本校の教材教具
225 弁別用木枠(2択用)
「弁別」と言っても、「机上で自分で分ける」「紙の上に置き分ける」「箱に入れ分ける」など様々な方法があります。机上に紙がある、というだけでも子どもは分けやすくなります。
また、「箱がある」と、一気に弁別がしやすくなります。箱を色分けするとさらに弁別しやすくなりますし、箱の高さが違うと難易度が変わってきます(基本的に、箱が深ければ深いだけわりやすくなる)。
一方、手の操作が難しい子どもにとっては、「箱に入れる」ということが大きなハードルになってきます。むしろ、「机の上で自分で分ける」方がやりやすいかもしれません。この辺はケースバイケースということになるのですが、一工夫したのがこの教材です。
5センチの厚みの板(5mmのMDF板を10枚重ねる)を丸くくりぬき、弁別用の枠にしてあります。穴を開けるために使用したのは電動糸鋸です。こうすることで、子どもは教材を「落とす」ことで弁別できるようになり、こどもの負担が大きく軽減されます。
(本校支援部)
224 3×3円柱入れ
220、221で紹介した円柱入れをさらに発展させたものです。3×3。ここまでくると、必要とされる子どもの空間把握力は相当なものになってきます。
また、221で紹介した3×2の円柱入れですが、2つ並べて、「見本と同じように入れる」位置把握の課題としても用いることもできます。ここで、円柱が枠に完全に埋まりこんでいるということが重要です。円柱が「入っている/入っていない」ということを、触って確かめやすくなるからです。
(本校支援部)
223 具体物の型はめとその選択
皿、はさみ、スプーンなど、身近な具体物を型はめ化したものです。それぞれ、具体物がぴったりと入るだけの高さになるように、土台の高さを調整してあります。
この教材は単に「型はめ」として用いるだけでなく、視覚障害のある子の「選択」のための教材としても考えています。つまり、「お皿を取って」「はさみを取って」などと言われても、子どもにしてみると「選ばなければならない」ということが曖昧です。そのため、具体物を型はめ化し、「この枠に入れるものを選ぶ」と活動の目的を明確化することにより、子どもの「選ぼう」とする意欲を引き出すことができます。
(本校支援部)
222 3×2円柱入れ
前回紹介した円柱入れの発展版になります。3×1で終わらず、奥行きを追加して「3×2」の円柱入れになっています。
横置きにして使うことを想定していますが、縦置きにした場合、2×3となります。こうすると「点字」と同じ配置になります。視覚障害のある子の、点字の習得に向けた基礎教材としても考えています。
(本校支援部)
221 2×1 3×1円柱入れ
直径40mm、高さ40mmの円柱を用いた教材です。厚さ5mmのMDF板を8枚重ねて、土台にしています。「206ボール落とし(5連)」などよりも、より細やかな手指の操作が必要となります。
ペグの高さと土台の高さがそろえてあるため、ペグがぴたりとはまりこみます。そのため、見え方につまずきがある子も、「ここに入れた」「ここに穴がある」ということを、触って確かめるということがしやすくなります。この教材は、横に入れていく数が増えれば増えるだけ、難易度が上がっていきます。
(本校支援部)
220 〇の型はめ用ガイド
218と同様、子どもが型はめをしやすくするための工夫になります。手が動かしにくい子の場合、枠の中央にペグを持って行くのが大変で、枠から落としてしまったり、頑張れば頑張るだけ全身の緊張を強めてしまったり…ということがあります。
ガイドの第1弾としては、枠を入れ子状にして、ペグが落ちないようにします。入れ子状にすると枠そのものが重くなるので、安定するという効果もあります。
そしてさらに、もう一つのガイドを追加します。枠の面を限定することで、子どもが穴に向けて手を動かしやすいようにしていきます。このように子ども一人一人の、その時の状況に応じた支援を行うことで、子どもの「できた」「やってみよう」という気持ちを引き出すことができます。
(本校支支援部)
219 中心に支柱の入った、正三角形の型はめ
今回紹介するのは、中心に支柱が入っているため、「ぐるぐる回していれば、いつかは入る」正三角形の型はめです。
「型はめパズル」は子どもにとって「はまった」「できた」ということが分かりやすい教材ですが、手を動かしにくい子にしてみると、入れようとしてもなかなか入らない…ということがあります。今回紹介する型はめの場合、「ペグがどこかに行ってしまう」ということがなく、少しの操作で型にはまりこみます。そのため、これならできる!と子どもの主体的な手の動きを引き出しやすい教材になります。
なお、中心に支柱を入れる型はめは、どの図形でもできるというわけではありません。正円ではできませんし、正方形も難しいです。やはり正三角形、あるいは長方形が向きます。
(本校支援部)
218 枠に完全に埋まりこむペグさし/弁別用
前回の続きになります。ぴったりとはまりこむペグさしですが、これをさらに発展させたものが円柱と、角柱のペグさしです。形の2択になります。いずれも高さは5センチ、穴の深さも5センチで、ぴったりとはまり込みます。また、円柱と角柱の大きさを調整してあり、円柱は丸い穴に、角柱は四角い穴にしか入らないようにできています。
形の弁別ということであれば、わざわざペグさしにしなくとも、型はめパズル(下の写真は厚さ1センチでピッタリとはまるもの)で十分ではないか、と思われるかもしれません。
しかし子どもによっては1センチくらいの深さでは「はまった」感覚が足りず、活動が「終わった」とわかりにくく、一度はめたものをまた取ってしまうということがあります。ペグさしのように深さ5センチともなれば「入れた」感覚、「終わった」という理解はより明確になります。そのために用意している教材です。
(本校支援部)
217 枠に完全に埋まりこむペグさし
肢体不自由の特別支援学校には身体の動かし方が苦手な子どもたちが在籍していますが、「見え方」についてもつまずきのある子どもたちがいます。さて、「ボールを落とす」「型はめをする」といった学習を行う場合、基本的には「見て」できたかどうかということを確認していきます。
しかし、見ることそのものが難しい子どもの場合、どうでしょうか。見ることが難しいわけですから、この場合は「触って」確認することになります。
ところが、多くの教材には凹凸があり、触っただけではなかなか「入っている/入っていない」「まだある/もうない」といったことが確認しにくいということがあります。
そこで、ペグさしなどでは、土台の穴の深さをペグと全く同じにしてしまいます。そうすると全部入れ切ったときに教材の表面の凹凸がなくなり、できたかどうか、こどもが自分で触って確かめやすくなります。
(本校支援部)
216 ステンレスのボウルを入れたダストボックス
例えば、プラスチック製のボール(『くるくるチャイム』で用いるもの)を入れるとして、「布袋に入れる」のと、「金属製の缶に入れる」のとでは、どちらの方が子どもは「入った」ということに気づきやすいでしょうか。これはほぼ間違いなく、「金属製の缶に入れる」方が気づきやすいはずです。入れる際に音、振動といった結果が伴うためです。気づきすぎて、びっくりしてしまうかもしれません。
子どもが物を「入れる」ということを学習するにあたっては、この「自分の行動」とその「結果」がわかりやすいということ、すなわち因果関係が明確であるということが重要になります。そのためには同じ「ボールを入れる」ということであっても布製のボールよりもプラスチック製、木製、金属製のボールの方がわかりやすいです。また、箱の側としても、できるだけ硬い素材、そしてできるだけ深いものの方がわかりやすい、ということになります。深ければ深いだけ、落ちる際に勢いがつきます。
そうすると、昔ながらの金属製のダストボックスが候補としてあがってきます。しかし最近ではなかなか見かけませんし、子どもの手が触れる部分が金属だと、冷たさから子どもが手を引っ込めてしまうかもしれません。
そこで工夫したのがこの教材になります。百円均一の店で購入したプラスチック製のダストボックスの底に、同じく百円均一の店で購入したボウルを敷いてあります。ちょっとした工夫なのですが、子どもが見通しを持って手を使っていくための支援のひとつです。
(本校支援部)
215 多種多様な型はめ
これまでに紹介しきれなかった様々な型はめパズルです。同じ形をいくつも入れていくような型はめパズルは市販品を探すのも難しく、自分で作ってしまった方が早いようです。
これらの型はめにも、いくつかの明確なステップがあります。
・1個だけの方はめと複数の型はめでは違います。
これはパズルの量的な問題です。
・正多角形→左右対称→左右非対称で表裏がある→左右非対称で表裏がない では違います。
左右対称であればぐるぐると回していればいつかは入りますが、非対称の場合、表裏を間違ってしまうといつまでたっても入りません。これはパズルの、質的な問題となります。
正多角形のパズル
左右対称のパズル
左右非対称のパズル(表裏あり)※市販されているパズル
左右非対称のパズル(表裏なし)
教材の質と量を見極め、いま、その子に合っている教材を提示していきます。
(本校支援部)
214 色の箱 各色
学習していくうえで、意外と手に入りにくいのが赤、青、白、黄色などの「原色」の教材です。白、黒のものは手に入っても、その他の色が手に入りにくいですとか、パステルカラーのものはあるのだけれど…といったことがあります。
今回紹介するのは、色の箱です。色の弁別のほか、様々な用途で用いることができる、基本的な教材となります。市販されているとよいのですが、なかなか手に入りにくいため、自作されています。
教材のベースとなっているのは、百円均一の店で売っていた木箱です。サンダーや紙やすりで木目を整えた後、原色のアクリル絵の具を塗り、毛羽だった部分を紙やすりで削り…といった工程を幾度も繰り替えし、最終的にニスを塗っています。手間はかかるのですが、使用頻度の高い教材となります。
(本校支援部)
213 星の形の型はめ(大)
これまで〇、△、□。それぞれの大小。並び方の違いといったさまざまな型はめを紹介してきました。型はめパズルは市販品をよく見かけますが、「形が複雑すぎる」「枠が浅くて『入れた』感覚がつかみにくい」「選択肢が多すぎる」といったことから子どもにとって難しい課題になっていることがあるようです。ですので、一旦「〇だけ」「1つだけ」「深い」型はめに立ち戻り、丁寧に子どもの学習を整えていきます。
今回紹介するのは、星の形です。ここでは型はめのペグの形について紹介しますが、型はめのペグの難易度は、「〇」「△□のような正多角形」「ハートのような左右対称の図形」「左右非対象の図形」といった順で難しくなっていきます。楕円などは〇と正多角形の間に入るでしょうか。
星の形も正多角形の仲間で、星型正多角形となります。△や□もそうですが、それぞれの角に区別がないので、ぐるぐると回しているうちになんとなく枠にはまるということがあります。また、表裏の区別もないので、子どもがあれこれと試しているうちに裏返ってしまった、ということもありません。複雑な形に進む前に、順を追って学んできます。
また、型はめのペグは形も重要ですが、その大きさも重要となります。小さいペグだと指先での操作となりますが、今回紹介したものは約10センチの大きさになります。このくらいの大きさになると、自然と子どもの手首の動きが引き出されてきます。
学習の目的に応じ、教材の大きさも調整していきます。
(本校支援部)
212 電動台車
こちらは、自作の電動台車になります。
クッションチェアーに子どもたちが座り、スイッチを使うことで移動することができます。
スイッチは、押すと前に動き、離すと止まるようになっています。
実際に使用した子どもは、もともと手を使うことを嫌がっていましたが、これに乗るためにスイッチを押すようになったそうです。その後、手を使うことへの抵抗が減り活動の幅が広がりました。そして、自信に満ちた態度がたくさん見られるようになり、大きな声で意思表示するなどの成長が見られたようです。
自分で押せば動く、離せば止まるという、「自分の力でできる」ことが重要です。
(本校支援部)
211 絵本の立体化の工夫 その3
前回までは、絵本のキャラクターを積み木にしていく教材を紹介してきました。今回は、イチからぬいぐるみとしてつくりあげたものです。ぬいぐるみの中には大量のビー玉が入っていて、重みがあります。子どもたちは実際にぬいぐるみに触り、重みを感じる中で、「ぬいぐるみがそこにある」ということを学べます。
また、重みがあるため、ぬいぐるみを積み、倒したときの響きも、ドスンと、重みのあるものです。見る・聞くだけでなく、実際に触り、感じ、子どもたちは学んでいきます。
(本校支援部)
210 絵本の立体化の工夫 その2
前回の続きです。今回紹介するのは、これもみんなおなじみの絵本を立体化したものです。前回は立体化することで「表裏ができる」ことを生かした教材でしたが、今回は立体化することで「積み上げられる」ことをいかした教材になっています。
ぞう→かば→わに→かめ だけでなく、その逆といったように絵本のストーリーを再現することもできれば、オリジナルの積み方をすることもできます。
(本校支援部)
209 絵本の立体化の工夫 その1
前回、絵本のキャラクターの立体化を紹介しました。制作にあたっては、塗料の下塗り→紙やすりでなめらかにする→また塗料を塗る→また紙やすりで削る…という工程を幾度も繰り返して木の表面を整え、最終的に絵を描いていっています。
今回紹介するのは、塗装の仕方を工夫したものです。これもみんなおなじみの絵本のキャラクターですが、立体化することで表裏が発生することをいかし、表は無地のワンピースに、裏は花模様のワンピースにすることで、絵本の流れが追えるようにしてあります。
では、このパンダの裏側がどうなっているのかというと…。パンダ以外には秘密になっています。
(本校支援部)
208 図書コーナーと絵本の立体化
本校では、全長140メートルほどの中央廊下の中央、全校の児童生徒がもっともよく通る場所に、「図書コーナー」を設置しています。最新の絵本などを、子どもたちが手に取りやすくするためです。
季節ごとに様々な掲示が工夫されているのですが、絵本のキャラクターを立体化したオブジェも置かれています。MDF板を重ねて厚みを出し(25ミリほど)、電動糸鋸でくり抜き、塗装したものです。子どもたちの本への興味関心を引き出すためです。絵本を視覚情報として「見る」だけでなく、立体化することで実際に手に取れるようにする、触れるようにする、というのも重要です。
みんなおなじみのキャラクターを中心に、様々なキャラクターたちが図書コーナーのあちこちにいます。来校時には探してみてください。
(本校支援部)
207 ボール落とし(5連)改造版
206で紹介したボール落としの改造版になります。ボールを落とした先にシロフォンを敷き、♪コロンコロンと綺麗な音が鳴るように工夫されています。「ゴトン!」と大きな音を立ててボールが落ちるのもわかりやすいのですが、得意な音、苦手な音も子どもそれぞれに異なります。
今回の教材は越陽祭の学習発表の中で使われたものです。ちょっとした工夫で、子どもが自分自身で楽器を演奏することができます。
(本校支援部)
206 ボール落とし(5連)
176や177において、「ビー玉落とし」の教材を紹介しました。子どもにとって活動の終わりがわかりやすく、手の動きを引き出しやすい教材なのですが、なにぶんビー玉が小さくて、かなり細かい指先の動きを必要としました。
今回紹介するのは、「ボール落とし」です。教材の作り方は「ビー玉落とし」と同じなのですが、ボールは直径45㎜のもの(「くるくるチャイム」で使用されているもの)を使っています。ビー玉落としと異なり、指先の力を必要とせず、手全体で押し込むことができます。
また、ゴムの貼り具合により、微調整することも可能です。ゴムをたくさん貼り、落とす際の「手ごたえ」を強調することができます。また、ボールが落ちるか落ちないかのギリギリの状態にし、子どもの手がボールにあたっただけで落ちるようにすることもできます。
子どもにとって自分の手の動きとその結果(因果関係)がわかりやすく、活動の目的(終点)もわかりやすいため、非常に意欲的に取り組める教材になります。次のボールへ、次のボールへと手を伸ばす中で、自分の身体の中央(正中線)を越える手の動きを目指していきます。
(本校支援部)
205 スピーテン
今回は市販の教材の紹介になります。市販の教材とは言いますが、現在は廃番になっているようです。
色分けされた半球を棒に通し、用紙の見本通りに再現していきます。目で見て状況を捉え、記憶し、手を使って再現する学習になります。ここで注意したいのは、教材が立体(3次元)であるのに対して、用紙の見本が平面(2次元)である、ということです。子どもはここで、「2次元の情報を3次元に変換する」ということを行っているのですが、紙に書かれたものを実物で再現するというのは意外なくらい、難しいものです。このあたりは、「地図(2次元)を見ながら移動する(3次元?4次元?)ことの難しさ」などに通じてきます。
そこで、必要な場合には同じ教材を複数用意することで、まずは「実物の見本を見て実物を再現する」という、3次元同士の学習から行い、「2次元の情報を3次元に変換する」ことに向かっていきます。一人一人の子どもがどこにつまずいているのか、丁寧に確認しながら学習を進めていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
204 ボール入れ 平面 枠あり 方向づけあり(長い距離)
前回紹介したものの続きとなります。前回紹介した教材は、ボールを転がし始める位置(運動の始点)からボールを落とす位置(運動の終点)までの距離が、およそ20センチでした。今回紹介しているものはその倍、約40センチの距離になっています。「距離が倍になっている」ということは、ボールを転がすという運動を2倍、持続させる必要があります。距離が伸びたということは、時間的にも運動を持続させる必要があるということです。また、「ここまでボールを転がしていく」という見通しについても、20センチの時よりも40センチの方が難しくなります。
これは距離が伸びれば伸びるだけ難しくなりますし、方向転換などが伴えば、さらに難しくなります。なお、作成にあたっては2つの箱をそれぞれ切断し、連結しています。中に入っているのはA3の板(45センチ×30センチ)を横に長く切ったものを、5枚重ねたものです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
203 ボール入れ 平面 枠あり 方向づけあり
186や、前回に紹介したボール入れと同じ要領で作成されている箱入りのボール入れの教材ですが、それぞれ目的がだいぶ異なります。
これまで紹介してきたものが「入れることを学ぶ」ための教材、「並べることを学ぶ」ための教材だとすれば、今回は「方向づけることを学ぶ」ための教材となります。
の大きな穴があります。ボールを落とすためには、大きな穴がある方向に向けて手を動かす必要がありますし、持続して動かし続ける必要があります。
これが例えばスイッチ教材などであれば、そのボタンをその場で、一瞬触ればよいかもしれません。しかしこの教材の場合は、特定の方向に向けて操作し続ける必要があります。運動の持続が求められるわけです。このあたり、「ボール入れ」の教材ではあるのですが、「輪抜き」などと目的が重なるものになります。そして輪抜きの場合は腕を持ち上げる必要がありますが、ボール入れにすることで、子どもの負担が少なくなります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
202 ボール入れ 平面 枠あり 2連/3連
186で紹介したボール入れの続きになります。百円均一で売っている箱を塗装し、その中に箱の内径のサイズに切ったMDF板を5枚重ねて入れています(深さは25ミリ)。使用するボールが45mmですので、このくらい深いと「穴に落ちた」ということを、子どもが実感しやすくなります。
何度か紹介してきましたが、筒へのボール入れのように「縦に連続して入れる」のと、「横に並べて入れる」のとでは、横に並べて入れる方が圧倒的に難しいです。
また「横に並べて入れる」となると、円柱状のペグ(前回201「アクリル棒さし(大)」で紹介したもの)を横に並べて入れる、金属製のリベットを並べて入れる、木工用のダボを並べて入れる、といった教材を見かけます。しかし、それら「長いもの」は子どもの手の中で扱いにくいことがあります。だからこそ練習のために取り組むことがあるのですが、ここでは手にスポリとおさまる、球を使っています。
しかし球だとゴロゴロと転がっていきかねません。そのため、箱の中に教材を固定することで、子どもが活動しやすいよう、子ども自身が工夫しながらやりきることができるようにしています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
201 アクリル棒さし(大)
11で紹介した「アクリル棒さし」の別バージョンとなります。アクリルの棒を入れる面をあえて広く取り、目と手の学習が深まるようにしています。使っているアクリル棒は、白が直径25mm長さ50mm。黒が直径15mm長さ50mmです。こういった特定のサイズのものは市販されていないので、業者に発注しています。→詳しくはお問い合わせください。
なお、ここでは太い棒を白、細い棒を黒というようにサイズごとに色を分けています。色の違いに気づきかけている子は、それが太さを見分けるヒントになります。
一方、子どもに合わせて難易度を調整していこうとすると、「難しくするのであれば」すべての棒を同じ色にするということが考えられます。また「易しくするのであれば」太い方だけ先に渡す(細い棒の穴には入らないのでミスがなくなる)、一本ずつ手渡す、といったことが考えられます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
200 野菜の水切り
この「本校の教材教具」コーナーも、ついに200回目を迎えました。200回目ということで紹介するのは、「野菜の水切り(サラダスピナー)」です。機械の目的外の使用になるのでご注意ください。
野菜の水切りの中には、子どもの好きなフィギュアなどを入れます。そしてボタンを押し込むと、フィギュアがぐるぐると回っていきます。意外なくらい、子どもが興味を持って活動することの多い教材となります。
子どもの目の使い方は、「動きや光」などを受け止める『周辺視』から、「色や形(いずれは文字や数)」を見分けていく『中心視』へと発達していきます。この野菜の水切りの活動は、そのうちの周辺視に焦点をあてたものです。詳しくは、「62ハンドスピナー」の記事をご確認ください。また、目の使い方の学習であると同時に、「押す」「動く」という因果関係の学習ともなります。
なお、野菜の水切りにはハンドルを回すタイプもあります。この辺だと、肘を中心とした身体の動かし方の学習ともなってきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
199高さによる数量の教材(積み重ねる)
今回紹介するのは、数量を並べる教材になります。185「高さによる数量の教材(棒に通す)」とほぼ同じコンセプトの教材となりますが、185が棒に教材を通していたのに対し、こちらは積み上げています。どちらの方がやりやすいかは、子どもによるでしょう。なお、使用している木材は正方形です。「棒に通す」のであれば円形でも大丈夫なのですが、こうやって積み重ね、並べていくとなると、正方形の方が並べやすいです。
185と同様に、5は5として固め、5のまとまりが意識できるようにしています。1、2、3といったところもそれぞれ接着していて、「5と1で6を作る」「5と3で8を作る」といった「5といくつ」で数を捉えるということが意識しやすくなっています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
198 横に長い輪抜き
これまで「4」「73」「159」「160」回で『輪抜き』の課題について取り扱ってきました。それらのほとんどが縦方向の輪抜きでしたが、子どもによっては横方向の方が手を使いやすい、という場合もあります。今回紹介するのは、横方向の輪抜きです。
この写真のように、縦方向の輪抜きは、使う棒を高くすれば高くするだけ高くなります。ある程度土台を作ってしまえば、安定感もでます。しかし、横に長くしていくと、そうはいきません。棒を伸ばすと、重心がずれて、簡単に倒れてしまいます。倒れないように大人が支えていれば大丈夫かもしれませんが、できれば子どもが自分の力でやりきってほしいところです。そこで、ここでは土台となる木に棒を貫通させ、横の長さを調整できるようにするとともに、伸ばした方と反対側に重りをつけることで、倒れないようにバランスをとれるようにしてあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
197色と形、半立体のマトリクス
これまでも「色と形」という2つの属性を組み合わせる表(マトリクス)の教材を紹介してきました。3×3、4×3、4×4、5×5など様々なものがありましたが、それらは基本的に50ミリ四方の木に、ラミネイト加工したものを貼り付けたものでした。
今回紹介するのは、若干視点が異なり、〇△□、そしてハートと星の形について、半立体の具体物をペグとして用いるものです。色合いをそろえるため、塗装には同じ絵の具を使用しています。また、ハートと星の形は適当な木片が見つかりにくいため、市販されている2ミリ程度の薄さのものを数枚貼り合わせて厚みを出し、それを塗装することでペグにしています。
従来の、印刷した絵が貼り付けられているものと、今回の教材とではどちらがやりやすいでしょうか? 目が見えにくく、形が捉えにくい子どもにとっては、今回の教材の方が「触って形がわかる」ために取り組みやすいかもしれません。一方、手を持ち上げにくい子どもにとっては従来の教材の方が、「すべらせて操作できる」ためにやりやすいかもしれません。これも、ケースバイケースになります。多様な子どものニーズに応じるために、同じ内容であっても、様々な教材を用意しています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
196〇だけの型はめ(大)
178で「〇だけの型はめ(小)」を紹介しました。今回紹介するのは、「〇だけの型はめ(大)」になります。「小」「大」と言っていますが、「小」が直径40ミリ、「大」が直径80ミリです。こういった極端にシンプルな教材はまず市販されておらず、自作する必要があります。
ペグの直径が倍になると、体積や重さは大きく変わります。子どもにとっては小さい方がやりやすいかもしれませんし、逆の子もいるでしょう。
さらに、ペグの厚みの違いによっても、子どもの達成度は変わってきます。ここでは10ミリ、20ミリ、30ミリを用意しています(厚さ10ミリの板を1~3枚重ねて塗装)。大きくて薄い、小さくて厚いなど、どれが子どもの手になじむかはケースバイケースです。どの教材にも言えることですが、一人一人の子どもに合わせていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
195 ラジカセ(+ウゴキんぐ)
前回、ラジカセを紹介しました。機能がシンプルなこと、ボタンの数が限られていることも、子どもが学ぶ上ではメリットとなります。しかしながら、それでもボタンがいくつかあり、ラジオも聞くことができ、複雑といえば、複雑です。
そこで、ラジカセとコンセントとの間に、「ウゴキんぐ」をはさみます。「ウゴキんぐ」はコンセントにつないで使う、あらゆる電化製品をスイッチ化することができる機械です。
ここで肝心なのは、「ウゴキんぐ」で制御できるのは、「電流のON/OFF」だけである、ということです。したがって、「コンセントにつないだだけ」で動き始める機械でなければ意味がありません。例えば、最近のTVをスイッチ化しようとしてもうまくいきません。
スイッチ化しやすいのは、コンセントにつないだだけで動かせる機械。すなわち、掃除機ですとか、ミキサーですとか、そういったものになります。ラジカセもそのひとつで、「再生ボタンを押したまま」「早送りボタンを押したまま」で固定できますので、手ごろに、扱いやすいスイッチ教材となります。
これらは、CDやデータで行おうとしてもできません。ラジカセだからこそできることです。なお、その他の機械はというと、「掃除機」「ミキサー」のほか、「扇風機」「電動のマッサージ器」などが教材にしやすいでしょう。昔ながらのトースターも使えるかもしれません。すなわち、アナログの、コンセントにつないだだけで動く機械です。
(本校特別支援教育コーディネーター)
194ラジカセ
ラジカセを身近で見なくなって久しくなりました。カセットテープからCD、MD、データ、配信と、学校の授業で使われる音源も時代とともに変わってきました。今回はだいぶ昔に使われなくなった、「カセットテープ」そして「ラジカセ」を教材として扱うことを紹介します。ちなみにですが、ラジカセはいまでも新品が売っています。カセットテープも市販されています。
ラジカセ(カセットテープ)と、CDやデータとでは何が違うでしょうか? 大きな違いは2つあります。1つには、音を止めても、また続きから音楽が始まるということです。当たり前のことのようですが、CDやデータではこうはいきません。曲を飛ばしたり、止めたりしているうちに、何がどの曲だったのか、どこがどうつながっているのか、よくわからなくなってしまいがちです。もう一つは、ボタンがアナログであるということ。再生ボタンや停止ボタン、早送り、巻き戻しボタンを押したときに、力強い手ごたえ(固有感覚への入力)と音がする、ということです。液晶の画面を触れるのとは比較にならないくらいの、強いフィードバックが返ってきます。これらの理由から、子どもによっては、「ボタンを押したら音楽(や声)が流れる」「何をしたらどうなる」ということの因果関係を学ぶ、非常によい教材となります。
テープの爪は、折っておきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
193洗濯ばさみを練習するための土台
あらかじめ挟まれていた洗濯ばさみを取る、あるいは洗濯ばさみをはさむための土台となります。ブックスタンドの形にMDF板をくりぬき、挟み込む形で接着してあります。こうやって土台を安定させることで、子どもが片手だけで洗濯ばさみを扱うことがしやすくなります。土台が揺らいでしまうと、操作どころではかくなってしまいます。
なお、洗濯ばさみそのものも、子どもにとって開きやすいもの、開きにくいもの、さまざまです。どれが良い、悪いではなく、子どもによって適切なものが異なります。
また、子どもが洗濯ばさみを抜く/挟む際、力任せに引っ張ってしまって、実際には洗濯ばさみを開いていない、ということもありがちです。そんな時は、養生テープなどを用い、土台にふくらみを持たせると効果的です。子どもが洗濯ばさみを引っ張ろうとしたり、押し込もうとしたりしても、洗濯ばさみに力を入れない限り、うまくいかなくなります。ちょっとした工夫で、「今できることの、一歩先」の課題を設定できます。なお、今回は土台を駆使してブックスタンドを固定していますが、同様のやり方で、様々なものを固定することができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
192長方形の型はめ 6連 ランダム
前回の続きになります。「長方形だけの型はめ」に続くものとしては〇△□同様に2連、3連にといったことが考えられますが、長方形ともなると、すでにかなり「図形を見分ける」「手を操作する」力が育っていることが想定されます。そこで、今回紹介するものは一気に6連。しかも図形の方向を、あえてランダムにしてあります。こうすることで、長方形だからこそ、多様な角度で手首を動かす必要性が生まれます。
型はめパズルというと、算数科の内容として、図形の学習に向けたものと思われがちではないでしょうか。しかし設定の仕方によっては、日々の生活動作の向上に向けた、手首の使い方を学ぶための教材ともなります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
191長方形の型はめ
178「〇だけの型はめ(小)」179「△だけの型はめ」「□だけの型はめ(小)」では、円、正三角形、正方形の型はめを紹介しました。これらは、〇△□の違いはあれど、いずれも重心が図形の中心にあるという特徴があります。
「三日月の形」のような図形と異なり、入れやすいのです。
「〇△□」と「三日月」のような図形との間には大きな難易度の差があります。その間に位置するのが、星の形や、今回紹介する長方形、すなわち直方体の型はめになります。
長方形の場合、正方形と違って、入る方向が限定されます。正方形は「ぐるぐる回して」いると、なんとなく入ってしまうということがありましたが、長方形の場合はかなりじっくりと方向や角を見分けないと、型に入りません。
〇△□、正六角形、長方形、正ではない六角形、星の形、三日月の形など、世の中には様々な図形があります。大人からすると、どれも似たもののように感じてしまうかもしれません。しかし子どもからするとそれら一つ一つの間に、大きな難易度の差があるのかもしれません。子ども一人一人の今の力、次の課題を見据えながら、丁寧な支援を行っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
190重みのあるぬいぐるみ
前回「ウェイトブランケット」で紹介しましたように、固有感覚への入力、圧迫、重みといったものは、子どもの気持ちの安定や、運動発達に大きく影響していきます。一方、ウェイトブランケットも便利なのですが、金額的なことや、重すぎて取り扱いが難しいといったことが気になります。
そこで、今回紹介するのは、古くなったぬいぐるみをリメイクするという方法です。様々なやり方があると思いますが、ここでは一度お腹を切って綿を取り出し、大型のビー玉を入れたゴム手袋をいくつも入れたうえで、再度綿を詰めています。
ちょっとした工夫で、子どもが膝に抱えやすいぬいぐるみになります。子どもが側臥位になる際に、背中にあてるといった目的でも使われます。
※重みのあるぬいぐるみは、市販もされています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
189ウェイトブランケット
人には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など様々な感覚があり、それぞれが重要な役割を果たしています。その中でも姿勢・運動ということになると、「視覚」「前庭感覚」そして「固有感覚」がポイントとなってきます。「固有感覚」というと聞きなれないかと思いますが、自分の手足がどう曲がっているか、動いているか、どのくらい力が入っているかということ。すなわち筋肉や関節の状態をモニターする感覚となります。
この感覚が整っていないと、そもそも自分の身体がどうなっているのか、どのように動いているのかがわかりにくいということですので、寝返りをする、座る、立つといった様々な場面に影響していきます。また、固有感覚を感じにくいということは、自分の身体がふわふわとしてしまうということ、極端に言うと「自分の身体がそこにある」ということに気づきにくいということでもあるようです。結果、気持ちもふわふわと落ち着かないものになっていきがちです。
今回紹介するのは、ずっしりと重いブランケット、すなわち「ウェイトブランケット」です。人は、誰かにぎゅっと抱きしめられると落ち着いたり、自分で自分の身体を抱きしめることで落ち着いたりすることがあります。固有感覚と、子どもの情動とが密接に結びついているからです。
子どもとの関わりの第一歩はぎゅっと抱きしめてあげること…なのですが、いつも抱っこというわけにもいきませんし、触覚や前庭感覚が過敏で、抱っこが苦手という子もいます。ほんのささいなことなのですが、座っているときにウェイトブランケットなどで膝の上に重みがかかることで、気持ちを落ち着けて活動できるという子どもがいます。うつ伏せ時に、腰のあたりに重みが加わることで落ち着く子どももいるようです。なお、似たような目的のものとして、「重量のあるベスト」なども市販されています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
188〇だけの型はめ 4連 5連 ランダム
前回紹介したのは、〇だけの型はめの3連まででした。今回はさらに穴の数を増やしたものを紹介します。なお、〇だけの型はめ/〇だけの型はめ(2連)/〇だけの型はめ(3連)はそれぞれ難易度に大きな違いがありました。〇だけの型はめならできるけれど、2連になったら難しくなる。2連までならできるけれど、3連になると、急に難しくなる。そんなことがありました。
しかし3までをクリアすると、その先の4連、5連といった課題は一気にクリアしていくケースが多いようです。むしろ、このあたりからは「全部入れればそれで終わり」ではなく、「左端から順に入れていく」といった、数の学習の基礎としての要素が加わってきます。
穴の位置をランダムに配置した教材もあります。〇だけの型はめが「点」。前回と今回消化した2連、3連、4連、5連の教材が「線」的に空間を捉えるものだとすれば、ここでは「面」としてとらえていくことになります。シンプルな「〇だけの型はめ」ですが、一人一人の子どもの課題に合わせた、様々なねらいがあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
187〇だけの型はめ 2連 3連
178「〇だけの型はめ」は非常に基本的な学習ですが、では、そのあとはどこに続いていくでしょうか。例えば、〇ができたから□、□ができたから△といった方向性があります。また、型はめのペグのような円盤状のものから、電池のような円柱状のものを入れるようにしていく、といった方向性もあるでしょう。この場合、だんだんと入れるものを長くし、いずれは棒を筒に入れるような力をつけていきます。
そして今回紹介するのは、1枚の「〇だけの型はめ」ができたところで、2枚の型はめ、3枚の型はめへとステップアップしていく教材です。
これは、一見すると簡単に見えるかもしれません。「〇だけの型はめ」ができたのであれば、2枚になっても、3枚になっても違いがないように見えるかもしれません。しかし実際のところ、同じようにボールを入れる課題であったとしても、「縦に5個入れる」ことと、「横に5個入れる」のとでは難易度が大きく異なります。横に入れていく方が圧倒的に難しいです。活動に空間的な広がりが生まれるからです。
今回紹介した教材も同様です。1枚の「〇だけの型はめ」ができることと、2枚の「〇だけの型はめ」ができることとの間には、大きな違いがあります。なお、2枚できることと、3枚できることの間にも大きな違いがあるようです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
186ボール入れ 平面 枠あり
3「鉄球入れ」95「筒入れ課題のバリエーション」でも紹介しましたが、「ボールを入れる」というのは非常に重要な学習となります。市販の玩具で言えば、「くるくるチャイム」といったあたりです。しかしながら、「ボールを持ち上げて」「入れる」という、その動きそのものが難しい、という子どもたちもいます。空間の中の一点(穴の位置)をねらうというのは、ことのほか難しいものです。
そのためくるくるチャイムの入り口をセロテープ等で狭くし、ボールを固定する、という支援の仕方があります。こうすることで、手にちょっと力を入れれば、ボールを押し込むことができます。
その次のステップとして用意したのが、今回の教材です。百円均一の店で売っていた箱を枠として使用します。その中に、箱の大きさに合わせてカットしたMDF板(厚さ5ミリ)を5枚重ねて入れてあります。MDF板には、直径50ミリの穴を開けてあります。こうすることで、「ボールを入れる」という活動が、平面上の活動になります。手の動きとしても子どもの負担が軽減されます。また、箱が枠になっているため、ボール等が転がっていってしまうことが少なくなります。
178「〇だけの型はめ(小)」の一歩手前くらいの課題になるでしょう。
(本校特別支援教育コーディネーター)
185高さによる数量の教材(棒に通す)
前回紹介した「数量のマトリクス改」と同じ発想による教材となります。棒をさらに高くし、10までの数量に対応できるようにしてあります。なお、形の要素を加えて3×10くらいまでのマトリクス化することも可能でしたが、今回は1×10の、数量に特化したシンプルな教材にしてあります。
棒については、直径8ミリ、長さ120ミリのアクリル棒を使用しています。教材の強度、子どもにとっての見えやすさといった観点から、白いアクリル棒にしました。なお、棒のカットは業者に発注しています(詳しくはお問合せください)。土台となる板は3枚重ねで、もう一枚の板で底をふさいであります。なお、棒の長さは115ミリでぴったりとなりますが(板が1枚5ミリで3枚分、積み木が1枚10ミリで最大10枚)5ミリ分の余裕を持たせてあります。
似たような市販の教材もあるかと思いますが、それらはおそらく「1から10までの数量を順番に並べる」ものかと思います。この教材は表札を自由に入れ替えることができるため、より多様な学習を行うことができます。また、「5」をまとまりとして接着し、黒く塗り分けているのもポイントです。「『5が区切りの良い数である』ということの理解」「『5といくつ』で6から9までを捉える」ということは数量を学習する上で非常に大きなことですが、あらかじめ「5」をまとめておくことにより、そこが自然に学べるようになっています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
184数量のマトリクス 改
数量と形のマトリクスにつきましては、23「色と形以外のマトリクス」で紹介しました。ここではすいか、みかん、りんごを用いていますが、〇△□のもの、キャラクターの絵を用いたものなどのバージョンがあります。
これらの数量のマトリクスについてですが、そのメリットは大きい(少ない動きで学習できる等)ものの、本当にこれらで数量の理解が深まるのだろうか?という疑問もありました。そこで、改良を加えたのが以下の教材になります。
「5でぴったりになる」棒を3×5に配置し、〇△□の積み木に穴を開けて棒に通せるようにしてあります。この棒はいわゆるダボで、直径8ミリ×長さ60ミリ。各積み木は厚さ10ミリで、〇が直径40ミリ、△が一辺45ミリ、□が一辺40ミリです。それぞれ中央に直径10ミリの穴を開けてあります。結果、高さを駆使することにより、数量を感覚的に掴みやすい教材となりました。また、似たような市販の教材もありますが、マトリクスの中に組み込んだために、「表札」の位置を自由自在に変えることができます。さらには手をたくさん使うため、手の使い方の練習としても効果的な教材となりました。
一方、メリットとデメリットは表裏一体とも言えます。手の使い方がとても苦手な子どもにとっては、扱いにくい教材ともなりました。この新型の数量のマトリクスがよいか、それとも従来通りの高さのない数量のマトリクスがよいか、それらは子ども一人一人によって、学習の目的によって変わってきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
183木の塗装の仕方 その2
前回の続きです。木を絵の具で塗る(毛羽立つ)→紙やすりで削る→再度絵の具で塗る、という過程をたどることにより、なめらかに塗装されたはずです。ただ、そのままでは子どもが触ると絵の具が落ちてしまいますので、ニスで保護していきます。ニスは透明なものを用います。
④ニスを塗る
刷毛を用い、ニスを塗っていきます。①~③の過程を丁寧に行っていると、ニスが木になじむはずです。片面に塗って乾いたら、もう片面を塗ります。
⑤ニスを紙やすりで整える
ニスを塗ったままだとべたべたしてしまうので、ニスが完全に乾いたところでニスの表面を削ります。削りすぎるとニスが全部はがれてしまうので、程度にやすりがけをします。
このように、木の塗装にはかなりの手間がかかります。水性塗料を使っている以上、どうしても毛羽立ちが多くなります。質感が気になる際は、とにかく紙やすりで削っていきます。④ニスを塗る⑤紙やすりでけずる過程も、繰り返すとさらに丁寧に木が保護されていきます。
百円均一の店の絵の具、ニスといったものを使うだけでも、これだけ塗り分けることができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
182木の塗装の仕方 その1
木は適度な重さがあり、子どもにとっても「自分が操作している」ことに実感を持ちやすい素材です。一方、木製の土台に木製のペグだと見えにくいため、ペグを白や黒に塗りたくなります。また、色の弁別といった課題に取り組むためには様々な色に塗り分ける必要があります。そんな時、木を塗装したいということになるのですが、白木のままだと表面がつるつるしていたはずなのに、塗装したとたんにざらついてしまうということがあります。「毛羽立つ」という現象で、毛羽立った上からニスを塗ったとしても、うまくいきません。塗料の水分が木にしみこみ、それが蒸発する際に木の繊維を立ち上げてしまっているのだそうです。
この現象を解決するには解消には様々な方法(専用の塗料を使う等)があるようですが、ここでは百円均一の店でも簡単に手に入る道具で解決する方法を紹介します。まず、塗る塗料は、アクリル絵の具で構いません。
①とりあえず絵の具を塗る
紙やすりでざっと表面を整えたあと、水はほとんど用いず、絵の具そのままで塗り込んでいきます。片面が乾いたら、もう片面を塗ります。絵の具が乾くと、表面がざらざらとしてしまい、とてもではないですが教材として使えないはずです。ここではそんなに丁寧に塗る必要はありません。
②紙やすりで絵の具をそぎ落とす
非常に手間がかかるのですが、ここがポイントとなります。ざらつきがなくなるまで、絵の具をそぎ落とします。
③再度絵の具を塗る
もう一度、絵の具を塗ります。今度はできるだけ丁寧に、ムラがないように塗っていきます。ここでも、水は用いず、ほぼ絵の具の原液のままで塗っていきます。写真では最初に塗った時との違いが分かりにくいかと思いますが、なめらかさが違います。次回に続きます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
181型はめパズルの作り方 後編
前回の続きになります。
④ふちどったところに、電動ドリルで穴をあける
電動糸鋸の刃を通すためです。糸鋸の刃のサイズにもよりますが、直径8ミリほどの太さのドリルであければ十分でしょう。なお、くりぬいた部分をペグとして利用する予定がなければ、中央に穴を開けてしまって構いません。また、ドリルで穴を開ける場合は下に不要な木を敷いておきましょう。そうしないと、穴を開ける際、木の下側の状態が悪くなってしまいます(バリができる)。
⑤穴を開けたところに電動糸鋸の刃を通す
ちょっと難しいですが、穴に刃を通したうえで、機械に固定します。この辺は用いる機械により、固定の仕方が変わります。
⑥線にそって、電動糸鋸でくりぬく
線に沿って一周します。慣れていないと、線にそって切ることや、△や□を切る際の方向転換が難しいでしょう。何度か練習したうえで挑戦してみてください。
⑦黒い色画用紙をラミネイト加工したものをはさみ、もう一枚の板を底にして接着する
木のままでも構いませんが、土台の枠の中を黒くすると、子どもが枠の存在に気づきやすくなるとともに、教材としての質感が一気にあがります。大きな手間ではないので、おすすめするポイントです。
なお、ここでは〇△□の木を用いました。しかし、たとえばスプーン、はさみなど、身近なもの、どんなものであっても、それをふちどり、くりぬいてしまえば、型はめパズルとすることができます。また、同じ要領で様々な教材を木に固定することができます。テープカッターなど、「教員が押さえていなければ扱えなかった」ようなものを子どもが一人で扱えるようになったりすることもあります。ちょっとした工夫で、子どもの可能性は広がっていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
180型はめパズルの作り方 前編
前回、前々回と紹介してきた型はめパズルですが、その作り方を具体的に紹介します。必要なものは材料となる木と、電動糸鋸(と刃)ハンドドリル(と直径8ミリ程度のドリルの刃)になります。これらを自前で用意するのは大変かと思いますが、大型のホームセンターなどではDIYのコーナーが設置されているところもあります。なお、電動の器具を用いずに作成することは不可能ではないかもしれませんが、かなり難しいでしょう。はさみ、カッターで作成したい場合は、木ではなく、スチロール製の素材を用います。磁石を埋め込んで重くするといった工夫もできますが、耐久性や質感を考えると、できるだけ木を用いたいところです。
まず、土台となる板を用意します。ここでベースとしているのは百円均一の店で売っている、A3サイズのMDF板です(お店の種類により、同じ「MDF板」でも質感や厚さに違いがあります)。
①MDF板を半分に切ってA4サイズにする
A3サイズのままだと大きすぎるので、半分に切断します。場合によってはA3のままで用います。なお、電動糸鋸よりも正確にまっすぐ切断できる機械はありますが、最初は電動糸鋸を用いる方がよいでしょう。〇や△にくりぬいていく際の練習にもなります。電動糸鋸の刃には「直線切り用」と「曲線切り用」があるので、使い分けます。
②A4サイズになったMDF板を貼り合わせる
もとのままだと厚さは5ミリですが、これだと型はめに加工しても「はまった」感覚がわかりにくいです。市販されている、多くの型はめパズルが扱いにくい理由がここにあります(そのほか、選択肢が多すぎる、形が複雑すぎる等の理由もある)。土台の厚さを10ミリにすると、かなり「はまった」感覚が強まります。これは板が厚ければ厚いだけ「はまった」感覚が出やすいのですが、あまり厚くすると、ペグがはまりにくくなってしまいます。この辺はケースバイケースになります。
③買ってきたペグを土台に置き、先が丸くなった鉛筆でふちどる
ここが重要なポイントです。型はめパズルを自作する際、木を〇、△、□にくりぬき、それをサンドペーパーなどで削ってペグとして利用しようとすることがあります。しかしながら、それだとうまくいかないということはないでしょうか。実際、正確に丸く、三角に、四角に切るというのは極めて困難です。そして正確な〇△□でないと、「この方向だと入る」「この方向では入らない」ということが起こってしまいがちです。おすすめするのは、「ペグとして用いるものは市販品を用い、土台だけを作成する」ことです。
では、どうやってペグとなるものを購入するか? 〇の木、□の木は、ホームセンターでも売っているでしょう。しかしながら△の木というのは、ほとんど見かけません(□を半分に切った直角三角形はよく見かけます)。これは通販で探すか(詳しくはお問い合わせください)、市販の積み木セット、型はめパズルのものを流用する、といったことが考えられます。
なお、「先が丸くなった鉛筆」でふちどるのは、ある程度枠に余裕(遊び)がないと、ペグが入らないためです。あまり余裕がありすぎても「はまった」感覚が薄れてしまいます。この辺の加減は、非常に難しいところです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
179△だけの型はめ □だけの型はめ(小)
前回の続きとなります。前回紹介したのが「〇だけの型はめ」ですから、今回は「△だけ」「□だけ」の型はめとなります。なお、「まる さんかく しかく」とは言いますが、子どもにとって取り組みやすい順序は、ほとんどの場合「〇→□(正方形)→△(正三角形)」ということになるようです。
〇はどの角度でも入るので、一番簡単です。一方、□と△はというと、枠の角に、ペグの角を合わせる必要があります。この場合〇に近いほど角が合わせやすいですから(正三角形よりも、正八角形の方が入れやすいように)、「〇→□→△」という順序になります。
「〇△□」だけの、シンプルな型はめというのもなかなか市販されていませんが、〇だけ、△だけ、□だけの型はめというのは、さらに手に入れるのが難しくなります。今回使用しているのは材料として百円均一の店のMDF板、ラミネイトした黒画用紙、通販で手に入れた正三角形と正方形の木(詳しくは本校コーディネーターまでお問合せください)になります。1セットあたり200円もかかっていません。あとは、枠を切り抜くための電動糸鋸、糸鋸の刃を通すためのドリルです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
178 〇だけの型はめ(小)
「3鉄球入れ(鉄球とアクリルパイプ)」「95 筒入れ課題のバリエーション」でも紹介してきましたが、子どもの学習の中で、「入れる」ということは、非常に大きなポイントとなります。同様に、「はめる」ということも、重要な学習となります。いわゆる型はめの学習ですが、多くのものがおもちゃ屋や本屋などで市販されています。しかしながらそれらは子どもにとって難しすぎる、ということも多いのではないでしょうか。
もっとも簡単な型はめは、「〇だけの型はめ」となります。かつて「6丸の型はめ」でも紹介したのですが。今回のは子どもの手のひらに収まるサイズのものです。また、枠と高さをそろえていて(10ミリ)、一度はめると、もう取れないようになっています(「終わり」の理解が十分でない子どもは、何度も入れたりはめたりする)。
「〇」というのは△や□と異なり、角を合わせる必要がありません。子どもにとって非常に取り組みやすい活動となります。一方、「球」と異なるのは、球が360度、どの方向でも枠に入ったのに対して、〇は水平になるように方向づける必要がある、ということです。基本的には「球を入れる」よりも難しい活動です。しかしながら「手を持ち上げることが難しい」という子どもにとってみれば、球を操作するよりも、「〇をはめる」方が取り組みやすいでしょう。活動の難しさは子ども一人一人に異なります。そこに合わせて教材教具を工夫していきます。
177 ビー玉落とし(小)
前回紹介したビー玉落とし(大)は箱作りから始めたもので、大掛かりなものでした。大きな手の動きを引き出すにはどうしても大きな箱が必要だったからなのですが、市販品の箱を活用して作成することもできます。小さなサイズならば、百円均一の店で売っている箱でも作成できます。
最初から箱があれば、ふたが落ちないようについたてをして、ふたを作るだけです。引き出したい子どもの手や目の動きに合わせて、横一列に穴をあける、放射状に穴をあけるなど、穴のあけかたを工夫していきます。
「一面のビー玉を全部落としたら終わり」といった使い方のほか、あえて目をつぶったうえで「教員が置いた1個のビー玉を、探り当てて落とす」など、多様な使い方が考えられます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
176 ビー玉落とし(大)
視覚障害特別支援学校で活用されている教材を参考にした、ビー玉落としです。身体が動かしにくい子どもの中には目の見えにくさがある子どもも多く、視覚障害特別支援学校での取り組みが大きな参考になることがあります。広い面にちりばめられたビー玉を指で押して落としていくわけですが、目の使い方だけでなく、手の使い方の練習にもなります。「押したら」「落ちて、音が鳴る」という、因果関係理解の学習にもなります。
ビー玉落としについては市販の作成キットを取り寄せることもできるのですが、ここでは一から自作してあります。まずはA3サイズのMDF板を用い、大きな箱を作ります。ここで既成の木箱(大きなホームセンターなどで売っている)を使うなどすると、作成のハードルが下がります。木箱にふたをするわけですが、ふたが落ちないように、木箱の内側についたてをするのがポイントです。また、ついたては木箱全体の高さよりも1センチほど低くし、ふたをしたときに段差ができて、ビー玉が転がり落ちないようにします。
木箱の高さですが、低すぎると、ビー玉が落ちた時の衝撃や音が弱く、子どもにとって「自分がしたこと」と「その結果」の因果関係に気づきにくくなります。しかしあまり高くしすぎると音が大きくなりすぎ、子どもがびっくりしてしまい、発作などを誘発しかねません。この辺は子ども一人一人に合わせて調整していきます。
ふたには、ボール盤を使ってビー玉が通る穴をあけていきます。ここでは、直径20ミリの穴をあけています。なお、穴のあけかたはランダムにしたり、放射状にしたりと、引き出したい子どもの目の動き、手の動きに合わせて調整していきます。穴の裏側から、ゴムひもを木工用ボンドで固定して完成となります。ビー玉は散らばってしまいがちなので、タッパーなどでまとめておくと便利です。
(本校特別支援教育コーディネーター)