カテゴリ:Ⅳ.文字や数を身につける際の教材
199高さによる数量の教材(積み重ねる)
今回紹介するのは、数量を並べる教材になります。185「高さによる数量の教材(棒に通す)」とほぼ同じコンセプトの教材となりますが、185が棒に教材を通していたのに対し、こちらは積み上げています。どちらの方がやりやすいかは、子どもによるでしょう。なお、使用している木材は正方形です。「棒に通す」のであれば円形でも大丈夫なのですが、こうやって積み重ね、並べていくとなると、正方形の方が並べやすいです。
185と同様に、5は5として固め、5のまとまりが意識できるようにしています。1、2、3といったところもそれぞれ接着していて、「5と1で6を作る」「5と3で8を作る」といった「5といくつ」で数を捉えるということが意識しやすくなっています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
185高さによる数量の教材(棒に通す)
前回紹介した「数量のマトリクス改」と同じ発想による教材となります。棒をさらに高くし、10までの数量に対応できるようにしてあります。なお、形の要素を加えて3×10くらいまでのマトリクス化することも可能でしたが、今回は1×10の、数量に特化したシンプルな教材にしてあります。
棒については、直径8ミリ、長さ120ミリのアクリル棒を使用しています。教材の強度、子どもにとっての見えやすさといった観点から、白いアクリル棒にしました。なお、棒のカットは業者に発注しています(詳しくはお問合せください)。土台となる板は3枚重ねで、もう一枚の板で底をふさいであります。なお、棒の長さは115ミリでぴったりとなりますが(板が1枚5ミリで3枚分、積み木が1枚10ミリで最大10枚)5ミリ分の余裕を持たせてあります。
似たような市販の教材もあるかと思いますが、それらはおそらく「1から10までの数量を順番に並べる」ものかと思います。この教材は表札を自由に入れ替えることができるため、より多様な学習を行うことができます。また、「5」をまとまりとして接着し、黒く塗り分けているのもポイントです。「『5が区切りの良い数である』ということの理解」「『5といくつ』で6から9までを捉える」ということは数量を学習する上で非常に大きなことですが、あらかじめ「5」をまとめておくことにより、そこが自然に学べるようになっています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
184数量のマトリクス 改
数量と形のマトリクスにつきましては、23「色と形以外のマトリクス」で紹介しました。ここではすいか、みかん、りんごを用いていますが、〇△□のもの、キャラクターの絵を用いたものなどのバージョンがあります。
これらの数量のマトリクスについてですが、そのメリットは大きい(少ない動きで学習できる等)ものの、本当にこれらで数量の理解が深まるのだろうか?という疑問もありました。そこで、改良を加えたのが以下の教材になります。
「5でぴったりになる」棒を3×5に配置し、〇△□の積み木に穴を開けて棒に通せるようにしてあります。この棒はいわゆるダボで、直径8ミリ×長さ60ミリ。各積み木は厚さ10ミリで、〇が直径40ミリ、△が一辺45ミリ、□が一辺40ミリです。それぞれ中央に直径10ミリの穴を開けてあります。結果、高さを駆使することにより、数量を感覚的に掴みやすい教材となりました。また、似たような市販の教材もありますが、マトリクスの中に組み込んだために、「表札」の位置を自由自在に変えることができます。さらには手をたくさん使うため、手の使い方の練習としても効果的な教材となりました。
一方、メリットとデメリットは表裏一体とも言えます。手の使い方がとても苦手な子どもにとっては、扱いにくい教材ともなりました。この新型の数量のマトリクスがよいか、それとも従来通りの高さのない数量のマトリクスがよいか、それらは子ども一人一人によって、学習の目的によって変わってきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
174数字を「書く」ことを補う教材
算数科の学習にあたり、「数字を書く」ということについても、子どもがつまずきやすいところです。数字を書くだけで精いっぱいになり、考えることに手がついてきにくい、という場合です。文字や数字の読み上げ機能がついた機器、アプリを使う(そして教員が代筆する)という方法もありますが、紙の上で、試行錯誤しながら自分で書く、操作するということも重要な学習なのかと思われます。
そこで、前回と同様に教科書やプリントを固定したうえで、数字を書いた磁石を移動させていきます。この方法では取り扱う数の桁が増えたり、筆算の過程を行ったりすると操作が難しくなりますが、10までの数、2桁くらいまでの数の扱いであれば、効果的な支援になるでしょう。一人一人の子どもの様子はもちろん、活動の目的、内容により、適切な支援も変わってきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
173「その子ども」に合った数図の扱い
「数図」というものがあります。算数の授業の中で「数を一目でわかる」ようにしたもので、左上から「1、2…」となり、「5で折り返す」のが基本です。数字(123)数詞(いち、に、さん)とともに、数量を表すものとして算数科の学習の、基本中の基本の内容となります。
数図の学習の際には、表記された数量を読み取るだけでなく、「数字を見て数量を書き込む」「数詞を聞いて数量を書き込む」といったことも行われます。しかしながら、身体の動かし方が苦手な子どもにとっては「書く」ことが困難で、なかなか学習が進みにくいということがあります。シールを貼る、スタンプを押すということでも同様の学習に取り組むことが可能かと思われますが、ここでは磁石と、立体の枠(百円均一の店で売っている、卵ホルダーの中身)を使う方法を紹介します。
ここでは、「157プリントの固定用枠」を使用。ブラックボードパネルが底に敷いてあるため、磁石を扱うことができます。なお、教科書も冊子形式では扱いにくいため、各ページを切り離してラミネイト加工したうえで固定しています。書見台を使う方法もありますが、十分には本が開きにくいし、その上で磁石を操作したり、書き込んだりするのが難しいためです。
子どもは磁石を操作し、数図と同じ内容の操作を行っていきます。プリントに書きこむのであれば、子どもが操作した通りに教員が代わりに書き込みます。書くか、補助具を使うか。一人一人の子どもに検討していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
172「その子ども」に合った数ブロック
いわゆる「算数セット」には「数ブロック」が入っていることがあります。黄色と白で、磁石が内蔵されている、おなじみの教材です。小学校の低学年で用いられることが多いですが、身体の動かし方が苦手な子どもにとっては扱いにくさがみられることもあります。特に不随意運動が入りやすい子どもにとっては、1個1個の数ブロックが小さすぎることと、磁石の磁力の弱さがネックになりやすいようです。
そこで、百円均一のお店で売っている木片(30ミリ×30ミリ×15ミリ)にの上下にそれぞれ直径20ミリ深さ5ミリの穴を開け、磁石をボンドで固定したうえで黄色と白の紙を貼り、梱包用テープで巻きあげたものが上記の教材になります。適度な大きさと重さ、磁力があり、ホワイト(ブラック)ボードの上で使うことで、不随意運動が入りやすい子どもにとっては扱いやすい教材となります。
一方、重いものを持ち上げにくい、力が入りにくい子どもにとっては、従来通りの数ブロックの方が扱いやすいでしょう。学びやすい教材/学びにくい教材は子どもそれぞれによって異なり、それぞれの子どもに合わせた工夫を行っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
171「とまと」と「まとと」
「一文字ずつを読み上げる」ことができても、「単語として意味を取る」ことについては難しい子どもがいます。また、本HPで紹介している「こしとくひらがなアプリ」などを駆使して一文字ずつ打つことはできても、単語を思い浮かべ、それを打つことが難しい(多くは「きつね」が「ねつき」などと逆転する)子どもがいます。それらのつまずきの背景要因は子どもによりさまざまですが、「音を心の中で操作する力」すなわち「しりとり」や「〇のつく言葉の列挙」「単語の逆唱」などの際に用いられる、「音韻意識(日本語の一音ずつを意識し、操作する力)」につまずきがあるという場合が多いようです。
様々な支援が考えられますが、今回紹介するのは、その中でも「勝手読み」が多い場合。すなわち「ねずみ」と書いてあるのに、「ねず」まで行ったら「ねずこ!」と読んだり、極端な場合、「ねずみ」の「ね」だけ、あるいは「きつね」の「ね」だけを見て「ねずこ!」と読み取ってしまう子への支援です。
ここでは、「とまと」カードを5枚、「とまま」「まとと」など「トマトではない」カードを5枚、それぞれ用意してあります。それぞれの単語カードの裏には「〇」なり「×」なり、子ども自身が「『とまと』であったのか否か」を確認できるようにしてあります。教員と一緒に単語を読み上げながら、これが『「とまと」なのか?』とその正誤を確認していきます。
同じようなテーマで、プリント化することもできます。絵と、どこか一か所だけ間違っている単語を提示し、「どこが間違っているのか」「ほんとうは何なのか」ということを問い、正確に読み上げること、一文字ずつを意識することを促していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
170さわってわかるひらがな
文字の学習は、これまでも様々な機会に紹介してきました。「目で見分ける」学習と、「音を聞き取る」学習とが合わさって、「文字を読む」ことができるようになっていきます。しかしながら身体の動かし方が苦手な子どもの中には目を使うことが苦手な子どもも多く、「あ」「め」「ぬ」、「り」「い」「こ」、「れ」「ね」「わ」といった各文字の見分けがつきにくい、といったつまずきが見られることがあります。
これらのつまずきに対する支援として、「目で見る」だけでなく、文字の形、とりわけ「す」「ぬ」「ね」のように複雑に線が交差する文字について、それらの線を「触って」確認できるようにする、といったことが考えられます。具体的には線の交差が実感できるように「モールで文字を作る」「粘土で線を作って文字を作る」といったことです。今回紹介するのは市販の教材で、文字の線が単に印刷されているだけでなく、ざらついていて、線を指で辿る中で触覚的にも感覚が入ってくるようになっているものです。
学習は見るだけ、聞くだけではなかなか進んでいきません。実際に身体を動かすこと、複数の感覚を活用しながら学んでいくことが重要なのですが、身体の動かし方につまずきがあると、そこが難しくなりがちです。教材教具を工夫する中で、それぞれの子どもの学びやすさを追求していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
164かずカード
市販品、百円均一の店舗で売られている学習用カードの活用例となります。
このカードは片面に数量、片面に数字が印刷されています。このカードを用い、例えば数量の弁別、数字の弁別を行うということが考えられます。数量を並べる、数字を並べるというのが次に来るでしょう。しかし「カードの持ちにくさ」「数量の配置が5のまとまりを意識しにくい」といった、気になる点もあります。そこで、いくつかの工夫を施したものが、以下の写真になります。
まず、「数カード」を2組用い、テープで巻いてしまうという工夫です。こうすることでカードに厚みが出て、子どもが取り扱いやすい教材となります。また、右の写真では、5を〇で囲み、「5といくつ」で6~10の数量を把握しやすいようにしてあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
163数量学習用の半具体物 その2
「⑭数量学習用の石(半具体物)」に続き、数量を学習するための半具体物の紹介です。半具体物というのは、さまざまな具体物から「数量」という属性を取り出して考えるためのものです。そういってもわかりにくいので実際の例を紹介しますと、例えば「イチ ニ サン」といった数詞や「123」といった数字が発明される前の時代、自分の家で飼っている牛と、隣の家で飼っている牛の数を比較する必要があったとします。
この場合、どっちかの牛を移動させ、一匹ずつつき合わせれば比較できますが、とても大変です。また、「イチ ニ サン」と数えられれば便利ですが、まだ数詞は発明されていません。そこで、昔の人は「石」「ひも」などの半具体物を使って具体物の「数量」を抽出するということを考えました。そうすると、遠く離れたもの同士、動かせないもの同士であっても、多少を比較することができます。
この時の、牛という具体物から「数量」という属性を抜き出すために使った石が、「半具体物」となります。石と限らず、棒でも、おはじきでも磁石でもタイルでも数ブロックでも積み木でも何でも構いません。⑭では百円均一の店で4個セットで売っている「ストーンアイスキューブ」を紹介しました。やはり、子どもたちの手の使いにくさを考えると、このストーンアイスキューブの「適度な重さ」「立方体であるため机上で安定すること」「サイズ感」といったメリットは大きく、コスト面からも使い勝手の良さが際立ちます。また、セロテープで固めて「5のまとまり」「10のまとまり」を作るのも簡単です。
一方、それだけを使っていると、「それだけが数である」という誤解も生みがちです。先に紹介した棒、数ブロック等の他にも、例えば押し入れの奥に眠っている碁石なども、子どもの手に収まりやすく、適度な重さがあります。この辺、使いやすい半具体物というのは子どもによって異なるので、一人一人の子どもに合ったものを探っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
156長さの系列化(10まで)
前回の「高さ」の系列化の教材に続けて紹介するのは、「長さ」を順序付ける教材になります。素材にしているのは百円均一の店のA3サイズのMDF板で、「1」は3センチ四方。「10」は3センチ×10センチに設定してあります。厚みは5ミリです。
高さの時と同様、2組教材を用意することで、「自分で並べる」「見本を見ながら並べる」の難易度の調整ができるようにしてあります。
なお、「大きさ」「高さ」「長さ」には、難易度の差があります。「大きさ」「高さ」は、子どもによって逆転することもあるのですが、多くは「大きさ」が簡単で、「高さ」が難しくなります。そして、圧倒的に難しいのが「長さ」です。その理由ははっきりとしていて、「大きさ」や「高さ」を比べようとする場合、机なり、床なりが基準となります。
一方、「長さ」の場合、自分自身で一定の線を定め、そこを規準にして比較しなければいけません。非常に難しい活動となります。とはいえ、数の理解はさらに難しい活動です。子どもの発達に沿って、基礎・基本から丁寧に学習を積み上げていく必要があります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
151単語、文指導のステップ その4
149回の続きです。「こしとくひらがなアプリ」を使って単語を打つ前に、「文字ブロックを並び替える」学習を行います。ここでは「すいか」を扱うとすれば、「す」と「い」と「か」の文字ブロックを渡し、「す」「い」「か」の並びになるように取り組んでいきます。
一文字ずつが読めるし、「すいか」とも言えているし、あっさりと進むだろう…と大人としては考えがちですが、ここでつまずく子どもは多いです。しかしこの「文字ブロックを並び替える」というステップを飛ばして、いきなり単語を書く、打つというのはさらに難易度が高いです。
直接単語を書く、打つというのは、いわば心の中に一音ずつを思い浮かべて、それを並べていくという作業です。非常に(おそらくは子どものワーキングメモリに)負担がかかります。文字ブロックの並び替えというのは、一音ずつを視覚化して操れるようにするということです。これを行うことにより、子どもにとって「音を操る」ということの意識が高まりやすくなるようです。
この「文字ブロックを並び替える」という活動のあとだと、「絵を見て単語を打つ」ことがスムーズにいきやすくなります。あるいは、子どもによっては直前に並べた文字の並びを視覚的に記憶して、それを再現しているのかもしれませんが…。
「子どもに発語があり」「一文字ずつを読み上げられれば」それで即、作文ができるようになるか。決してそうではありません。そして今回4回にかけて指導のステップを紹介してきましたが、すべての子どもに同じように効果的な指導方法はありません。
どのように考えながら単語を書いて(打って)いるのか? 子どもの頭の中は見えませんが、そこを推測しながら、一人一人の子どもに最適な支援を組み立てていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
150単語、文指導のステップ 番外編 特殊音節
「本校の教材教具」コーナーも150回目を迎えました。ご愛読ありがとうございます。
子どもに単語や文字の学習を教えていると、「あれ?」と思うことがあります。大人がイメージする音と、子どもが実際に聞いている音との違いです。
例えば「らいおん」ですが、これを文字を覚えたての子どもに打ってもらうと、「らいよん」となりがちです。また、草加市は本校の学区ですが、子どもに打ってもらうと「そか」となることがあります。「そうか」ではありません。
文字を学習済みの大人にとっては「先生(せんせい)」「お父さん(おとうさん)」「氷(こおり)」「小売り(こうり)」「行李(こうり)」「郡(こおり)」といった表記に違和感はないはずです。そしておそらくは、文字表記のイメージ通りに聞こえていることでしょう、しかし文字を学んでいる段階の子どもからするとどうでしょうか。
身近な「せんせい」という言葉からして、子どもは「せんせえ」と書きますし、子どもの耳にはそのように聞こえています。実際には大人にもそう発音していることが多いのですが、我々の頭は自動的に文字表記に合わせて変換してしまいます。
例えば、「おとうさん」の「う」は何と発音しているでしょうか? 「お」のはずです。このように実際の発音と文字表記が異なるのが「特殊音節」であり、子どもがつまずいていきやすいところです。ひらがなは本質的に、音と文字が一致しているので学びやすい文字言語です。しかし例外もあり、指導に当たっては丁寧に行っていく必要があります。
助詞の「を」「へ」「は」もそうです。「八戸へ行く(はちのへへいく)」「母は(ははは)」の分かりにくさは言うまでもありません。「を」についても、子どもに教える時に「WO」と強調したくなりますが、実際には「お」と全く同じ発音になっています。
「こ『お』り」「おと『う』さん」あたりも同じ発音なのに、文字表記になると変わってしまう。非常に難しいところです。※旧仮名遣いなど歴史的な経緯があるため。
また、漢字になると「林(リン、はやし)」といったように一つの文字に複数の読み方が出てきて、子どもの混乱に拍車をかけていきます。単語、文の指導に当たっては、それらの日本語表記のわかりにくさを十分に踏まえたうえで行っていく必要があります。
それでも、英語と比べると、だいぶ日本語の表記はわかりやすいようです。英語の場合、そもそも「A(エイ)」を「エイ」とは発音しません。「C『A』T(キャット)」「『A』LW『A』YS(オールウェイズ)」。ここに出てくる「A」は全部発音が違います。「発音の例外」が日本語よりもはるかに多く、これが英語圏の読字障害(ディスレクシア)の多さの要因となっているようです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
149単語、文指導のステップ その3
いよいよ「こしとくひらがなアプリ」などを使った、「書き」の学習に入っていきます。繰り返しますが、読むことと、書くことは違います。そして多くの場合、「読む」→「書く」という順序で学習は進んでいくのですが、子どもによっては「書く」方が、「読む」よりも得意という場合があります。子どもの学びの道筋は10人いれば10通りあり、みな違います。
基本的には「2文字→3文字→4文字」「濁音半濁音なし→濁音半濁音あり」「拗音促音(ゃゅょっ)なし→拗音促音(ゃゅょっ)あり」といったステップをたどります。しかしながらいきなりタブレット端末と「ひらがなアプリ」を子どもに渡し、「かえる」の絵を見せて、「書いて(打って)」と促しても、なかなか難しいことが多いでしょう。発語があり、文字が読めていればできそうなのですが、なかなかそうはいきません。
子どもの中には、心の中で音を操る力(音韻操作)が苦手な子がいます。その場合、「いちご」と聞けば「イチゴ」のことだとわかり、自分でも「いちご」と言えるとしても、「い」「ち」「ご」という、「いちご」を構成する一つずつの音に注意を向けられるとは限りません。なお、これができるからこそ子どもは「単語を逆に言う(いちご→ごちい)」ことができたり、「しりとり」ができたり、「〇のつくことば」を言えたりします。
文字を書くというのは、心に思い浮かべた単語を、一音ずつに解体して、順を追って一文字ずつに変換していくことです。これが、非常に難しいことになります。子どもによってはこの「心の中で音を操作する」ことが難しくて、「いぬ」と書くべきところが「ぬい」といった結果になってしまうことがあります。
※ほかにも原因があることがあり、一概には言えません。
そこで、「絵を見て単語を書く(打つ)」一歩前の学習として考えられるのが、「文字ブロックを並び替える」です。
(本校特別支援教育コーディネーター)
148単語、文指導のステップ その2
前回の続きとなります。一文字ずつの読みを獲得した、その後です。
一文字ずつの読みから二文字単語の読み取り、三文字単語の読み取り、四文字単語の読み取り…と学習は進んでいきます。大人にとってはなかなか実感しにくいところですが、子どもにしてみると、初めて読む単語ばかりです。ですので、最初は「うし」「うま」「かめ」「いぬ」「ねこ」など種類を限定(ここでは動物)したうえで、二文字単語、なおかつ濁音や半濁音(「¨」や「°」がある字)を伴わないものを選んで学習するといったように絞って学習すると、子どもが単語の内容を予測しやすくなり、学びやすいことが多いでしょう。
子どもは最初のうちは、文字から直接意味を取ることは難しく、「う」「し」。「う」「し」。「う」「し」。「う」「し…」と何度も繰り返し読み上げ、自分で言った音を、耳で聞いて意味を取っていきます。このあたり、発語が難しい子どもが、文字の読み取りも難しくなっていくことの要因の一つとなります。
特定の種類の二文字単語の読み取りができるようになったところで、食べ物など他の種類の名詞、動作語などを扱っていきます。また、濁音や半濁音、三文字単語なども取り扱い、読み取れる単語の幅を広げていきます。友だちや家族、教員の名前、天気の名称、日課の名称などが、子どもが「読んで」「分かって」嬉しい単語でしょう。
この頃、プリント学習なども設定できるようになっていきます。〇をつけることなど書字が難しい場合、ホワイトボードにプリントを貼りつけて磁石を置くことで選択したり、「144〇×でのプリント回答システム」のようにプリントのフォーマットを定めて、枠を用意したりするとよいでしょう。
ここからさらに、二語文の読み取り、三語文の読み取り、文を読んで5W1Hの質問に答える…といったことに進んでいきます。
なお、どうしても単語の意味が読み取りにくい場合、「こしとくひらがなアプリ」を使うと、子どもがその単語を見てアプリに打ち込み、音声として再生して「耳で聞く」ことで、意味が取れるということがあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
147単語、文指導のステップ その1
143回では「〇×でのプリント回答システム」を紹介しました。今回は、「53~55文字を読み上げるためのカード」などを用いて一文字ずつを読み上げられるようになってから、簡単な文を読み取れる、あるいは「145こしとくひらがなアプリ」などで文を作れるようになるまでの学習を追っていきます。
「子どもに発語があり」「一文字ずつを読み上げられれば」それで即、作文ができるようになるかというと、そうはスムーズにいかないことが多いです。そこには「文字を読み上げる」ことと「文字を読んでわかる」のは違うということ、「文字を読むこと」と「文字を書く(打つ)」ことは違うということ、という2つの視点があります。
「58 文字の意味を取る教材」でも紹介しましたが、えてして起こりがちなのが、子どもが「りんご」の単語カードを「り」「ん」「ご」と一文字ずつ読み上げたとき、教員が「そうだね、『りんご』だね」と言っているケースです。この場合、子どもは自分自身で「読んだから」頭の中にリンゴのイメージが浮かんだのではなくて、教員が口にした言葉を「聞いて」イメージが浮かんでいる、ということがあります。すなわち、良かれと思って教員がやっていることが、子どもの学習の妨げになっているというケースです。
これを防ぐためには、教員が「りんご」と言ってしまうのは避け、「そうだね、じゃあ『それ』って」どういうもの?」といった発問をする必要があります。「うし」「はさみ」など身振り化できるものであれば、「そうだね、じゃあ『それ』をやってみて」といった問いもありえます。そうしてみると、意外なくらい、子どもは単語を読み上げていても、その意味がわかっているとは限らないということがわかります。十回ぐらい同じ単語を繰り返し読み上げてようやく意味としてつながったり、「動物だよ」「食べ物だよ」といったヒントがあってはじめて意味としてつながったりする子もいます。
教員の言葉を「聞いて分かる」力と、自分で「読んでわかる」力との間には、格段の開きがあります。「読む」となると、一文字ずつならわかっても、単語になったとたんに意味としてつながらなくなる子どもがいます。また、「うし」「うま」のような二文字単語なら意味として捉えることができても、「あひる」「きりん」などのように三文字単語になったとたんに難しくなる子もいます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
146こしとくひらがなアプリ
「こしとくひらがなアプリ」については、既に本校HPで紹介してきました。この「本校の教材教具」コーナーにおいて、あらためて紹介させていただきます。
ひらがなを学習するための教材としては、「53~55文字を読み上げるためのカード」「59~61文字を読み上げるまでに」「110文字ブロックの改良」「111文字入力装置の改良」において、「文字カード」「文字ブロック」「文字入力装置」を紹介してきました。
さらに改良を加えた教材が、今回の「こしとくひらがなアプリ」です。文字入力装置の改良を行った際、文字盤にラミネイト加工した紙を挟み込んだ結果、文字の入力に相当な指先の力を必要とするようになってしまったため、指先で触れるだけで操作できるように開発しました。原案・イラストが本校教員で、プログラミングは保護者が行っています(他の子たちにもぜひ使ってほしいとのことですので、今回紹介しています)。
音声による文字の読み上げ機能、単語の登録機能もあります。
なお、同じ絵を使った「文字カード」「文字ブロック」「文字入力装置」「アプリ」を紹介してきましたが、それぞれの良さ、使いにくさがあります。特にスマートフォンやタブレット端末の画面は、不随意運動の入りやすい子供にとっては思うように操作しにくく、アナログの教材の方が使いやすいということがあります。一方で筋疾患があり、アナログの教材が操作しにくい子にとってはスマートフォンやタブレット端末といったデジタル機器を駆使することで、表現の可能性が広がりやすいでしょう。いずれにしろ、教材ありきではありません。アナログの教材を使うから良い支援というわけでも、情報端末を用いるから良い支援というわけでもありません。あくまでも一人一人に合った支援を追求していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
138名画の分割パズル
一枚絵の分割パズルは、二分割のものからはじまり(二分割も、切片がぎざぎざのもの→まっすぐなものへ)、分割する回数を増やせば増やすだけ難易度があがっていきます。また、身近なキャラクターや家族の写真などを使えば子どもにとって取り組みやすくなります。
今回紹介するのは、意図的に、極端に難易度を上げた分割パズルです。およそ「ひらがなを見分ける基礎を育てる」といった目的であれば6~8分割のものができればよいのですが、チャレンジ精神が高く、難しい課題を好む子どものために作成されたものです。意図的に、子どもにとってなじみの少ない絵を選んでいます。なお、このパズルは大人であっても達成が難しく、10分以上かかっても作れない教員がいました。子どもが取り組む場合、下絵の上に重ねていくという形をとることになります。
高難易度のパズルとしては、名画を使う他にも「集合写真」などがあります。子どもにとって身近な物を教材にしていくのが教材づくりの基本ですが、必要に応じ、あえて身近でないものを使うこともあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
137数字と数量を対応させる型はめ
切片がぎざぎざになっており、数量と数字が正しく合わないとはまらないという、二分割パズルです。同じ二分割でも、一枚絵を二分割したものなどとは難易度が大きく異なります。
決してこの教材だけで数量と数字が対応できるようになるわけではないのですが、様々な数の学習の教材の1つとして押さえています。材料としては百円均一の店で扱っている、6枚セットのMDF板です。電動糸鋸で、フリーハンドで切断してあります。
なお、数字の読み方のヒントとして、数字の面の裏に、「136 数字の歌カード」で紹介した絵を貼りつけてあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
136数字の歌カード
数字が読めることが、数がわかるということではありません。数量(・ ‥ …)をことばに置き換えたものが数詞(イチ ニ サン)、数詞を文字に置き換えたものが数字(123)ですので、数の学習の基本は「数量がわかる」ということです。しかしながら、数字もまた、数の概念を構成する要素のひとつですので、学んでいく必要があります。
ここでは「53 文字を読み上げるためのカード その1」などと同様に、各数字に対応した絵がヒントになるようにしています。「♪かかしの…」「♪たぬきの…」といった、数字の歌をモチーフにしています。なお、算用数字において「数字のジュウ」は存在しないため(漢数字には『十』があるけれど、算用数字ではあくまでも「1」と「0」を使って『十』を表現する)、独自に「数字のゼロ」の絵を作っています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
132時計の教材
基本的には「時刻」を示すのが時計です。時計にはアナログ時計とデジタル時計とがあり、時刻を知るためだけであれば、デジタル時計で十分です。数字さえ読めれば時刻を読むことができます。わざわざ難易度の高いアナログ時計を学ぶ必要はありません。しかしなぜアナログ時計の学習をしていくかというと、「あと〇分」「〇分経ったら〇時になる」といった「時間」を知るためには、デジタル時計よりもアナログ時計の方がわかりやすいからです。時計の針の動きで、「時間」の量を知ることができます。
時計の教材としては、様々な物が市販されています。いわゆる「算数セット」の中に入っていることも多いでしょう。それらの教材の構造も様々なのですが、身体の動かし方が苦手な子供の場合、「歯車を動かす」タイプよりも、「針(長針)を動かして操作する」タイプの方が扱いやすいことが多いようです。また、それでも操作が難しい場合、枠を作って教材を固定するといった支援が考えられます。主として、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
131カラーバールーペ
身体の動かし方が苦手な子供の中には、目の使い方も苦手である、という子供がいます。すると算数科の内容が積み上がりにくいというのはこれまでも紹介してきた(「130棒と木枠での5と10の合成と分解」等)ところですが、国語科の内容についても習得が難しくなっていきます。具体的には、学習の流れに目の動きがついてきにくく、「文末を自分で作って読んでしまう(勝手読み)」「行や列を読み飛ばしてしまう」といったことが起こってきます。当然ながら、文や文章の意味を理解し、考えることが難しくなっていきます。
今回紹介するのは、そういった「行(列)飛ばし」を予防するための教材です。全体が透明であるために前後の行(列)とのつながりが見えやすく、また、適度な重みがあるために手が使いにくい子供にとっても扱いやすくなっています。ルーペとしての機能もあるため、中心部が大きく見える、というのも特長です。主として、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
130棒と木枠での5と10の合成と分解
「数の合成と分解」は算数の学習の、非常に大きな基礎となる内容です。「5を2と□に分ける」「2と3で□になる」。これらを頭の中で自由自在に思い浮かべ、操ることができてはじめて足し算や引き算を使いこなしていくことができるようになります。「数の合成と分解」の理解が十分でないと、計算にあたって指を使ってしまうというようなことになりがちです。
数の合成と分解の理解にあたっては、小さいころからおもちゃなどを使ってたくさん遊んだり、砂場で砂を分けたり、合わせたりした経験が土台となっていきます。また、目で空間を捉える力も重要になっていきます。身体の動かし方につまずきがある子にとってはその両方ともが育ちにくく、結果、数の合成と分解の理解が難しい、さらには算数科の内容の習得全体に影響してくる、ということがあります。
今回紹介するのは、5と10の合成と分解について、「長さ(連続量)」に置き換えることで直感的に捉えることができるようにしている教材です。長さの棒は市販品で、枠だけを教員が作っています。
「2と4で『5』になるのか?」「5と4で『10』になるのか?」といったことを、「枠にはまる/はまらない」「空間が余っている/ピッタリ」といったことで、手ごたえで確認することができます。主として、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。
128ひらがな学習用の枠
「126線学習用の枠」では、円、三角、十字といった、様々な線の学習に向けての教材を紹介しました。今回は、それらの線の学習の総決算、ひらがなという複雑な線を捉えるための教材を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。
ここでは、「り」と「よ」という2つの文字があります。どちらの文字の方が捉えにくいのか、ということだと、これは「よ」の方が難しいという子供が多いでしょう。「り」は2本の線がそれぞれ独立していますが、「よ」は同じく2本の線でできているものの、2本の線が一点で接し、さらには途中でぐるりと回る中で交差していきます。
他にも、「あ」「め」「ぬ」「す」「れ」「わ」「ね」など、子供が捉えにくいひらがながあります。これらの複雑な線による文字は「字を見る」だけではなかなか捉えることが難しく、「書く」こと等を通して学んでいくことになります。しかし、身体の動かし方が難しい子どもたちにとって、「書く」ことこそとりわけ難しいことになります。立体的な枠を使い、最初は「指を使ってペグを移動させる」ことから始め、「棒を使ってペグを移動させる」など、書くことへ向けた学習を進めていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
118お金を数える/支払う教材
子供にとって身近なお金は硬貨であり、硬貨は6種類あります。1円玉、五円玉、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉です。なお、五円玉だけは漢数字しか書いていなくて、算用数字の表記がないため、子供が戸惑いやすいことに注意が必要です。そのため、学習に使用する五円玉に算用数字の「5」をシールで貼ってわかりやすくすることがあります。今回紹介するものはお金の桁をそろえるためのもので、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
MDF板に3か所の穴を開け、ラミネイト加工した黒画用紙を挟んだうえで、もう一枚の板で底をふさいでいます。また、500円と100円玉、50円と10円玉、五円と1円玉がセットになるようにイラストをつけています。
使用方法としては、
・硬貨の弁別を行う
・硬貨を数える
・教員が取り出してみせたのと、同じだけの硬貨を取り出す
・〇百〇十〇円、といったように教員が言っただけの硬貨を取り出す
・おつりが出にくくなるように硬貨を取り出す
といったことが考えられます。
実際のところ、身体の使い方が苦手な子供たちが、お店で硬貨を出すという場面は想定しにくいところがあります。財布をそのままお店の人に渡す、お札だけを出す、クレジットカードやプリペイドカードを使用するなど、様々な会計の仕方があるでしょう。どんどんとキャッシュレスの時代になってきています。
一方で、スマートフォン上の数字だけを見ていてお金の量的な感覚が身につくのか? 「あのお菓子なら2個、あのお菓子なら3個買える」「あと〇円であのおもちゃが買える」だとか、そういった感覚が身につくだろうか? という疑問もあります。
硬貨を始めとする現金を扱うことは今後の時代の中で少なくなっていくのかもしれませんが、学校の中でじっくりと、その扱いになじんでおくことは必要なのではないでしょうか。
(本校特別支援教育コーディネーター)
116接続詞の学習用教材
「が」「を」「に」といった助詞が文レベルの学習だとすれば、「なぜなら」「だから」「しかし」といった接続詞は文と文をつなぐもの、すなわち文章レベルの学習となってきます。「113構文の学習用教材」で紹介しましたように、子どもにとって助詞を正確に理解するということはかなり難しい学習となります。接続詞は、さらに難しくなってきます。
次の文章は、実際に子供が書いたものです。
「おけしょうしたら おひめさまになれるのよ『でも』おひめさまになって プリンセスになるよ」
子供としては、おそらくは『だから』という意味で『でも』という接続詞を使っているのでしょう。この辺りは教えてあげたいところですが、ではどうやって教えていくか、となるとなかなか難しいところです。今回紹介するものは、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
2つの文を読み上げ、間に入る接続詞を選択していきます。文だけでは十分に状況をイメージしきれない場合、絵を見て確認していきます。「くじらはおおきいです。〇〇〇、ぞうもおおきいです」「くじらはおおきいです。〇〇〇、きんぎょはちいさいです」。非常に繊細な言語感覚ですが、できるだけ状況を目に見えるようにしたうえで学んでいきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
114栄養素のマトリクス
マトリクス(属性分類の表)は基本教材であるため、「②二次元属性分類(色と形のマトリクス)」「㉓色と形以外のマトリクス」「㉕三次元属性分類(マトリクス)」で紹介してきました。マトリクスは「色と形だけではない」というのはこれまでもお伝えしてきたのですが、今回は中学校の家庭科の授業における活用例を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
マトリクスというと基礎教材という印象がありますが、ここでは様々な栄養素を分類していくのに使っています。同じ学習を紙と鉛筆で「書く」ことでも行うこともできますが、こうすることで、子どもにとって負担を少なくして学ぶことができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
113構文の学習用教材
「~が~を~する」といった、助詞を使って文を組み立てる学習があります。助詞の理解というのはことのほか子供にとって難しく、わかっているようでいて、実は正確には理解できていない、ということがあります。たとえば、「りんご」「いるか」「たべる」といった言葉を使ってできる文には
・A いるか が りんご を たべる(語順通りで、あり得ること)
・B りんご が いるか を たべる(語順通りで、あり得ないこと)
・C りんご を いるか が たべる(語順が逆転し、あり得ること)
・D いるか を りんご が たべる(語順が逆転し、あり得ないこと)
といったものがありますが、これらのうち子供が理解しやすいのは一番上のAの文です。実際のところ、子供がBやC、Dの文を聞いたり読んだりしても、Aの内容として理解していることがあります。
構文の理解、正確に助詞を理解するということは非常に難しく、丁寧に学習していく必要があります。今回紹介するのは構文を理解していくための教材の一つで、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。
単語ブロックは3×9×1.5センチの木片に、磁石が内蔵されているものです。「が」「を」「に」といった助詞ブロックは3×3×1.5センチです。単語ブロックや助詞ブロックを並べていく枠は、A3大のMDF材をカットしたものです。単語3つ、助詞2つが入るようにくり抜いてあります。また、ホワイトボードを切ったものを内蔵していて、単語ブロックや助詞ブロックが貼りつくようになっています。
この教材を用い、
・教員がぬいぐるみ等を動かしたのを見て、子供が文を作る
・教員が作った文を読んで、子供がぬいぐるみ等を操作する
といった学習を行っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
111文字入力装置の改良
⑫「トーキングエイドライト」でも紹介した文字入力装置です。今回は、それらの機器を使っていく際の工夫を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。
文字入力装置は、身体が動かしにくい本校の子供たちにとって、非常に重要な教材教具となります。一方では当然ながら文字を入力するためには文字の読みに熟達していることが必要で、「文字を打ってみたい、でも打ち間違えるのはしたくない」といった子供たちにとって、ハードルの高いものになっていました。
そこで、文字入力装置のカバーをはがし、サイズを合わせてラミネイト加工した50音表(「53文字を読み上げるカード その1」で紹介したもの)を挟み込んだのが以下の教材です。
こうすることで、どのボタンを押すとどの音が出るのか、文字だけでなく絵によっても判断することができます。このようにすることで、各文字の読みがまだうろおぼえの子供も、どんどんと文を作っています。
このような加工をするにはタブレット端末とアプリではなかなか難しく、「トーキングエイドライト」「ペチャラ」といった、専用の文字入力装置が活躍しています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
110文字ブロックの改良
㊷「文字ブロック各種」では、子供が操作しやすい文字ブロックを紹介しました。今回は、さらにそれを改良したものを紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。
以前紹介したものが左の写真で、今回紹介するものが右の写真となります。表面は変わっていませんが、以前紹介したものは裏面が磁石がむき出しになっていました。
今回紹介する教材の裏面には、その文字に対応する絵(「53文字を読み上げるカード その1」で紹介したもの)が貼り付けられています。そのため、子供は文字ブロックを並べていく際、その文字を何と読むのかということを確認しながら学習を進めていくことができます。ここでは、「あ」という文字を『あ』と読むのか『め』と読むのか悩んだとしても、裏面の絵を見ることで、それが『あ』と読むものであるということを自分自身で確認することができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
105 様々な「並べる」教材
世の中には「色」「形」などの様々な属性、概念が存在します。それらの特定の属性や概念に注目して分けたり、選択したり、比較したりすることによって、子供の抽象的な思考が育まれていきます。「大小」「長短」といった比較概念においては「分ける」「選ぶ」「比べる」だけでは十分ではなく、その先の、「並べる」「順序付ける」という学習もまた、子供の思考をめぐらせていくうえで、非常に重要な学習となってきます。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。
大小を並べる教材は、市販されています。枠などを用意し、子供が扱いやすいようにします。
「並べる」学習には様々なものがあります。「数字」はもちろん、あいうえおの「ひらがな」、「曜日」、「重さ」「冷たさ」「地名を北から順に」「人名を時代順に」「キャラクターを強い順に」「場面を時系列に沿って」「山手線の駅名を一周」などなど。
曜日を並べることなども、「げつようび」以外の曜日から始めると、意外なくらい子供の戸惑う姿が見られることがあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
102 数字の種類はいくつある?
数字は身近なものですが、「実はそうだったの?」ということも多い不思議なものです。今回は、その数字の種類について紹介していきます。およそ算数科の内容、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』にかかってきます。
数字の数、と述べましたが、これは我々が普段よく目にする算用数字、アラビア数字のことです。子供の場合、数は無限にあるのだから、数字も無限にある…という感覚で数字を捉えていることがあるようです。しかし実際には、数字は0123456789の『10』種類しかありません。
「その『10』は数字じゃないのか?」という子供の声も聞こえてきそうなのですが、これはあくまで「1」と「0」の2つの数字を配列することによって、十の位が1つ、一の位が「ない」ということを表しているというものです(位取り記数法)。
この辺の理解が確実でないと、「0」を「じゅう」と読むようなことが起きてくるようです
ですので、数字をどのように表記するか?ということも大事になってきます。
中央に持ってくるのか? 右によせるのか? カレンダーの日付など2桁以上の数量をどう表すか? 一枚のカードにおさめるのか、あるいは個々の数字の組み合わせで表すのか?
ささやかなことですが、それらの積み重ねが、子供の数概念の形成に影響してくるようです。
98 文章題について(引き算)
足し算は基本的に『合併』と『増加』の2種類ですが、その両者にそれほど難易度の違いはないようです。一方、引き算はと言うと、大きく分けて『求残』『求部分』『求差』があり、これらの難易度は全く、と言ってよいほど異なってきます。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』にかかってきます。
求残』は一番わかりやすい引き算です。「豚が5匹います。2匹いなくなりました。残りは何匹ですか」といったように、「残り」を求めます。「5-2」の引き算らしい引き算です。子供にとって意味が分かりやすく、状況のイメージがしやすいです。
一方、『求部分』は相当に難しくなります。「動物が全部で5匹います。うさぎは2匹です。ぶたは何匹ですか?」といったように、全体と部分の関係を捉える必要があります。式としては「5-2」で同じなのですが、そこに込められている意味は全く違います。
さらに『求差』は難しくなります。「うさぎが5匹います。ぶたは2匹です。どちらがどれだけ多いですか?」というものです。これも「5-2」ではあるのですが、これが引き算であること自体、非常にイメージしにくいようです。
「引き算ができる」と言うと「『5-2』の計算ができること」「繰り下がりができること」といった印象があるかもしれません。しかしそれらは最終的には「指を使う」「ドットを書く」といった方法でも対応できます。しかしながら文章題で問われてくるのは引き算の意味、文章の理解、状況をイメージする力となってきます。
身体の動かし方につまずきがあると、どうしても実体験が不足しがちで、自分の経験に置き換えて考えることが難しくなってきます。だから問題文について、その状況のイメージがしにくくなりやすいようです。ミニチュアなどを操作して考えること、教員と一緒に絵を描いて考えること等、丁寧に学習を進めていく必要があります。
大人にとっては『求残』『求部分』『求差』のいずれも、そう違いなくできてしまうのですが、子供にとっては大きく違います。その壁を越えていけるように、一人一人に手立てを講じながら支援を行っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
97 文章題について(足し算)
今回は、小学校の算数科の内容を学んでいくにあたり、つまずきやすいポイント、「文章題」について取り上げます。特に、足し算よりも引き算につまずく子供が多いことでしょう。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』にかかってきます。
一言に足し算、引き算と言いますが、それぞれに何種類かずつあります。足し算は大きく分けて2つで、「Aくんはりんごを3つ持っています。Bさんはりんごを2つ持っています。あわせていくつですか?」という『合併』と、「豚が3匹います。そこに2匹の豚が来ました。豚は全部で何匹になりましたか?」という『増加』です。
これらは式にしてしまうと「3+2」で同じなのですが、意味としては異なります。これらの意味の違いというのは口で言われたり、絵を見たりするだけで理解するのはなかなか難しく、友だちと遊ぶ中で自分で体験したり、具体物を操作したりするなどして身につけていくことになります。身体の動かし方につまずきがあるということは、それらの実体験が伴いにくいということになります。引いては、これらの場面のイメージが育ちにくいということになります。
子供は問題文を聞いたり読んだりして立式をするときに、「3」「2」「あわせて」などキーワード「だけ」を拾って式にしていることがあります。答えが正しいかどうかだけでなく、どこまで文の内容全体を把握し、それを式にできているのでしょうか。
64~65で紹介しましたように、「足し算をする」だけなら、指を使ったり、ドットを書いたり、あるいは計算機を使ったりすれば答えは出ます。しかしながら「足し算がわかる」ということになると、『合併』『増加』それぞれの場面がイメージでき、自在に式に置き換えることができるということになるのではないでしょうか。
それを踏まえてどういう取り組みができるのかと考えていくと、例えば「文を読む→文の内容を絵に描く→そのうえで式にする」といったように、意味と、式とをつないでいく学習。「3+2という式をもとに絵を描く、問題文を作る」といった学習なども、子供のイメージの育ちを確かめていくことになるのではないでしょうか。
(本校特別支援教育コーディネーター)
94 一対一対応(数の保存概念) その4
前回の続きになります。具体物の「多い/少ない/同じ」の学習を丁寧に進めていくこと、そしてそれを確かめる方法として一対一対応を身につけていくことが、その先の数詞や数字を駆使した学習につながっていくことをお伝えしてきました。
一対一対応をするということは、牛でもねずみでも、大きい羊も小さい羊も、好きなキャラクターも嫌いなキャラクターも、そんなことは関係なく、「一つのものは一つ」として「数の観点からすると等価値」であるという抽象的な思考ができることでもあります。
「〇〇マンは大好きだから、こっちのほうが強い!」「牛さんの方が大きいから、こっちがすごい!」といった感覚では、数量同士の比較、一対一対応はできないわけです。色も形も大きさも好きかどうかも関係なく、「数」ということだけに注目することですので、かなり難しい思考になります。ですので、基本的には小学校1年生の算数は具体物同士の一対一対応から始まります。それができてはじめて、ドット(・)に置き換えたり、数詞(イチニサン)に置き換えて比較したり、数字(123)に置き換えて比較したりということができるからです。
よく見るとどのフィギュアもみんな違うのですが、数の観点からすると「みんな等しい」。この思考を育てます。
「数『だけ』に注目する」というのはかなり難しい思考です。そこにたどり着くために、これまでに紹介してきたようなマトリクスや弁別といった学習を通して「色に注目する」「形に注目する」「大きさに注目する」といった練習をしていくわけです。
また、一対一対応を学ぶためには、そもそも「動かしても、数は変わらない」という数の保存概念が成立していないと困難です。具体物を動かして比較しますから。
これが成立していないとき、子供は「これいくつ?」と言われて「1、2、3、『3』」と答えたとしても、その位置を変えてもう一度聞かれたときに、また「1、2、3」と数えなおしてしまいます。身体のつまずきがある子供の場合、公園での砂場遊び、積み木遊びといった経験が不足しがちなことから、「動かしても量は変わらない」という感覚が身に付きにくくなります。それが算数の学びにくさといったことにつながっていくのですが、だからこそ、特別支援学校では教材を工夫し、内容を工夫し、一人一人の子供に合わせて授業を工夫していくことになります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
93 一対一対応(数の基数性) その3
前回紹介した一対一対応からのステップですが、身体の動き、特に手の使い方が苦手だと具体物を操作する経験も不足しがちです。具体物の量を比べたり、取り出したりといった学習が十分でないままに数字の学習を進めていくと、どういうことになるでしょうか。
たとえば、ということで以下のような課題が難しくなりがちです。
「12の大きさはこのぐらい。では20の大きさはどのくらい?」
で20の大きさの丸を書いてもらいます。この場合、書くことの難しさから課題に取り組みにくいことがあります。そんなときには以下のような課題もあります。
「『8』はどのへん?」
これらの課題は、加減算をサクサクとこなしているようにみえる子供であっても、意外と難しいことがあります。数字の背景にある、量の感覚が十分に身についていないためです。具体物を使うような課題はとっくにクリアしている…と思いつつも、少しだけ振り返ってみて、具体物同士の「どっちが多い」の比較、「『4』と〇〇〇」「『5』とグループの友だちの数」といった数字と数量の比較なども復習してみてはどうでしょうか。
(本校特別支援学校コーディネーター)
92 一対一対応(数の概念の基礎) その2
前回の続きになります。羊の集団を比べることに成功した人類ですが、「遠くにいて直接比べることのできない羊の集団を比べるには?」だとか、「隣の山と自分の山とではどっちの木が多いのか?」といった、次のステップの課題に直面することになっていきました。
離れたところにある集団同士、あるいは動かせないもの同士をどうやって比べるのか? 放牧していた羊が減ったかどうかをどうやって調べるのか?
人類というのはすごいもので、木であれば「1つの山の木にロープを巻き」「そのロープを隣の山に持って行って余るかどうかを確かめる」ということを発明するわけです。おそらくは羊一匹に石一つを対応させる、といったことから始まったのでしょう。
そしてやがて人類は「イチ、ニ、サン、シ、ゴ」という音の順番に数量を対応させれば便利!ということに気づき(数詞の発明)、さらにはその数詞を記号にして粘土板に刻めばもっと便利!(数字の発明)ということに気づくわけです。
子供の学習もまた、具体物を直接比較するということの学習から、「具体物をドットなどに置き換えて比較する」「具体物を数詞(イチ、ニ、サン)に置き換えて比較する」「具体物を数字(123)に置き換えて比較する」というように進んでいきます。
算数の勉強と言うと「5+2=7」のように数字の操作という印象があるかもしれません。しかしそこにたどり着くためには、具体物を操作することからの、「抽象的な思考のステップ」を丁寧に踏んでいく必要があります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
91 一対一対応(数の概念の基礎) その1
今回は、「一対一対応」について説明していきます。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』にかかってきます。
「一対一対応」というと、「お皿の上に1つずつ物を置いていく」活動だとイメージされやすいようです。「一対二対応」だと、お皿の上に2個ずつ置いていくことになります。これらの学習自体もたしかに大切なのですが、数の前段階として考えると、これだけでは必ずしも十分とは言い切れないようです。
そもそも、一対一対応というのは何のために行うのでしょうか? その成り立ちを考えると「人類が数の概念を獲得する前」までさかのぼります。一対一対応を最初に発明した人の名前は残っていませんが、遥か昔に、おそらくはユーフラテス川のほとりあたりで、羊や山羊を飼っている人がいたのでしょう。そして、隣で羊を飼っている人と「どっちの羊の方が多い?」ということになったのでしょう。本当のところはわかりません。
それで、大昔の人はどうしたのか? なにしろ、数の概念はありません。「イチ、ニ、サン」という数詞は発明されていませんし、「1、2、3」という数字も発明されていません。
こういう状況です。
おそらくはこうやって一匹ずつ、羊を対応させて「余った方が多い」ということを確認したのでしょう。
つまり、一対一対応というのは「多い/少ない」ということを確かめる方法だということです。左の写真では、積み木の方が余るから、積み木の方が多いことになります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
87 位置の学習5×5
前回に続き、「前後左右」と「上下左右」といった位置関係を示す言葉を学ぶための教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
A「上から3番目、左から2番目はどこですか」といった絶対的な位置
B「ひよこの向かって右に2つ、後ろに1つはどこですか」といった相対的な位置
といったことを教員が質問していき、子供が指差しで選んでいきます。そのうえで合っているかどうかを「磁石がはりつくか/はりつかないか」で子供自身が確かめていきます。3×3のときとは違い、上の板を取り外せるようになっており、その場でどこの位置に磁石が貼りつくのかを変えていきます。
なお、この教材は上の板さえ変えてしまえば最大で7×5の表を表現できるので、マトリクスの枠として使ったり、20までの数量の取り出しに使ったりと、多用途に用いることができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
86 位置の学習3×3
今回紹介するのは、「前後左右」と「上下左右」といった位置関係を示す言葉を学ぶための教材です。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
「前後」や「上下」に比べると、「左右」の概念は比較的身に付きにくいものです。これは身体の動かし方につまずきのある子供にとっては特に顕著に見られる傾向です。自分の身体を動かす経験が少ない結果、自分の身体というもののイメージが育ちにくく、左右の概念も育ちにくいのだと言われています。また、位置関係だけでなく、「大きさ」「高さ」「速さ」「広さ」など、大人が子供の頃に公園や野山で遊ぶ中で身につけてきたような、「自分の身体を物差しとした概念」なども育ちにくいようです。
※人は自分の身体を物差しにして周囲の世界を捉えていくので、子供の頃に広く感じた校庭や公園が、大人になってから訪れると狭く感じる。身体という物差しそのものが変わってしまったため。
育ちにくいからこそ、その指導を工夫していきます。
この教材は3つセットになっていて、それぞれ「中央」「上下左右の端」「斜めの端」の1か所だけ磁石が貼りつくようになっています。他は、反発します。この3種類があれば、3×3の場所のすべてを指定することができます。
A「上はどこですか」「右はどこですか」など、絶対的な位置を聞く質問
B「あひるの右はどこですか」「あひるの前はどこですか」など、相対的な位置を聞く質問
を行い、子供に指差しで答えてもらった後、本当に合っているのかどうかを磁石を貼って確かめていきます。繰り返しになりますが、「合っている/合っていない」を教員に言われるのではなく、手ごたえによって自分自身で確かめられるようにする、というのが重要です。
なお、これらの直接的な学習も重要ですが、電動車いすや寝返りなども含めて「自分自身で移動する」経験が空間的な理解を育てていきます。積み木など、各種教材をたくさん操作していくことなども大切で、そこで日ごろの自立活動での姿勢を整える取り組みがいきていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
85 「いくつ」と「〇番目」
今回紹介するのは、「いくつ」と「〇番目」の違いを学ぶための教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
英語などでは「one/first」「two/second」「three/third」といったように「いくつ(基数詞)」と「〇番目(序数詞)」が根本的に分かれていることが多いのですが、日本語の場合は「第〇」「〇番目」「〇回目」などと様々な言葉で表現していて、子供にとっては混乱しやすいようです。
「右から3番目」と「右から3個」の違いを学んでいくにあたり、やはり、子供自身が答えを確かめられるということが重要になってきます。そこで、ここでも磁石の反発を利用していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
83 数量の取り出しの教材 その2
前回の続きになります。これまでも繰り返しお伝えしてきましたように、「できた」「できない」を子供自身が確認できるという状況を作っていくことが重要となります。教員が「合っている」「合っていない」を教えていくと、子どもは教材ではなく、教員の顔色を見て正誤を判断するようになってしまいます。
例えば、ということで手軽に用意できるのが、百円均一の店で売っている鶏卵のホルダーです。中身の、黄色い部分だけを使うことが多いです。このホルダーは10個入りであることが数の学習に向いていて、子供は取り出した具体物をホルダーに置いていき、数量を確かめます。
一定の数量を繰り返し取り出す、という学習も行います。毎回「いち、に、さん」と数えながら数量を取り出しているのでは十分に身についているとは言えず、数えるまでもなく数量を捉える力を、手の感覚として身につけていきます。
いずれにしろ、「3取って」と言われながら4つ掴んでしまった場合、全部置きなおして最初からやり直すのではなく、手の中にある具体物を1つだけよける、といった力が重要となります。
子どもの数量の感覚は比較的3までは身に付きやすいのですが、4以上となるとなかなか難しいことがあります。5以上の数量を感覚的に捉えるのは大人でも難しいので、6からは「5といくつ」という風に捉えるようにおぼえていきます。数量の5のまとまり、10のまとまりをつかむ力が、数の概念の中でも、特に重要な力となってきます。
そのため、さまざまな数量の中でも、特に「5を取り出す」力は大切です。石を取り出して5個ずつセロテープでまとめる、棒を取り出して5本ずつ輪ゴムでまとめるなど、「5」という数量の感覚を手でつかんでいきます。
76~78で紹介したように、磁石の反発を利用したやり方で、指定された数量しか入らない枠というものもあります。合っているのかどうかを磁石の反発という手ごたえ(固有感覚)が教えてくれるので、子どもが自分自身で答えを確かめることができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
82 数量の取り出しの教材 その1
80でも紹介しましたが、身体の動かし方につまずきがあると、耳を使って覚える「数唱」や「九九」を唱えることはできても、その数がどのくらいの量なのかということを感覚的につかみにくい、ということが起きやすくなります。「百まで数えられる」「九九が言える」けれど、たくさんの具体物の中から「3取って」「4取って」等と言われると困ってしまう、といったことです。今回はそんな時に用いる教材を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
数を学ぶ前には、大きさ、長さ、高さ、重さ、冷たさなどを分け、比較し、順序付けるといったことを丁寧に行っていきます。そのうえで、「〇個取って」と指定された数量を取り出すような学習に進んでいきます。
また、そもそものところとして、カードを使って数量の「〇」と「〇〇〇」を見分けるといった学習もあります。数量も大小あたりと同じで、分け、比較し、並べます。
そしてその中に数字や数詞をまぜこんでいき、数の概念を整えていくということも行います。
そして数量の取り出しを行います。やはり、⑭で紹介したストーンアイスキューブが手になじみやすいでしょうか。百円均一のお店で、4個セットで販売されています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
81プリント教材とその活用(かずの学習のプリント その2)
前回の続きとなります。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として用いることを想定しています。
足し算、引き算といったプリントも、数字を扱うだけでなく、数量を織り交ぜていきます。こうすることで、数字の背景には数量があるのだという数の感覚を高めていきます。
また、このように、ただ単に式の答えを出していくだけでなく、一工夫していきます。「先生の数」など「あれ?」と子どもが考え込む要素を入れていきます。答えは1つではありません。他にも、「7」と「いまのお腹のすき具合」や、「5」と「先生の怖さ」とかを比較したりしてみても面白いかもしれません。様々なものを数に置き換え、考えることを学んでいきます。
また、これらのプリントに取り組むに際しては、数字を書いた磁石を置いていく、該当する式の上に磁石を置いていくなどして、子どもの負担を減らしていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
80プリント教材とその活用(かずの学習のプリント その1)
今回は、様々な「かずの力を育てる」プリント教材を紹介します。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として用いることを想定しています。
「かずの力」と言いますが、数の概念というのは
・12345…という「数字」
・イチ、ニ、サン、シ、ゴ…という「数詞(数詞を順番に言っていくのが数唱)」
・〇 〇〇 〇〇〇 〇〇〇〇…という「数量」
この3つから成り立っています。数字を数詞に、数詞を数量に、数量を数字に、といったようにこれらを相互に変換できてはじめて「数の概念が成立している」と言えるのですが、身体の動かし方につまずきがある子の場合、どうしても「物の見えにくさ」や「操作経験の不足」があることから、「数字が読めたり、数唱ができたり」していても、数量の理解が進みにくいということがあります。
そこで「4個取って」「3個取って」といった数量の取り出しの学習を行っていくのですが、例えば、ということで以下のように特定の数量を〇で囲んでいくといった方法もあります。
また、「多い/少ない」を学習していくことも重要です。この時「数量同士」「数字同士」を比較していくだけでなく、「数字と数量」「数字と数詞」「数詞と数量」を比較していく中で、それぞれが相互に変換できるということを学んでいきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
75 プリント教材とその活用(ことばの学習のプリント その2)
前回の続きとなります。
これまで紹介してきた様々な学習の総決算的なプリントとなります。「物の名前」「色」「形」「大きさ」「季節」「絵の細部」「陸海空」など、様々な属性に焦点をあてて思考していきます。これも「適切な答えを選んでいるか」ということは特に問題としておらず、「どうしてそう考えたのか」ということを問いかけていきます。教員からすると「正しい」答えを選んでいても、理由を聞いてみると不思議な理由だったり、教員からすると「間違った」答えであっても、子どもなりによく考えた結果だったりすることがあります。
「強さ」「大きさ」など比較概念の場合は、「選ぶプリント」「比較するプリント」と進んでいきます。これらも適切な答えであるかどうかは特に問題とはしていなくて、「どうしてそう考えたのか」「強いものには他にどんなものがあるか」「もっと強いのは何か」といったことをやりとりしていくきっかけにしています。
子どもが「あれ?」と考え込む題材を選ぶことがポイントで、「先生とお母さんはどっちが強い?」「先生とお母さんはどっちがかわいい?」とか、答えがあってないような質問をしていきます。もっともな理由を言う子だとか、「これは答えられない」と答える子どもだとか、様々な答えが返ってきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
74 プリント教材とその活用(ことばの学習のプリント その1)
58において、「文字を読み上げていること」と「書いてあることの意味が分かること」の間には、大きな違いがあることを紹介しました。今回は、様々な「ことばを育てる」プリント教材を紹介します。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として用いることを想定しています。
この2枚のプリントは似ていますが、子どもからするとかなり難易度が異なるものになっています。絵を見て単語を選ぶことと、単語を見て絵を選ぶこと。多くの子どもにとっては、前者の「絵を見て単語を選ぶ」ことの方が難しいでしょう。
これは特定の文字を選択するプリントです。「め」と読み上げるためには、「あ」「ぬ」といった形が似通った文字との見分けがついている必要があります。なお、〇を書くことが難しい子どもの場合、あらかじめプリントをホワイトボードにセロテープで貼り付けておいて、磁石を置いていくことで選択できるようにします。
季節に関する言葉なども、プリント化して学習することができます。書くことが難しければ磁石を使います。文字の獲得がまだである子どもは、絵で学習していきます。これらのプリントは「正しい答え」を答えてもらうためのものではありません。教員と子どもとで「これってどういうの?」「見たことある?」「他にはどんなのがある?」「先生はこう思う」といったやりとりを重ね、その子自身がどう考えているのか?ということを深めていきます。
また、プリントを用いるメリットには「その時、その場で子どもが言ったことを教員が書き込んでいける」といったこともあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
65 繰り上がりの支援 その2
前回の続きとなります。
C 4(加数)を分解して10を作るやり方
もっとも一般的なやり方で、「7はあと3で10」「4を3と1に分解」「10と、あと1だから11」というように、「7+4」を「7+(3+1)」「(7+3)+1」「10+1」と操作していきます。ただし、この場合は『10までの合成と分解』が理解できている必要があるため、前回紹介したようなやり方よりもハードルが上がります。
D 5のまとまりをつくるやり方
その他に、「5のまとまり」を重視して、「7を5と2に分ける」「4はあと1で5」「2を1と1に分解」「5が2つと、あと1だから11」という考え方もあります。これだと、『5までの合成と分解』が理解できていれば計算することができます。「7+4」を「(5+2)+4」「5+(1+4)+1)」「5+5+1」と操作していきます。手続きとしては、煩雑になるでしょうか。順を追った処理が得意な子であれば、やりやすいかもしれません。
前回紹介したような、「指を使う」「ドットを書く」といったやり方は、算数科の内容を積み重ねていくということを考えると、推奨しにくいところがあります。しかしながら計算をすることの目的が『自分で答えを出すことで、自信をつける』ということだったり、『「計算だけ」がどうしても苦手』だったりすればどうでしょうか。子どもによって、時と場合によって、適切な繰り上がりのやり方は変わってきます。無理に自分で計算せず、計算機を使うことが適切である子もいるでしょう。
大人になってしまうと20までの加減算や九九は暗記してしまい、自分自身が「どうやっているのか」を意識しにくくなります。しかしながら繰り上がり一つを取り上げても様々なやり方があり、子どものそれまでの学習の積み重ねや得意不得意を踏まえて選択していくことになります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
64 繰り上がりの支援 その1
今回は教材そのものではなく、支援の仕方を『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として紹介していきます。10をこえる足し算、「繰り上がり」の話になります。
例えば、「7+4」という問題があった場合、答えは「11」になります。この答えに至るためには、いったいどのくらいのやり方があるでしょうか?
A 指で数え上げる
B ドットや〇を書いて数え上げる
これらのやり方で、「答えが出る」ことに間違いはありません。しかしながら正確に答えが出るか? その後の学習の積み上がりは? といったことを考えていくと、どうでしょうか。特に身体の動きにつまずきがある子の場合、「正確に数える」こと自体が困難であることがあります。数えながら指を動かしていくうちに、どうしてもずれていきやすいのです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
58 文字の意味を取る教材
53において、「文を読み上げること」と「文の意味が分かること」には大きな違いがある、ということをお伝えしました。今回は、文の意味を取っていくことの教材を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使っていきます。
ありがちな状況としては、子どもが文字から意味を取っているのではなく、教員が思わず「言ってしまっている」言葉を「聞いて」子どもがわかってしまっているという展開です。そこで大事になってくるのは、「意味を取っていないとできない」教材を用意することです。例えば、以下のようなプリントが考えられます。
左のプリントは、文字を読み始めた頃に用いる教材で、単語を読み上げたあと、該当する絵を指していきます。また逆に、絵を見て、該当する単語を選んでいきます。右のプリントはかなり学習が進んだあとのものになります。ここでは「みずにうく」ものですが、「どうぶつ」「たべもの」「なつ」「とぶ」など、テーマに沿って単語を選んでいきます。
絵カードで行っていた、各種弁別を単語で行うということも勉強になります。「単語カードで色の弁別をする」というだけでも、かなり難しい学習になります。
また、〇×で答える学習も考えを深めやすくなります。
「×」と答えた場合、「じゃあ本当は何?」などと確認していきます。こんな風に、子どもが単語や文の意味を取る力を高めていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㊷文字ブロック各種
文字に関する教材は、タブレット等を使っていくことも含め、色んなものが市販されています。しかしながら手先の使い方が苦手な子にとっては操作がしにくいことが多く、本校でも様々な工夫をしています。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
左のものは、百円均一の店で売っている立方体の木の、6面すべてに文字を書いています。子どもによって違うのですが、一定の大きさの立方体であることで、操作がやりやすくなることがあります。また、6面すべてに文字があるので、毎回「表」を探す必要がなくなります。
これは百円均一の店で売っている木片(3×3×1センチ)に、ボール盤で直径20ミリ深さ5ミリの穴を開け、強力磁石を埋め込んでいるものです。木工用ボンドで固定します。なお、全く同じやり方で「②マトリクス」の2つ目の教材が作られています。磁石があるために教材がばらけず、ホワイトボードの上で並べやすくなります。
これは市販の文字スタンプに上の写真と同じ立方体の木を貼り付け、子どもが持ちやすいようにしたものです。指先で教材を扱うことは難しくても、手掌全体で持てるサイズにすることで、子どもが自分自身で教材を操作できることがあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介㉝「立体迷路の文字への応用」
今回紹介するのは、⑨で紹介した立体迷路と同じ方法で作った教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として想定しています。
使っている素材、製作方法は⑨と同じ(百円均一の店舗のMDF材を使用)ですが、教材がかさばりすぎないようにA3大のMDF材を半分に切り、A4サイズにして使用しています。文字の基礎となる「線」の学習用の教材、文字そのものの教材があります。
書字には、非常に細かい指先の動きが必要とされます。「点結び」「なぞり書き」など紙と鉛筆を用いた学習方法もありますが、枠の中で積み木などのペグを操作することにより、段階を追って、スモールステップで学んでいくことができます。「凹の溝の中を指で動かす→凸の上を指で動かす→ペン先でペグを動かす→紙の上で実際に書く」といった具合です。
また、書くことをスモールステップで練習していくのと同時に、⑫のトーキングエイドのように、代替の機器を用いていくことなども検討していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㉕三次元属性分類(マトリクス)
今回紹介するのは、色、形、数量など3つの属性を組み合わせていく「三重分類」の教材となります。②と㉑の二重分類で取り扱っていた属性は「色」「形」「数量」「大きさ」「陸海空」などのうちから2つでしたが、ここでは3つの属性を取り扱います。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
作り方としては②や㉑で紹介したものに近いのですが、三次元属性分類にするための「3つめの表札」を入れるために、土台となるMDF板を二重にしています。そのうちの一枚の上方に5センチ四方の穴をあけることで(ここでは「色」の表札が入っている)、「色、形、数量」という3つの表札を入れることができるわけです。なお、マトリクスの本体を2~3個同時に使用するのもポイントです。ここでは色3種、形3種、数量3種、3×3×3の27種のペグを配置していく表を実現しています。
この教材は実際にやってみるとわかるのですが、かなりワーキングメモリに負担がかかりますし、抽象的な思考を要求されます。抽象的な思考というのは、「すいか」「ぶた」といった実際のものの、色、形、数量、大きさ、熱さ、速さなど特定の属性を取り出して考えていくことです。そうやって整理して物事を考える力をつけていくことで、言葉や数を理解していくといった基礎が整っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介㉒「筆をつるすなわとび」
今回紹介するのは、字を書くことを補助する教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
身体の使い方につまずきがあると、字の形は知っているのに、書いて表現することが難しい、という状況になりがちです。タブレット等の情報端末などで「書く」経験をすることもできますが、やはり、できればお正月などは本物の筆と紙を用いて書初めの体験をしたいところです。
今回紹介するのは、「手をイメージ通りに動かしにくい」「手に力が入りやすい」子どもが字を書きやすくするための道具です。百円均一の店舗で売っている、何の変哲もない「なわとび」です。これをカーテンレールからたらし、書初め用の筆に接続。ギリギリ筆先が紙につかない高さに設定します。すると、なわとびの持つ適度な張力によって子どもの手が浮き、自在に筆を動かしやすくなる、ということがあります。力を入れると筆先が紙につき、力を抜くとまた離れていきます。
※ただの紐では伸縮性に欠けるため、力を入れても紐が伸びません。また、衣類に使われているようなゴム紐だと、伸縮しすぎて手の重さを支えることができません。購入費用なども考えると、もっとも効果的だったのがなわとびでした。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑲「つまむ用のおはじき」
今回紹介するのは、前回同様に特に字を書くことに直結する、手の使い方の学習用の教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
箸や鉛筆といったものの使い方を練習する際、もっともシンプルなのは「箸や鉛筆を繰り返し練習する」ことです。しかし、いくら練習していっても、なかなか上手にならないことや、独特で動かしにくい手の使い方を学習してしまうことがあります。十分に手の使い方の基礎が整っていないままに細かすぎる操作を行っているためです。箸や鉛筆を用いていくのであれば、親指と人差し指を伸ばし、中指・薬指・小指を曲げて『ピストル』の形を作れるくらいに手指が使えているとよいでしょう。
実際の手指の使い方の練習ですが、⑱で紹介したボルト外しのほか、粘土遊び、おもちゃの操作など、様々なものがあります。ここで紹介するのは「おはじき」を使ったやり方で、おはじきを一つずつ、つまんでいきます。つまんだおはじきは、もぞもぞと手を動かして、薬指と小指に送り込んでいきます。親指と人差し指でおはじきを操作し、薬指と小指で保持し、中指がそれらの仲立ちをしていきます。薬指と小指にいくつかのおはじきをためこんだら、今度はまたもぞもぞとおはじきを人差し指と親指の方に送り出していき、容器に戻していきます。これらの一連の流れを行うことで、各指の分離した使い方を学んでいきます。
※何枚かの硬貨を持って、一枚ずつ自動販売機に入れていく際などにも必要な力となります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑱「ボルト外し」
今回紹介するのは、特に字を書くことに直結する、手の使い方の学習用の教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
ホームセンターなどで売っている、ボルトとナットの組み合わせとなります。子どもの手のサイズに合わせて用意していきます。箸を使う、鉛筆を使うといった「手の使い方」の発達を見ていくと、最初は手全体で物を掴んでいたのからだんだんと各々の指がバラバラに動かせるようになり、最後は親指と人差し指で物をつまめるようになっていきます。この際、よく見ていくと、手の指の中で「親指と人差し指は物を操作するために」使われ、「小指と薬指は動かす指を支えるために」使われ、「中指はその双方の目的で」使われていることがわかります。
このボルト外しでは、小指と薬指でボルトの本体を支え、中指、人差し指、親指でナットを回していきます。「ナットを外す」と目的を明確にする中で、支える指の動きと、操作する指の動きを分離させていくわけです。
なお、字を書く、箸を使うなどの際にどうしても小指と薬指が「浮いて」しまう場合、消しゴムの破片などを小指と薬指の中で持つことで、小指・薬指と、中指・人差し指・親指を分けて使うことがしやすくなることがあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑭「数量学習用の石(半具体物)」
今回紹介するのは、石です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使っていきます。
数量を学習するための半具体物には、いろいろなものがあります。タイル、算数セットのブロック、棒などなど。それらの中でも、操作のしやすさから考えると立方体。そして適度な重み、子どもの手の中に収まるサイズ、1個当たりの費用といったことを考えると、百円均一の店舗で4個セットで売っている「ストーンアイスキューブ」の使い勝手がよいようです。
立方体なのでそろえやすく、「5のまとまり」や「10のまとまり」を作る際も、セロテープなどで巻いて固めることができます。
特定の半具体物だけでの理解にならないように、棒、ブロック、ミニチュアの具体物といった、様々なものから「数量」という属性を取り出して考えていくことを促していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑫「トーキングエイドライト」
今回紹介するのは、福祉機器の「トーキングエイドライト」です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使っていきます。
「トーキングエイド」は既にタブレット型の後継機が発売されており、校内で使用している子どももいるのですが、ここではあえて旧型を紹介していきます。
筆記が難しい子ども、発語が難しい子どもにとって、文字入力をし、それを読み上げてくれるこの機械は、非常に貴重なコミュニケーション手段になることがあります。もちろん、新型には文字だけでなく絵を選んで文を作る機能などもあり便利なのですが、「ボタンを押す手ごたえ」「押した→声が出た!」という実感となると、旧型に軍配があがるようです。
なお、ボタンを押すと声が出るおもちゃというのは、たくさんあります。しかし新作旧作を問わず、この機器で重要なのは文字情報として残り、推敲できるということです。音はすぐに消えてしまいますが、文字として残ると、子どもが考えを深めていくきっかけとなります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑩「A3のホワイトボード、磁石」
今回紹介するのは、市販品そのものを使った、使い方の工夫となります。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』あたりを想定しています。
なんとか字や絵を書くことができるけれど、手に力が入りすぎ、プリントがぐちゃぐちゃになってしまう…といった子どもたちがいます。市販品のすべり止めもあるのですが、なかなか高価なものです。A3大のホワイトボードを用い、プリントの四隅をセロテープで貼り付ける…。たったそれだけのことで、一気に書きやすくなることがあります。
また、書字が難しくても、選択肢に〇をつけていったり、あるいは正解のところに磁石を置いていき、教員が代わりに〇をつけていく、といった形で学習する子どももいます。
いずれにしろ、ただ答えを書いて〇か×かを確認するのではなく、「どうしてそう思ったのか?」「例えばどんなことがあるのか?」「他には何があるのか?」といったことを問いかけながら、子どもの考えが深まるように学習していっています。
(本校特別支援教育コーディネーター)