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カテゴリ:Ⅲ.言葉やイメージを広げていく際の教材

197色と形、半立体のマトリクス

これまでも「色と形」という2つの属性を組み合わせる表(マトリクス)の教材を紹介してきました。3×3、4×3、4×4、5×5など様々なものがありましたが、それらは基本的に50ミリ四方の木に、ラミネイト加工したものを貼り付けたものでした。

今回紹介するのは、若干視点が異なり、〇△□、そしてハートと星の形について、半立体の具体物をペグとして用いるものです。色合いをそろえるため、塗装には同じ絵の具を使用しています。また、ハートと星の形は適当な木片が見つかりにくいため、市販されている2ミリ程度の薄さのものを数枚貼り合わせて厚みを出し、それを塗装することでペグにしています。

 

 

 

 

 

 

従来の、印刷した絵が貼り付けられているものと、今回の教材とではどちらがやりやすいでしょうか? 目が見えにくく、形が捉えにくい子どもにとっては、今回の教材の方が「触って形がわかる」ために取り組みやすいかもしれません。一方、手を持ち上げにくい子どもにとっては従来の教材の方が、「すべらせて操作できる」ためにやりやすいかもしれません。これも、ケースバイケースになります。多様な子どものニーズに応じるために、同じ内容であっても、様々な教材を用意しています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

166位置把握・口頭

13、16、96、106、162回で紹介してきた位置把握課題ですが、これらは基本的に「目で空間を捉えて」「記憶し」「手で操作して空間を再現する」活動でした。板書を見て同じように書く、といったことにつながっていきます。「見比べる」力を育てる活動です。

 

 

 

 

 

 

この活動に十分取り組むことで可能になってくるのが、今回紹介する、「口頭での位置把握」になります。使い教材としてはこれまでと同じなのですが、教員側の見本を隠したうえで、「真ん中はアンパンマン」「アンパンマンの右がドキンちゃん」など、口頭で伝えていき、耳で聞いた情報から自分で空間を組み立てていくという活動になります。

 

 

 

 

 

 

これは「目で見て」行うよりもかなり難易度が高い活動になります。なお、子どもが取り組んだものが合っているかどうかの答え合わせは、教員側が隠し持っていた見本を「見る」ことで行います。「見て分かる」が十分に身についてきたところで、見えないものを聞いただけでイメージする、「聞いて分かる」の学習に進んでいくわけです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

162位置把握の提示法(3次元)

「161パズルボックス」では立体的に空間を捉えることについて紹介しました。今回は、13、16、96、106回で紹介してきた位置把握課題において、立体的に空間を捉える教材の提示の仕方を紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な位置把握課題がありますが、ここにあげているものは縦×横、もしくは高さ×横の、2次元的なものです。3次元的な位置把握課題となると、例えば縦×横×高さで立体的に積み上げた積み木を、同じように積み上げる、といったことが考えられます。ですが、これは手が使いにくい子どもにとっては非常に操作が行いにくい課題となります。また、見本の全体像が見渡しにくいということもあります。

 

 

 

 

 

 

そこで、右の写真のように、教材を提示するという方法があります。これは教材を作る段階で一定の長さのあるダボを利用しているため、穴が開いているペグをいくつか通して「高さ」を表現することができます。ペグを棒に差し込んでいるため、積み木のように倒れることもありません。

(本校特別支援教育コーディネーター)

155高さの系列化(10まで)

前回の続きになります。前回は5まででしたが、同じ枠を2つ並べることで、「10まで」の高さの系列化の教材となります。アクリル棒の高さは、5までに続けて100mm、110mm、120mm、130mm、140mmに調整してあります。

 

 

 

 

 

 

白と黒の2色を使い、「自分で並べる」「見本を見ながら並べる」というように難易度を調整できるようにしてあるのも、5までと同様です。大小を10個並べる、高低を10個並べる、そして次回紹介する「長さ」を10個並べるくらいの力が育つと、「数量」の学習に入ってもスムーズに学んでいけるのではないでしょうか。

(本校特別支援教育コーディネーター)

154高さの系列化(5まで)

㊾「大小を並べる教材」105「様々な並べる教材」で「大きさ」に沿って並べる際の教材を紹介しました。物事を順序付ける(系列化する)視点には、「大きさ」のほか、「高さ」「重さ」「長さ」「速さ」「熱さ」「暑さ」「厚さ」「新しさ」「丸さ」「音量」「面白さ」など様々なものがあります。それらのうち、「速さ」「暑さ」などは教材化するのが困難です。教材化しやすいのは「大きさ」「高さ」「長さ」のように「目で見て分かる」もの、あるいは「重さ」「なめらかさ」「硬さ」「熱さ」のように「触って分かるもの」になるでしょう。

 

 

 

 

「大きさ」については様々な物が市販されていることをお伝えしてきました。いわゆる「ピンクタワー」のほか、入れ子、マトリョーシカなどです。「高さ」についても市販されているものがあるのですが、手の操作が苦手な子どもにとっては扱いにくい(すぐに倒れてしまう)ということがほとんどです。

 

 

 

 

 

 

そこで、穴に差し込むようにすることで、倒れないようにしたものがこの教材です。アクリル棒は幅が20ミリのものを使い、高さを50㎜、60㎜、70㎜、80㎜、90㎜と10ミリ刻みで調整してあります(穴の深さがシナベニヤ3枚分なので、これでちょうど1~5の階段状になります)。なお、アクリルの棒を切るのは業者に発注しています。詳細は本校コーディネーターまでお訊ねください。

また、アクリルの棒を白と黒の2色使い、穴を5×2の2行で開けることで、「自分で並べる」ことと、「見本を見ながら並べる」ことの両方ができるようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

101 二語文の総合と分析の課題 その2(人物と動作)

同じ二語文であっても、「色と形」という組み合わせは、子供にとって比較的気づきやすい組み合わせになります。今回は、それよりももう少しだけ難しい、「人物と動作」の組み合わせの二語文の教材を紹介していきます。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』として想定しています。

 

 

 

 

 

 

教材の作り方としては99と同様で、板目表紙を素材としています。上の方の絵は顔の部分が切り抜かれており、下の絵が見えるようになっています。上の絵、下の絵を交換することで「人物と動作」の組み合わせの絵を作っていきます。

 

 

 

 

 

 

使い方も前回同様です。「男の子が手を洗う」を作るといった「総合」の学習。「この絵はだれ?」「何をしているの?」といった「分析」の学習といったことを通し、頭の中を整理し、言葉の力を高めていきます。

 

二語文には、他にも様々なものがあります。「おおきい らいおん」「ゆっくり あるく」「かんせいな じゅうたくち」。それらのなかで前回、今回取り上げた「色と形」「人物と動作」のように、子供によってわかりやすいものから徐々に学習を進めていきます。二語文の学習は他にも様々なやり方があり、例えば②で紹介したマトリクスのように、色や形といった属性を組み合わせて表を作る、といったものもあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

90 絵の不合理、文の不合理

今回紹介するのは、物事を説明する力を高めていくための教材です。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。昨今は「主体的・対話的で深い学び」が問われていますが、そこにおいて重要なのは、「どうしてそう思うの?」「つまりどういうこと?」「他にはどういうことがある?」といった発問になってくるのでしょう。教員が説明するだけ、動画を視聴するだけでは、なかなか理解は進んでいきません。教員とのやり取りの中で、子供自身が言葉で物事をまとめていきます。

 

 

 

 

 

 

とはいえ、子供は最初から上手に物事を説明できるわけではありません。そこで、このように「ここが違う!」など説明しやすい教材を用意し、スモールステップで学習を進めていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これらの教材は「間違っているもの」「正しいもの」それぞれに文と絵がセットになっていて、『正しいものを選ぶ』『見るなり、聞くなりして正しいかどうかを答える』『間違っているのであれば、何が間違っているのかを説明する』といった学習を行っていきます。

 

学習のステップとしては、

A絵を見て、正誤を判断する

B教員が言ったのを耳で聞いて、正誤を判断する

C文を読んで意味を取り、正誤を判断する

という順で難しくなっていきます。文から意味を取るのが難しいようであれば言葉を添え、言葉で分かるのが難しいようであれば絵を見せていきます。どこまでも子供の力に合わせていきます。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

88 絵の順序

今回紹介するのは、物事の順序、時系列を学ぶための教材です。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。

 

 

 

 

 

 

2枚以上の絵を、物事の順序や時系列に沿って並べていく教材です。ラミネイト加工し、板にセロテープで貼り付けることで操作しやすくします。

国語の内容、あるいは自立活動の内容になりますが、算数での「数字を並べる」「大小を並べる」「高低を並べる」「数量を並べる」といったこととも関連の深い内容になります。

『種をまいたら芽が出る』といったように、「~したら~になる」「~をして~をする」といった2つのことを関連付けるということは子どもにとって比較的なじみやすいのですが、それが3つ、あるいは4つに増えていくと、途端に難易度が上がっていきます。この教材は「並べて終わり」でなく、どういう話なのかを説明してもらいます。日ごろたくさんお話している子供であっても、こうやって改めて説明を求められると途端に困ってしまうことがあります。2つの絵を並べて説明するあたりから、物事を整理して話すという練習をしていきます。

また、子供の中にはおしゃべりをすることは難しいけれど…という子がいます。それでも、こういった「操作する」教材を渡すことで、会話に頼ることなく「どのように子供が考えているのか?」といったことを知るきっかけにもなっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

79 触知覚を育てる教材

今回は触知覚を育てる教材を紹介していきます。触「知」覚と言っているからには一般的な意味での触覚とは少し違って、点字のように「触ってわかる」「触り分ける」ことを目的としています。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

これまでに紹介してきた教材の活用ともいえるのですが、例えば⑰の球と輪の弁別、㉙の市販の型はめなどを、ペグを袋や箱に入れ、「視覚に頼らず」触り分けて取り出していきます。球と輪の違いを触り分けたり、〇△□の違いを触り分けたり、各キャラクターのフィギュアを触り分けたり…。触り分ける力を高めていく中で、散髪や爪切りが苦手、服のタグが嫌といった触覚の過敏が調整できるようになったり、見て分かる力が高まっていったりすることがあります。

 

同じく触知覚を高めるためのものとして、「お腹や背中、手に文字や数字を書いてもらい、それを当てる」といった学習もあります。また、数量を触覚に頼ってあてる、といった学習もあります。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

61 文字を読み上げるまでに その3

前回の続きとなります。文字面で「『これ』は何ですか」という問いに答えられて、「読み上げることができた」と言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

ただ、ここで注意したいのは、「読めなかったとき」です。ここまでの学習で「絵を見て『か』と言うこと」「身振りを見て『か』と言うこと」はできているはずです。ですので、読めなかったとしても、カードを裏返して絵を見たり、先生がやる身振りを見たりすれば、なんと読むのかを思い出せるはずです。

 

 

 

 

 

 

ところが、実際の場面ではどうでしょうか。子どもが思い出せていないとき、子どもが思い出す前に「『か』でしょう!」と大人が言ってしまい、それを聞いて子どもが「か」と言っていることはないでしょうか。それでは耳で聞いて同じように言っているだけであって、「文字を読み上げている」とは言えません。

 

ポイントとしては、「『か』と最初に言ったのが誰か」ということになります。実は大人が最初に言ってはいませんか? 子ども自身が「どう読むのか」を思い出すことが何よりも大切で、それを可能にするために身振りなり、絵なりといった、読み方を思い出すためのヒントをたくさん学習していくわけです。

 

文字を読みあげるためには、それぞれの子どもに応じた、色んな学習のやり方があります。59~61では、それらのやり方の一つを例として紹介してきました。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

 

60 文字を読み上げるまでに その2

前回の続きです。絵の面で確実に選択できるように学習していきます。「身振り+音声」での提示でできるようになったら、「音声だけ」「身振りだけ」の提示でも選択できるように学習していきます。

 

 

 

 

 

 

また、絵の面を見て「これは何ですか」と聞かれて読み上げるということも行っていきます。この時点では、文字を読み上げているのではなく、絵を見て読み上げるので十分です。発語が出にくい子どもの場合、絵を見て身振りを行っていきます。

 

 

 

 

 

 

絵の面で「身振り+音声」「音声だけ」「身振りだけ」のいずれでも確実に選択できるようになったら、カードを裏返して文字の面を使っていきます。ここでも「身振り+音声」「音声だけ」「身振りだけ」の順を追って学習していきます。

 

 

 

 

 

 

ここで何よりも大事なのは、「子どもが自分で正誤を確認できる」ということです。「『う』はどれですか」と聞かれて、間違ったカードを選んだとしても、カードをめくって絵の面を見れば合っているかどうかがわかります。ここで、いよいよ文字の面を一枚ずつ見て「『これ』は何ですか」と聞かれて読み上げるということを行っていきます。これができてはじめて「文字を読み上げることができた」と言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

59 文字を読み上げるまでに その1

単語の意味を取る前に、まずは文字を読み上げます。今回紹介するのは、53から55にかけて紹介した文字カードを駆使した、文字の読み上げの教え方です。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

文字を読み上げるためには、どんな基礎・基本の力が必要になるでしょうか。まずは、「『あ』と『め』、『す』と『む』、『れ』と『ね』など似通った文字を見分ける力」が必須となります。㊸で紹介した細部視知覚のこととなります。①で紹介した形態構成で言えば、4~6分割くらいのパズルはできていてほしいところです。

 

 

 

 

 

 

次に、そもそもの「わかる力」「イメージする力」の育ちとなります。目途としては、相手の身振りをその場で模倣したり、大小を比較できたりするくらいの力です。

 

その他にも、しりとりや「うま→まう」「うし→しう」など単語を逆に言うときに使う、日本語の一音ずつを捉える力(音韻意識)。物事を記憶する力などが必要になってきます。また、日ごろ繰り返し使っている名前カードや日課カードなどを読み上げていることなども、「そろそろ一文字ずつを勉強していく時期」のタイミングとなってきます。逆に言うと、いくら字を勉強してもなかなか身に付きにくいという場合、ここにあげたどこかの力がつまずいているのかもしれません。そういう時は、いったん基礎・基本に戻って学習してみるとよいのではないでしょうか。

 

では、いよいよ文字カードを使っていきます。最初は、絵の面を並べていきます。

 

 

 

 

 

 

「『あ』はどれですか?」「『い』はどれですか?」と身振りを交えて発問します。これは文字を学ぶための基礎・基本ができていれば、選択できるはずです。逆に言うと、これができなければ文字を学ぶのはまだ早い、ということになるのではないでしょうか。

 (特別支援教育コーディネーター)

57 0から5までのサイコロ

今回紹介するのは、「0から5までのサイコロ」です。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

サイコロというのはすごろくに使うなど数の学習の時に活躍することの多い教材なのですが、一般的な1から6のサイコロというのは扱いにくいことがあります。数量の理解の基本は「5のまとまり」「10のまとまり」の理解になるところ、どうしても「6」の扱いに困るのです。本来であれば、「6」という数量は「5と1」として教えたいところです。

 

そこで、サイコロの6面のうち、「6」にあたるところを「0」にし、「0から5までのサイコロ」にしてしまいます。そうすると出てくる数字が5までとなり、子どもが「5のまとまり」を意識しやすくなってきます。「0」の概念の導入ともなります。

 

市販品としての「0から5までのサイコロ」はなかなか手に入りにくいようです。一部の算数セットに含まれているほか、立方体の木に自分で書く、無地のサイコロ(市販されています)に書き込む、といった入手法があります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

56 吹きゴマ

今回紹介するのは、呼気を調整する力を学ぶための吹きゴマとなります。一定時間、口をすぼめてそっと息を吹き続ける呼気のコントロールというのは運動面からみてもかなり難しい力で、およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

この吹きゴマは市販品になります。色とりどりなので、色の弁別に用いたり、教員が吹いたのを注視するために用いたりすることもあります。

 

 

 

「息を吐く」「息を吹く」というのは呼吸器系を整えたり、円滑に口周りの筋肉を使ったりするうえで、重要な学習になります。他にも「ピンポン玉を吹いて動かす」「ラッパ」「シャボン玉」「風船を膨らませる」「お祭りでよく見る『吹き戻し』」などいろいろなものがあるのですが、この吹きゴマは少ない呼気でもコマがくるくると回るので、子どもにとっても意欲的に取り組みやすい教材となります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

55 文字を読み上げるためのカード その3

前回まで紹介してきましたように、『あ』を「あり」と読んでしまうのは適当ではありません。一方で「よくある50音表」のように絵と一緒にイメージで文字をおぼえていく、ということの効果も重要です。そのため、ここでは『き』は「き(木)」の絵、『め』は「め(目)」の絵、『て』は「て(手)」の絵といったように、一音ずつで成立する言葉の絵を選んでいきます。

 

 

 

 

 

 

また、絵を選ぶ際には、「身振り化できる絵である」ということも重要です。子どもたちの中には、文字を読むことができても、発音することが難しい子どもがいます。そんなとき、読めているかどうかを身振り化してもらうことで判断することができます。また、絵と同様に、身振りをおぼえることで、発音を思い出すヒントにもなります。

 

こうした条件を踏まえて絵を選んでいくと、「木」「目」「手」「歯」「蚊」「毛」「背」「血」「火」「矢」「湯」「輪」あたりが出てきます。しかし、足りません。「絵」「田」「津」「戸」「藻」「炉」などは言葉として存在しますが、身振り化しにくかったり、そもそも子どもが言葉を知らなかったりします。

 

そこで、「あ(驚く)」「い(口を横に引く)」「う(お腹を押さえる)」「え(小首をかしげる)」「お(納得する)」といったように、擬音なども含め、ジェスチャーありきで絵を選んでいきます。こうやって完成したのが今回の文字カードです。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

54 文字を読み上げるためのカード その2

前回の続きとなります。片面が文字、片面が絵というカードはよく市販されていますし、50音表もさまざまなものが存在します。その中であえてカードを手作りしているのは、「操作をしやすくする」というためだけではありません。

 

左の写真が、「よくある」50音表です。これで学んでいくとどういうことが起こるかというと、『あ』を見て「あひる」と読んだり、『い』を見て「いえ」と読んだりする子どもが育ちがちです。「自分の名前の頭文字=自分の名前」と思っている子どももいることでしょう。すなわち、「あ」という一つの音に『あ』という一つの文字が対応するという、ひらがなの最大のメリットがわかりにくくなってしまうということになります。

 

「一つの音に一つの文字」というと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、漢字などは「犬(いぬ)」のように「複数の音に一つの文字」ですし、ローマ字などは「TA(た)」のように「一つの音に複数の文字」となります。意外かもしれませんが、ひらがなというのは世界的に見ても学びやすい文字だと言われています。

 

読字障害(ディスレクシア)というものがあります。これは使用する文字によって大きく違っていて、イタリア語や日本語では起こりにくく、英語では頻発する、と言われています。これには明確な理由があります。アルファベット全般がそうですが、『A』という文字は、実際には「ア」と発音することが多いにも関わらず、「エー」と読んでいます。ひらがなの場合、『あ』は「あ」でしかありません。ここで混乱が生じるのが1つ目の理由。英語が『TEA』のように複数の文字で1つの音を表しているのが2つ目の理由。そして、英語ならではの理由としてあるのが、『A』という文字を、非常にたくさんの発音で読む、ということがあります。「C『A』T」「POT『A』TO」「『A』LWAYS」。同じ『A』なのに、読み方が全く違います。それに対し、『あ』は「あ」でしかありません。これがひらがなの学びやすさとなります。

 

話は戻りますが、せっかくのそういったひらがなの特徴があるので、一音一文字の原則を十分に身につけ、『あ』を「あり」と読むことがないようにしていきたいところです。

 

※特殊音節、漢字といったものは例外となります。『きゃ』などは1つの音を複数の文字で表しますし、「おと『う』さん」「せんせ『い』」などは発音と表記が一致していません。「O(お)」という音も、時と場合によって『お』や『を』と書き分けたりします。ひらがなの表記も、この辺りがつまずきやすいところです。漢字も、音読み、訓読みというように時と場合によって読み方が異なるため、つまずく子が出てきます。丁寧に教えていく必要があります。

※なお、イタリア語は英語よりも文字と発音の規則性が明確なため、ディスレクシアが起きにくくなります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

53 文字を読み上げるためのカード その1

今回紹介するのは、文字を読み上げるようになるためのカードです。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

繰り返しカードを読み上げれば、文字を読み上げられるようになるわけではありません。そもそも、「文字が読める」ことと「文字の意味が分かる」ことは大きく違います。例えば、英語で「I can’t get no satisfaction」という文があったとして、これを「読み上げる」ことと、「意味が分かる」ことには大きな違いがあるはずです。ひらがなも同じで、子どもが「り」「ん」「ご」と一文字ずつ読み上げることができたとしても、そのとき子どもの頭の中に『りんご』のイメージが浮かんでいるとは限りません。

 

ただ、教員がそのときに「そうだね、りんごだね」などと言ってしまっていて、子ども自身が「読んでわかっている」のではなく、実際には「聞いて分かっている」というときもあります。今回は「読んでわかる」のはひとまず置いておいて、「読み上げる」までのステップとなります。

 カードそのものは㉖の「立体トランプ」と同じ作り方です。厚みをつけ、磁石を埋め込んでいます。操作がしやすくなる、重みがつく、カードがばらけないなど、様々なメリットがあります。

 

 

 

 

 

 

この文字カードは「あ」から「を」までの46音、そして濁音の中でも使用頻度の高い「が」「だ」の全48枚で構成されています。片面が文字、そして裏面が絵になっています。右の写真は一覧になっている50音表です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

㊾大小を並べる教材

これまで、再認(選ぶこと)と再生(言うこと)の違いですとか、弁別のステップですとかを紹介してきました。今回紹介するのは、「大小」「長短」「軽重」といった、比較概念を子どもに教えていく際のステップとなります。このあたりはおよそ、『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』にかかってきます。

 

 

 

 

比較概念とは何でしょうか? 例えば、子どもは「象は大きい」「ありは小さい」と絶対的に理解しています。しかし、象は地球よりも「小さい」ですし、ありは細菌よりも「大きい」です。あくまで2つのものを比較して成立するのが比較概念です。この辺、「色」「形」「陸海空」「季節」といった絶対的な概念とは異なるところになります。ここでは「大小」を取り上げますが、「長短」「高低」「軽重」「多少」「暑さ」「強さ」「可愛さ」なども同じような比較概念です。

 

 

 

 

 

 

最初は、大小を分けることを学びます。まずは、大きいことと小さいことの区別がつかなければ始まりません。そして、「どっちが大きい(小さい)」という学習に進みます。右側の画像の真ん中の〇は、一番小さい〇からすると「大きい」ですが、一番大きい〇からすると「小さい」です。このように、物事を比較して捉えることを学んでいきます。

ここで、「もっと大きい(小さい)ものを知っている?」「他に大きい(小さい)ものは?」といった対話を重ねていくことも、非常に重要となります。深い学びへとつなげていきます。

 

いくつもの物を比較できて、はじめて可能になるのが最初の写真の、「ピンクタワー」を横に並べる(順序付ける)学習になります。こうやって大小や長短といったものを順序付けることを「大小の系列化」「長短の系列化」等といい、様々な教材があります。枠を用意してあげたり、ミニチュアを用意して「のぼれるように階段をつくるよ」といった言葉かけをしてあげたりすると、順序付けるということにイメージを持ちやすくなるようです。

 

大小の学習は、「分ける」「比較する」「順序付ける」と進みます。大小から高低、長短等を経て、「多少」を順序付ける力があって、数の学習に進むことができるようになります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

㊻弁別のステップ(その2)

前回、弁別のステップとして「パターン弁別」「対応弁別」をお伝えしました。さらにその後のステップがあります。このあたりもおよそ、『Ⅱ見分ける学習の教材』『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』にかかってきます。淑徳大学の発達臨床研究センターで開発されたもので、以下、難易度順に紹介します。

 

3番目のステップが、「指差し対応弁別」です。教員が枠を指差しし、それを見たうえで該当するものを選択していきます。これができるためには、相手の指差しの意図を理解する必要があります。

 

 

 

 

4番目のステップが、「対応弁別ポインティング」です。3番目までと違って、今度は型はめの枠の方が子どもの手元に来ます。教員が示したペグを見て、それがどの枠に入るのかを指さしで答えます。先ほどのは指差しの理解でしたが、今度は自分で指差しを行うことになります(応答の指差しの表出)。

 

 

 

 

5番目のステップが、「指差しー指差し対応弁別」です。これは教員が指差しで指定したペグを見て、そしてそれがどこに入るのかを自分でも指差しで示します。指差しの理解と、指差しで応じること、その両方を同時に行う必要があります。最初の「パターン弁別(分ける)」と同じ教材を使ってはいますが、難易度が全く違っているのがわかります。

 

 

さらなる応用としては、指差しだけでなく、教員がじっと見ているペグを選ぶといった「相手の視線を読む」学習なども行っていきます。

 

以上のように、よくある型はめの教材なども、指差しの理解と表出といったところまでねらって使っていくことができます。この辺りが十分に達成できれば、「相手を見る力」や「相手に合わせる力」などが高まり、身体模倣、身振りサインの学習なども円滑に進みやすくなることでしょう。

 

また、今回の弁別のステップは型はめを使って紹介しましたが、これらは色の弁別、単語カードの弁別など、あらゆる学習で応用していくことができます。

 

参考文献:宇佐川浩「感覚と運動の高次化からみた子ども理解」学苑社

(本校特別支援教育コーディネーター)

㊹重さと色の分類

物事には、「色」「形」「種類」「大きさ」「速さ」「濃さ」「重さ」「硬さ」「滑らかさ」など、様々な属性があります。その中で最も気づきやすいのが「色」と「形」である、ということをお伝えしてきました。しかし実際の気づきやすい属性というのは、子どもによって異なります。例えば脳性麻痺のあるお子さんの場合、色には気づきやすくても、形には気づきにくいということがあります。色は一点を見れば判断できますが、形は輪郭を目で追っていく必要があるからです。また、形の理解に際しては積木などをたくさん触って確かめることから学んでいくことが多いのですが、手指を動かしにくいために、それらの経験が不足しやすいという側面もあります。このあたりはおよそ、『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』にかかってきます。

 

 

 

 

 

 

具体的には、「色」と「形」よりも、「色」と「重さ」「大きさ」「滑らかさ」「冷たさ」といったことに気づきやすい子どもたちがいます。基本的には、見て確かめるのではなく、触って確かめることができる属性になります。その中でも、特に「重さ」と「冷たさ」は少ない手の動きで確かめることができるので、わかりやすいようです。

 

 

 

 

 

 

この教材は、イースターエッグに紙粘土をつめたものと、つめていないものです。重いものと軽いものの弁別を行い、色の弁別を行い、やがて「赤くて重いもの」「軽くて黄色いもの」といったような二語文の内容の学習に進んでいきます。なお、缶コーヒーなどの大きい缶と小さい缶を駆使し、お湯/水/凍らせるということ、重さを分けるということで、「大きくて重くて冷たい」といった三語文の内容に深めていくこともできます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

㊸細部視知覚と全体視知覚

たくさん手を使って教材を操作していくことが、目を育てることにつながっていくということを繰り返しお伝えしてきました。周囲を見る力が高まる中で、子どもは興味関心をさらに高め、自ら動こうとする気持ちも育ちやすくなっていきます。その「見る」力ですが、大きく2つの視点で分けることができます。細部視知覚と、全体視知覚です。このあたりはおよそ、『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』にかかってきます。

 

細部視知覚というのは、細かく見分けていく力のことです。「バナナとミカンの違い」「武蔵野線と伊勢崎線の違い」「漢字の『薔薇』と『嗇徴』の違い」といったことです。人の表情を見分けること、「『あ』と『め』の違い」を見分けること、数字・数量を見分けることなど、さまざまな学習の基盤となる重要な力となります。本校では、①パズルだとか、㊳様々なものの弁別だとかを通して学習していっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、全体視知覚というのは全体を捉える力、物事の関係性を捉える力となります。左の写真で「お母さんが笑っている」とわかるのが細部視知覚だとしたら、右の写真で同じ表情であるとしても、それが「笑顔のようで、実は心底怒っている」とわかるのが全体視知覚となります。この辺りが育ってくると、周囲の状況を捉える力も高まり、人と関わっていくことがより上手になっていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全体視知覚を高めるために、ということでいくつかの教材があります。水滴の位置によって「汗」ともなれば「雨」とも「涙」ともなる教材。状況を読み取って、必要なものを選ぶといったプリントなどです。細かいステップを刻みながら、子どもたちは学んでいきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

参考文献:宇佐川浩「感覚と運動の高次化からみた子ども理解」学苑社

㉟立体トランプ

今回紹介するのは、立体のトランプです。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

トランプやウノといったカードゲームは楽しいものですが、なにぶん、肢体不自由の特別支援学校に通っている子どもたちは手が使いにくいことが多く、なかなか平面のカードは扱いにくいという現状があります。そのため、百円均一のお店で売っているトランプを1センチ厚のボード(これも百円均一のもの)に貼り付け、子どもが持ちやすいように改造しています。また、そのままではカードがばらけてしまうし、軽すぎて扱いにくいので、磁石を内蔵しています(百円均一の強力磁石を2枚入れる)。

なお、図版は市販のままだと子どもに親しみにくいことがあり、オリジナルのものにしています。スペード、クローバー、ハート、ダイヤをキャラクターに変更したほか、数字をひらがなに変更したものも作っています。

 

磁石を内蔵する方法については、磁石のサイズにカッターでボードをくり抜き、そこに磁石を押しこんでいます。そのうえでセロテープで磁石が動かないように固定し、トランプの両面でボードをはさみこみ、その周囲を梱包用テープで巻きます。なお、梱包用テープですが、百円均一のものよりも、ホームセンターで売っている一巻き300円くらいするものの方が取り扱いやすいようです。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

教材紹介㉓「色と形以外のマトリクス」

今回紹介するのは、②で紹介した二次元属性分類(マトリクス)のバリエーションとなります。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「重さ」「数量」「大きさ」「硬さ」「季節」「種類」など星の数ほども属性がある中で、多くの子どもにとって最も気づきやすいのが『色』と『形』であるのは②で紹介しました。マトリクス(二重分類)という教材は特定の2つの属性を組み合わせて表を作っていくものになります。ですので、取り扱うのは色と形だけではありません。例えば、ということでここで紹介しているのは「名詞×動詞」「色×大きさ」「形×数量」「種類×陸海空」となります。これらの組み合わせは、ほとんど限りがありません。

子どもたちはこうやっていくつもの属性を組み合わせ(総合)、あるいは「りんご」といった具体的なものから『あか』『まる』『くだもの』といった属性を抜き出し(分析)、考えを深めていきます。「数量」などは子どもにとって特に気づきにくい属性であるため、色、形、大きさ、高さ、長さ、多さなど、比較的気づきやすい属性から取り扱う練習をしていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター) 

教材紹介⑮「見立て模倣板」

今回紹介するのは、見立て模倣板です。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』として使っていきます。

 

「イメージを育てる」といっても、具体的にどういう学習をするとイメージが育つのでしょうか。例えば、ということで紹介するのがこの見立て模倣板です。淑徳大学発達臨床研究センターの教材を参考にし、百円均一の店舗のMDF材を切り抜いて作成しました。

 

 

 

下の写真をご覧ください。これを子どもが前にしたとき、どうするでしょうか? 最初はさわったり、口で確かめたりして、「それがそこにあるということに気づく」という時期があります。そしてそれらを十分に行う中で、触らなくても見ただけで「それがそこにあることがわかる」ようになっていきます。さらには、最初は木そのものとして扱っていますが、時と場合によって、同じ木が『鏡』に見えたり、『ラケット』に見えたり、『フライパン』に見えたり…。木という具体物の向こうに、イメージを持てるようになっていきます。

 

「イメージを広げる」というと漠然としていますが、段階を追って、具合的な教材を通して学ぶことでも子どもたちは力をつけていくことができます。こうやって身につけた見立てる力、模倣の力などを通して、子どもたちは絵本を見立てて遊ぶといった応用的な学習にも向かっていくことができます。

(本校特別支援教育コーディネーター)