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カテゴリ:Ⅰ.手や目を使う基礎を整える教材

213 星の形の型はめ(大)

これまで〇、△、□。それぞれの大小。並び方の違いといったさまざまな型はめを紹介してきました。型はめパズルは市販品をよく見かけますが、「形が複雑すぎる」「枠が浅くて『入れた』感覚がつかみにくい」「選択肢が多すぎる」といったことから子どもにとって難しい課題になっていることがあるようです。ですので、一旦「〇だけ」「1つだけ」「深い」型はめに立ち戻り、丁寧に子どもの学習を整えていきます。

 今回紹介するのは、星の形です。ここでは型はめのペグの形について紹介しますが、型はめのペグの難易度は、「〇」「△□のような正多角形」「ハートのような左右対称の図形」「左右非対象の図形」といった順で難しくなっていきます。楕円などは〇と正多角形の間に入るでしょうか。

星の形も正多角形の仲間で、星型正多角形となります。△や□もそうですが、それぞれの角に区別がないので、ぐるぐると回しているうちになんとなく枠にはまるということがあります。また、表裏の区別もないので、子どもがあれこれと試しているうちに裏返ってしまった、ということもありません。複雑な形に進む前に、順を追って学んできます。

また、型はめのペグは形も重要ですが、その大きさも重要となります。小さいペグだと指先での操作となりますが、今回紹介したものは約10センチの大きさになります。このくらいの大きさになると、自然と子どもの手首の動きが引き出されてきます。

学習の目的に応じ、教材の大きさも調整していきます。

(本校支援部)

207 ボール落とし(5連)改造版

206で紹介したボール落としの改造版になります。ボールを落とした先にシロフォンを敷き、♪コロンコロンと綺麗な音が鳴るように工夫されています。「ゴトン!」と大きな音を立ててボールが落ちるのもわかりやすいのですが、得意な音、苦手な音も子どもそれぞれに異なります。

 

今回の教材は越陽祭の学習発表の中で使われたものです。ちょっとした工夫で、子どもが自分自身で楽器を演奏することができます。

 (本校支援部)

206 ボール落とし(5連)

176や177において、「ビー玉落とし」の教材を紹介しました。子どもにとって活動の終わりがわかりやすく、手の動きを引き出しやすい教材なのですが、なにぶんビー玉が小さくて、かなり細かい指先の動きを必要としました。

今回紹介するのは、「ボール落とし」です。教材の作り方は「ビー玉落とし」と同じなのですが、ボールは直径45㎜のもの(「くるくるチャイム」で使用されているもの)を使っています。ビー玉落としと異なり、指先の力を必要とせず、手全体で押し込むことができます。

 

 

 

 

 

 

また、ゴムの貼り具合により、微調整することも可能です。ゴムをたくさん貼り、落とす際の「手ごたえ」を強調することができます。また、ボールが落ちるか落ちないかのギリギリの状態にし、子どもの手がボールにあたっただけで落ちるようにすることもできます。

 

 

 

 

 

 

子どもにとって自分の手の動きとその結果(因果関係)がわかりやすく、活動の目的(終点)もわかりやすいため、非常に意欲的に取り組める教材になります。次のボールへ、次のボールへと手を伸ばす中で、自分の身体の中央(正中線)を越える手の動きを目指していきます。

(本校支援部)

204 ボール入れ 平面 枠あり 方向づけあり(長い距離)

前回紹介したものの続きとなります。前回紹介した教材は、ボールを転がし始める位置(運動の始点)からボールを落とす位置(運動の終点)までの距離が、およそ20センチでした。今回紹介しているものはその倍、約40センチの距離になっています。「距離が倍になっている」ということは、ボールを転がすという運動を2倍、持続させる必要があります。距離が伸びたということは、時間的にも運動を持続させる必要があるということです。また、「ここまでボールを転がしていく」という見通しについても、20センチの時よりも40センチの方が難しくなります。

 

 

 

 

 

 

これは距離が伸びれば伸びるだけ難しくなりますし、方向転換などが伴えば、さらに難しくなります。なお、作成にあたっては2つの箱をそれぞれ切断し、連結しています。中に入っているのはA3の板(45センチ×30センチ)を横に長く切ったものを、5枚重ねたものです。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

203 ボール入れ 平面 枠あり 方向づけあり

186や、前回に紹介したボール入れと同じ要領で作成されている箱入りのボール入れの教材ですが、それぞれ目的がだいぶ異なります。

 

 

 

 

 

 

これまで紹介してきたものが「入れることを学ぶ」ための教材、「並べることを学ぶ」ための教材だとすれば、今回は「方向づけることを学ぶ」ための教材となります。

 

 

 

 

 

 

の大きな穴があります。ボールを落とすためには、大きな穴がある方向に向けて手を動かす必要がありますし、持続して動かし続ける必要があります。

これが例えばスイッチ教材などであれば、そのボタンをその場で、一瞬触ればよいかもしれません。しかしこの教材の場合は、特定の方向に向けて操作し続ける必要があります。運動の持続が求められるわけです。このあたり、「ボール入れ」の教材ではあるのですが、「輪抜き」などと目的が重なるものになります。そして輪抜きの場合は腕を持ち上げる必要がありますが、ボール入れにすることで、子どもの負担が少なくなります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

202 ボール入れ 平面 枠あり 2連/3連

186で紹介したボール入れの続きになります。百円均一で売っている箱を塗装し、その中に箱の内径のサイズに切ったMDF板を5枚重ねて入れています(深さは25ミリ)。使用するボールが45mmですので、このくらい深いと「穴に落ちた」ということを、子どもが実感しやすくなります。

 

 

 

 

 

 

何度か紹介してきましたが、筒へのボール入れのように「縦に連続して入れる」のと、「横に並べて入れる」のとでは、横に並べて入れる方が圧倒的に難しいです。

 

 

 

 

 

 

また「横に並べて入れる」となると、円柱状のペグ(前回201「アクリル棒さし(大)」で紹介したもの)を横に並べて入れる、金属製のリベットを並べて入れる、木工用のダボを並べて入れる、といった教材を見かけます。しかし、それら「長いもの」は子どもの手の中で扱いにくいことがあります。だからこそ練習のために取り組むことがあるのですが、ここでは手にスポリとおさまる、球を使っています。

しかし球だとゴロゴロと転がっていきかねません。そのため、箱の中に教材を固定することで、子どもが活動しやすいよう、子ども自身が工夫しながらやりきることができるようにしています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

201 アクリル棒さし(大)

11で紹介した「アクリル棒さし」の別バージョンとなります。アクリルの棒を入れる面をあえて広く取り、目と手の学習が深まるようにしています。使っているアクリル棒は、白が直径25mm長さ50mm。黒が直径15mm長さ50mmです。こういった特定のサイズのものは市販されていないので、業者に発注しています。→詳しくはお問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

なお、ここでは太い棒を白、細い棒を黒というようにサイズごとに色を分けています。色の違いに気づきかけている子は、それが太さを見分けるヒントになります。

一方、子どもに合わせて難易度を調整していこうとすると、「難しくするのであれば」すべての棒を同じ色にするということが考えられます。また「易しくするのであれば」太い方だけ先に渡す(細い棒の穴には入らないのでミスがなくなる)、一本ずつ手渡す、といったことが考えられます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

200 野菜の水切り

この「本校の教材教具」コーナーも、ついに200回目を迎えました。200回目ということで紹介するのは、「野菜の水切り(サラダスピナー)」です。機械の目的外の使用になるのでご注意ください。

 

 

 

 

 

 

野菜の水切りの中には、子どもの好きなフィギュアなどを入れます。そしてボタンを押し込むと、フィギュアがぐるぐると回っていきます。意外なくらい、子どもが興味を持って活動することの多い教材となります。

子どもの目の使い方は、「動きや光」などを受け止める『周辺視』から、「色や形(いずれは文字や数)」を見分けていく『中心視』へと発達していきます。この野菜の水切りの活動は、そのうちの周辺視に焦点をあてたものです。詳しくは、「62ハンドスピナー」の記事をご確認ください。また、目の使い方の学習であると同時に、「押す」「動く」という因果関係の学習ともなります。

 

 

 

 

 

 

なお、野菜の水切りにはハンドルを回すタイプもあります。この辺だと、肘を中心とした身体の動かし方の学習ともなってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

198 横に長い輪抜き

これまで「4」「73」「159」「160」回で『輪抜き』の課題について取り扱ってきました。それらのほとんどが縦方向の輪抜きでしたが、子どもによっては横方向の方が手を使いやすい、という場合もあります。今回紹介するのは、横方向の輪抜きです。

 

 

 

 

 

 

この写真のように、縦方向の輪抜きは、使う棒を高くすれば高くするだけ高くなります。ある程度土台を作ってしまえば、安定感もでます。しかし、横に長くしていくと、そうはいきません。棒を伸ばすと、重心がずれて、簡単に倒れてしまいます。倒れないように大人が支えていれば大丈夫かもしれませんが、できれば子どもが自分の力でやりきってほしいところです。そこで、ここでは土台となる木に棒を貫通させ、横の長さを調整できるようにするとともに、伸ばした方と反対側に重りをつけることで、倒れないようにバランスをとれるようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

196〇だけの型はめ(大)

178で「〇だけの型はめ(小)」を紹介しました。今回紹介するのは、「〇だけの型はめ(大)」になります。「小」「大」と言っていますが、「小」が直径40ミリ、「大」が直径80ミリです。こういった極端にシンプルな教材はまず市販されておらず、自作する必要があります。

ペグの直径が倍になると、体積や重さは大きく変わります。子どもにとっては小さい方がやりやすいかもしれませんし、逆の子もいるでしょう。

 

 

 

 

 

 

さらに、ペグの厚みの違いによっても、子どもの達成度は変わってきます。ここでは10ミリ、20ミリ、30ミリを用意しています(厚さ10ミリの板を1~3枚重ねて塗装)。大きくて薄い、小さくて厚いなど、どれが子どもの手になじむかはケースバイケースです。どの教材にも言えることですが、一人一人の子どもに合わせていきます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

195 ラジカセ(+ウゴキんぐ)

前回、ラジカセを紹介しました。機能がシンプルなこと、ボタンの数が限られていることも、子どもが学ぶ上ではメリットとなります。しかしながら、それでもボタンがいくつかあり、ラジオも聞くことができ、複雑といえば、複雑です。

そこで、ラジカセとコンセントとの間に、「ウゴキんぐ」をはさみます。「ウゴキんぐ」はコンセントにつないで使う、あらゆる電化製品をスイッチ化することができる機械です。

 

 

 

 

 

 

ここで肝心なのは、「ウゴキんぐ」で制御できるのは、「電流のON/OFF」だけである、ということです。したがって、「コンセントにつないだだけ」で動き始める機械でなければ意味がありません。例えば、最近のTVをスイッチ化しようとしてもうまくいきません。

スイッチ化しやすいのは、コンセントにつないだだけで動かせる機械。すなわち、掃除機ですとか、ミキサーですとか、そういったものになります。ラジカセもそのひとつで、「再生ボタンを押したまま」「早送りボタンを押したまま」で固定できますので、手ごろに、扱いやすいスイッチ教材となります。

これらは、CDやデータで行おうとしてもできません。ラジカセだからこそできることです。なお、その他の機械はというと、「掃除機」「ミキサー」のほか、「扇風機」「電動のマッサージ器」などが教材にしやすいでしょう。昔ながらのトースターも使えるかもしれません。すなわち、アナログの、コンセントにつないだだけで動く機械です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

194ラジカセ

ラジカセを身近で見なくなって久しくなりました。カセットテープからCD、MD、データ、配信と、学校の授業で使われる音源も時代とともに変わってきました。今回はだいぶ昔に使われなくなった、「カセットテープ」そして「ラジカセ」を教材として扱うことを紹介します。ちなみにですが、ラジカセはいまでも新品が売っています。カセットテープも市販されています。

 

 

 

 

 

 

ラジカセ(カセットテープ)と、CDやデータとでは何が違うでしょうか? 大きな違いは2つあります。1つには、音を止めても、また続きから音楽が始まるということです。当たり前のことのようですが、CDやデータではこうはいきません。曲を飛ばしたり、止めたりしているうちに、何がどの曲だったのか、どこがどうつながっているのか、よくわからなくなってしまいがちです。もう一つは、ボタンがアナログであるということ。再生ボタンや停止ボタン、早送り、巻き戻しボタンを押したときに、力強い手ごたえ(固有感覚への入力)と音がする、ということです。液晶の画面を触れるのとは比較にならないくらいの、強いフィードバックが返ってきます。これらの理由から、子どもによっては、「ボタンを押したら音楽(や声)が流れる」「何をしたらどうなる」ということの因果関係を学ぶ、非常によい教材となります。

テープの爪は、折っておきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

192長方形の型はめ 6連 ランダム

前回の続きになります。「長方形だけの型はめ」に続くものとしては〇△□同様に2連、3連にといったことが考えられますが、長方形ともなると、すでにかなり「図形を見分ける」「手を操作する」力が育っていることが想定されます。そこで、今回紹介するものは一気に6連。しかも図形の方向を、あえてランダムにしてあります。こうすることで、長方形だからこそ、多様な角度で手首を動かす必要性が生まれます。

 

 

 

 

 

 

型はめパズルというと、算数科の内容として、図形の学習に向けたものと思われがちではないでしょうか。しかし設定の仕方によっては、日々の生活動作の向上に向けた、手首の使い方を学ぶための教材ともなります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

191長方形の型はめ

178「〇だけの型はめ(小)」179「△だけの型はめ」「□だけの型はめ(小)」では、円、正三角形、正方形の型はめを紹介しました。これらは、〇△□の違いはあれど、いずれも重心が図形の中心にあるという特徴があります。

 

 

 

 

 

 

「三日月の形」のような図形と異なり、入れやすいのです。

 

 

 

 

 

 

「〇△□」と「三日月」のような図形との間には大きな難易度の差があります。その間に位置するのが、星の形や、今回紹介する長方形、すなわち直方体の型はめになります。

 

 

 

 

 

 

長方形の場合、正方形と違って、入る方向が限定されます。正方形は「ぐるぐる回して」いると、なんとなく入ってしまうということがありましたが、長方形の場合はかなりじっくりと方向や角を見分けないと、型に入りません。

〇△□、正六角形、長方形、正ではない六角形、星の形、三日月の形など、世の中には様々な図形があります。大人からすると、どれも似たもののように感じてしまうかもしれません。しかし子どもからするとそれら一つ一つの間に、大きな難易度の差があるのかもしれません。子ども一人一人の今の力、次の課題を見据えながら、丁寧な支援を行っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

190重みのあるぬいぐるみ

前回「ウェイトブランケット」で紹介しましたように、固有感覚への入力、圧迫、重みといったものは、子どもの気持ちの安定や、運動発達に大きく影響していきます。一方、ウェイトブランケットも便利なのですが、金額的なことや、重すぎて取り扱いが難しいといったことが気になります。

そこで、今回紹介するのは、古くなったぬいぐるみをリメイクするという方法です。様々なやり方があると思いますが、ここでは一度お腹を切って綿を取り出し、大型のビー玉を入れたゴム手袋をいくつも入れたうえで、再度綿を詰めています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとした工夫で、子どもが膝に抱えやすいぬいぐるみになります。子どもが側臥位になる際に、背中にあてるといった目的でも使われます。

※重みのあるぬいぐるみは、市販もされています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

189ウェイトブランケット

人には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など様々な感覚があり、それぞれが重要な役割を果たしています。その中でも姿勢・運動ということになると、「視覚」「前庭感覚」そして「固有感覚」がポイントとなってきます。「固有感覚」というと聞きなれないかと思いますが、自分の手足がどう曲がっているか、動いているか、どのくらい力が入っているかということ。すなわち筋肉や関節の状態をモニターする感覚となります。

この感覚が整っていないと、そもそも自分の身体がどうなっているのか、どのように動いているのかがわかりにくいということですので、寝返りをする、座る、立つといった様々な場面に影響していきます。また、固有感覚を感じにくいということは、自分の身体がふわふわとしてしまうということ、極端に言うと「自分の身体がそこにある」ということに気づきにくいということでもあるようです。結果、気持ちもふわふわと落ち着かないものになっていきがちです。

今回紹介するのは、ずっしりと重いブランケット、すなわち「ウェイトブランケット」です。人は、誰かにぎゅっと抱きしめられると落ち着いたり、自分で自分の身体を抱きしめることで落ち着いたりすることがあります。固有感覚と、子どもの情動とが密接に結びついているからです。

 

 

 

 

 

 

子どもとの関わりの第一歩はぎゅっと抱きしめてあげること…なのですが、いつも抱っこというわけにもいきませんし、触覚や前庭感覚が過敏で、抱っこが苦手という子もいます。ほんのささいなことなのですが、座っているときにウェイトブランケットなどで膝の上に重みがかかることで、気持ちを落ち着けて活動できるという子どもがいます。うつ伏せ時に、腰のあたりに重みが加わることで落ち着く子どももいるようです。なお、似たような目的のものとして、「重量のあるベスト」なども市販されています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

188〇だけの型はめ 4連 5連 ランダム

前回紹介したのは、〇だけの型はめの3連まででした。今回はさらに穴の数を増やしたものを紹介します。なお、〇だけの型はめ/〇だけの型はめ(2連)/〇だけの型はめ(3連)はそれぞれ難易度に大きな違いがありました。〇だけの型はめならできるけれど、2連になったら難しくなる。2連までならできるけれど、3連になると、急に難しくなる。そんなことがありました。

 

 

 

 

 

 

しかし3までをクリアすると、その先の4連、5連といった課題は一気にクリアしていくケースが多いようです。むしろ、このあたりからは「全部入れればそれで終わり」ではなく、「左端から順に入れていく」といった、数の学習の基礎としての要素が加わってきます。

穴の位置をランダムに配置した教材もあります。〇だけの型はめが「点」。前回と今回消化した2連、3連、4連、5連の教材が「線」的に空間を捉えるものだとすれば、ここでは「面」としてとらえていくことになります。シンプルな「〇だけの型はめ」ですが、一人一人の子どもの課題に合わせた、様々なねらいがあります。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

187〇だけの型はめ 2連 3連

178「〇だけの型はめ」は非常に基本的な学習ですが、では、そのあとはどこに続いていくでしょうか。例えば、〇ができたから□、□ができたから△といった方向性があります。また、型はめのペグのような円盤状のものから、電池のような円柱状のものを入れるようにしていく、といった方向性もあるでしょう。この場合、だんだんと入れるものを長くし、いずれは棒を筒に入れるような力をつけていきます。

そして今回紹介するのは、1枚の「〇だけの型はめ」ができたところで、2枚の型はめ、3枚の型はめへとステップアップしていく教材です。

 

 

 

 

 

 

これは、一見すると簡単に見えるかもしれません。「〇だけの型はめ」ができたのであれば、2枚になっても、3枚になっても違いがないように見えるかもしれません。しかし実際のところ、同じようにボールを入れる課題であったとしても、「縦に5個入れる」ことと、「横に5個入れる」のとでは難易度が大きく異なります。横に入れていく方が圧倒的に難しいです。活動に空間的な広がりが生まれるからです。

 

 

 

 

 

 

今回紹介した教材も同様です。1枚の「〇だけの型はめ」ができることと、2枚の「〇だけの型はめ」ができることとの間には、大きな違いがあります。なお、2枚できることと、3枚できることの間にも大きな違いがあるようです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

186ボール入れ 平面 枠あり

3「鉄球入れ」95「筒入れ課題のバリエーション」でも紹介しましたが、「ボールを入れる」というのは非常に重要な学習となります。市販の玩具で言えば、「くるくるチャイム」といったあたりです。しかしながら、「ボールを持ち上げて」「入れる」という、その動きそのものが難しい、という子どもたちもいます。空間の中の一点(穴の位置)をねらうというのは、ことのほか難しいものです。

そのためくるくるチャイムの入り口をセロテープ等で狭くし、ボールを固定する、という支援の仕方があります。こうすることで、手にちょっと力を入れれば、ボールを押し込むことができます。

 

 

 

 

 

 

その次のステップとして用意したのが、今回の教材です。百円均一の店で売っていた箱を枠として使用します。その中に、箱の大きさに合わせてカットしたMDF板(厚さ5ミリ)を5枚重ねて入れてあります。MDF板には、直径50ミリの穴を開けてあります。こうすることで、「ボールを入れる」という活動が、平面上の活動になります。手の動きとしても子どもの負担が軽減されます。また、箱が枠になっているため、ボール等が転がっていってしまうことが少なくなります。

 

 

 

 

 

 

178「〇だけの型はめ(小)」の一歩手前くらいの課題になるでしょう。

(本校特別支援教育コーディネーター)

181型はめパズルの作り方 後編

前回の続きになります。

④ふちどったところに、電動ドリルで穴をあける

電動糸鋸の刃を通すためです。糸鋸の刃のサイズにもよりますが、直径8ミリほどの太さのドリルであければ十分でしょう。なお、くりぬいた部分をペグとして利用する予定がなければ、中央に穴を開けてしまって構いません。また、ドリルで穴を開ける場合は下に不要な木を敷いておきましょう。そうしないと、穴を開ける際、木の下側の状態が悪くなってしまいます(バリができる)。

 

 

 

 

 

 

⑤穴を開けたところに電動糸鋸の刃を通す

ちょっと難しいですが、穴に刃を通したうえで、機械に固定します。この辺は用いる機械により、固定の仕方が変わります。

 

 

 

 

 

 

⑥線にそって、電動糸鋸でくりぬく

線に沿って一周します。慣れていないと、線にそって切ることや、△や□を切る際の方向転換が難しいでしょう。何度か練習したうえで挑戦してみてください。

 

 

 

 

 

 

⑦黒い色画用紙をラミネイト加工したものをはさみ、もう一枚の板を底にして接着する

木のままでも構いませんが、土台の枠の中を黒くすると、子どもが枠の存在に気づきやすくなるとともに、教材としての質感が一気にあがります。大きな手間ではないので、おすすめするポイントです。

 

 

 

 

 

 

なお、ここでは〇△□の木を用いました。しかし、たとえばスプーン、はさみなど、身近なもの、どんなものであっても、それをふちどり、くりぬいてしまえば、型はめパズルとすることができます。また、同じ要領で様々な教材を木に固定することができます。テープカッターなど、「教員が押さえていなければ扱えなかった」ようなものを子どもが一人で扱えるようになったりすることもあります。ちょっとした工夫で、子どもの可能性は広がっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

 

180型はめパズルの作り方 前編

前回、前々回と紹介してきた型はめパズルですが、その作り方を具体的に紹介します。必要なものは材料となる木と、電動糸鋸(と刃)ハンドドリル(と直径8ミリ程度のドリルの刃)になります。これらを自前で用意するのは大変かと思いますが、大型のホームセンターなどではDIYのコーナーが設置されているところもあります。なお、電動の器具を用いずに作成することは不可能ではないかもしれませんが、かなり難しいでしょう。はさみ、カッターで作成したい場合は、木ではなく、スチロール製の素材を用います。磁石を埋め込んで重くするといった工夫もできますが、耐久性や質感を考えると、できるだけ木を用いたいところです。

まず、土台となる板を用意します。ここでベースとしているのは百円均一の店で売っている、A3サイズのMDF板です(お店の種類により、同じ「MDF板」でも質感や厚さに違いがあります)。

①MDF板を半分に切ってA4サイズにする

A3サイズのままだと大きすぎるので、半分に切断します。場合によってはA3のままで用います。なお、電動糸鋸よりも正確にまっすぐ切断できる機械はありますが、最初は電動糸鋸を用いる方がよいでしょう。〇や△にくりぬいていく際の練習にもなります。電動糸鋸の刃には「直線切り用」と「曲線切り用」があるので、使い分けます。

 

 

 

 

 

 

②A4サイズになったMDF板を貼り合わせる

もとのままだと厚さは5ミリですが、これだと型はめに加工しても「はまった」感覚がわかりにくいです。市販されている、多くの型はめパズルが扱いにくい理由がここにあります(そのほか、選択肢が多すぎる、形が複雑すぎる等の理由もある)。土台の厚さを10ミリにすると、かなり「はまった」感覚が強まります。これは板が厚ければ厚いだけ「はまった」感覚が出やすいのですが、あまり厚くすると、ペグがはまりにくくなってしまいます。この辺はケースバイケースになります。

 

③買ってきたペグを土台に置き、先が丸くなった鉛筆でふちどる

ここが重要なポイントです。型はめパズルを自作する際、木を〇、△、□にくりぬき、それをサンドペーパーなどで削ってペグとして利用しようとすることがあります。しかしながら、それだとうまくいかないということはないでしょうか。実際、正確に丸く、三角に、四角に切るというのは極めて困難です。そして正確な〇△□でないと、「この方向だと入る」「この方向では入らない」ということが起こってしまいがちです。おすすめするのは、「ペグとして用いるものは市販品を用い、土台だけを作成する」ことです。

 

 

 

 

 

 

では、どうやってペグとなるものを購入するか? 〇の木、□の木は、ホームセンターでも売っているでしょう。しかしながら△の木というのは、ほとんど見かけません(□を半分に切った直角三角形はよく見かけます)。これは通販で探すか(詳しくはお問い合わせください)、市販の積み木セット、型はめパズルのものを流用する、といったことが考えられます。

 

 

 

 

 

 

なお、「先が丸くなった鉛筆」でふちどるのは、ある程度枠に余裕(遊び)がないと、ペグが入らないためです。あまり余裕がありすぎても「はまった」感覚が薄れてしまいます。この辺の加減は、非常に難しいところです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

179△だけの型はめ □だけの型はめ(小)

前回の続きとなります。前回紹介したのが「〇だけの型はめ」ですから、今回は「△だけ」「□だけ」の型はめとなります。なお、「まる さんかく しかく」とは言いますが、子どもにとって取り組みやすい順序は、ほとんどの場合「〇→□(正方形)→△(正三角形)」ということになるようです。

 

 

 

 

 

 

〇はどの角度でも入るので、一番簡単です。一方、□と△はというと、枠の角に、ペグの角を合わせる必要があります。この場合〇に近いほど角が合わせやすいですから(正三角形よりも、正八角形の方が入れやすいように)、「〇→□→△」という順序になります。

 

 

 

 

 

 

「〇△□」だけの、シンプルな型はめというのもなかなか市販されていませんが、〇だけ、△だけ、□だけの型はめというのは、さらに手に入れるのが難しくなります。今回使用しているのは材料として百円均一の店のMDF板、ラミネイトした黒画用紙、通販で手に入れた正三角形と正方形の木(詳しくは本校コーディネーターまでお問合せください)になります。1セットあたり200円もかかっていません。あとは、枠を切り抜くための電動糸鋸、糸鋸の刃を通すためのドリルです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

178 〇だけの型はめ(小)

「3鉄球入れ(鉄球とアクリルパイプ)」「95 筒入れ課題のバリエーション」でも紹介してきましたが、子どもの学習の中で、「入れる」ということは、非常に大きなポイントとなります。同様に、「はめる」ということも、重要な学習となります。いわゆる型はめの学習ですが、多くのものがおもちゃ屋や本屋などで市販されています。しかしながらそれらは子どもにとって難しすぎる、ということも多いのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

もっとも簡単な型はめは、「〇だけの型はめ」となります。かつて「6丸の型はめ」でも紹介したのですが。今回のは子どもの手のひらに収まるサイズのものです。また、枠と高さをそろえていて(10ミリ)、一度はめると、もう取れないようになっています(「終わり」の理解が十分でない子どもは、何度も入れたりはめたりする)。

「〇」というのは△や□と異なり、角を合わせる必要がありません。子どもにとって非常に取り組みやすい活動となります。一方、「球」と異なるのは、球が360度、どの方向でも枠に入ったのに対して、〇は水平になるように方向づける必要がある、ということです。基本的には「球を入れる」よりも難しい活動です。しかしながら「手を持ち上げることが難しい」という子どもにとってみれば、球を操作するよりも、「〇をはめる」方が取り組みやすいでしょう。活動の難しさは子ども一人一人に異なります。そこに合わせて教材教具を工夫していきます。

177 ビー玉落とし(小)

前回紹介したビー玉落とし(大)は箱作りから始めたもので、大掛かりなものでした。大きな手の動きを引き出すにはどうしても大きな箱が必要だったからなのですが、市販品の箱を活用して作成することもできます。小さなサイズならば、百円均一の店で売っている箱でも作成できます。

 

 

 

 

 

 

最初から箱があれば、ふたが落ちないようについたてをして、ふたを作るだけです。引き出したい子どもの手や目の動きに合わせて、横一列に穴をあける、放射状に穴をあけるなど、穴のあけかたを工夫していきます。

 

 

 

 

 

 

「一面のビー玉を全部落としたら終わり」といった使い方のほか、あえて目をつぶったうえで「教員が置いた1個のビー玉を、探り当てて落とす」など、多様な使い方が考えられます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

176 ビー玉落とし(大)

視覚障害特別支援学校で活用されている教材を参考にした、ビー玉落としです。身体が動かしにくい子どもの中には目の見えにくさがある子どもも多く、視覚障害特別支援学校での取り組みが大きな参考になることがあります。広い面にちりばめられたビー玉を指で押して落としていくわけですが、目の使い方だけでなく、手の使い方の練習にもなります。「押したら」「落ちて、音が鳴る」という、因果関係理解の学習にもなります。

 

 

 

 

 

 

ビー玉落としについては市販の作成キットを取り寄せることもできるのですが、ここでは一から自作してあります。まずはA3サイズのMDF板を用い、大きな箱を作ります。ここで既成の木箱(大きなホームセンターなどで売っている)を使うなどすると、作成のハードルが下がります。木箱にふたをするわけですが、ふたが落ちないように、木箱の内側についたてをするのがポイントです。また、ついたては木箱全体の高さよりも1センチほど低くし、ふたをしたときに段差ができて、ビー玉が転がり落ちないようにします。

木箱の高さですが、低すぎると、ビー玉が落ちた時の衝撃や音が弱く、子どもにとって「自分がしたこと」と「その結果」の因果関係に気づきにくくなります。しかしあまり高くしすぎると音が大きくなりすぎ、子どもがびっくりしてしまい、発作などを誘発しかねません。この辺は子ども一人一人に合わせて調整していきます。

 

 

 

 

 

 

ふたには、ボール盤を使ってビー玉が通る穴をあけていきます。ここでは、直径20ミリの穴をあけています。なお、穴のあけかたはランダムにしたり、放射状にしたりと、引き出したい子どもの目の動き、手の動きに合わせて調整していきます。穴の裏側から、ゴムひもを木工用ボンドで固定して完成となります。ビー玉は散らばってしまいがちなので、タッパーなどでまとめておくと便利です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

175「探り当てる」教材

人間の感覚には、様々なものがあります。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といったいわゆる「五感」のほか、分類の仕方にもよりますが、揺れ、回転、加速などを感じる前庭感覚、筋肉への力の入り具合や、関節の曲がり具合などを感じる固有感覚といったものです。

今回取り上げるのは触覚です。触覚とひとことで言ってもさらに細かく分かれていきます。ごく狭い意味での触覚のほか、圧覚、冷覚、痛覚、振動覚などがあり、子どもによってはそれぞれに感じやすさ、感じにくさが違っていることがあります。冷たさは感じやすいけれど、人に触られるのは感じにくい等です。

今回は、それらの中でもごく狭い意味での触覚、すなわち「触り分ける」力を育てるためのものです。触覚は全身の皮膚にはりめぐらされていますが、自分の身体と、外の世界との境界になる、非常に重要な感覚です。これが過敏であったり、逆に感じにくかったりすると、自分の身体がどこまでで、どこからが外の世界なのかがわかりにくくなるということで、身体の動かしにくさといったことにも影響することがあります。前庭感覚や固有感覚とともに、身体の動きを見ていくうえで、真っ先に整えていきたい感覚となります。

触覚へのアプローチはさまざまなものがありますが(手遊び、マッサージ、お腹に指で書かれた字を当てる、小麦粉粘土を扱う等)、これは見えなくなっている箱の中から、特定の形のものを取り出すものです。見えないので、触覚に頼った活動になります。

 

 

 

 

 

 

市販の教材でなくとも、身の回りのもので同じ目的の活動を設定することもできます。袋の中に入れた「ぬいぐるみ」「せんたくばさみ」「ペン」などを、探り出すといった活動です。身近な物で工夫しながら、それぞれの子どもの課題に応じた活動を行っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

169穴を見分けて入れる

例えば、「ボールを入れる」課題が達成されたとして、「目や手を育てる」ための次の課題としてはどのようなものが考えられるでしょうか。例えば電池のような「円柱を入れる」課題。丸の型はめ。磁石のついたカードをホワイトボードに貼る課題。球と輪を見分ける課題、といったものが考えられます。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、「ボールを入れる」課題の一歩先の1つ、「穴を見分けて入れる」課題になります。ここでは、複数ある容器の1つだけに穴が開いていて、そこを見分けて入れていきます。最初は2つの選択肢から始めていき、3つ、4つと選択肢を増やしていきます。子どもは最初は手探りで、「あれ?入らないな」と試行錯誤するかもしれませんが、次第に目を使って、試行錯誤することなく入れるようになっていきます。

 

 

 

 

 

 

なお、選択肢が3つある場合、子どもが一番捉えにくい位置はどこでしょうか? 非利き手側? と考えたくなるところですが、ほとんどの場合は「真ん中」です。これは3つの選択肢だと大人からは実感しにくいところです。しかし5、7、9、11と選択肢を増やすにつれて、「端の方が捉えやすいこと」「『真ん中』というのがことのほかわかりにくいこと」を実感できると思います。これはカードとか、掲示物とか、さまざまなものを子どもに見せる時も同じで、ちょっとした提示の仕方の違いで、子どものわかる/わからないが分かれていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

168袋から出して入れる

前回、ボウリングを通して「手段をつなげていく」ということの視点について紹介しました。同じように、「目的がわかりやすい活動」の中で手段をつなげる、見通しを持って活動するための学習として、「袋から出して入れる」というものもあります。

 

 

 

 

 

 

「ボールを取って」→「入れる」だけならば、活動のつながりは1つです。活動に必要な見通しはシンプルなものになります。「ボタンを押して」→「電気を消す」、「蛇口をひねって」→「水を出す」そして前回紹介した「ボールを転がして」→「ピンを倒す」なども、「見通し」という観点からすると、ほぼ同様の難易度の活動になります。これらはいずれも「ボタンを押すこと」「蛇口をひねること」「ボールを転がすこと」そのものが活動の目的なのではなく、「電気を消す」「水を出す」「ピンを倒す」といった『目的のための手段』になっています。

では、「袋から出して」「ボールを取って」→「入れる」となると、どうでしょうか。これは活動が2つつながり、連鎖しています。「ボールを取って」→「入れる」よりも活動のつながりが多いわけで、より見通しをもつことが難しい活動となります。さらに活動の難易度を上げていくと、袋を紐でしばったうえで「紐をほどいて」「袋から出して」「ボールを取って」→「入れる」というように3つ活動をつなげるといったことが考えられます。

今回、子どもの見通しということ、活動をつなげていくという視点を紹介しました。実際の生活では、様々な複雑な見通しが求められます。自動販売機を見つけたとき、「のどの渇きを潤すために」「財布を探す」といった場面があるかと思います。しかし、「のどの渇きを潤す」という目的と、「財布を見つける」という手段の間とには、どれだけの活動のつながりがあるでしょうか? 大人からすると当然のつながりなのですが、子どもの成長を考えたとき、ごくシンプルな見通しから、丁寧に活動をつなげ、手段と目的の距離を離していく学習が必要になってきます。

(本校特別支援教育コーデイネーター)

167手段をつなげる学習(ボウリング)

室内で手軽に行える活動として、ボウリングがあります。ボールを転がす→ピンを倒す、という活動ですが、シンプルなようでいて、奥の深い活動になります。

いきなりですが、「ボールを転がす」ということは、活動の目的ではありません。活動の目的はあくまでも「ピンを倒す」ことです。当たり前のようですが、「『ピンを倒す』ために『ボールを転がす』」ということは、子どもにしてみると「活動の手段と目的を分離させる」ということになります。これは実は、かなり難しいことです。 

他に「手段と目的が分離している」状況を考えてみると、例えば「水を出すために蛇口をひねる」「食べるためにスプーンを持つ」といった場面があります。これらも、「蛇口をひねる」ことが目的ではありませんし、「スプーンを持つ」こと自体が目的ではありません。あくまでも水を出すこと、食べることが目的になります。さらに手段と目的が分離していけば、「ごはんを食べるために、手を綺麗にするために、水を出すために、蛇口をひねる」といったことになるでしょう。これらの手段をいくつつなげていけるかということが、いわゆる「見通しを持って活動できる」という力になってきます。

ボウリングに話を戻しますと、目的はピンを倒すことです。ですので、一番簡単な取り組み方を考えると、「手で直接ピンを倒す」ということが考えられます。これだと、活動の手段と目的とがイコールですので、子どもにとってもわかりやすい、見通しが持ちやすい活動になります。続いて、「ボールを転がしてピンを倒す」というのがあります。ここで見通しが持ちにくい子どもの場合、ボールを触ったり回したりすること自体が目的になりがちで、なかなか「倒すために転がす」というところに行きにくくなります。

 

 

 

 

 

 

逆に言うと、ボウリングのように「ピンが倒れる」という目的がわかりやすい活動の中で、活動に見通しを持つこと、手段と目的を分離していくこと、複数の手段をつなげていくことの練習をしていきます。そこで身につけた力を発揮して、「手を洗うために、水を出すために、蛇口をひねる」等の、生活の中での、見通しを持った活動が広がっていくことになります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

161パズルボックス

158回でも「可変型はめ」を紹介しましたように、形態構成、位置把握、マトリクスなど、これまでいくつもの「空間を捉える」学習の教材を紹介してきました。しかし、それらはあくまでも平面、縦×横の2次元のものでした。

 

 

 

 

 

 

このパズルボックスは、市販のものですが、縦×横だけでなく、そこに高さの要素が加わるため、3次元の空間を捉える教材となります。2次元から3次元に変わるということは、子どもからすると、非常に大きな難易度の違いになることがあります。特に横になっていることが多く、身体を起こす機会の少ない子どもにとってはそれが顕著です。遠近感とか、高さといったものを捉える力は、やはり身体を起こし、教材教具をたくさん扱うことによって育っていきます。

 

 

 

 

 

 

それらの力は、算数科などの学習にも影響していきます。例えば左の図形は立体的な捉え方が育っていると、平面の図形でありながら立体的に見えます。しかしながら身体の動かし方が苦手な子どもの中には、どうしても立体に見えず、3つの四角系(正方形1つ、平行四辺形2つ)に見える、ということがあります。パズルボックスといった基礎的な学習を通して、目や手を育てることが、将来の学習を支えていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

160可変輪抜き

前回の続きとなります。159で紹介した輪抜きは、低くとも、高くとも、一方向でした。運動の開始から、終わる(輪が抜ける)までは一直線。運動の方向付けも一方向です。今回紹介するのは、分岐を伴う輪抜きです。

 

 

 

 

 

 

この教材は、上に向けて運動を起こした後、棒にそって途中で横方向に運動を切り替える必要があります。大人からすると当たり前のような気がしますが、子どもにとっては自分の運動を途中で切り替える、すなわち2つの運動をつなげるというのは、かなり難しいことです。

なお、輪抜きができたから何なのか。それが何につながるのか、という声も耳にします。これは例えば、「一方向の輪抜き」が「スプーンで食べ物を口に運ぶ」シンプルな運動に相当するとすれば、「二方向の輪抜きができる」ということは、「スプーンで食べ物をすくって、それを口に運ぶ」という、2つの運動をつなげる準備になっていくということを意味します。それらの「見通しをもった活動」の練習を、「輪を抜く」という目的がわかりやすい学習の中で行っているわけです。

なお、分岐する数は増えれば増えるだけ難易度は上がります。一方向、二方向、三方向と全部の教材を用意すればよいのですが、それも煩雑です。そこで、一つの教材で、難易度を自在に変えて、子どものそのときの状況に合わせられるようにしたのが以下の教材です。

 

 

 

 

 

 

塩ビパイプをつなげ、その場で難易度を変更し、分岐を増やせるようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

153大小ペグさし その2

既に⑦⑧「電池入れ」⑪「アクリル棒さし」を紹介してきましたが、その改良版となります。⑦⑧⑪で土台に使っていた端材を、化粧板で表面を加工されたシナベニヤに変更しています。3枚を重ねて接着、そこに27ミリと18ミリのドリルで穴を開けたうえで、底をもう一枚の板でふさいでいるのは従来の作りかたと同じです。また、太い方のペグが縦50ミリ幅25ミリ、細い方のペグが縦50ミリ幅15ミリなのも従来どおりです。

 

 

 

 

 

 

化粧板なので表面がすべりやすく、ざらつかないこと。従来の板よりも重いので土台として安定すること。化粧板の色と穴の部分の色にコントラストが出るので、子どもが穴に気づきやすくなること、といったことがメリットとなります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

141六面体の教材

子どもがカードを黒板やホワイトボードに貼る際、磁石がついていない面を黒板等に向けてしまって、なかなかうまくいかない…ということがあります。であれば、すべての面に磁石がついていればどうなるでしょうか? どの面にも同じ絵を貼ってあげれば、すごく扱いやすい教材になるのではないでしょうか? そのようなコンセプトから作られたのが、この教材になります。

 

 

 

 

 

 

磁石の反発を押さえてボンドで固定するために、かなり多くの木、本などで重みをつけて強引に押さえてつけています。

実際に作成してみると六方向に働く磁力が互いに打ち消し合い、貼りつく際の磁力が弱くなってしまいました。木のサイズがもう少し大きければ、磁力の干渉の具合が変わってくると思われます。しかし木が大きすぎると重くなりすぎ、また手に収まりにくくなるでしょう。それぞれの子どもの課題に合わせて、教材教具の工夫を行っていきます。

 

 

 

 

 

 

完成品です。同じ絵と絵が、どの面同士であってもくっつきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

127各種スイッチ教材と因果関係の理解

「48積み木倒し」「72押したら鳴る教材」でも物事の因果関係の理解に向けた教材を紹介してきました。因果関係の理解というのは、「ボタンを押したらブザーが鳴る」「積まれている積み木を触ったら倒れる」といったように、「何かをしたら」「何かが起きる」ということに見通しが持てるということです。

 

 

 

 

 

 

因果関係の理解は様々な教材を通して学ぶことができますが、今回紹介するのはスイッチによるものです。スイッチ教材といっても、様々なものがあります。前半の「何かをしたら」ということについては、レバー式のもの、ボタン式のものなど。また、「何かが起きる」ということについては、「ぬいぐるみが動く」「扇風機が回る」「音が出る」など。それらの組み合わせにより、子供にとっての分かりやすさが変わってきます。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

例えば「赤外線センサーで水が流れるトイレ」があるとします。これもある意味スイッチ教材の一種であるわけですが、子供にしてみると赤外線センサーよりも、レバーを倒したり、ボタンを押したりした方が「自分が何かをした」ということに気づきやすいでしょう。したがって、「赤外線センサーで水が流れるトイレ」などは因果関係の理解がわかりにくいということになります。

また、ボタンを押すようなスイッチだったとしても、その結果が「ボタンを押して10秒後に、ぬいぐるみの目が一瞬だけ動く」といったものだったらどうでしょう。これもまた、子供にとって因果関係の理解がわかりにくいということになるでしょう。

「何かをしたら」「何かが起きる」ということについて、子供にとってわかりやすいものから、徐々に学習を積み上げていきます。それらの小さな見通しの積み重ねが、毎日の生活の中での、見通しを持った行動につながっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

125縦に積むことと、横に並べることの違い

たとえば「③鉄球入れ」で紹介した教材ですが、鉄球を枠に入れていくにしても、「縦に入れていく」場合と、「横に並べていく」場合とがあります。大人にしてみるとどちらも変わらないような気がするのですが、子供にしてみると難易度に大きな違いがあり、「横に並べる方が難しい」ということが多いようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縦方向の学習からはじめ、横方向に進んでいきます。それは、筒という「点」に入れていくということから、横に並んだ穴という「線」に入れていく学習に進んでいくということでもあります。さらに学習が進んでいくと、「⑪アクリル棒さし」で紹介したような、「面」を捉える学習にも取り組めるようになっていきます。これらの点から線、面へといった学習は「点結び」「迷路」といったプリント学習、タブレットのアプリでも行うことができるのですが、やはり、実際の教材を操作していくことで学びやすいことがあるようです。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

117ジッパーの教材

衣服の着脱なども、本校における重要な学習内容となっています。一方で身体の動かし方につまずきがある本校の子供たちにとってはジッパーの操作などを実際の衣服で行おうとすると難しいことがあり、ジッパーの仕組みを知るために、教材を通して学ぶことがあります。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として考えています。

 

 

 

 

 

 

木に固定されたウサギの口がジッパーになっており、リンゴやニンジンなどを入れ(食べさせ)たり、取り出したりします。これらの学習を通して、子供たちは基本的の手の使い方、道具の使い方を学んでいきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

115ブタコイン

あらゆる子供の学習において、基礎的な内容となるのが、ボールを「入れる」積み木を「はめる」輪を「抜く」といった、『物事を終わらせること』すなわち終点理解の学習となります。1つのことを終わらせることが、様々な物事に見通しを持つ力へとつながっていきます。

終点理解を主たる目的とした教材としては、「③鉄球入れ」「④一方向/多方向輪抜き」「⑥丸の型はめ」「⑦電池入れ」「⑪アクリル棒さし」「㉔カラーコーン重ね」「51スライドブロック」などを紹介してきました。今回紹介する通称「ブタコイン」もその一環で、『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として考えています。

 

 

 

 

 

 

具体物を「穴に入れる」ということを考えたとき、一番難易度が低いのはボールなどの球状のものでしょう。次に、電池などの円筒状のものになるでしょう。四角いもの、三角のものなどは角を合わせる必要があるため、難易度が上がります。

コインは、円盤状の形をしています。これを穴に入れる際には方向を合わせる必要があり、子供にとってはかなりの難易度となってきます。また、方向を合わせる際には手首をひねることになり、スプーン、フォークといったものを使う際の基礎学習ともなってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

112形態構成のバリエーション

形態構成、すなわち1枚絵を分割したパズルは基本的な教材であるため、「①形態構成」「104扱いやすい教材のサイズ その2」「107縦方向の形態構成」といったように何度も紹介してきました。今回もそのバリエーションの一つとなります。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

形態構成の難易度を上げるのは簡単です。分割する数を増やせば増やすだけ難しくなります。文字や数を学習するなら6~8分割くらいはできていてほしいですし、大人でも、16分割あたりになるとかなり苦戦するでしょう。

一方で難易度を下げるにはどうすればいいでしょうか。当然、分割する数を減らします。二分割、あるいはそもそも分割しない(ただの四角い型はめパズルとなる)ということも考えられます。一方、この「無分割」パズルと「二分割」パズルとの間の難易度の違いはかなり大きく、子供によっては習得が年単位でかかるものになっていました。

 

 

 

 

 

 

そこで、「無分割」パズルと「二分割」パズルとの間に設定したのが右の教材となります。絵と絵の切片をギザギザにしてあるため、絵が合わない限り、パズルのピースは枠にはまりません。見て分かる前の、手ごたえに頼った学習になっています。

このように、子供がスモールステップで学べるように、様々な工夫を行っています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

73 輪抜き/輪通しの教材

④で紹介した輪抜きの教材ですが、今回は輪抜きに使う棒やペグの工夫を紹介していきます。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。最も簡単に手に入る組み合わせは、百円均一のお店で売っている「キッチンペーパーホルダー」と、輪になっているものなら何でも、というところになるでしょう。今回の棒は、安定感を出すために太さ20ミリ長さ200ミリの木材を、土台に差し込んで作成してあるものです。

 

輪抜きは、「ここ(輪を持った時点)からここ(輪が抜けるところ)まで」という、終わりに向けて運動を持続させていく学習になります。子どもにとって、「何をすればよいのか」というのが明確になります。また、身体の動かし方が苦手な子にとっては、手首等の使い方の練習にもなってきます。

 

以下の教材は、手首の使い方、目の使い方を練習するために特に工夫してあるものです。穴が板の中心にあるものから始まり、徐々に持ち手が長くなっていきます。持ち手が長くなるにつれ、手首の動きや、目の使い方を調整する必要が出てきます。

 

 

 

 

 

 

次の教材は、持ち手をL字状にしたものです。これを上手に抜く、あるいは棒に通すといった場合、かなり手首や目の使い方を調整する必要があります。

 

 

 

 

 

 

このように輪抜きの教材といっても、何を用いるのかということにより、だいぶ難易度は変わります。子どもの学習の目的に合わせて選択していくことになります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

72 押したら鳴る教材

今回は百円均一のお店などで売っている、市販の教材を紹介します。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。子どもの分かる力の発達を考えていくとき、最初に考えられるのが㊼「保冷剤」や63「アリスのティーパーティー」のような教材で、「触ること」「揺れること」「回ること」など何らかの感覚に気づくことです。その中でも、文字や本、絵、動画のような「見る」教材には子どもはなかなか気づきにくいということは繰り返し紹介してきました。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、握ったら音が鳴る教材です。「音が鳴ったことに気づく」ことが最初の気づきだとすれば、「握ったから音が鳴る」という気づきは、その次のステップの気づきとなります。これを『因果関係の理解』と言い、㊽「積み木倒し」と同じような目的となります。同じような目的の学習に、押したら扇風機が回るスイッチ、押したら振動するスイッチ、触ったら画面が変化するタブレット端末のアプリなどがあります。

 

「こうしたらこうなる」という経験を積み重ねる中で子どもの予測する力が育ち、「これはこういうものだろう」ということが見ただけでわかるようになっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

63 アリスのティーパーティー

今回紹介するのは、本校のオリジナル教材「アリスのティーパーティー」です。長年使用されている教材になります。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として紹介していきますが、場合によっては「回転しながら文字を読む」といった目的でも使っていけます。

 

遊園地における、いわゆる「コーヒーカップ」と似通ったコンセプトの教材です。安定した土台と、回転する上部に分かれていて、座位が取りにくい子どもでも、安全に取り組むことができます。「前庭感覚」を楽しむ教材です。

 

 

 

「前庭感覚」というのは、頭の傾きや、動きをとらえる感覚です。「頭の傾き」や「頭の動き」というのは生物にとってとても重要な情報ですので、これをとらえる「前庭感覚」というのは、かなり早くから子どもに備わってきます。

しかしながら「前庭感覚」とひとことで言っても、実際にはいくつかの感覚の集合体となります。たとえば、大人の中でも「ジェットコースター(加速)の得意不得意」「コーヒーカップ(回転)の得意不得意」「絶叫遊具(落下)の得意不得意」など、千差万別のはずです。

加速は好きだけれど落下系はどうしてもだめだとか、回転だけはどうしてもだめだとか、色んな人がいます。子どもも同様で、ブランコ(加速)は好きだけれどトランポリン(落下)は苦手だとか、回転遊具は好きだけれど車いすの急発進は苦手だとか、色んな子どもがいます。中には、エレベーターのふわりとする感覚がどうしても苦手だったり、足が地面から離れるだけでもものすごく怖くなったりする子もいます(重力不安)。仰向けになることでも不安になりやすい子がいます。

 

今回の「アリスのティーパーティー」は前庭感覚の中でも、「回転」にアプローチする教材となります。なお、「アリスのティーパーティー」の名称は、上部のタライに「不思議の国のアリスの絵がプリントされていることに由来します。

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

62 ハンドスピナー

今回紹介するのは、市販品の「ハンドスピナー」です。大好きな子どもも多いかと思います。該当する発達のステージはこの教材を使用する目的によって変わるのですが、今回は『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として紹介していきます。

 

長時間回転し続けるハンドスピナー。じっと見入っている子どもも多いのですが、どうしてなのでしょうか? そもそも「見る(視覚)」というのは難しい感覚のはずです。㊼で紹介しましたように、子どもが最も気づきやすいのは「前庭感覚(揺れ・傾き・加速・回転)」「固有感覚(力の入り具合、関節の曲がり具合)」「触覚」のはずです。

 

 

「見てわかる」というのは難しいことです。なのに、多くの子どもがハンドスピナーを好きですし、ドアの開閉が好きな子もいます。TVの番組や、タブレットの映像が好きな子もいます。

 

これは「見る」といっても、見ることの働きが「色や形を見分ける」ことと、「光や動きを感じる」こととでは、大きく違うからです。子どもが好きな視覚情報というのは、多くは「光っているもの」「動いているもの」になるでしょう。実際のところ、「色や形」と「光や動き」とでは、目の中でも使っている部分が違います。「色や形」を見ているのは、眼球の中心のほんの少しの部分で、『中心視』と言います。「光や動き」を見るのはその他の周辺部分で、『周辺視』と言います。見ることの学習は、光や動きに気づくことから始まり、色や形を見分けることへと進んでいきます。

 

 

 

 

 

 

 

中心視と周辺視とでは、得意・不得意があります。大人はそれを自在に切り替えていて、キャッチボールをするときなど、物の動き全体を捉える必要があるときには周辺視を、パズルをするときなどには中心視を使っています。特に文章を読むときには、全体を大まかに捉える周辺視と、個々の文字を見分ける中心視を円滑に切り替える必要があります。

 

また、すごく暗い星を見る時などには、目の中心で見ようとしても難しくて、目の端の方で見たほうが見えやすいということがあります。「光や動き」を捉えやすいのが、周辺視の特徴だからです。

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

51 スライドブロック

今回紹介するのは、「スライドブロック」です。目的としては「⑨立体迷路」とほぼ同じなのですが、難易度が調整できるようにしてあること、高さがあるのでペグが「落ちた」ということに気づきやすいという特長があります。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

 

このスライドブロック、百円均一の店で売っているスチロールのブロックを掘りこみ、缶を差し込むことで作られています。また、フローリング用の素材を表面に貼ることで、ペグがすべりやすいようにしてあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このスライドブロックは、最初は「少しだけ動かしたらペグが落ちる」というところから始めていきます(点)。そしてすこしずつ距離を取り、一定の距離をすべらせてから落とすようにしていきます(線)。そのうえで、折り返しがあるなど、方向を切り替えながら落としていきます(面)。

このスライドブロックでは表現できませんが、最終的には高さも伴って空間的に操作すること、さらにはタイミングを合わせて時間的に操作すること…といったように、どんどんと巧緻性を増していきます。これは「点→線→面→空間→時間」という空間を捉える力の発達でもありますし、操作している時間が「瞬間的」であったものが、どんどんと「持続的」になっていくという時間を捉える力の発達の過程でもあります。

 

ツリーチャイムのような「さわることによって変化が起こる」教材なども、子どもが瞬間的にさわっていたのから持続的にさわるようになり、音楽に合わせてさわるようになり…と次第に持続的に、複雑に触れるようになっていきます。

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

㊽積み木倒し

今回紹介するのは、様々なところで手に入る積み木です。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

 

前回の㊼では、「触れたものに気づく」ということの取り組みを紹介しました。その次のステップとして、自分から触ろうとすること、すなわち「自分がしたこと」と「その結果」の関係性がわかる『因果関係の理解』があります。

 

 

 

触ろうとするためには、「おや、なんだろう?」という気づきが必要となります。その力を育てやすいのが、わずかな手の動きで大きな結果が得られる(ガラガラと大きな音と振動がする)積み木倒しです。子どもたちは自分のやったこととその結果を経験する中で、「~をしたらどうなる」ということを学んでいきます。そして、どんどんと手を使って自分の外の世界に働きかけていくことになります。本校の子どもたちはその際に身体が動かしにくいということがあるのですが、そこを様々な装具や、身体の取り組みを通して補っていきます。

 

 

 

 

 

 

積み木倒しと一言で言っても、「どこに置くのか」ということで子どもにとっての難易度は変わってきます。手前に置くか、奥に置くか。子どもによって違うのですが、手元に引き付ける手の動きがやりやすくて、奥に手を差し伸べる方が難しいことが多いようです。

㊼は基本的に「さわられる」ことの学習でしたが、この㊽では、自分から「さわる」ことの学習となります。この学習のためには、他にも楽器だとか、様々なスイッチ教材などがあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

㊼保冷剤

今回紹介するのは、様々なところで手に入る保冷剤です。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

 

人には、様々な感覚があります。よく「五感(視覚/聴覚/触覚/味覚/嗅覚)」と言われるのですが、実際にはそれだけではなく、たくさんあります。例えば目をつぶって「グー・チョキ・パー」を作る際に使っている感覚は、「五感」のどれにもあてはまりません。

 

 

 

基礎的な内容を学んでいる子どもたちの場合、以下の3つの感覚を通して世界を捉えていることが多いようです。

「前庭感覚」…頭の傾き、回転、加速、落下といったことを感じ取ります。平衡感覚とも。

「固有感覚」…筋肉や関節の曲がり具合を感じ取ります。重さや手ごたえ等です。

「触覚」…点字を触り分ける際などの狭い意味での触覚のほか、痛み、温かさ、圧迫、振動などを感じ取ります。自分の身体と外の世界との接点となります。

大人になってしまうとこれらの感覚を意識することは少なくなりますが、子どもたちの発達を考えたとき、この3つの感覚を整えていくことが非常に重要となります。毛布ブランコ、トランポリンなど、子どもたちが気づきやすい活動の中に多く含まれている感覚となります。その中でも触覚、特に手のひらの触覚は重要です。「さわる」ことから「見る」ことにつながっていくからです。「手のひらに何かが触れていることに気づく」ことから学習は始まっていきます。

 

「触覚」には様々な感覚が含まれるのですが、その中でも「冷たさ」と「振動」「重さ」は比較的子どもが気づきやすく、学習に取り入れやすい感覚になります。冷蔵庫で冷やした(冷凍庫だと低温火傷をしてしまうので)保冷材に触れ、「おや、なんだろう?」ということに気づいていきます。保冷材のほかにも、スライム、植木鉢に給水するためのゼリーボールなどでもよいのですが、子どもが口元に持っていくこと等に気を付ける必要があります。

 

最初に戻りますと、我々が目をつぶっていても「グー・チョキ・パー」を作ることができるのは、「固有感覚」によって手の筋肉や骨の状態をモニターしているから、ということになります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

㊶市販の教材の活用 入れる教材

今回紹介するのは、市販の玩具です。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。この教材そのものも非常に使いやすいのですが、この教材に付属しているボールだけを取り出して色分けだとか、筒入れだとかに使うこともあります。このボールは直径45ミリで、子どもの手にすぽりと収まり、なおかつ間違って食べてしまいにくいようなサイズになっています。

 

使い方としては、多くは「入れる」ということを学ぶために使っていきます。また、入り口にボールを入れるとぐるぐると回りながら下に落ちていくので、追視の学習にもなります。ボールを入れてから「チャリン」と音が鳴るまでに一定の時間があることで、物事の因果関係を学ぶ学習にもなります。

 

 

 

そのままでもよいのですが、いくつか手を加えるとさらに子どもに合わせやすくなります。例えばこの写真では、入り口をセロテープで狭くしています。そのことでボールを入り口で固定することができ、「ボールを持って入り口までもっていく」という運動が難しい子どもであっても、最後の一押しをすることで「ボールを押し込んで入れる」ということができます。

 

 

また、入れるボールによってもだいぶ変わってきます。例えばゴルフボールなどはほぼ同じサイズですが、入れるとすごくゆっくりと落ちていき、追視がしやすくなります。また、直径45ミリの鉄球を入れると、ガチャン、ガチャンと重厚感のある音を立てながら落ちていき、子どもが気づきやすくなります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

教材紹介㉞「さわってわかる教材」

今回紹介するのは、市販の教材です。元々教材として販売されているものもありますし、別の用途のものを教材として用いている場合もあります。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

 

子どもは、最初から目を上手に使えるわけではありません。たくさん手を使い、手ごたえや重さ、感触などを確かめ、やがて目で見ただけでそれがどういうものであるのかがわかるようになっていきます。そのため、目の使い方を学ぶためには、まず手を使うことを学んでいく必要があります。

 

 

 

 

『感触』とは言いますが、つるつる、ざらざらといった狭い意味での「触覚」だけではありません。「手ごたえ」「重さ」「暖かさ」「痛さ」「圧迫」「振動」など、さまざまな情報が手から入ってきます。教材を口で確かめれば、「歯ごたえ」「におい」「味」なども入ってくることでしょう。

 

 

それらの感覚の中でも、特に気づきやすいのが「振動」となります。振動は触覚だけでなく、骨や筋肉などにも入ってくる感覚だからです。触ると震える「ミニ・ドーム」は子どもにとってとてもわかりやすい教材です。押すとドームの中の細かいものが飛び散ることもあり、目の使い方の学習にもなります(「光」と「動き」は、視覚情報の中でも気づきやすい情報になります)。

とはいえ「ミニ・ドーム」や「ライトムーブ」などの製品は高価なものです。「振動に気づく」「触ったことに気づく」という目的であれば、安価なマッサージ器具を使っていくこともできます。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

㉖ハンマーたたき

今回紹介するのは、市販のハンマーたたきです。ただ、ハンマーはグリップが長いものに変更していますし、ボールもかなり強く叩かないと落ちない大きさのものに変更してあります。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

 

子どもは最初のうちは、肘や手首を固めて、肩の動きでハンマーを振っていきます。徐々に腕の動きが分化し、肩ではなく肘を使うように、そして手首のスナップをきかせて振り下ろすようになっていきます。肩→肘→手首と身体の末端の部位をコントロールできるようになるにつれて、叩き損じなども減っていきます。

 

 

このハンマーたたきのように、手首を自在に使うことを練習していく中で、スプーンやフォーク、そして箸や鉛筆といった道具を扱う基礎が整っていきます。「食べこぼしが気になる」「運筆がぎこちない」といったとき、スプーンや鉛筆の練習自体に取り組むというのが最もシンプルな発想ですが、このハンマー叩きのように、より基礎的な手の使い方を練習してみてからスプーンや鉛筆を使ってみる、といった道筋もあるのではないでしょうか。

(本校特別支援教育コーディネーター)

教材紹介㉔「カラーコーン重ね」

今回紹介するのは、百円均一の店舗で売っているカラーコーンを重ねていく教材です。土台については、教材が動きにくいように木や皿などで自作しています。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

 

③の鉄球入れや⑪のアクリル棒さし、電池を筒に入れるといった学習を経て、子どもは「入れて終わる」という活動の終点を学んでいきます。球や円筒状のものは筒に入れてしまえばもう取ることができませんが、コーンの場合、いちど重ねてもまた取り外せてしまいます。そのため、「重ねる」教材は「入れる」教材よりも『終わり』に気づきにくい、難易度の高い教材となります。

 

そのため、コーンの中に百円均一の店舗で売っている、強力な磁石を固定することもあります(瞬間接着剤などを用います)。そうすることで一度くっついたコーンがなかなか離れないため、子どもにとって重ねたら『終わり』ということがわかりやすくなるためです。また、「色」というのは子どもにとって比較的気づきやすい属性ですが、その弁別を行うにあたっても、2色までであれば磁石のN極とS極を利用して、「色が合っていたら重なり/合っていなければ重ならない」という状況を作ることもできます。色を見分けるところから、形の見分け、大きさの見分け、種類の見分けといったところに進んでいきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

教材紹介⑰「球と輪の弁別」

今回紹介するのは、③の鉄球入れと、④の輪抜き課題で使った教材を組み合わせた学習活動になります。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』、あるいは『Ⅱ見分ける学習の教材』として使うことを想定しています。

球を筒に入れる、輪を棒に通す、コインを貯金箱に入れる、カラーコーンを重ねるなど、複数の教材を取り扱えるようになると、弁別の学習を行うことができるようになります。

「弁別」には、様々な視点があります。色の弁別、形の弁別、大きさの弁別、長さの弁別、季節の弁別、種類の弁別、陸海空の弁別等々。多くは、それらの違いを見分けていく学習です。

 

 

 

 

 

 

その中でも、最初に取り組みやすいのが「球との輪の弁別」のように、そもそも『失敗することができない』弁別となります。右の写真は色の弁別ですが、この場合、子どもは間違えたとしても間違えたこと自体に気づかないかもしれません。

一方、球は棒にささりませんし、輪は筒には通りません。子どもは手ごたえによって「おや?」と違和感に気づき、目で確認していくことになります。そして、試行錯誤的に入れていたのから、実際に試してみる前に「入りそう/入らなそう」ということがわかるようになっていきます。手をたくさん使うことから、目の使い方が育っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)