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カテゴリ:教材の使い方

193洗濯ばさみを練習するための土台

あらかじめ挟まれていた洗濯ばさみを取る、あるいは洗濯ばさみをはさむための土台となります。ブックスタンドの形にMDF板をくりぬき、挟み込む形で接着してあります。こうやって土台を安定させることで、子どもが片手だけで洗濯ばさみを扱うことがしやすくなります。土台が揺らいでしまうと、操作どころではかくなってしまいます。

 

 

 

 

 

 

なお、洗濯ばさみそのものも、子どもにとって開きやすいもの、開きにくいもの、さまざまです。どれが良い、悪いではなく、子どもによって適切なものが異なります。

また、子どもが洗濯ばさみを抜く/挟む際、力任せに引っ張ってしまって、実際には洗濯ばさみを開いていない、ということもありがちです。そんな時は、養生テープなどを用い、土台にふくらみを持たせると効果的です。子どもが洗濯ばさみを引っ張ろうとしたり、押し込もうとしたりしても、洗濯ばさみに力を入れない限り、うまくいかなくなります。ちょっとした工夫で、「今できることの、一歩先」の課題を設定できます。なお、今回は土台を駆使してブックスタンドを固定していますが、同様のやり方で、様々なものを固定することができます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

183木の塗装の仕方 その2

前回の続きです。木を絵の具で塗る(毛羽立つ)→紙やすりで削る→再度絵の具で塗る、という過程をたどることにより、なめらかに塗装されたはずです。ただ、そのままでは子どもが触ると絵の具が落ちてしまいますので、ニスで保護していきます。ニスは透明なものを用います。

④ニスを塗る

刷毛を用い、ニスを塗っていきます。①~③の過程を丁寧に行っていると、ニスが木になじむはずです。片面に塗って乾いたら、もう片面を塗ります。

 

 

 

 

 

 

⑤ニスを紙やすりで整える

ニスを塗ったままだとべたべたしてしまうので、ニスが完全に乾いたところでニスの表面を削ります。削りすぎるとニスが全部はがれてしまうので、程度にやすりがけをします。

 

 

 

 

 

 

このように、木の塗装にはかなりの手間がかかります。水性塗料を使っている以上、どうしても毛羽立ちが多くなります。質感が気になる際は、とにかく紙やすりで削っていきます。④ニスを塗る⑤紙やすりでけずる過程も、繰り返すとさらに丁寧に木が保護されていきます。

 

 

 

 

 

 

百円均一の店の絵の具、ニスといったものを使うだけでも、これだけ塗り分けることができます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

182木の塗装の仕方 その1

木は適度な重さがあり、子どもにとっても「自分が操作している」ことに実感を持ちやすい素材です。一方、木製の土台に木製のペグだと見えにくいため、ペグを白や黒に塗りたくなります。また、色の弁別といった課題に取り組むためには様々な色に塗り分ける必要があります。そんな時、木を塗装したいということになるのですが、白木のままだと表面がつるつるしていたはずなのに、塗装したとたんにざらついてしまうということがあります。「毛羽立つ」という現象で、毛羽立った上からニスを塗ったとしても、うまくいきません。塗料の水分が木にしみこみ、それが蒸発する際に木の繊維を立ち上げてしまっているのだそうです。

 

 

 

 

 

 

この現象を解決するには解消には様々な方法(専用の塗料を使う等)があるようですが、ここでは百円均一の店でも簡単に手に入る道具で解決する方法を紹介します。まず、塗る塗料は、アクリル絵の具で構いません。

①とりあえず絵の具を塗る

紙やすりでざっと表面を整えたあと、水はほとんど用いず、絵の具そのままで塗り込んでいきます。片面が乾いたら、もう片面を塗ります。絵の具が乾くと、表面がざらざらとしてしまい、とてもではないですが教材として使えないはずです。ここではそんなに丁寧に塗る必要はありません。

 

 

 

 

 

 

②紙やすりで絵の具をそぎ落とす

非常に手間がかかるのですが、ここがポイントとなります。ざらつきがなくなるまで、絵の具をそぎ落とします。

 

 

 

 

 

 

③再度絵の具を塗る

もう一度、絵の具を塗ります。今度はできるだけ丁寧に、ムラがないように塗っていきます。ここでも、水は用いず、ほぼ絵の具の原液のままで塗っていきます。写真では最初に塗った時との違いが分かりにくいかと思いますが、なめらかさが違います。次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

165バランスストーン

本校の校舎は平屋で、校舎内は車椅子で全校を回ることができ、基本的には段差というものがありません。ある意味、「不安定な足場の上を歩く」機会が少ないということでもあります。そのためハードルを使う、柔らかいマットの上を歩くといった形で多様な身体の動きを身につける学習を行っていくのですが、今回はそれらの中から「バランスストーン」を使った活動を紹介します。

 

 

 

 

 

 

広い庭にあるような、庭石を再現したような教材になります。バランスを取りながらそれらの上を歩いていきますが、自分自身でバランスを取ることが難しい場合、例えば壁に沿って設置し、子どもがいつでも壁に手をかけられるようにする、といった工夫があります。

 

 

 

 

 

 

また、予算的に購入が難しい場合は、「すべり止めのシート」と「ステンレスのボウル」を組み合わせることで、手軽に再現することもできます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

157プリントの固定用枠

74~75回、80~81回等で紹介しましたように、プリント学習は、使い方によっては子どもとのやりとりを充実させる、非常に効果的な教材となります。しかし不随意運動が入りやすいなど手指の使い方が苦手な子どもにとっては、プリントがあちこちに動いてしまって扱いにくいということがあります。

そのため、「⑩A3のホワイトボード、磁石」「121書字をしやすくする教材」では、ホワイトボードにセロテープでプリントを固定する方法、プリントがすべりにくくなる道具といったものを紹介してきました。

 

 

 

 

 

 

しかしセロテープを毎回使うのは煩雑ということ、すべりどめの道具では磁石が扱いにくいといったこともあり、さらに工夫を加えたのが次の教材となります。

 

 

 

 

 

 

土台となっているものは、「144〇×でのプリント回答システム」で紹介したものと同じで、A3大のMDF板を重ねて接着し、A4台にくり抜いたところに鉄板(ブラックボードパネルの中身)を挟み込んだものです。

プリントを固定するために、上記のものと同じA3大のMDF板を半分に切ってA4サイズにし、その内部をさらにくり抜いています。なお、角の部分は斜めに切ることで、プリントが固定されやすくなりました。さらに教材の質を高めるならば、枠の四隅に強力磁石を埋め込むことで(ボール盤を使い、磁石のサイズぎりぎりの高さでくぼみを作る)、さらに強力にプリントが固定されます。教科書なども、ラミネイト加工したうえで固定することができます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

152 シリコンスプーン

身体を動かしにくい子どもにとって、食事の際に使う道具をどうするか、ということも重要な視点になります。食事を自分で食べる、すなわち自食する際に食具に求められることと、誰かに食べ物を口元に運んでもらう際に食具に求められることでは、その内容が大きく変わってきます。今回は、食べ物を口元に運んでもらった際に便利なスプーンを紹介します。

 

 

 

 

 

 

このスプーンの素材はシリコンになります。食べ物を上手に取り込むことが苦手な子どもの場合、金属製のスプーンだと歯がガチリとあたって、口腔内が傷つくことがあります。シリコン素材の場合、子どもも安心して口を閉じることができるわけですが、噛む力が強すぎると、スプーンそのものを噛みちぎってしまうこともあります。何にしてもそうですが、道具は子どもの実態に合わせて選んでいきます。

スプーンを選ぶポイントとして、本校の自立活動専任教諭からは2点があげられています。①スプーンのボール部の幅が口に合っているか。②スプーンのボール部の深さが浅めで、上唇で一回で取り込める深さになっているか。迷ったら、「浅め」を選べばよいとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

子どもの摂食の練習という視点に立つと、おそらくは大人が想像する以上に、子どもにとっての「適切な量」は少な目であるようです。すなわちスプーンの先に少しだけ、というくらいです。

なお、モデルの口の大きさからすると、上記のスプーンはそれでもまだ大きめです。繰り返しますが、「良いスプーン」は子ども一人一人にとって違うものです。スプーンを使う目的によっても変わってきます。その日、その時、その場面に応じて、適切なものを選択していきましょう。

(本校特別支援教育コーディネーター)

145はさみの補助具 その2

「142はさみの補助具」で紹介したものは、基本的にカスタネットばさみなどを使うお子さん、両手を別々に動かすことが難しいお子さん向けのものでした。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、自分で紙を持ってはさみを操作する子向けの補助具です。紙を自分でもつとき、やはり難しいのは紙がぐにゃぐにゃになってしまって、はさみでうまく切りにくいという状況です。

ここでは、紙を2枚の木の間にはさみこめるようにすることで、紙の張力を保ち、はさみの刃が立ちやすいようにしています。また、板を裏返すことで、右利きの子も、左利きの子も使えるようになっています。なお、実際には2枚の板ではさむだけでは紙の張力を保つことは難しく、セロテープも併用しています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

144〇×でのプリント回答システム

⑩「A3のホワイトボード、磁石」でも紹介しましたが、プリントをホワイトボードに固定する(セロテープ等で)ことにより、子どもは学習しやすくなります。こうすることで「失敗することを嫌がる」子どもにとっても学びやすくなります。なぜならば、磁石を置くことで選択していく中で、答え合わせの際に教員に「〇」だけをつけてもらうことができるからです(間違っていた場合は磁石をずらすだけでよい)。プリントに、決して「×」がつきません。

 

 

 

 

 

しかしながら問題は「毎回セロテープでプリントの四隅を固定するのが煩雑」ということです。また、授業中にテープカッターを子どものそばに置くのも怖いものです。さらに言えば、不随意運動が入りやすい子どもの場合、動かしているうちに磁石がずれてしまいます。

 

 

 

 

 

 

そこで編み出したのが、プリントのフォーマット(問題文の位置、〇×の位置)を定めたうえで、上から厚紙や板をかぶせるだけでプリントを固定できるシステムです。土台はA3大のMDF板を重ねてくり抜き、ブラックボードパネルの鉄板をはさみこんであるものです。鉄板をはさむのは、磁石を使えるようにするためです。

 

 

 

 

 

 

また、上にかぶせるものは、板目表紙で作ってあるものと、木で作ってあるものがあります。最終的には木で作るほうが速いし、強度があるかと思われますが、板目表紙であればカッターを使って作成できます。なお、土台は新たにつくったのではなく、これまでに紹介してきたものの流用となります。A4サイズの板が入る規格なので、応用することができます。他の教材もそうですが、10センチ四方、A4サイズなど、教材の規格が統一されていると、様々な場面で教材を応用させていくことができます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

143ロープを引っ張る

「手で姿勢を支える」学習は、道具の使いやすさなど日ごろの生活や学習のしやすさに直結するだけでなく、転倒したときにとっさに手が出ることなど、歩行の安定といったことにもつながる重要な学習です。「高ばい」「雑巾がけ」「体育館の天井から下がったロープにつかまって揺れる」「上り棒にのぼる」「ジャングルジム」など様々な学習が考えられますが、身体の動きにつまずきがある子どもの場合、なかなか取り組むことが難しいです。

そんな中、例えば「大きなマットをロープで引っ張る」といった活動が考えられます。両手でロープを交互に引っ張り、たぐりよせていきます。重さは水の入ったペットボトルなどで調整しています。手の力だけでなく、体幹を整える学習ともなります。

 

 

 

 

 

 

活動のバリエーションとして、井戸のように、ロープを引っ張って天井まで物を上げる、というのもあります。この辺、バケツなどを使い、中に入れるものの重さで難易度を調整していきます。「天井に上げるまで」なので、活動の終わりもわかりやすいです。教室内で手軽に取り組める活動になります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

142はさみの補助具

はさみを扱うにあたり、はさみそのものの操作も難しいのですが、問題になりやすいのは切る対象(多くは紙)をどのように固定するべきか?ということです。多くは教員が両手で引っ張り、紙が張ったところを子どもが切っていく、ということになるでしょう。しかし、やはりそれでは子どもが「自分自身で切った」という実感を持つことは難しいのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

最初の工夫はこれです。木の板を2つ置いて、セロテープを使ってその間で紙を固定しています。これでも教員が木を押さえる必要があったので、木を切りぬいて専用の補助具を完成させました。およそ、「カスタネットばさみを自分で押せる」けれど「一人で切るのは難しい」くらいの手の操作の段階にある子ども向けとなります。

 

 

 

 

 

 

何枚か重ねて厚みをつけた板を、U字状にカットしてあります。やはり、セロテープで紙を固定します。板なので重みがあり、ちょっとした子どもの手の動きでは動かないようになっています。なお、この補助具を使った場合、「直線切り」はできるのですが、「曲線切り」は難しいです。もっと子どもが「できた」と思える支援ができるように、工夫を重ねていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)