作り方は「ビー玉落とし」と同じなのですが、ボールは直径45㎜のもの(「くるくるチャイム」で使用されているもの)を使っています。ビー玉落としと異なり、指先の力を必要とせず、手全体で押し込むことができます。

 

 

 

 

 

 

また、ゴムの貼り具合により、微調整することも可能です。ゴムをたくさん貼り、落とす際の「手ごたえ」を強調することができます。また、ボールが落ちるか落ちないかのギリギリの状態にし、子どもの手がボールにあたっただけで落ちるようにすることもできます。

 

 

 

 

 

 

子どもにとって自分の手の動きとその結果(因果関係)がわかりやすく、活動の目的(終点)もわかりやすいため、非常に意欲的に取り組める教材になります。次のボールへ、次のボールへと手を伸ばす中で、自分の身体の中央(正中線)を越える手の動きを目指していきます。

(本校支援部)

205 スピーテン

今回は市販の教材の紹介になります。市販の教材とは言いますが、現在は廃番になっているようです。

 

 

 

 

 

 

色分けされた半球を棒に通し、用紙の見本通りに再現していきます。目で見て状況を捉え、記憶し、手を使って再現する学習になります。ここで注意したいのは、教材が立体(3次元)であるのに対して、用紙の見本が平面(2次元)である、ということです。子どもはここで、「2次元の情報を3次元に変換する」ということを行っているのですが、紙に書かれたものを実物で再現するというのは意外なくらい、難しいものです。このあたりは、「地図(2次元)を見ながら移動する(3次元?4次元?)ことの難しさ」などに通じてきます。

 

 

 

 

 

 

そこで、必要な場合には同じ教材を複数用意することで、まずは「実物の見本を見て実物を再現する」という、3次元同士の学習から行い、「2次元の情報を3次元に変換する」ことに向かっていきます。一人一人の子どもがどこにつまずいているのか、丁寧に確認しながら学習を進めていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

204 ボール入れ 平面 枠あり 方向づけあり(長い距離)

前回紹介したものの続きとなります。前回紹介した教材は、ボールを転がし始める位置(運動の始点)からボールを落とす位置(運動の終点)までの距離が、およそ20センチでした。今回紹介しているものはその倍、約40センチの距離になっています。「距離が倍になっている」ということは、ボールを転がすという運動を2倍、持続させる必要があります。距離が伸びたということは、時間的にも運動を持続させる必要があるということです。また、「ここまでボールを転がしていく」という見通しについても、20センチの時よりも40センチの方が難しくなります。

 

 

 

 

 

 

これは距離が伸びれば伸びるだけ難しくなりますし、方向転換などが伴えば、さらに難しくなります。なお、作成にあたっては2つの箱をそれぞれ切断し、連結しています。中に入っているのはA3の板(45センチ×30センチ)を横に長く切ったものを、5枚重ねたものです。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

203 ボール入れ 平面 枠あり 方向づけあり

186や、前回に紹介したボール入れと同じ要領で作成されている箱入りのボール入れの教材ですが、それぞれ目的がだいぶ異なります。

 

 

 

 

 

 

これまで紹介してきたものが「入れることを学ぶ」ための教材、「並べることを学ぶ」ための教材だとすれば、今回は「方向づけることを学ぶ」ための教材となります。

 

 

 

 

 

 

の大きな穴があります。ボールを落とすためには、大きな穴がある方向に向けて手を動かす必要がありますし、持続して動かし続ける必要があります。

これが例えばスイッチ教材などであれば、そのボタンをその場で、一瞬触ればよいかもしれません。しかしこの教材の場合は、特定の方向に向けて操作し続ける必要があります。運動の持続が求められるわけです。このあたり、「ボール入れ」の教材ではあるのですが、「輪抜き」などと目的が重なるものになります。そして輪抜きの場合は腕を持ち上げる必要がありますが、ボール入れにすることで、子どもの負担が少なくなります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

202 ボール入れ 平面 枠あり 2連/3連

186で紹介したボール入れの続きになります。百円均一で売っている箱を塗装し、その中に箱の内径のサイズに切ったMDF板を5枚重ねて入れています(深さは25ミリ)。使用するボールが45mmですので、このくらい深いと「穴に落ちた」ということを、子どもが実感しやすくなります。

 

 

 

 

 

 

何度か紹介してきましたが、筒へのボール入れのように「縦に連続して入れる」のと、「横に並べて入れる」のとでは、横に並べて入れる方が圧倒的に難しいです。

 

 

 

 

 

 

また「横に並べて入れる」となると、円柱状のペグ(前回201「アクリル棒さし(大)」で紹介したもの)を横に並べて入れる、金属製のリベットを並べて入れる、木工用のダボを並べて入れる、といった教材を見かけます。しかし、それら「長いもの」は子どもの手の中で扱いにくいことがあります。だからこそ練習のために取り組むことがあるのですが、ここでは手にスポリとおさまる、球を使っています。

しかし球だとゴロゴロと転がっていきかねません。そのため、箱の中に教材を固定することで、子どもが活動しやすいよう、子ども自身が工夫しながらやりきることができるようにしています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

201 アクリル棒さし(大)

11で紹介した「アクリル棒さし」の別バージョンとなります。アクリルの棒を入れる面をあえて広く取り、目と手の学習が深まるようにしています。使っているアクリル棒は、白が直径25mm長さ50mm。黒が直径15mm長さ50mmです。こういった特定のサイズのものは市販されていないので、業者に発注しています。→詳しくはお問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

なお、ここでは太い棒を白、細い棒を黒というようにサイズごとに色を分けています。色の違いに気づきかけている子は、それが太さを見分けるヒントになります。

一方、子どもに合わせて難易度を調整していこうとすると、「難しくするのであれば」すべての棒を同じ色にするということが考えられます。また「易しくするのであれば」太い方だけ先に渡す(細い棒の穴には入らないのでミスがなくなる)、一本ずつ手渡す、といったことが考えられます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

200 野菜の水切り

この「本校の教材教具」コーナーも、ついに200回目を迎えました。200回目ということで紹介するのは、「野菜の水切り(サラダスピナー)」です。機械の目的外の使用になるのでご注意ください。

 

 

 

 

 

 

野菜の水切りの中には、子どもの好きなフィギュアなどを入れます。そしてボタンを押し込むと、フィギュアがぐるぐると回っていきます。意外なくらい、子どもが興味を持って活動することの多い教材となります。

子どもの目の使い方は、「動きや光」などを受け止める『周辺視』から、「色や形(いずれは文字や数)」を見分けていく『中心視』へと発達していきます。この野菜の水切りの活動は、そのうちの周辺視に焦点をあてたものです。詳しくは、「62ハンドスピナー」の記事をご確認ください。また、目の使い方の学習であると同時に、「押す」「動く」という因果関係の学習ともなります。

 

 

 

 

 

 

なお、野菜の水切りにはハンドルを回すタイプもあります。この辺だと、肘を中心とした身体の動かし方の学習ともなってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

199高さによる数量の教材(積み重ねる)

今回紹介するのは、数量を並べる教材になります。185「高さによる数量の教材(棒に通す)」とほぼ同じコンセプトの教材となりますが、185が棒に教材を通していたのに対し、こちらは積み上げています。どちらの方がやりやすいかは、子どもによるでしょう。なお、使用している木材は正方形です。「棒に通す」のであれば円形でも大丈夫なのですが、こうやって積み重ね、並べていくとなると、正方形の方が並べやすいです。

 

 

 

 

 

 

185と同様に、5は5として固め、5のまとまりが意識できるようにしています。1、2、3といったところもそれぞれ接着していて、「5と1で6を作る」「5と3で8を作る」といった「5といくつ」で数を捉えるということが意識しやすくなっています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

198 横に長い輪抜き

これまで「4」「73」「159」「160」回で『輪抜き』の課題について取り扱ってきました。それらのほとんどが縦方向の輪抜きでしたが、子どもによっては横方向の方が手を使いやすい、という場合もあります。今回紹介するのは、横方向の輪抜きです。

 

 

 

 

 

 

この写真のように、縦方向の輪抜きは、使う棒を高くすれば高くするだけ高くなります。ある程度土台を作ってしまえば、安定感もでます。しかし、横に長くしていくと、そうはいきません。棒を伸ばすと、重心がずれて、簡単に倒れてしまいます。倒れないように大人が支えていれば大丈夫かもしれませんが、できれば子どもが自分の力でやりきってほしいところです。そこで、ここでは土台となる木に棒を貫通させ、横の長さを調整できるようにするとともに、伸ばした方と反対側に重りをつけることで、倒れないようにバランスをとれるようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

197色と形、半立体のマトリクス

これまでも「色と形」という2つの属性を組み合わせる表(マトリクス)の教材を紹介してきました。3×3、4×3、4×4、5×5など様々なものがありましたが、それらは基本的に50ミリ四方の木に、ラミネイト加工したものを貼り付けたものでした。

今回紹介するのは、若干視点が異なり、〇△□、そしてハートと星の形について、半立体の具体物をペグとして用いるものです。色合いをそろえるため、塗装には同じ絵の具を使用しています。また、ハートと星の形は適当な木片が見つかりにくいため、市販されている2ミリ程度の薄さのものを数枚貼り合わせて厚みを出し、それを塗装することでペグにしています。

 

 

 

 

 

 

従来の、印刷した絵が貼り付けられているものと、今回の教材とではどちらがやりやすいでしょうか? 目が見えにくく、形が捉えにくい子どもにとっては、今回の教材の方が「触って形がわかる」ために取り組みやすいかもしれません。一方、手を持ち上げにくい子どもにとっては従来の教材の方が、「すべらせて操作できる」ためにやりやすいかもしれません。これも、ケースバイケースになります。多様な子どものニーズに応じるために、同じ内容であっても、様々な教材を用意しています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

196〇だけの型はめ(大)

178で「〇だけの型はめ(小)」を紹介しました。今回紹介するのは、「〇だけの型はめ(大)」になります。「小」「大」と言っていますが、「小」が直径40ミリ、「大」が直径80ミリです。こういった極端にシンプルな教材はまず市販されておらず、自作する必要があります。

ペグの直径が倍になると、体積や重さは大きく変わります。子どもにとっては小さい方がやりやすいかもしれませんし、逆の子もいるでしょう。

 

 

 

 

 

 

さらに、ペグの厚みの違いによっても、子どもの達成度は変わってきます。ここでは10ミリ、20ミリ、30ミリを用意しています(厚さ10ミリの板を1~3枚重ねて塗装)。大きくて薄い、小さくて厚いなど、どれが子どもの手になじむかはケースバイケースです。どの教材にも言えることですが、一人一人の子どもに合わせていきます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

195 ラジカセ(+ウゴキんぐ)

前回、ラジカセを紹介しました。機能がシンプルなこと、ボタンの数が限られていることも、子どもが学ぶ上ではメリットとなります。しかしながら、それでもボタンがいくつかあり、ラジオも聞くことができ、複雑といえば、複雑です。

そこで、ラジカセとコンセントとの間に、「ウゴキんぐ」をはさみます。「ウゴキんぐ」はコンセントにつないで使う、あらゆる電化製品をスイッチ化することができる機械です。

 

 

 

 

 

 

ここで肝心なのは、「ウゴキんぐ」で制御できるのは、「電流のON/OFF」だけである、ということです。したがって、「コンセントにつないだだけ」で動き始める機械でなければ意味がありません。例えば、最近のTVをスイッチ化しようとしてもうまくいきません。

スイッチ化しやすいのは、コンセントにつないだだけで動かせる機械。すなわち、掃除機ですとか、ミキサーですとか、そういったものになります。ラジカセもそのひとつで、「再生ボタンを押したまま」「早送りボタンを押したまま」で固定できますので、手ごろに、扱いやすいスイッチ教材となります。

これらは、CDやデータで行おうとしてもできません。ラジカセだからこそできることです。なお、その他の機械はというと、「掃除機」「ミキサー」のほか、「扇風機」「電動のマッサージ器」などが教材にしやすいでしょう。昔ながらのトースターも使えるかもしれません。すなわち、アナログの、コンセントにつないだだけで動く機械です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

194ラジカセ

ラジカセを身近で見なくなって久しくなりました。カセットテープからCD、MD、データ、配信と、学校の授業で使われる音源も時代とともに変わってきました。今回はだいぶ昔に使われなくなった、「カセットテープ」そして「ラジカセ」を教材として扱うことを紹介します。ちなみにですが、ラジカセはいまでも新品が売っています。カセットテープも市販されています。

 

 

 

 

 

 

ラジカセ(カセットテープ)と、CDやデータとでは何が違うでしょうか? 大きな違いは2つあります。1つには、音を止めても、また続きから音楽が始まるということです。当たり前のことのようですが、CDやデータではこうはいきません。曲を飛ばしたり、止めたりしているうちに、何がどの曲だったのか、どこがどうつながっているのか、よくわからなくなってしまいがちです。もう一つは、ボタンがアナログであるということ。再生ボタンや停止ボタン、早送り、巻き戻しボタンを押したときに、力強い手ごたえ(固有感覚への入力)と音がする、ということです。液晶の画面を触れるのとは比較にならないくらいの、強いフィードバックが返ってきます。これらの理由から、子どもによっては、「ボタンを押したら音楽(や声)が流れる」「何をしたらどうなる」ということの因果関係を学ぶ、非常によい教材となります。

テープの爪は、折っておきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

193洗濯ばさみを練習するための土台

あらかじめ挟まれていた洗濯ばさみを取る、あるいは洗濯ばさみをはさむための土台となります。ブックスタンドの形にMDF板をくりぬき、挟み込む形で接着してあります。こうやって土台を安定させることで、子どもが片手だけで洗濯ばさみを扱うことがしやすくなります。土台が揺らいでしまうと、操作どころではかくなってしまいます。

 

 

 

 

 

 

なお、洗濯ばさみそのものも、子どもにとって開きやすいもの、開きにくいもの、さまざまです。どれが良い、悪いではなく、子どもによって適切なものが異なります。

また、子どもが洗濯ばさみを抜く/挟む際、力任せに引っ張ってしまって、実際には洗濯ばさみを開いていない、ということもありがちです。そんな時は、養生テープなどを用い、土台にふくらみを持たせると効果的です。子どもが洗濯ばさみを引っ張ろうとしたり、押し込もうとしたりしても、洗濯ばさみに力を入れない限り、うまくいかなくなります。ちょっとした工夫で、「今できることの、一歩先」の課題を設定できます。なお、今回は土台を駆使してブックスタンドを固定していますが、同様のやり方で、様々なものを固定することができます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

192長方形の型はめ 6連 ランダム

前回の続きになります。「長方形だけの型はめ」に続くものとしては〇△□同様に2連、3連にといったことが考えられますが、長方形ともなると、すでにかなり「図形を見分ける」「手を操作する」力が育っていることが想定されます。そこで、今回紹介するものは一気に6連。しかも図形の方向を、あえてランダムにしてあります。こうすることで、長方形だからこそ、多様な角度で手首を動かす必要性が生まれます。

 

 

 

 

 

 

型はめパズルというと、算数科の内容として、図形の学習に向けたものと思われがちではないでしょうか。しかし設定の仕方によっては、日々の生活動作の向上に向けた、手首の使い方を学ぶための教材ともなります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

191長方形の型はめ

178「〇だけの型はめ(小)」179「△だけの型はめ」「□だけの型はめ(小)」では、円、正三角形、正方形の型はめを紹介しました。これらは、〇△□の違いはあれど、いずれも重心が図形の中心にあるという特徴があります。

 

 

 

 

 

 

「三日月の形」のような図形と異なり、入れやすいのです。

 

 

 

 

 

 

「〇△□」と「三日月」のような図形との間には大きな難易度の差があります。その間に位置するのが、星の形や、今回紹介する長方形、すなわち直方体の型はめになります。

 

 

 

 

 

 

長方形の場合、正方形と違って、入る方向が限定されます。正方形は「ぐるぐる回して」いると、なんとなく入ってしまうということがありましたが、長方形の場合はかなりじっくりと方向や角を見分けないと、型に入りません。

〇△□、正六角形、長方形、正ではない六角形、星の形、三日月の形など、世の中には様々な図形があります。大人からすると、どれも似たもののように感じてしまうかもしれません。しかし子どもからするとそれら一つ一つの間に、大きな難易度の差があるのかもしれません。子ども一人一人の今の力、次の課題を見据えながら、丁寧な支援を行っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

190重みのあるぬいぐるみ

前回「ウェイトブランケット」で紹介しましたように、固有感覚への入力、圧迫、重みといったものは、子どもの気持ちの安定や、運動発達に大きく影響していきます。一方、ウェイトブランケットも便利なのですが、金額的なことや、重すぎて取り扱いが難しいといったことが気になります。

そこで、今回紹介するのは、古くなったぬいぐるみをリメイクするという方法です。様々なやり方があると思いますが、ここでは一度お腹を切って綿を取り出し、大型のビー玉を入れたゴム手袋をいくつも入れたうえで、再度綿を詰めています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとした工夫で、子どもが膝に抱えやすいぬいぐるみになります。子どもが側臥位になる際に、背中にあてるといった目的でも使われます。

※重みのあるぬいぐるみは、市販もされています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

189ウェイトブランケット

人には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など様々な感覚があり、それぞれが重要な役割を果たしています。その中でも姿勢・運動ということになると、「視覚」「前庭感覚」そして「固有感覚」がポイントとなってきます。「固有感覚」というと聞きなれないかと思いますが、自分の手足がどう曲がっているか、動いているか、どのくらい力が入っているかということ。すなわち筋肉や関節の状態をモニターする感覚となります。

この感覚が整っていないと、そもそも自分の身体がどうなっているのか、どのように動いているのかがわかりにくいということですので、寝返りをする、座る、立つといった様々な場面に影響していきます。また、固有感覚を感じにくいということは、自分の身体がふわふわとしてしまうということ、極端に言うと「自分の身体がそこにある」ということに気づきにくいということでもあるようです。結果、気持ちもふわふわと落ち着かないものになっていきがちです。

今回紹介するのは、ずっしりと重いブランケット、すなわち「ウェイトブランケット」です。人は、誰かにぎゅっと抱きしめられると落ち着いたり、自分で自分の身体を抱きしめることで落ち着いたりすることがあります。固有感覚と、子どもの情動とが密接に結びついているからです。

 

 

 

 

 

 

子どもとの関わりの第一歩はぎゅっと抱きしめてあげること…なのですが、いつも抱っこというわけにもいきませんし、触覚や前庭感覚が過敏で、抱っこが苦手という子もいます。ほんのささいなことなのですが、座っているときにウェイトブランケットなどで膝の上に重みがかかることで、気持ちを落ち着けて活動できるという子どもがいます。うつ伏せ時に、腰のあたりに重みが加わることで落ち着く子どももいるようです。なお、似たような目的のものとして、「重量のあるベスト」なども市販されています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

188〇だけの型はめ 4連 5連 ランダム

前回紹介したのは、〇だけの型はめの3連まででした。今回はさらに穴の数を増やしたものを紹介します。なお、〇だけの型はめ/〇だけの型はめ(2連)/〇だけの型はめ(3連)はそれぞれ難易度に大きな違いがありました。〇だけの型はめならできるけれど、2連になったら難しくなる。2連までならできるけれど、3連になると、急に難しくなる。そんなことがありました。

 

 

 

 

 

 

しかし3までをクリアすると、その先の4連、5連といった課題は一気にクリアしていくケースが多いようです。むしろ、このあたりからは「全部入れればそれで終わり」ではなく、「左端から順に入れていく」といった、数の学習の基礎としての要素が加わってきます。

穴の位置をランダムに配置した教材もあります。〇だけの型はめが「点」。前回と今回消化した2連、3連、4連、5連の教材が「線」的に空間を捉えるものだとすれば、ここでは「面」としてとらえていくことになります。シンプルな「〇だけの型はめ」ですが、一人一人の子どもの課題に合わせた、様々なねらいがあります。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

187〇だけの型はめ 2連 3連

178「〇だけの型はめ」は非常に基本的な学習ですが、では、そのあとはどこに続いていくでしょうか。例えば、〇ができたから□、□ができたから△といった方向性があります。また、型はめのペグのような円盤状のものから、電池のような円柱状のものを入れるようにしていく、といった方向性もあるでしょう。この場合、だんだんと入れるものを長くし、いずれは棒を筒に入れるような力をつけていきます。

そして今回紹介するのは、1枚の「〇だけの型はめ」ができたところで、2枚の型はめ、3枚の型はめへとステップアップしていく教材です。

 

 

 

 

 

 

これは、一見すると簡単に見えるかもしれません。「〇だけの型はめ」ができたのであれば、2枚になっても、3枚になっても違いがないように見えるかもしれません。しかし実際のところ、同じようにボールを入れる課題であったとしても、「縦に5個入れる」ことと、「横に5個入れる」のとでは難易度が大きく異なります。横に入れていく方が圧倒的に難しいです。活動に空間的な広がりが生まれるからです。

 

 

 

 

 

 

今回紹介した教材も同様です。1枚の「〇だけの型はめ」ができることと、2枚の「〇だけの型はめ」ができることとの間には、大きな違いがあります。なお、2枚できることと、3枚できることの間にも大きな違いがあるようです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

186ボール入れ 平面 枠あり

3「鉄球入れ」95「筒入れ課題のバリエーション」でも紹介しましたが、「ボールを入れる」というのは非常に重要な学習となります。市販の玩具で言えば、「くるくるチャイム」といったあたりです。しかしながら、「ボールを持ち上げて」「入れる」という、その動きそのものが難しい、という子どもたちもいます。空間の中の一点(穴の位置)をねらうというのは、ことのほか難しいものです。

そのためくるくるチャイムの入り口をセロテープ等で狭くし、ボールを固定する、という支援の仕方があります。こうすることで、手にちょっと力を入れれば、ボールを押し込むことができます。

 

 

 

 

 

 

その次のステップとして用意したのが、今回の教材です。百円均一の店で売っていた箱を枠として使用します。その中に、箱の大きさに合わせてカットしたMDF板(厚さ5ミリ)を5枚重ねて入れてあります。MDF板には、直径50ミリの穴を開けてあります。こうすることで、「ボールを入れる」という活動が、平面上の活動になります。手の動きとしても子どもの負担が軽減されます。また、箱が枠になっているため、ボール等が転がっていってしまうことが少なくなります。

 

 

 

 

 

 

178「〇だけの型はめ(小)」の一歩手前くらいの課題になるでしょう。

(本校特別支援教育コーディネーター)

185高さによる数量の教材(棒に通す)

前回紹介した「数量のマトリクス改」と同じ発想による教材となります。棒をさらに高くし、10までの数量に対応できるようにしてあります。なお、形の要素を加えて3×10くらいまでのマトリクス化することも可能でしたが、今回は1×10の、数量に特化したシンプルな教材にしてあります。

 

 

 

 

 

 

棒については、直径8ミリ、長さ120ミリのアクリル棒を使用しています。教材の強度、子どもにとっての見えやすさといった観点から、白いアクリル棒にしました。なお、棒のカットは業者に発注しています(詳しくはお問合せください)。土台となる板は3枚重ねで、もう一枚の板で底をふさいであります。なお、棒の長さは115ミリでぴったりとなりますが(板が1枚5ミリで3枚分、積み木が1枚10ミリで最大10枚)5ミリ分の余裕を持たせてあります。

似たような市販の教材もあるかと思いますが、それらはおそらく「1から10までの数量を順番に並べる」ものかと思います。この教材は表札を自由に入れ替えることができるため、より多様な学習を行うことができます。また、「5」をまとまりとして接着し、黒く塗り分けているのもポイントです。「『5が区切りの良い数である』ということの理解」「『5といくつ』で6から9までを捉える」ということは数量を学習する上で非常に大きなことですが、あらかじめ「5」をまとめておくことにより、そこが自然に学べるようになっています。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

184数量のマトリクス 改

数量と形のマトリクスにつきましては、23「色と形以外のマトリクス」で紹介しました。ここではすいか、みかん、りんごを用いていますが、〇△□のもの、キャラクターの絵を用いたものなどのバージョンがあります。

 

 

 

 

 

 

これらの数量のマトリクスについてですが、そのメリットは大きい(少ない動きで学習できる等)ものの、本当にこれらで数量の理解が深まるのだろうか?という疑問もありました。そこで、改良を加えたのが以下の教材になります。

 

 

 

 

 

 

「5でぴったりになる」棒を3×5に配置し、〇△□の積み木に穴を開けて棒に通せるようにしてあります。この棒はいわゆるダボで、直径8ミリ×長さ60ミリ。各積み木は厚さ10ミリで、〇が直径40ミリ、△が一辺45ミリ、□が一辺40ミリです。それぞれ中央に直径10ミリの穴を開けてあります。結果、高さを駆使することにより、数量を感覚的に掴みやすい教材となりました。また、似たような市販の教材もありますが、マトリクスの中に組み込んだために、「表札」の位置を自由自在に変えることができます。さらには手をたくさん使うため、手の使い方の練習としても効果的な教材となりました。

一方、メリットとデメリットは表裏一体とも言えます。手の使い方がとても苦手な子どもにとっては、扱いにくい教材ともなりました。この新型の数量のマトリクスがよいか、それとも従来通りの高さのない数量のマトリクスがよいか、それらは子ども一人一人によって、学習の目的によって変わってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

183木の塗装の仕方 その2

前回の続きです。木を絵の具で塗る(毛羽立つ)→紙やすりで削る→再度絵の具で塗る、という過程をたどることにより、なめらかに塗装されたはずです。ただ、そのままでは子どもが触ると絵の具が落ちてしまいますので、ニスで保護していきます。ニスは透明なものを用います。

④ニスを塗る

刷毛を用い、ニスを塗っていきます。①~③の過程を丁寧に行っていると、ニスが木になじむはずです。片面に塗って乾いたら、もう片面を塗ります。

 

 

 

 

 

 

⑤ニスを紙やすりで整える

ニスを塗ったままだとべたべたしてしまうので、ニスが完全に乾いたところでニスの表面を削ります。削りすぎるとニスが全部はがれてしまうので、程度にやすりがけをします。

 

 

 

 

 

 

このように、木の塗装にはかなりの手間がかかります。水性塗料を使っている以上、どうしても毛羽立ちが多くなります。質感が気になる際は、とにかく紙やすりで削っていきます。④ニスを塗る⑤紙やすりでけずる過程も、繰り返すとさらに丁寧に木が保護されていきます。

 

 

 

 

 

 

百円均一の店の絵の具、ニスといったものを使うだけでも、これだけ塗り分けることができます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

182木の塗装の仕方 その1

木は適度な重さがあり、子どもにとっても「自分が操作している」ことに実感を持ちやすい素材です。一方、木製の土台に木製のペグだと見えにくいため、ペグを白や黒に塗りたくなります。また、色の弁別といった課題に取り組むためには様々な色に塗り分ける必要があります。そんな時、木を塗装したいということになるのですが、白木のままだと表面がつるつるしていたはずなのに、塗装したとたんにざらついてしまうということがあります。「毛羽立つ」という現象で、毛羽立った上からニスを塗ったとしても、うまくいきません。塗料の水分が木にしみこみ、それが蒸発する際に木の繊維を立ち上げてしまっているのだそうです。

 

 

 

 

 

 

この現象を解決するには解消には様々な方法(専用の塗料を使う等)があるようですが、ここでは百円均一の店でも簡単に手に入る道具で解決する方法を紹介します。まず、塗る塗料は、アクリル絵の具で構いません。

①とりあえず絵の具を塗る

紙やすりでざっと表面を整えたあと、水はほとんど用いず、絵の具そのままで塗り込んでいきます。片面が乾いたら、もう片面を塗ります。絵の具が乾くと、表面がざらざらとしてしまい、とてもではないですが教材として使えないはずです。ここではそんなに丁寧に塗る必要はありません。

 

 

 

 

 

 

②紙やすりで絵の具をそぎ落とす

非常に手間がかかるのですが、ここがポイントとなります。ざらつきがなくなるまで、絵の具をそぎ落とします。

 

 

 

 

 

 

③再度絵の具を塗る

もう一度、絵の具を塗ります。今度はできるだけ丁寧に、ムラがないように塗っていきます。ここでも、水は用いず、ほぼ絵の具の原液のままで塗っていきます。写真では最初に塗った時との違いが分かりにくいかと思いますが、なめらかさが違います。次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

181型はめパズルの作り方 後編

前回の続きになります。

④ふちどったところに、電動ドリルで穴をあける

電動糸鋸の刃を通すためです。糸鋸の刃のサイズにもよりますが、直径8ミリほどの太さのドリルであければ十分でしょう。なお、くりぬいた部分をペグとして利用する予定がなければ、中央に穴を開けてしまって構いません。また、ドリルで穴を開ける場合は下に不要な木を敷いておきましょう。そうしないと、穴を開ける際、木の下側の状態が悪くなってしまいます(バリができる)。

 

 

 

 

 

 

⑤穴を開けたところに電動糸鋸の刃を通す

ちょっと難しいですが、穴に刃を通したうえで、機械に固定します。この辺は用いる機械により、固定の仕方が変わります。

 

 

 

 

 

 

⑥線にそって、電動糸鋸でくりぬく

線に沿って一周します。慣れていないと、線にそって切ることや、△や□を切る際の方向転換が難しいでしょう。何度か練習したうえで挑戦してみてください。

 

 

 

 

 

 

⑦黒い色画用紙をラミネイト加工したものをはさみ、もう一枚の板を底にして接着する

木のままでも構いませんが、土台の枠の中を黒くすると、子どもが枠の存在に気づきやすくなるとともに、教材としての質感が一気にあがります。大きな手間ではないので、おすすめするポイントです。

 

 

 

 

 

 

なお、ここでは〇△□の木を用いました。しかし、たとえばスプーン、はさみなど、身近なもの、どんなものであっても、それをふちどり、くりぬいてしまえば、型はめパズルとすることができます。また、同じ要領で様々な教材を木に固定することができます。テープカッターなど、「教員が押さえていなければ扱えなかった」ようなものを子どもが一人で扱えるようになったりすることもあります。ちょっとした工夫で、子どもの可能性は広がっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

 

180型はめパズルの作り方 前編

前回、前々回と紹介してきた型はめパズルですが、その作り方を具体的に紹介します。必要なものは材料となる木と、電動糸鋸(と刃)ハンドドリル(と直径8ミリ程度のドリルの刃)になります。これらを自前で用意するのは大変かと思いますが、大型のホームセンターなどではDIYのコーナーが設置されているところもあります。なお、電動の器具を用いずに作成することは不可能ではないかもしれませんが、かなり難しいでしょう。はさみ、カッターで作成したい場合は、木ではなく、スチロール製の素材を用います。磁石を埋め込んで重くするといった工夫もできますが、耐久性や質感を考えると、できるだけ木を用いたいところです。

まず、土台となる板を用意します。ここでベースとしているのは百円均一の店で売っている、A3サイズのMDF板です(お店の種類により、同じ「MDF板」でも質感や厚さに違いがあります)。

①MDF板を半分に切ってA4サイズにする

A3サイズのままだと大きすぎるので、半分に切断します。場合によってはA3のままで用います。なお、電動糸鋸よりも正確にまっすぐ切断できる機械はありますが、最初は電動糸鋸を用いる方がよいでしょう。〇や△にくりぬいていく際の練習にもなります。電動糸鋸の刃には「直線切り用」と「曲線切り用」があるので、使い分けます。

 

 

 

 

 

 

②A4サイズになったMDF板を貼り合わせる

もとのままだと厚さは5ミリですが、これだと型はめに加工しても「はまった」感覚がわかりにくいです。市販されている、多くの型はめパズルが扱いにくい理由がここにあります(そのほか、選択肢が多すぎる、形が複雑すぎる等の理由もある)。土台の厚さを10ミリにすると、かなり「はまった」感覚が強まります。これは板が厚ければ厚いだけ「はまった」感覚が出やすいのですが、あまり厚くすると、ペグがはまりにくくなってしまいます。この辺はケースバイケースになります。

 

③買ってきたペグを土台に置き、先が丸くなった鉛筆でふちどる

ここが重要なポイントです。型はめパズルを自作する際、木を〇、△、□にくりぬき、それをサンドペーパーなどで削ってペグとして利用しようとすることがあります。しかしながら、それだとうまくいかないということはないでしょうか。実際、正確に丸く、三角に、四角に切るというのは極めて困難です。そして正確な〇△□でないと、「この方向だと入る」「この方向では入らない」ということが起こってしまいがちです。おすすめするのは、「ペグとして用いるものは市販品を用い、土台だけを作成する」ことです。

 

 

 

 

 

 

では、どうやってペグとなるものを購入するか? 〇の木、□の木は、ホームセンターでも売っているでしょう。しかしながら△の木というのは、ほとんど見かけません(□を半分に切った直角三角形はよく見かけます)。これは通販で探すか(詳しくはお問い合わせください)、市販の積み木セット、型はめパズルのものを流用する、といったことが考えられます。

 

 

 

 

 

 

なお、「先が丸くなった鉛筆」でふちどるのは、ある程度枠に余裕(遊び)がないと、ペグが入らないためです。あまり余裕がありすぎても「はまった」感覚が薄れてしまいます。この辺の加減は、非常に難しいところです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

179△だけの型はめ □だけの型はめ(小)

前回の続きとなります。前回紹介したのが「〇だけの型はめ」ですから、今回は「△だけ」「□だけ」の型はめとなります。なお、「まる さんかく しかく」とは言いますが、子どもにとって取り組みやすい順序は、ほとんどの場合「〇→□(正方形)→△(正三角形)」ということになるようです。

 

 

 

 

 

 

〇はどの角度でも入るので、一番簡単です。一方、□と△はというと、枠の角に、ペグの角を合わせる必要があります。この場合〇に近いほど角が合わせやすいですから(正三角形よりも、正八角形の方が入れやすいように)、「〇→□→△」という順序になります。

 

 

 

 

 

 

「〇△□」だけの、シンプルな型はめというのもなかなか市販されていませんが、〇だけ、△だけ、□だけの型はめというのは、さらに手に入れるのが難しくなります。今回使用しているのは材料として百円均一の店のMDF板、ラミネイトした黒画用紙、通販で手に入れた正三角形と正方形の木(詳しくは本校コーディネーターまでお問合せください)になります。1セットあたり200円もかかっていません。あとは、枠を切り抜くための電動糸鋸、糸鋸の刃を通すためのドリルです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

178 〇だけの型はめ(小)

「3鉄球入れ(鉄球とアクリルパイプ)」「95 筒入れ課題のバリエーション」でも紹介してきましたが、子どもの学習の中で、「入れる」ということは、非常に大きなポイントとなります。同様に、「はめる」ということも、重要な学習となります。いわゆる型はめの学習ですが、多くのものがおもちゃ屋や本屋などで市販されています。しかしながらそれらは子どもにとって難しすぎる、ということも多いのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

もっとも簡単な型はめは、「〇だけの型はめ」となります。かつて「6丸の型はめ」でも紹介したのですが。今回のは子どもの手のひらに収まるサイズのものです。また、枠と高さをそろえていて(10ミリ)、一度はめると、もう取れないようになっています(「終わり」の理解が十分でない子どもは、何度も入れたりはめたりする)。

「〇」というのは△や□と異なり、角を合わせる必要がありません。子どもにとって非常に取り組みやすい活動となります。一方、「球」と異なるのは、球が360度、どの方向でも枠に入ったのに対して、〇は水平になるように方向づける必要がある、ということです。基本的には「球を入れる」よりも難しい活動です。しかしながら「手を持ち上げることが難しい」という子どもにとってみれば、球を操作するよりも、「〇をはめる」方が取り組みやすいでしょう。活動の難しさは子ども一人一人に異なります。そこに合わせて教材教具を工夫していきます。

177 ビー玉落とし(小)

前回紹介したビー玉落とし(大)は箱作りから始めたもので、大掛かりなものでした。大きな手の動きを引き出すにはどうしても大きな箱が必要だったからなのですが、市販品の箱を活用して作成することもできます。小さなサイズならば、百円均一の店で売っている箱でも作成できます。

 

 

 

 

 

 

最初から箱があれば、ふたが落ちないようについたてをして、ふたを作るだけです。引き出したい子どもの手や目の動きに合わせて、横一列に穴をあける、放射状に穴をあけるなど、穴のあけかたを工夫していきます。

 

 

 

 

 

 

「一面のビー玉を全部落としたら終わり」といった使い方のほか、あえて目をつぶったうえで「教員が置いた1個のビー玉を、探り当てて落とす」など、多様な使い方が考えられます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

176 ビー玉落とし(大)

視覚障害特別支援学校で活用されている教材を参考にした、ビー玉落としです。身体が動かしにくい子どもの中には目の見えにくさがある子どもも多く、視覚障害特別支援学校での取り組みが大きな参考になることがあります。広い面にちりばめられたビー玉を指で押して落としていくわけですが、目の使い方だけでなく、手の使い方の練習にもなります。「押したら」「落ちて、音が鳴る」という、因果関係理解の学習にもなります。

 

 

 

 

 

 

ビー玉落としについては市販の作成キットを取り寄せることもできるのですが、ここでは一から自作してあります。まずはA3サイズのMDF板を用い、大きな箱を作ります。ここで既成の木箱(大きなホームセンターなどで売っている)を使うなどすると、作成のハードルが下がります。木箱にふたをするわけですが、ふたが落ちないように、木箱の内側についたてをするのがポイントです。また、ついたては木箱全体の高さよりも1センチほど低くし、ふたをしたときに段差ができて、ビー玉が転がり落ちないようにします。

木箱の高さですが、低すぎると、ビー玉が落ちた時の衝撃や音が弱く、子どもにとって「自分がしたこと」と「その結果」の因果関係に気づきにくくなります。しかしあまり高くしすぎると音が大きくなりすぎ、子どもがびっくりしてしまい、発作などを誘発しかねません。この辺は子ども一人一人に合わせて調整していきます。

 

 

 

 

 

 

ふたには、ボール盤を使ってビー玉が通る穴をあけていきます。ここでは、直径20ミリの穴をあけています。なお、穴のあけかたはランダムにしたり、放射状にしたりと、引き出したい子どもの目の動き、手の動きに合わせて調整していきます。穴の裏側から、ゴムひもを木工用ボンドで固定して完成となります。ビー玉は散らばってしまいがちなので、タッパーなどでまとめておくと便利です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

175「探り当てる」教材

人間の感覚には、様々なものがあります。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といったいわゆる「五感」のほか、分類の仕方にもよりますが、揺れ、回転、加速などを感じる前庭感覚、筋肉への力の入り具合や、関節の曲がり具合などを感じる固有感覚といったものです。

今回取り上げるのは触覚です。触覚とひとことで言ってもさらに細かく分かれていきます。ごく狭い意味での触覚のほか、圧覚、冷覚、痛覚、振動覚などがあり、子どもによってはそれぞれに感じやすさ、感じにくさが違っていることがあります。冷たさは感じやすいけれど、人に触られるのは感じにくい等です。

今回は、それらの中でもごく狭い意味での触覚、すなわち「触り分ける」力を育てるためのものです。触覚は全身の皮膚にはりめぐらされていますが、自分の身体と、外の世界との境界になる、非常に重要な感覚です。これが過敏であったり、逆に感じにくかったりすると、自分の身体がどこまでで、どこからが外の世界なのかがわかりにくくなるということで、身体の動かしにくさといったことにも影響することがあります。前庭感覚や固有感覚とともに、身体の動きを見ていくうえで、真っ先に整えていきたい感覚となります。

触覚へのアプローチはさまざまなものがありますが(手遊び、マッサージ、お腹に指で書かれた字を当てる、小麦粉粘土を扱う等)、これは見えなくなっている箱の中から、特定の形のものを取り出すものです。見えないので、触覚に頼った活動になります。

 

 

 

 

 

 

市販の教材でなくとも、身の回りのもので同じ目的の活動を設定することもできます。袋の中に入れた「ぬいぐるみ」「せんたくばさみ」「ペン」などを、探り出すといった活動です。身近な物で工夫しながら、それぞれの子どもの課題に応じた活動を行っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

174数字を「書く」ことを補う教材

算数科の学習にあたり、「数字を書く」ということについても、子どもがつまずきやすいところです。数字を書くだけで精いっぱいになり、考えることに手がついてきにくい、という場合です。文字や数字の読み上げ機能がついた機器、アプリを使う(そして教員が代筆する)という方法もありますが、紙の上で、試行錯誤しながら自分で書く、操作するということも重要な学習なのかと思われます。

 

 

 

 

そこで、前回と同様に教科書やプリントを固定したうえで、数字を書いた磁石を移動させていきます。この方法では取り扱う数の桁が増えたり、筆算の過程を行ったりすると操作が難しくなりますが、10までの数、2桁くらいまでの数の扱いであれば、効果的な支援になるでしょう。一人一人の子どもの様子はもちろん、活動の目的、内容により、適切な支援も変わってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

173「その子ども」に合った数図の扱い

「数図」というものがあります。算数の授業の中で「数を一目でわかる」ようにしたもので、左上から「1、2…」となり、「5で折り返す」のが基本です。数字(123)数詞(いち、に、さん)とともに、数量を表すものとして算数科の学習の、基本中の基本の内容となります。

 

 

 

 

 

数図の学習の際には、表記された数量を読み取るだけでなく、「数字を見て数量を書き込む」「数詞を聞いて数量を書き込む」といったことも行われます。しかしながら、身体の動かし方が苦手な子どもにとっては「書く」ことが困難で、なかなか学習が進みにくいということがあります。シールを貼る、スタンプを押すということでも同様の学習に取り組むことが可能かと思われますが、ここでは磁石と、立体の枠(百円均一の店で売っている、卵ホルダーの中身)を使う方法を紹介します。

 

 

 

 

 

 

ここでは、「157プリントの固定用枠」を使用。ブラックボードパネルが底に敷いてあるため、磁石を扱うことができます。なお、教科書も冊子形式では扱いにくいため、各ページを切り離してラミネイト加工したうえで固定しています。書見台を使う方法もありますが、十分には本が開きにくいし、その上で磁石を操作したり、書き込んだりするのが難しいためです。

子どもは磁石を操作し、数図と同じ内容の操作を行っていきます。プリントに書きこむのであれば、子どもが操作した通りに教員が代わりに書き込みます。書くか、補助具を使うか。一人一人の子どもに検討していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

172「その子ども」に合った数ブロック

いわゆる「算数セット」には「数ブロック」が入っていることがあります。黄色と白で、磁石が内蔵されている、おなじみの教材です。小学校の低学年で用いられることが多いですが、身体の動かし方が苦手な子どもにとっては扱いにくさがみられることもあります。特に不随意運動が入りやすい子どもにとっては、1個1個の数ブロックが小さすぎることと、磁石の磁力の弱さがネックになりやすいようです。

 

 

 

 

 

 

そこで、百円均一のお店で売っている木片(30ミリ×30ミリ×15ミリ)にの上下にそれぞれ直径20ミリ深さ5ミリの穴を開け、磁石をボンドで固定したうえで黄色と白の紙を貼り、梱包用テープで巻きあげたものが上記の教材になります。適度な大きさと重さ、磁力があり、ホワイト(ブラック)ボードの上で使うことで、不随意運動が入りやすい子どもにとっては扱いやすい教材となります。

 

 

 

 

 

 

一方、重いものを持ち上げにくい、力が入りにくい子どもにとっては、従来通りの数ブロックの方が扱いやすいでしょう。学びやすい教材/学びにくい教材は子どもそれぞれによって異なり、それぞれの子どもに合わせた工夫を行っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

171「とまと」と「まとと」

「一文字ずつを読み上げる」ことができても、「単語として意味を取る」ことについては難しい子どもがいます。また、本HPで紹介している「こしとくひらがなアプリ」などを駆使して一文字ずつ打つことはできても、単語を思い浮かべ、それを打つことが難しい(多くは「きつね」が「ねつき」などと逆転する)子どもがいます。それらのつまずきの背景要因は子どもによりさまざまですが、「音を心の中で操作する力」すなわち「しりとり」や「〇のつく言葉の列挙」「単語の逆唱」などの際に用いられる、「音韻意識(日本語の一音ずつを意識し、操作する力)」につまずきがあるという場合が多いようです。

様々な支援が考えられますが、今回紹介するのは、その中でも「勝手読み」が多い場合。すなわち「ねずみ」と書いてあるのに、「ねず」まで行ったら「ねずこ!」と読んだり、極端な場合、「ねずみ」の「ね」だけ、あるいは「きつね」の「ね」だけを見て「ねずこ!」と読み取ってしまう子への支援です。

 

 

 

 

 

 

ここでは、「とまと」カードを5枚、「とまま」「まとと」など「トマトではない」カードを5枚、それぞれ用意してあります。それぞれの単語カードの裏には「〇」なり「×」なり、子ども自身が「『とまと』であったのか否か」を確認できるようにしてあります。教員と一緒に単語を読み上げながら、これが『「とまと」なのか?』とその正誤を確認していきます。

 

 

 

 

 

 

同じようなテーマで、プリント化することもできます。絵と、どこか一か所だけ間違っている単語を提示し、「どこが間違っているのか」「ほんとうは何なのか」ということを問い、正確に読み上げること、一文字ずつを意識することを促していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

170さわってわかるひらがな

文字の学習は、これまでも様々な機会に紹介してきました。「目で見分ける」学習と、「音を聞き取る」学習とが合わさって、「文字を読む」ことができるようになっていきます。しかしながら身体の動かし方が苦手な子どもの中には目を使うことが苦手な子どもも多く、「あ」「め」「ぬ」、「り」「い」「こ」、「れ」「ね」「わ」といった各文字の見分けがつきにくい、といったつまずきが見られることがあります。

 

 

 

 

 

 

これらのつまずきに対する支援として、「目で見る」だけでなく、文字の形、とりわけ「す」「ぬ」「ね」のように複雑に線が交差する文字について、それらの線を「触って」確認できるようにする、といったことが考えられます。具体的には線の交差が実感できるように「モールで文字を作る」「粘土で線を作って文字を作る」といったことです。今回紹介するのは市販の教材で、文字の線が単に印刷されているだけでなく、ざらついていて、線を指で辿る中で触覚的にも感覚が入ってくるようになっているものです。

学習は見るだけ、聞くだけではなかなか進んでいきません。実際に身体を動かすこと、複数の感覚を活用しながら学んでいくことが重要なのですが、身体の動かし方につまずきがあると、そこが難しくなりがちです。教材教具を工夫する中で、それぞれの子どもの学びやすさを追求していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

169穴を見分けて入れる

例えば、「ボールを入れる」課題が達成されたとして、「目や手を育てる」ための次の課題としてはどのようなものが考えられるでしょうか。例えば電池のような「円柱を入れる」課題。丸の型はめ。磁石のついたカードをホワイトボードに貼る課題。球と輪を見分ける課題、といったものが考えられます。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、「ボールを入れる」課題の一歩先の1つ、「穴を見分けて入れる」課題になります。ここでは、複数ある容器の1つだけに穴が開いていて、そこを見分けて入れていきます。最初は2つの選択肢から始めていき、3つ、4つと選択肢を増やしていきます。子どもは最初は手探りで、「あれ?入らないな」と試行錯誤するかもしれませんが、次第に目を使って、試行錯誤することなく入れるようになっていきます。

 

 

 

 

 

 

なお、選択肢が3つある場合、子どもが一番捉えにくい位置はどこでしょうか? 非利き手側? と考えたくなるところですが、ほとんどの場合は「真ん中」です。これは3つの選択肢だと大人からは実感しにくいところです。しかし5、7、9、11と選択肢を増やすにつれて、「端の方が捉えやすいこと」「『真ん中』というのがことのほかわかりにくいこと」を実感できると思います。これはカードとか、掲示物とか、さまざまなものを子どもに見せる時も同じで、ちょっとした提示の仕方の違いで、子どものわかる/わからないが分かれていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

168袋から出して入れる

前回、ボウリングを通して「手段をつなげていく」ということの視点について紹介しました。同じように、「目的がわかりやすい活動」の中で手段をつなげる、見通しを持って活動するための学習として、「袋から出して入れる」というものもあります。

 

 

 

 

 

 

「ボールを取って」→「入れる」だけならば、活動のつながりは1つです。活動に必要な見通しはシンプルなものになります。「ボタンを押して」→「電気を消す」、「蛇口をひねって」→「水を出す」そして前回紹介した「ボールを転がして」→「ピンを倒す」なども、「見通し」という観点からすると、ほぼ同様の難易度の活動になります。これらはいずれも「ボタンを押すこと」「蛇口をひねること」「ボールを転がすこと」そのものが活動の目的なのではなく、「電気を消す」「水を出す」「ピンを倒す」といった『目的のための手段』になっています。

では、「袋から出して」「ボールを取って」→「入れる」となると、どうでしょうか。これは活動が2つつながり、連鎖しています。「ボールを取って」→「入れる」よりも活動のつながりが多いわけで、より見通しをもつことが難しい活動となります。さらに活動の難易度を上げていくと、袋を紐でしばったうえで「紐をほどいて」「袋から出して」「ボールを取って」→「入れる」というように3つ活動をつなげるといったことが考えられます。

今回、子どもの見通しということ、活動をつなげていくという視点を紹介しました。実際の生活では、様々な複雑な見通しが求められます。自動販売機を見つけたとき、「のどの渇きを潤すために」「財布を探す」といった場面があるかと思います。しかし、「のどの渇きを潤す」という目的と、「財布を見つける」という手段の間とには、どれだけの活動のつながりがあるでしょうか? 大人からすると当然のつながりなのですが、子どもの成長を考えたとき、ごくシンプルな見通しから、丁寧に活動をつなげ、手段と目的の距離を離していく学習が必要になってきます。

(本校特別支援教育コーデイネーター)

167手段をつなげる学習(ボウリング)

室内で手軽に行える活動として、ボウリングがあります。ボールを転がす→ピンを倒す、という活動ですが、シンプルなようでいて、奥の深い活動になります。

いきなりですが、「ボールを転がす」ということは、活動の目的ではありません。活動の目的はあくまでも「ピンを倒す」ことです。当たり前のようですが、「『ピンを倒す』ために『ボールを転がす』」ということは、子どもにしてみると「活動の手段と目的を分離させる」ということになります。これは実は、かなり難しいことです。 

他に「手段と目的が分離している」状況を考えてみると、例えば「水を出すために蛇口をひねる」「食べるためにスプーンを持つ」といった場面があります。これらも、「蛇口をひねる」ことが目的ではありませんし、「スプーンを持つ」こと自体が目的ではありません。あくまでも水を出すこと、食べることが目的になります。さらに手段と目的が分離していけば、「ごはんを食べるために、手を綺麗にするために、水を出すために、蛇口をひねる」といったことになるでしょう。これらの手段をいくつつなげていけるかということが、いわゆる「見通しを持って活動できる」という力になってきます。

ボウリングに話を戻しますと、目的はピンを倒すことです。ですので、一番簡単な取り組み方を考えると、「手で直接ピンを倒す」ということが考えられます。これだと、活動の手段と目的とがイコールですので、子どもにとってもわかりやすい、見通しが持ちやすい活動になります。続いて、「ボールを転がしてピンを倒す」というのがあります。ここで見通しが持ちにくい子どもの場合、ボールを触ったり回したりすること自体が目的になりがちで、なかなか「倒すために転がす」というところに行きにくくなります。

 

 

 

 

 

 

逆に言うと、ボウリングのように「ピンが倒れる」という目的がわかりやすい活動の中で、活動に見通しを持つこと、手段と目的を分離していくこと、複数の手段をつなげていくことの練習をしていきます。そこで身につけた力を発揮して、「手を洗うために、水を出すために、蛇口をひねる」等の、生活の中での、見通しを持った活動が広がっていくことになります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

166位置把握・口頭

13、16、96、106、162回で紹介してきた位置把握課題ですが、これらは基本的に「目で空間を捉えて」「記憶し」「手で操作して空間を再現する」活動でした。板書を見て同じように書く、といったことにつながっていきます。「見比べる」力を育てる活動です。

 

 

 

 

 

 

この活動に十分取り組むことで可能になってくるのが、今回紹介する、「口頭での位置把握」になります。使い教材としてはこれまでと同じなのですが、教員側の見本を隠したうえで、「真ん中はアンパンマン」「アンパンマンの右がドキンちゃん」など、口頭で伝えていき、耳で聞いた情報から自分で空間を組み立てていくという活動になります。

 

 

 

 

 

 

これは「目で見て」行うよりもかなり難易度が高い活動になります。なお、子どもが取り組んだものが合っているかどうかの答え合わせは、教員側が隠し持っていた見本を「見る」ことで行います。「見て分かる」が十分に身についてきたところで、見えないものを聞いただけでイメージする、「聞いて分かる」の学習に進んでいくわけです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

165バランスストーン

本校の校舎は平屋で、校舎内は車椅子で全校を回ることができ、基本的には段差というものがありません。ある意味、「不安定な足場の上を歩く」機会が少ないということでもあります。そのためハードルを使う、柔らかいマットの上を歩くといった形で多様な身体の動きを身につける学習を行っていくのですが、今回はそれらの中から「バランスストーン」を使った活動を紹介します。

 

 

 

 

 

 

広い庭にあるような、庭石を再現したような教材になります。バランスを取りながらそれらの上を歩いていきますが、自分自身でバランスを取ることが難しい場合、例えば壁に沿って設置し、子どもがいつでも壁に手をかけられるようにする、といった工夫があります。

 

 

 

 

 

 

また、予算的に購入が難しい場合は、「すべり止めのシート」と「ステンレスのボウル」を組み合わせることで、手軽に再現することもできます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

164かずカード

市販品、百円均一の店舗で売られている学習用カードの活用例となります。

 

 

 

 

 

 

このカードは片面に数量、片面に数字が印刷されています。このカードを用い、例えば数量の弁別、数字の弁別を行うということが考えられます。数量を並べる、数字を並べるというのが次に来るでしょう。しかし「カードの持ちにくさ」「数量の配置が5のまとまりを意識しにくい」といった、気になる点もあります。そこで、いくつかの工夫を施したものが、以下の写真になります。

 

 

 

 

 

 

まず、「数カード」を2組用い、テープで巻いてしまうという工夫です。こうすることでカードに厚みが出て、子どもが取り扱いやすい教材となります。また、右の写真では、5を〇で囲み、「5といくつ」で6~10の数量を把握しやすいようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

163数量学習用の半具体物 その2

「⑭数量学習用の石(半具体物)」に続き、数量を学習するための半具体物の紹介です。半具体物というのは、さまざまな具体物から「数量」という属性を取り出して考えるためのものです。そういってもわかりにくいので実際の例を紹介しますと、例えば「イチ ニ サン」といった数詞や「123」といった数字が発明される前の時代、自分の家で飼っている牛と、隣の家で飼っている牛の数を比較する必要があったとします。

 

 

 

 

 

 

この場合、どっちかの牛を移動させ、一匹ずつつき合わせれば比較できますが、とても大変です。また、「イチ ニ サン」と数えられれば便利ですが、まだ数詞は発明されていません。そこで、昔の人は「石」「ひも」などの半具体物を使って具体物の「数量」を抽出するということを考えました。そうすると、遠く離れたもの同士、動かせないもの同士であっても、多少を比較することができます。

 

 

 

 

 

 

この時の、牛という具体物から「数量」という属性を抜き出すために使った石が、「半具体物」となります。石と限らず、棒でも、おはじきでも磁石でもタイルでも数ブロックでも積み木でも何でも構いません。⑭では百円均一の店で4個セットで売っている「ストーンアイスキューブ」を紹介しました。やはり、子どもたちの手の使いにくさを考えると、このストーンアイスキューブの「適度な重さ」「立方体であるため机上で安定すること」「サイズ感」といったメリットは大きく、コスト面からも使い勝手の良さが際立ちます。また、セロテープで固めて「5のまとまり」「10のまとまり」を作るのも簡単です。

 

 

 

 

 

 

一方、それだけを使っていると、「それだけが数である」という誤解も生みがちです。先に紹介した棒、数ブロック等の他にも、例えば押し入れの奥に眠っている碁石なども、子どもの手に収まりやすく、適度な重さがあります。この辺、使いやすい半具体物というのは子どもによって異なるので、一人一人の子どもに合ったものを探っていきます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

162位置把握の提示法(3次元)

「161パズルボックス」では立体的に空間を捉えることについて紹介しました。今回は、13、16、96、106回で紹介してきた位置把握課題において、立体的に空間を捉える教材の提示の仕方を紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な位置把握課題がありますが、ここにあげているものは縦×横、もしくは高さ×横の、2次元的なものです。3次元的な位置把握課題となると、例えば縦×横×高さで立体的に積み上げた積み木を、同じように積み上げる、といったことが考えられます。ですが、これは手が使いにくい子どもにとっては非常に操作が行いにくい課題となります。また、見本の全体像が見渡しにくいということもあります。

 

 

 

 

 

 

そこで、右の写真のように、教材を提示するという方法があります。これは教材を作る段階で一定の長さのあるダボを利用しているため、穴が開いているペグをいくつか通して「高さ」を表現することができます。ペグを棒に差し込んでいるため、積み木のように倒れることもありません。

(本校特別支援教育コーディネーター)

161パズルボックス

158回でも「可変型はめ」を紹介しましたように、形態構成、位置把握、マトリクスなど、これまでいくつもの「空間を捉える」学習の教材を紹介してきました。しかし、それらはあくまでも平面、縦×横の2次元のものでした。

 

 

 

 

 

 

このパズルボックスは、市販のものですが、縦×横だけでなく、そこに高さの要素が加わるため、3次元の空間を捉える教材となります。2次元から3次元に変わるということは、子どもからすると、非常に大きな難易度の違いになることがあります。特に横になっていることが多く、身体を起こす機会の少ない子どもにとってはそれが顕著です。遠近感とか、高さといったものを捉える力は、やはり身体を起こし、教材教具をたくさん扱うことによって育っていきます。

 

 

 

 

 

 

それらの力は、算数科などの学習にも影響していきます。例えば左の図形は立体的な捉え方が育っていると、平面の図形でありながら立体的に見えます。しかしながら身体の動かし方が苦手な子どもの中には、どうしても立体に見えず、3つの四角系(正方形1つ、平行四辺形2つ)に見える、ということがあります。パズルボックスといった基礎的な学習を通して、目や手を育てることが、将来の学習を支えていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

160可変輪抜き

前回の続きとなります。159で紹介した輪抜きは、低くとも、高くとも、一方向でした。運動の開始から、終わる(輪が抜ける)までは一直線。運動の方向付けも一方向です。今回紹介するのは、分岐を伴う輪抜きです。

 

 

 

 

 

 

この教材は、上に向けて運動を起こした後、棒にそって途中で横方向に運動を切り替える必要があります。大人からすると当たり前のような気がしますが、子どもにとっては自分の運動を途中で切り替える、すなわち2つの運動をつなげるというのは、かなり難しいことです。

なお、輪抜きができたから何なのか。それが何につながるのか、という声も耳にします。これは例えば、「一方向の輪抜き」が「スプーンで食べ物を口に運ぶ」シンプルな運動に相当するとすれば、「二方向の輪抜きができる」ということは、「スプーンで食べ物をすくって、それを口に運ぶ」という、2つの運動をつなげる準備になっていくということを意味します。それらの「見通しをもった活動」の練習を、「輪を抜く」という目的がわかりやすい学習の中で行っているわけです。

なお、分岐する数は増えれば増えるだけ難易度は上がります。一方向、二方向、三方向と全部の教材を用意すればよいのですが、それも煩雑です。そこで、一つの教材で、難易度を自在に変えて、子どものそのときの状況に合わせられるようにしたのが以下の教材です。

 

 

 

 

 

 

塩ビパイプをつなげ、その場で難易度を変更し、分岐を増やせるようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

159長い輪抜き

輪抜き/輪通しの教材は、4回や73回で紹介してきました。今回紹介するのはそのバリエーションで、90センチの高さがあるものになります。およそ「Ⅱ見分ける学習の教材」として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

輪抜きはシンプルですが奥の深い課題で、その高さ、あるいは2方向、3方向といった分岐の有無により、難易度が大きく変わってきます。高さだけを取り上げても、高ければ高くなるだけ、難易度が上がります。これは「高くなれば、運動のコントロールが難しくなる」というのが難易度が上がる理由の一つではあるのですが、それだけではありません。以下の2枚の写真をご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

左の物は輪抜きの棒が低く、右の物は高くなっています。この場合、「抜く」という運動をすることにはどちらも変わりがないのですが、運動を始める位置(一番下)と輪が抜ける位置(棒の終端)の距離が違います。距離が違えば、時間もかかります。右側の輪抜きを実施するためには、そこまで自分の運動を持続し、方向づけるための「見通し/わかる力」「注意を持続する力」が要求されることになります。輪抜き課題は分岐の有無も重要な視点で、これは次回紹介します。

(本校特別支援教育コーディネーター)

158可変型はめ

難易度を調整できるようにした、型はめの教材です。ベースとなっている型はめパズルは市販のものですが、市販品そのものを使用すると「選択肢が多すぎる」「枠が浅すぎ、『はまった』という感覚がつかみにくい」「ペグを持ち上げなければならず、筋力が弱い子が扱えない」といった難点が上がってきます。

 

 

 

 

 

 

そこで、市販品のペグはそのまま使い、枠だけを新たに作成しました。土台となっているものは、前回と同様にA3大のMDF板を重ねて接着し、A4台にくり抜いたところに鉄板(ブラックボードパネルの中身)を挟み込んだものです。左側の枠は一体型、右側の枠はさらにひと手間を加えることで、〇△□といった選択肢の位置を自在に変えられるようになっています。およそ、「Ⅰ目や手を使う基礎を整える教材」から「Ⅱ見分ける学習の教材」として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

市販品をそのまま使うだけでなく、ちょっとした手間をかけることで、一人一人の子どもの「今の力」に合わせた難易度設定をすることができます。場合によっては、「〇だけの型はめ」にすることもできます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

157プリントの固定用枠

74~75回、80~81回等で紹介しましたように、プリント学習は、使い方によっては子どもとのやりとりを充実させる、非常に効果的な教材となります。しかし不随意運動が入りやすいなど手指の使い方が苦手な子どもにとっては、プリントがあちこちに動いてしまって扱いにくいということがあります。

そのため、「⑩A3のホワイトボード、磁石」「121書字をしやすくする教材」では、ホワイトボードにセロテープでプリントを固定する方法、プリントがすべりにくくなる道具といったものを紹介してきました。

 

 

 

 

 

 

しかしセロテープを毎回使うのは煩雑ということ、すべりどめの道具では磁石が扱いにくいといったこともあり、さらに工夫を加えたのが次の教材となります。

 

 

 

 

 

 

土台となっているものは、「144〇×でのプリント回答システム」で紹介したものと同じで、A3大のMDF板を重ねて接着し、A4台にくり抜いたところに鉄板(ブラックボードパネルの中身)を挟み込んだものです。

プリントを固定するために、上記のものと同じA3大のMDF板を半分に切ってA4サイズにし、その内部をさらにくり抜いています。なお、角の部分は斜めに切ることで、プリントが固定されやすくなりました。さらに教材の質を高めるならば、枠の四隅に強力磁石を埋め込むことで(ボール盤を使い、磁石のサイズぎりぎりの高さでくぼみを作る)、さらに強力にプリントが固定されます。教科書なども、ラミネイト加工したうえで固定することができます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

156長さの系列化(10まで)

前回の「高さ」の系列化の教材に続けて紹介するのは、「長さ」を順序付ける教材になります。素材にしているのは百円均一の店のA3サイズのMDF板で、「1」は3センチ四方。「10」は3センチ×10センチに設定してあります。厚みは5ミリです。

 

 

 

 

 

 

高さの時と同様、2組教材を用意することで、「自分で並べる」「見本を見ながら並べる」の難易度の調整ができるようにしてあります。

なお、「大きさ」「高さ」「長さ」には、難易度の差があります。「大きさ」「高さ」は、子どもによって逆転することもあるのですが、多くは「大きさ」が簡単で、「高さ」が難しくなります。そして、圧倒的に難しいのが「長さ」です。その理由ははっきりとしていて、「大きさ」や「高さ」を比べようとする場合、机なり、床なりが基準となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、「長さ」の場合、自分自身で一定の線を定め、そこを規準にして比較しなければいけません。非常に難しい活動となります。とはいえ、数の理解はさらに難しい活動です。子どもの発達に沿って、基礎・基本から丁寧に学習を積み上げていく必要があります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

155高さの系列化(10まで)

前回の続きになります。前回は5まででしたが、同じ枠を2つ並べることで、「10まで」の高さの系列化の教材となります。アクリル棒の高さは、5までに続けて100mm、110mm、120mm、130mm、140mmに調整してあります。

 

 

 

 

 

 

白と黒の2色を使い、「自分で並べる」「見本を見ながら並べる」というように難易度を調整できるようにしてあるのも、5までと同様です。大小を10個並べる、高低を10個並べる、そして次回紹介する「長さ」を10個並べるくらいの力が育つと、「数量」の学習に入ってもスムーズに学んでいけるのではないでしょうか。

(本校特別支援教育コーディネーター)

154高さの系列化(5まで)

㊾「大小を並べる教材」105「様々な並べる教材」で「大きさ」に沿って並べる際の教材を紹介しました。物事を順序付ける(系列化する)視点には、「大きさ」のほか、「高さ」「重さ」「長さ」「速さ」「熱さ」「暑さ」「厚さ」「新しさ」「丸さ」「音量」「面白さ」など様々なものがあります。それらのうち、「速さ」「暑さ」などは教材化するのが困難です。教材化しやすいのは「大きさ」「高さ」「長さ」のように「目で見て分かる」もの、あるいは「重さ」「なめらかさ」「硬さ」「熱さ」のように「触って分かるもの」になるでしょう。

 

 

 

 

「大きさ」については様々な物が市販されていることをお伝えしてきました。いわゆる「ピンクタワー」のほか、入れ子、マトリョーシカなどです。「高さ」についても市販されているものがあるのですが、手の操作が苦手な子どもにとっては扱いにくい(すぐに倒れてしまう)ということがほとんどです。

 

 

 

 

 

 

そこで、穴に差し込むようにすることで、倒れないようにしたものがこの教材です。アクリル棒は幅が20ミリのものを使い、高さを50㎜、60㎜、70㎜、80㎜、90㎜と10ミリ刻みで調整してあります(穴の深さがシナベニヤ3枚分なので、これでちょうど1~5の階段状になります)。なお、アクリルの棒を切るのは業者に発注しています。詳細は本校コーディネーターまでお訊ねください。

また、アクリルの棒を白と黒の2色使い、穴を5×2の2行で開けることで、「自分で並べる」ことと、「見本を見ながら並べる」ことの両方ができるようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

153大小ペグさし その2

既に⑦⑧「電池入れ」⑪「アクリル棒さし」を紹介してきましたが、その改良版となります。⑦⑧⑪で土台に使っていた端材を、化粧板で表面を加工されたシナベニヤに変更しています。3枚を重ねて接着、そこに27ミリと18ミリのドリルで穴を開けたうえで、底をもう一枚の板でふさいでいるのは従来の作りかたと同じです。また、太い方のペグが縦50ミリ幅25ミリ、細い方のペグが縦50ミリ幅15ミリなのも従来どおりです。

 

 

 

 

 

 

化粧板なので表面がすべりやすく、ざらつかないこと。従来の板よりも重いので土台として安定すること。化粧板の色と穴の部分の色にコントラストが出るので、子どもが穴に気づきやすくなること、といったことがメリットとなります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

152 シリコンスプーン

身体を動かしにくい子どもにとって、食事の際に使う道具をどうするか、ということも重要な視点になります。食事を自分で食べる、すなわち自食する際に食具に求められることと、誰かに食べ物を口元に運んでもらう際に食具に求められることでは、その内容が大きく変わってきます。今回は、食べ物を口元に運んでもらった際に便利なスプーンを紹介します。

 

 

 

 

 

 

このスプーンの素材はシリコンになります。食べ物を上手に取り込むことが苦手な子どもの場合、金属製のスプーンだと歯がガチリとあたって、口腔内が傷つくことがあります。シリコン素材の場合、子どもも安心して口を閉じることができるわけですが、噛む力が強すぎると、スプーンそのものを噛みちぎってしまうこともあります。何にしてもそうですが、道具は子どもの実態に合わせて選んでいきます。

スプーンを選ぶポイントとして、本校の自立活動専任教諭からは2点があげられています。①スプーンのボール部の幅が口に合っているか。②スプーンのボール部の深さが浅めで、上唇で一回で取り込める深さになっているか。迷ったら、「浅め」を選べばよいとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

子どもの摂食の練習という視点に立つと、おそらくは大人が想像する以上に、子どもにとっての「適切な量」は少な目であるようです。すなわちスプーンの先に少しだけ、というくらいです。

なお、モデルの口の大きさからすると、上記のスプーンはそれでもまだ大きめです。繰り返しますが、「良いスプーン」は子ども一人一人にとって違うものです。スプーンを使う目的によっても変わってきます。その日、その時、その場面に応じて、適切なものを選択していきましょう。

(本校特別支援教育コーディネーター)

151単語、文指導のステップ その4

149回の続きです。「こしとくひらがなアプリ」を使って単語を打つ前に、「文字ブロックを並び替える」学習を行います。ここでは「すいか」を扱うとすれば、「す」と「い」と「か」の文字ブロックを渡し、「す」「い」「か」の並びになるように取り組んでいきます。

 

 

 

 

 

 

一文字ずつが読めるし、「すいか」とも言えているし、あっさりと進むだろう…と大人としては考えがちですが、ここでつまずく子どもは多いです。しかしこの「文字ブロックを並び替える」というステップを飛ばして、いきなり単語を書く、打つというのはさらに難易度が高いです。

直接単語を書く、打つというのは、いわば心の中に一音ずつを思い浮かべて、それを並べていくという作業です。非常に(おそらくは子どものワーキングメモリに)負担がかかります。文字ブロックの並び替えというのは、一音ずつを視覚化して操れるようにするということです。これを行うことにより、子どもにとって「音を操る」ということの意識が高まりやすくなるようです。

 

 

 

 

 

 

この「文字ブロックを並び替える」という活動のあとだと、「絵を見て単語を打つ」ことがスムーズにいきやすくなります。あるいは、子どもによっては直前に並べた文字の並びを視覚的に記憶して、それを再現しているのかもしれませんが…。

「子どもに発語があり」「一文字ずつを読み上げられれば」それで即、作文ができるようになるか。決してそうではありません。そして今回4回にかけて指導のステップを紹介してきましたが、すべての子どもに同じように効果的な指導方法はありません。

どのように考えながら単語を書いて(打って)いるのか? 子どもの頭の中は見えませんが、そこを推測しながら、一人一人の子どもに最適な支援を組み立てていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

150単語、文指導のステップ 番外編 特殊音節

「本校の教材教具」コーナーも150回目を迎えました。ご愛読ありがとうございます。

子どもに単語や文字の学習を教えていると、「あれ?」と思うことがあります。大人がイメージする音と、子どもが実際に聞いている音との違いです。

 

 

 

 

 

 

 

例えば「らいおん」ですが、これを文字を覚えたての子どもに打ってもらうと、「らいよん」となりがちです。また、草加市は本校の学区ですが、子どもに打ってもらうと「そか」となることがあります。「そうか」ではありません。

文字を学習済みの大人にとっては「先生(せんせい)」「お父さん(おとうさん)」「氷(こおり)」「小売り(こうり)」「行李(こうり)」「郡(こおり)」といった表記に違和感はないはずです。そしておそらくは、文字表記のイメージ通りに聞こえていることでしょう、しかし文字を学んでいる段階の子どもからするとどうでしょうか。

身近な「せんせい」という言葉からして、子どもは「せんせえ」と書きますし、子どもの耳にはそのように聞こえています。実際には大人にもそう発音していることが多いのですが、我々の頭は自動的に文字表記に合わせて変換してしまいます。

例えば、「おとうさん」の「う」は何と発音しているでしょうか? 「お」のはずです。このように実際の発音と文字表記が異なるのが「特殊音節」であり、子どもがつまずいていきやすいところです。ひらがなは本質的に、音と文字が一致しているので学びやすい文字言語です。しかし例外もあり、指導に当たっては丁寧に行っていく必要があります。

助詞の「を」「へ」「は」もそうです。「八戸へ行く(はちのへへいく)」「母は(ははは)」の分かりにくさは言うまでもありません。「を」についても、子どもに教える時に「WO」と強調したくなりますが、実際には「お」と全く同じ発音になっています。

「こ『お』り」「おと『う』さん」あたりも同じ発音なのに、文字表記になると変わってしまう。非常に難しいところです。※旧仮名遣いなど歴史的な経緯があるため。

また、漢字になると「林(リン、はやし)」といったように一つの文字に複数の読み方が出てきて、子どもの混乱に拍車をかけていきます。単語、文の指導に当たっては、それらの日本語表記のわかりにくさを十分に踏まえたうえで行っていく必要があります。

それでも、英語と比べると、だいぶ日本語の表記はわかりやすいようです。英語の場合、そもそも「A(エイ)」を「エイ」とは発音しません。「C『A』T(キャット)」「『A』LW『A』YS(オールウェイズ)」。ここに出てくる「A」は全部発音が違います。「発音の例外」が日本語よりもはるかに多く、これが英語圏の読字障害(ディスレクシア)の多さの要因となっているようです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

149単語、文指導のステップ その3

いよいよ「こしとくひらがなアプリ」などを使った、「書き」の学習に入っていきます。繰り返しますが、読むことと、書くことは違います。そして多くの場合、「読む」→「書く」という順序で学習は進んでいくのですが、子どもによっては「書く」方が、「読む」よりも得意という場合があります。子どもの学びの道筋は10人いれば10通りあり、みな違います。

基本的には「2文字→3文字→4文字」「濁音半濁音なし→濁音半濁音あり」「拗音促音(ゃゅょっ)なし→拗音促音(ゃゅょっ)あり」といったステップをたどります。しかしながらいきなりタブレット端末と「ひらがなアプリ」を子どもに渡し、「かえる」の絵を見せて、「書いて(打って)」と促しても、なかなか難しいことが多いでしょう。発語があり、文字が読めていればできそうなのですが、なかなかそうはいきません。

 

 

 

 

 

 

子どもの中には、心の中で音を操る力(音韻操作)が苦手な子がいます。その場合、「いちご」と聞けば「イチゴ」のことだとわかり、自分でも「いちご」と言えるとしても、「い」「ち」「ご」という、「いちご」を構成する一つずつの音に注意を向けられるとは限りません。なお、これができるからこそ子どもは「単語を逆に言う(いちご→ごちい)」ことができたり、「しりとり」ができたり、「〇のつくことば」を言えたりします。

文字を書くというのは、心に思い浮かべた単語を、一音ずつに解体して、順を追って一文字ずつに変換していくことです。これが、非常に難しいことになります。子どもによってはこの「心の中で音を操作する」ことが難しくて、「いぬ」と書くべきところが「ぬい」といった結果になってしまうことがあります。

※ほかにも原因があることがあり、一概には言えません。

そこで、「絵を見て単語を書く(打つ)」一歩前の学習として考えられるのが、「文字ブロックを並び替える」です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

148単語、文指導のステップ その2

前回の続きとなります。一文字ずつの読みを獲得した、その後です。

一文字ずつの読みから二文字単語の読み取り、三文字単語の読み取り、四文字単語の読み取り…と学習は進んでいきます。大人にとってはなかなか実感しにくいところですが、子どもにしてみると、初めて読む単語ばかりです。ですので、最初は「うし」「うま」「かめ」「いぬ」「ねこ」など種類を限定(ここでは動物)したうえで、二文字単語、なおかつ濁音や半濁音(「¨」や「°」がある字)を伴わないものを選んで学習するといったように絞って学習すると、子どもが単語の内容を予測しやすくなり、学びやすいことが多いでしょう。

子どもは最初のうちは、文字から直接意味を取ることは難しく、「う」「し」。「う」「し」。「う」「し」。「う」「し…」と何度も繰り返し読み上げ、自分で言った音を、耳で聞いて意味を取っていきます。このあたり、発語が難しい子どもが、文字の読み取りも難しくなっていくことの要因の一つとなります。

 

 

 

 

 

 

特定の種類の二文字単語の読み取りができるようになったところで、食べ物など他の種類の名詞、動作語などを扱っていきます。また、濁音や半濁音、三文字単語なども取り扱い、読み取れる単語の幅を広げていきます。友だちや家族、教員の名前、天気の名称、日課の名称などが、子どもが「読んで」「分かって」嬉しい単語でしょう。

 

 

 

 

 

この頃、プリント学習なども設定できるようになっていきます。〇をつけることなど書字が難しい場合、ホワイトボードにプリントを貼りつけて磁石を置くことで選択したり、「144〇×でのプリント回答システム」のようにプリントのフォーマットを定めて、枠を用意したりするとよいでしょう。

ここからさらに、二語文の読み取り、三語文の読み取り、文を読んで5W1Hの質問に答える…といったことに進んでいきます。

 

 

 

 

 

なお、どうしても単語の意味が読み取りにくい場合、「こしとくひらがなアプリ」を使うと、子どもがその単語を見てアプリに打ち込み、音声として再生して「耳で聞く」ことで、意味が取れるということがあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

 

147単語、文指導のステップ その1

143回では「〇×でのプリント回答システム」を紹介しました。今回は、「53~55文字を読み上げるためのカード」などを用いて一文字ずつを読み上げられるようになってから、簡単な文を読み取れる、あるいは「145こしとくひらがなアプリ」などで文を作れるようになるまでの学習を追っていきます。

「子どもに発語があり」「一文字ずつを読み上げられれば」それで即、作文ができるようになるかというと、そうはスムーズにいかないことが多いです。そこには「文字を読み上げる」ことと「文字を読んでわかる」のは違うということ、「文字を読むこと」と「文字を書く(打つ)」ことは違うということ、という2つの視点があります。

 

 

 

 

 

 

「58 文字の意味を取る教材」でも紹介しましたが、えてして起こりがちなのが、子どもが「りんご」の単語カードを「り」「ん」「ご」と一文字ずつ読み上げたとき、教員が「そうだね、『りんご』だね」と言っているケースです。この場合、子どもは自分自身で「読んだから」頭の中にリンゴのイメージが浮かんだのではなくて、教員が口にした言葉を「聞いて」イメージが浮かんでいる、ということがあります。すなわち、良かれと思って教員がやっていることが、子どもの学習の妨げになっているというケースです。

これを防ぐためには、教員が「りんご」と言ってしまうのは避け、「そうだね、じゃあ『それ』って」どういうもの?」といった発問をする必要があります。「うし」「はさみ」など身振り化できるものであれば、「そうだね、じゃあ『それ』をやってみて」といった問いもありえます。そうしてみると、意外なくらい、子どもは単語を読み上げていても、その意味がわかっているとは限らないということがわかります。十回ぐらい同じ単語を繰り返し読み上げてようやく意味としてつながったり、「動物だよ」「食べ物だよ」といったヒントがあってはじめて意味としてつながったりする子もいます。

教員の言葉を「聞いて分かる」力と、自分で「読んでわかる」力との間には、格段の開きがあります。「読む」となると、一文字ずつならわかっても、単語になったとたんに意味としてつながらなくなる子どもがいます。また、「うし」「うま」のような二文字単語なら意味として捉えることができても、「あひる」「きりん」などのように三文字単語になったとたんに難しくなる子もいます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

146こしとくひらがなアプリ

「こしとくひらがなアプリ」については、既に本校HPで紹介してきました。この「本校の教材教具」コーナーにおいて、あらためて紹介させていただきます。

ひらがなを学習するための教材としては、「53~55文字を読み上げるためのカード」「59~61文字を読み上げるまでに」「110文字ブロックの改良」「111文字入力装置の改良」において、「文字カード」「文字ブロック」「文字入力装置」を紹介してきました。

さらに改良を加えた教材が、今回の「こしとくひらがなアプリ」です。文字入力装置の改良を行った際、文字盤にラミネイト加工した紙を挟み込んだ結果、文字の入力に相当な指先の力を必要とするようになってしまったため、指先で触れるだけで操作できるように開発しました。原案・イラストが本校教員で、プログラミングは保護者が行っています(他の子たちにもぜひ使ってほしいとのことですので、今回紹介しています)。

 

 

 

 

 

 

 

音声による文字の読み上げ機能、単語の登録機能もあります。

なお、同じ絵を使った「文字カード」「文字ブロック」「文字入力装置」「アプリ」を紹介してきましたが、それぞれの良さ、使いにくさがあります。特にスマートフォンやタブレット端末の画面は、不随意運動の入りやすい子供にとっては思うように操作しにくく、アナログの教材の方が使いやすいということがあります。一方で筋疾患があり、アナログの教材が操作しにくい子にとってはスマートフォンやタブレット端末といったデジタル機器を駆使することで、表現の可能性が広がりやすいでしょう。いずれにしろ、教材ありきではありません。アナログの教材を使うから良い支援というわけでも、情報端末を用いるから良い支援というわけでもありません。あくまでも一人一人に合った支援を追求していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

145はさみの補助具 その2

「142はさみの補助具」で紹介したものは、基本的にカスタネットばさみなどを使うお子さん、両手を別々に動かすことが難しいお子さん向けのものでした。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、自分で紙を持ってはさみを操作する子向けの補助具です。紙を自分でもつとき、やはり難しいのは紙がぐにゃぐにゃになってしまって、はさみでうまく切りにくいという状況です。

ここでは、紙を2枚の木の間にはさみこめるようにすることで、紙の張力を保ち、はさみの刃が立ちやすいようにしています。また、板を裏返すことで、右利きの子も、左利きの子も使えるようになっています。なお、実際には2枚の板ではさむだけでは紙の張力を保つことは難しく、セロテープも併用しています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

144〇×でのプリント回答システム

⑩「A3のホワイトボード、磁石」でも紹介しましたが、プリントをホワイトボードに固定する(セロテープ等で)ことにより、子どもは学習しやすくなります。こうすることで「失敗することを嫌がる」子どもにとっても学びやすくなります。なぜならば、磁石を置くことで選択していく中で、答え合わせの際に教員に「〇」だけをつけてもらうことができるからです(間違っていた場合は磁石をずらすだけでよい)。プリントに、決して「×」がつきません。

 

 

 

 

 

しかしながら問題は「毎回セロテープでプリントの四隅を固定するのが煩雑」ということです。また、授業中にテープカッターを子どものそばに置くのも怖いものです。さらに言えば、不随意運動が入りやすい子どもの場合、動かしているうちに磁石がずれてしまいます。

 

 

 

 

 

 

そこで編み出したのが、プリントのフォーマット(問題文の位置、〇×の位置)を定めたうえで、上から厚紙や板をかぶせるだけでプリントを固定できるシステムです。土台はA3大のMDF板を重ねてくり抜き、ブラックボードパネルの鉄板をはさみこんであるものです。鉄板をはさむのは、磁石を使えるようにするためです。

 

 

 

 

 

 

また、上にかぶせるものは、板目表紙で作ってあるものと、木で作ってあるものがあります。最終的には木で作るほうが速いし、強度があるかと思われますが、板目表紙であればカッターを使って作成できます。なお、土台は新たにつくったのではなく、これまでに紹介してきたものの流用となります。A4サイズの板が入る規格なので、応用することができます。他の教材もそうですが、10センチ四方、A4サイズなど、教材の規格が統一されていると、様々な場面で教材を応用させていくことができます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

143ロープを引っ張る

「手で姿勢を支える」学習は、道具の使いやすさなど日ごろの生活や学習のしやすさに直結するだけでなく、転倒したときにとっさに手が出ることなど、歩行の安定といったことにもつながる重要な学習です。「高ばい」「雑巾がけ」「体育館の天井から下がったロープにつかまって揺れる」「上り棒にのぼる」「ジャングルジム」など様々な学習が考えられますが、身体の動きにつまずきがある子どもの場合、なかなか取り組むことが難しいです。

そんな中、例えば「大きなマットをロープで引っ張る」といった活動が考えられます。両手でロープを交互に引っ張り、たぐりよせていきます。重さは水の入ったペットボトルなどで調整しています。手の力だけでなく、体幹を整える学習ともなります。

 

 

 

 

 

 

活動のバリエーションとして、井戸のように、ロープを引っ張って天井まで物を上げる、というのもあります。この辺、バケツなどを使い、中に入れるものの重さで難易度を調整していきます。「天井に上げるまで」なので、活動の終わりもわかりやすいです。教室内で手軽に取り組める活動になります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

142はさみの補助具

はさみを扱うにあたり、はさみそのものの操作も難しいのですが、問題になりやすいのは切る対象(多くは紙)をどのように固定するべきか?ということです。多くは教員が両手で引っ張り、紙が張ったところを子どもが切っていく、ということになるでしょう。しかし、やはりそれでは子どもが「自分自身で切った」という実感を持つことは難しいのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

最初の工夫はこれです。木の板を2つ置いて、セロテープを使ってその間で紙を固定しています。これでも教員が木を押さえる必要があったので、木を切りぬいて専用の補助具を完成させました。およそ、「カスタネットばさみを自分で押せる」けれど「一人で切るのは難しい」くらいの手の操作の段階にある子ども向けとなります。

 

 

 

 

 

 

何枚か重ねて厚みをつけた板を、U字状にカットしてあります。やはり、セロテープで紙を固定します。板なので重みがあり、ちょっとした子どもの手の動きでは動かないようになっています。なお、この補助具を使った場合、「直線切り」はできるのですが、「曲線切り」は難しいです。もっと子どもが「できた」と思える支援ができるように、工夫を重ねていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

141六面体の教材

子どもがカードを黒板やホワイトボードに貼る際、磁石がついていない面を黒板等に向けてしまって、なかなかうまくいかない…ということがあります。であれば、すべての面に磁石がついていればどうなるでしょうか? どの面にも同じ絵を貼ってあげれば、すごく扱いやすい教材になるのではないでしょうか? そのようなコンセプトから作られたのが、この教材になります。

 

 

 

 

 

 

磁石の反発を押さえてボンドで固定するために、かなり多くの木、本などで重みをつけて強引に押さえてつけています。

実際に作成してみると六方向に働く磁力が互いに打ち消し合い、貼りつく際の磁力が弱くなってしまいました。木のサイズがもう少し大きければ、磁力の干渉の具合が変わってくると思われます。しかし木が大きすぎると重くなりすぎ、また手に収まりにくくなるでしょう。それぞれの子どもの課題に合わせて、教材教具の工夫を行っていきます。

 

 

 

 

 

 

完成品です。同じ絵と絵が、どの面同士であってもくっつきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

140ひもで絵を描く教材

特別支援教育でよく活用される教材の中で、「輪ゴムで図形を作る」ものがあります。線、図形への意識を高めるために便利なものなのですが、肢体不自由校においてはそもそも手の使い方が苦手で、扱うことが難しいという子どもを多く見かけます。

 

 

 

 

 

 

そんな中、県立塙保己一学園の特別支援教育コーディネーターに紹介していただいたのが、右の写真の教材となります。「フィロ」という商品名になります。ペン先を差し込んでいくことで線を描くことができます。もちろん自由に絵を描くことにも使えるのですが、2つ用意して図形の見本合わせてとして活用することもできます。輪ゴムを使うよりも、子どもにとって手指の操作面での負担は少ないようです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

139箱椅子を組み合わせて作る平均台

バランスを取って歩く、というのは身体の動かし方が苦手な子どもにとって、非常に重要な課題です。安定した床の上を歩くだけでなく、その子の力に応じて、芝生の上を歩く、柔らかいマットの上を歩くなど、様々な面の上を歩いていきます。

発展的な課題として「平均台」があります。しかし通常の平均台は幅が狭いものが多く、歩行が不安定な子どもが使うにあたっては難しいところがあります。「巧技台」を組み合わせて平均台として使うというのもあるのですが、本校の備品にはありません(そのためイラストです)。そのため身近な物を活用していくのですが、例えば箱椅子(収納用のスツール)を使うという方法があります。本を大量に入れると重さと安定感がでるため、子どもにとって安心して取り組みやすくなります。なお、最初の段階では平均台は壁に沿って設置すると、子どもが不安感を持ちにくくなります。クランク状に設置するといった工夫もできます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

138名画の分割パズル

一枚絵の分割パズルは、二分割のものからはじまり(二分割も、切片がぎざぎざのもの→まっすぐなものへ)、分割する回数を増やせば増やすだけ難易度があがっていきます。また、身近なキャラクターや家族の写真などを使えば子どもにとって取り組みやすくなります。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、意図的に、極端に難易度を上げた分割パズルです。およそ「ひらがなを見分ける基礎を育てる」といった目的であれば6~8分割のものができればよいのですが、チャレンジ精神が高く、難しい課題を好む子どものために作成されたものです。意図的に、子どもにとってなじみの少ない絵を選んでいます。なお、このパズルは大人であっても達成が難しく、10分以上かかっても作れない教員がいました。子どもが取り組む場合、下絵の上に重ねていくという形をとることになります。

 

 

 

 

 

 

高難易度のパズルとしては、名画を使う他にも「集合写真」などがあります。子どもにとって身近な物を教材にしていくのが教材づくりの基本ですが、必要に応じ、あえて身近でないものを使うこともあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

137数字と数量を対応させる型はめ

切片がぎざぎざになっており、数量と数字が正しく合わないとはまらないという、二分割パズルです。同じ二分割でも、一枚絵を二分割したものなどとは難易度が大きく異なります。

 

 

 

 

 

 

決してこの教材だけで数量と数字が対応できるようになるわけではないのですが、様々な数の学習の教材の1つとして押さえています。材料としては百円均一の店で扱っている、6枚セットのMDF板です。電動糸鋸で、フリーハンドで切断してあります。

 

 

 

 

 

 

なお、数字の読み方のヒントとして、数字の面の裏に、「136 数字の歌カード」で紹介した絵を貼りつけてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

136数字の歌カード

数字が読めることが、数がわかるということではありません。数量(・ ‥ …)をことばに置き換えたものが数詞(イチ ニ サン)、数詞を文字に置き換えたものが数字(123)ですので、数の学習の基本は「数量がわかる」ということです。しかしながら、数字もまた、数の概念を構成する要素のひとつですので、学んでいく必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでは「53 文字を読み上げるためのカード その1」などと同様に、各数字に対応した絵がヒントになるようにしています。「♪かかしの…」「♪たぬきの…」といった、数字の歌をモチーフにしています。なお、算用数字において「数字のジュウ」は存在しないため(漢数字には『十』があるけれど、算用数字ではあくまでも「1」と「0」を使って『十』を表現する)、独自に「数字のゼロ」の絵を作っています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

135指先を使う教材

前回のビンのふたは手首全体の動きでしたが、指先を使い、ペットボトルのふたを開け閉めをするといった動きも、重要な力となります。このあたりは順を追って、肩→肘→手首→指先といったように、だんだんと身体の中心から末端へと使いこなせるように練習していきます。

 

 

 

 

 

 

ペットボトルの場合も、「ただ開け閉めする」というのでは見通しが持ちにくいので、ここではアクリルの棒を入れるために開けて、最後に閉めるという活動にしています。なお、アクリルの棒は直径20mm、長さ50mmで、業者に発注しているものです。なお、アクリルの棒が取り出せるようにペットボトルの底がくり抜いてあり、もう一つのペットボトルをつなぐ形でふさいでいます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

134 手首をひねる教材

前回の続きとなります。ついつい握りこみがちな子どもの手指ですが、ビンのふたやペットボトルのふたを開閉するような「ひねる」動きも大事な力となります。

 

 

 

 

 

 

ここでは、百円ショップの容器を板に固定し、不随意運動が入りやすい子どもであっても操作がしやすいように工夫してあります(容器の形に木を切り、接着)。ここでも教材の角度を工夫していて、机に平行になっているものだけでなく、いわゆる「レジスター」型の容器を使うことで、教材に角度がついています。子どもが多様な手の動きを経験できるようにしています。

また、ただ「ビンのふたをひねる」だけでは子どもにとって活動の見通しが持ちにくくなります。ここでは、「ふたを開けてアヒルを取り出す(助ける)」等の言葉かけをする中で、自然な流れの中で「ひねる」動きを行っています。なお、子どもにとって「開ける」方向か「しめる」方向か、どちらかだけが得意で、どちらかは苦手ということがあります。どちらの動きもできるように、取り組んでいきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

133チェインジングボード

鉛筆、はさみ、箸といった道具を使いこなしていくためには、「親指とそれ以外の指を分離して動かす」「小指と薬指を固め、人差し指と親指を自在に動かす(中指は操作側としても支える側としても使われる)」といった力が必要になります。具体的には、「ピストル」の形を自在に作れるといった力です。「教材紹介⑱ボルト外し」もご確認ください。

 

 

 

 

 

 

しかし子どもの手指をよくよく観察してみると、手指がいわゆる「噛みこんでいる」状態になっていて、それぞれの指を自在に動かすことが難しいことがあります。まずは手を開いていく、という学習が必要になります。

 

 

 

 

 

 

手を開いていくにあたり、ポイントとなるのは手首の角度です。実際に自分の手で試していただくとわかりやすいのですが、手首を手のひらの方向に曲げる(掌屈)と手は丸まっていき、手首を反り返らせる方向に曲げる(背屈)と手は開いていきます。

 

 

 

 

 

 

今回紹介する「チェインジングボード」は様々な使い方があるのですが、その使い方の一つとして、子どもの手首の背屈(反らせる)を促すというものがあります。マジックテープでついているもの、磁石などを取る中で、自然と手首が背屈し、それぞれの指が開いていくようになります。ポイントとしては盤面に角度がついていることです。これが、盤面を机に寝かせているようであれば手首は反り返りにくく、手指は丸まったままでしょう。書字の際なども、子どもによって書見台などを使うことがありますが、角度がついてさえいればよいというわけではなく、角度がなければよいというわけでもなく、子どもそれぞれに程よい角度があり、そこに合わせていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

132時計の教材

基本的には「時刻」を示すのが時計です。時計にはアナログ時計とデジタル時計とがあり、時刻を知るためだけであれば、デジタル時計で十分です。数字さえ読めれば時刻を読むことができます。わざわざ難易度の高いアナログ時計を学ぶ必要はありません。しかしなぜアナログ時計の学習をしていくかというと、「あと〇分」「〇分経ったら〇時になる」といった「時間」を知るためには、デジタル時計よりもアナログ時計の方がわかりやすいからです。時計の針の動きで、「時間」の量を知ることができます。

 

 

 

 

 

 

時計の教材としては、様々な物が市販されています。いわゆる「算数セット」の中に入っていることも多いでしょう。それらの教材の構造も様々なのですが、身体の動かし方が苦手な子供の場合、「歯車を動かす」タイプよりも、「針(長針)を動かして操作する」タイプの方が扱いやすいことが多いようです。また、それでも操作が難しい場合、枠を作って教材を固定するといった支援が考えられます。主として、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

131カラーバールーペ

身体の動かし方が苦手な子供の中には、目の使い方も苦手である、という子供がいます。すると算数科の内容が積み上がりにくいというのはこれまでも紹介してきた(「130棒と木枠での5と10の合成と分解」等)ところですが、国語科の内容についても習得が難しくなっていきます。具体的には、学習の流れに目の動きがついてきにくく、「文末を自分で作って読んでしまう(勝手読み)」「行や列を読み飛ばしてしまう」といったことが起こってきます。当然ながら、文や文章の意味を理解し、考えることが難しくなっていきます。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、そういった「行(列)飛ばし」を予防するための教材です。全体が透明であるために前後の行(列)とのつながりが見えやすく、また、適度な重みがあるために手が使いにくい子供にとっても扱いやすくなっています。ルーペとしての機能もあるため、中心部が大きく見える、というのも特長です。主として、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

130棒と木枠での5と10の合成と分解

「数の合成と分解」は算数の学習の、非常に大きな基礎となる内容です。「5を2と□に分ける」「2と3で□になる」。これらを頭の中で自由自在に思い浮かべ、操ることができてはじめて足し算や引き算を使いこなしていくことができるようになります。「数の合成と分解」の理解が十分でないと、計算にあたって指を使ってしまうというようなことになりがちです。

数の合成と分解の理解にあたっては、小さいころからおもちゃなどを使ってたくさん遊んだり、砂場で砂を分けたり、合わせたりした経験が土台となっていきます。また、目で空間を捉える力も重要になっていきます。身体の動かし方につまずきがある子にとってはその両方ともが育ちにくく、結果、数の合成と分解の理解が難しい、さらには算数科の内容の習得全体に影響してくる、ということがあります。

 

 

 

 

 


今回紹介するのは、5と10の合成と分解について、「長さ(連続量)」に置き換えることで直感的に捉えることができるようにしている教材です。長さの棒は市販品で、枠だけを教員が作っています。

「2と4で『5』になるのか?」「5と4で『10』になるのか?」といったことを、「枠にはまる/はまらない」「空間が余っている/ピッタリ」といったことで、手ごたえで確認することができます。主として、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。

129ひもの結び方の教材

「くつひもを結ぶ」というのも、非常に難しい課題です。ひもを結ぶために中腰になるということ自体が難しいわけですが、それは椅子に座るなどすることで補うことができます。また、身体の動かし方が難しい子が何から何まで自分で行う必要はなく、「人に頼む」というのも重要な力です。そもそもくつひもを必要としない靴を選ぶ、ということも選択肢としてあがってきます。

 

 

 

 

 

 

とはいえ、ひもの結び方を実際に練習していくならば…というのがこの教材です。板目表紙で靴を作成し、子供が操作しやすいようにしています。

ここでは靴ひもは一色ですが、場合によっては二色に分けて、ひもとひものの空間関係がわかりやすいようにすることもあります。支援は少なすぎず、多すぎず、その子一人一人に合わせていきます。

また、ひもの代わりに、モールなど硬めで、形が変化しにくい素材を使うこともあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

128ひらがな学習用の枠

「126線学習用の枠」では、円、三角、十字といった、様々な線の学習に向けての教材を紹介しました。今回は、それらの線の学習の総決算、ひらがなという複雑な線を捉えるための教材を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。

ここでは、「り」と「よ」という2つの文字があります。どちらの文字の方が捉えにくいのか、ということだと、これは「よ」の方が難しいという子供が多いでしょう。「り」は2本の線がそれぞれ独立していますが、「よ」は同じく2本の線でできているものの、2本の線が一点で接し、さらには途中でぐるりと回る中で交差していきます。

 

 

 

 

 

 

他にも、「あ」「め」「ぬ」「す」「れ」「わ」「ね」など、子供が捉えにくいひらがながあります。これらの複雑な線による文字は「字を見る」だけではなかなか捉えることが難しく、「書く」こと等を通して学んでいくことになります。しかし、身体の動かし方が難しい子どもたちにとって、「書く」ことこそとりわけ難しいことになります。立体的な枠を使い、最初は「指を使ってペグを移動させる」ことから始め、「棒を使ってペグを移動させる」など、書くことへ向けた学習を進めていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

127各種スイッチ教材と因果関係の理解

「48積み木倒し」「72押したら鳴る教材」でも物事の因果関係の理解に向けた教材を紹介してきました。因果関係の理解というのは、「ボタンを押したらブザーが鳴る」「積まれている積み木を触ったら倒れる」といったように、「何かをしたら」「何かが起きる」ということに見通しが持てるということです。

 

 

 

 

 

 

因果関係の理解は様々な教材を通して学ぶことができますが、今回紹介するのはスイッチによるものです。スイッチ教材といっても、様々なものがあります。前半の「何かをしたら」ということについては、レバー式のもの、ボタン式のものなど。また、「何かが起きる」ということについては、「ぬいぐるみが動く」「扇風機が回る」「音が出る」など。それらの組み合わせにより、子供にとっての分かりやすさが変わってきます。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

例えば「赤外線センサーで水が流れるトイレ」があるとします。これもある意味スイッチ教材の一種であるわけですが、子供にしてみると赤外線センサーよりも、レバーを倒したり、ボタンを押したりした方が「自分が何かをした」ということに気づきやすいでしょう。したがって、「赤外線センサーで水が流れるトイレ」などは因果関係の理解がわかりにくいということになります。

また、ボタンを押すようなスイッチだったとしても、その結果が「ボタンを押して10秒後に、ぬいぐるみの目が一瞬だけ動く」といったものだったらどうでしょう。これもまた、子供にとって因果関係の理解がわかりにくいということになるでしょう。

「何かをしたら」「何かが起きる」ということについて、子供にとってわかりやすいものから、徐々に学習を積み上げていきます。それらの小さな見通しの積み重ねが、毎日の生活の中での、見通しを持った行動につながっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

126線学習用の枠

前回の125では「縦に積む」ことから「横に並べる」ということで、点から線へという学習の流れを紹介しました。今回は「線の学習」という中でも、様々なバリエーションのものを紹介していきます。『Ⅱ見分ける学習の教材』として想定しています。

 

 

 

 

 

 

最もシンプルな「線の学習」の教材は、「51スライドブロック」となります。運動の始点から終点までがまっすぐで、線の始まりと終わりが明確です。

 

 

 

 

 

 

一方、さらに進んだ内容の教材として、これらのものがあります。「円」「三角形」といったような「終わりのない」線を学ぶためのもの、また、「交差した」線を学ぶためのものです。他にも様々な種類の「線」を学ぶ教材があります。これらの学習に丁寧に取り組んだうえで、例えば「あ」「め」「す」のような、線が複雑に交差したひらがなの学習にも進んでいくことができます。

(本校特別支援教育コーディネーター)