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カテゴリ:Ⅳ.文字や数を身につける際の教材

199高さによる数量の教材(積み重ねる)

今回紹介するのは、数量を並べる教材になります。185「高さによる数量の教材(棒に通す)」とほぼ同じコンセプトの教材となりますが、185が棒に教材を通していたのに対し、こちらは積み上げています。どちらの方がやりやすいかは、子どもによるでしょう。なお、使用している木材は正方形です。「棒に通す」のであれば円形でも大丈夫なのですが、こうやって積み重ね、並べていくとなると、正方形の方が並べやすいです。

 

 

 

 

 

 

185と同様に、5は5として固め、5のまとまりが意識できるようにしています。1、2、3といったところもそれぞれ接着していて、「5と1で6を作る」「5と3で8を作る」といった「5といくつ」で数を捉えるということが意識しやすくなっています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

185高さによる数量の教材(棒に通す)

前回紹介した「数量のマトリクス改」と同じ発想による教材となります。棒をさらに高くし、10までの数量に対応できるようにしてあります。なお、形の要素を加えて3×10くらいまでのマトリクス化することも可能でしたが、今回は1×10の、数量に特化したシンプルな教材にしてあります。

 

 

 

 

 

 

棒については、直径8ミリ、長さ120ミリのアクリル棒を使用しています。教材の強度、子どもにとっての見えやすさといった観点から、白いアクリル棒にしました。なお、棒のカットは業者に発注しています(詳しくはお問合せください)。土台となる板は3枚重ねで、もう一枚の板で底をふさいであります。なお、棒の長さは115ミリでぴったりとなりますが(板が1枚5ミリで3枚分、積み木が1枚10ミリで最大10枚)5ミリ分の余裕を持たせてあります。

似たような市販の教材もあるかと思いますが、それらはおそらく「1から10までの数量を順番に並べる」ものかと思います。この教材は表札を自由に入れ替えることができるため、より多様な学習を行うことができます。また、「5」をまとまりとして接着し、黒く塗り分けているのもポイントです。「『5が区切りの良い数である』ということの理解」「『5といくつ』で6から9までを捉える」ということは数量を学習する上で非常に大きなことですが、あらかじめ「5」をまとめておくことにより、そこが自然に学べるようになっています。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

184数量のマトリクス 改

数量と形のマトリクスにつきましては、23「色と形以外のマトリクス」で紹介しました。ここではすいか、みかん、りんごを用いていますが、〇△□のもの、キャラクターの絵を用いたものなどのバージョンがあります。

 

 

 

 

 

 

これらの数量のマトリクスについてですが、そのメリットは大きい(少ない動きで学習できる等)ものの、本当にこれらで数量の理解が深まるのだろうか?という疑問もありました。そこで、改良を加えたのが以下の教材になります。

 

 

 

 

 

 

「5でぴったりになる」棒を3×5に配置し、〇△□の積み木に穴を開けて棒に通せるようにしてあります。この棒はいわゆるダボで、直径8ミリ×長さ60ミリ。各積み木は厚さ10ミリで、〇が直径40ミリ、△が一辺45ミリ、□が一辺40ミリです。それぞれ中央に直径10ミリの穴を開けてあります。結果、高さを駆使することにより、数量を感覚的に掴みやすい教材となりました。また、似たような市販の教材もありますが、マトリクスの中に組み込んだために、「表札」の位置を自由自在に変えることができます。さらには手をたくさん使うため、手の使い方の練習としても効果的な教材となりました。

一方、メリットとデメリットは表裏一体とも言えます。手の使い方がとても苦手な子どもにとっては、扱いにくい教材ともなりました。この新型の数量のマトリクスがよいか、それとも従来通りの高さのない数量のマトリクスがよいか、それらは子ども一人一人によって、学習の目的によって変わってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

174数字を「書く」ことを補う教材

算数科の学習にあたり、「数字を書く」ということについても、子どもがつまずきやすいところです。数字を書くだけで精いっぱいになり、考えることに手がついてきにくい、という場合です。文字や数字の読み上げ機能がついた機器、アプリを使う(そして教員が代筆する)という方法もありますが、紙の上で、試行錯誤しながら自分で書く、操作するということも重要な学習なのかと思われます。

 

 

 

 

そこで、前回と同様に教科書やプリントを固定したうえで、数字を書いた磁石を移動させていきます。この方法では取り扱う数の桁が増えたり、筆算の過程を行ったりすると操作が難しくなりますが、10までの数、2桁くらいまでの数の扱いであれば、効果的な支援になるでしょう。一人一人の子どもの様子はもちろん、活動の目的、内容により、適切な支援も変わってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

173「その子ども」に合った数図の扱い

「数図」というものがあります。算数の授業の中で「数を一目でわかる」ようにしたもので、左上から「1、2…」となり、「5で折り返す」のが基本です。数字(123)数詞(いち、に、さん)とともに、数量を表すものとして算数科の学習の、基本中の基本の内容となります。

 

 

 

 

 

数図の学習の際には、表記された数量を読み取るだけでなく、「数字を見て数量を書き込む」「数詞を聞いて数量を書き込む」といったことも行われます。しかしながら、身体の動かし方が苦手な子どもにとっては「書く」ことが困難で、なかなか学習が進みにくいということがあります。シールを貼る、スタンプを押すということでも同様の学習に取り組むことが可能かと思われますが、ここでは磁石と、立体の枠(百円均一の店で売っている、卵ホルダーの中身)を使う方法を紹介します。

 

 

 

 

 

 

ここでは、「157プリントの固定用枠」を使用。ブラックボードパネルが底に敷いてあるため、磁石を扱うことができます。なお、教科書も冊子形式では扱いにくいため、各ページを切り離してラミネイト加工したうえで固定しています。書見台を使う方法もありますが、十分には本が開きにくいし、その上で磁石を操作したり、書き込んだりするのが難しいためです。

子どもは磁石を操作し、数図と同じ内容の操作を行っていきます。プリントに書きこむのであれば、子どもが操作した通りに教員が代わりに書き込みます。書くか、補助具を使うか。一人一人の子どもに検討していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

172「その子ども」に合った数ブロック

いわゆる「算数セット」には「数ブロック」が入っていることがあります。黄色と白で、磁石が内蔵されている、おなじみの教材です。小学校の低学年で用いられることが多いですが、身体の動かし方が苦手な子どもにとっては扱いにくさがみられることもあります。特に不随意運動が入りやすい子どもにとっては、1個1個の数ブロックが小さすぎることと、磁石の磁力の弱さがネックになりやすいようです。

 

 

 

 

 

 

そこで、百円均一のお店で売っている木片(30ミリ×30ミリ×15ミリ)にの上下にそれぞれ直径20ミリ深さ5ミリの穴を開け、磁石をボンドで固定したうえで黄色と白の紙を貼り、梱包用テープで巻きあげたものが上記の教材になります。適度な大きさと重さ、磁力があり、ホワイト(ブラック)ボードの上で使うことで、不随意運動が入りやすい子どもにとっては扱いやすい教材となります。

 

 

 

 

 

 

一方、重いものを持ち上げにくい、力が入りにくい子どもにとっては、従来通りの数ブロックの方が扱いやすいでしょう。学びやすい教材/学びにくい教材は子どもそれぞれによって異なり、それぞれの子どもに合わせた工夫を行っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

171「とまと」と「まとと」

「一文字ずつを読み上げる」ことができても、「単語として意味を取る」ことについては難しい子どもがいます。また、本HPで紹介している「こしとくひらがなアプリ」などを駆使して一文字ずつ打つことはできても、単語を思い浮かべ、それを打つことが難しい(多くは「きつね」が「ねつき」などと逆転する)子どもがいます。それらのつまずきの背景要因は子どもによりさまざまですが、「音を心の中で操作する力」すなわち「しりとり」や「〇のつく言葉の列挙」「単語の逆唱」などの際に用いられる、「音韻意識(日本語の一音ずつを意識し、操作する力)」につまずきがあるという場合が多いようです。

様々な支援が考えられますが、今回紹介するのは、その中でも「勝手読み」が多い場合。すなわち「ねずみ」と書いてあるのに、「ねず」まで行ったら「ねずこ!」と読んだり、極端な場合、「ねずみ」の「ね」だけ、あるいは「きつね」の「ね」だけを見て「ねずこ!」と読み取ってしまう子への支援です。

 

 

 

 

 

 

ここでは、「とまと」カードを5枚、「とまま」「まとと」など「トマトではない」カードを5枚、それぞれ用意してあります。それぞれの単語カードの裏には「〇」なり「×」なり、子ども自身が「『とまと』であったのか否か」を確認できるようにしてあります。教員と一緒に単語を読み上げながら、これが『「とまと」なのか?』とその正誤を確認していきます。

 

 

 

 

 

 

同じようなテーマで、プリント化することもできます。絵と、どこか一か所だけ間違っている単語を提示し、「どこが間違っているのか」「ほんとうは何なのか」ということを問い、正確に読み上げること、一文字ずつを意識することを促していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

170さわってわかるひらがな

文字の学習は、これまでも様々な機会に紹介してきました。「目で見分ける」学習と、「音を聞き取る」学習とが合わさって、「文字を読む」ことができるようになっていきます。しかしながら身体の動かし方が苦手な子どもの中には目を使うことが苦手な子どもも多く、「あ」「め」「ぬ」、「り」「い」「こ」、「れ」「ね」「わ」といった各文字の見分けがつきにくい、といったつまずきが見られることがあります。

 

 

 

 

 

 

これらのつまずきに対する支援として、「目で見る」だけでなく、文字の形、とりわけ「す」「ぬ」「ね」のように複雑に線が交差する文字について、それらの線を「触って」確認できるようにする、といったことが考えられます。具体的には線の交差が実感できるように「モールで文字を作る」「粘土で線を作って文字を作る」といったことです。今回紹介するのは市販の教材で、文字の線が単に印刷されているだけでなく、ざらついていて、線を指で辿る中で触覚的にも感覚が入ってくるようになっているものです。

学習は見るだけ、聞くだけではなかなか進んでいきません。実際に身体を動かすこと、複数の感覚を活用しながら学んでいくことが重要なのですが、身体の動かし方につまずきがあると、そこが難しくなりがちです。教材教具を工夫する中で、それぞれの子どもの学びやすさを追求していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

164かずカード

市販品、百円均一の店舗で売られている学習用カードの活用例となります。

 

 

 

 

 

 

このカードは片面に数量、片面に数字が印刷されています。このカードを用い、例えば数量の弁別、数字の弁別を行うということが考えられます。数量を並べる、数字を並べるというのが次に来るでしょう。しかし「カードの持ちにくさ」「数量の配置が5のまとまりを意識しにくい」といった、気になる点もあります。そこで、いくつかの工夫を施したものが、以下の写真になります。

 

 

 

 

 

 

まず、「数カード」を2組用い、テープで巻いてしまうという工夫です。こうすることでカードに厚みが出て、子どもが取り扱いやすい教材となります。また、右の写真では、5を〇で囲み、「5といくつ」で6~10の数量を把握しやすいようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

163数量学習用の半具体物 その2

「⑭数量学習用の石(半具体物)」に続き、数量を学習するための半具体物の紹介です。半具体物というのは、さまざまな具体物から「数量」という属性を取り出して考えるためのものです。そういってもわかりにくいので実際の例を紹介しますと、例えば「イチ ニ サン」といった数詞や「123」といった数字が発明される前の時代、自分の家で飼っている牛と、隣の家で飼っている牛の数を比較する必要があったとします。

 

 

 

 

 

 

この場合、どっちかの牛を移動させ、一匹ずつつき合わせれば比較できますが、とても大変です。また、「イチ ニ サン」と数えられれば便利ですが、まだ数詞は発明されていません。そこで、昔の人は「石」「ひも」などの半具体物を使って具体物の「数量」を抽出するということを考えました。そうすると、遠く離れたもの同士、動かせないもの同士であっても、多少を比較することができます。

 

 

 

 

 

 

この時の、牛という具体物から「数量」という属性を抜き出すために使った石が、「半具体物」となります。石と限らず、棒でも、おはじきでも磁石でもタイルでも数ブロックでも積み木でも何でも構いません。⑭では百円均一の店で4個セットで売っている「ストーンアイスキューブ」を紹介しました。やはり、子どもたちの手の使いにくさを考えると、このストーンアイスキューブの「適度な重さ」「立方体であるため机上で安定すること」「サイズ感」といったメリットは大きく、コスト面からも使い勝手の良さが際立ちます。また、セロテープで固めて「5のまとまり」「10のまとまり」を作るのも簡単です。

 

 

 

 

 

 

一方、それだけを使っていると、「それだけが数である」という誤解も生みがちです。先に紹介した棒、数ブロック等の他にも、例えば押し入れの奥に眠っている碁石なども、子どもの手に収まりやすく、適度な重さがあります。この辺、使いやすい半具体物というのは子どもによって異なるので、一人一人の子どもに合ったものを探っていきます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)