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本校の教材教具

155高さの系列化(10まで)

前回の続きになります。前回は5まででしたが、同じ枠を2つ並べることで、「10まで」の高さの系列化の教材となります。アクリル棒の高さは、5までに続けて100mm、110mm、120mm、130mm、140mmに調整してあります。

 

 

 

 

 

 

白と黒の2色を使い、「自分で並べる」「見本を見ながら並べる」というように難易度を調整できるようにしてあるのも、5までと同様です。大小を10個並べる、高低を10個並べる、そして次回紹介する「長さ」を10個並べるくらいの力が育つと、「数量」の学習に入ってもスムーズに学んでいけるのではないでしょうか。

(本校特別支援教育コーディネーター)

154高さの系列化(5まで)

㊾「大小を並べる教材」105「様々な並べる教材」で「大きさ」に沿って並べる際の教材を紹介しました。物事を順序付ける(系列化する)視点には、「大きさ」のほか、「高さ」「重さ」「長さ」「速さ」「熱さ」「暑さ」「厚さ」「新しさ」「丸さ」「音量」「面白さ」など様々なものがあります。それらのうち、「速さ」「暑さ」などは教材化するのが困難です。教材化しやすいのは「大きさ」「高さ」「長さ」のように「目で見て分かる」もの、あるいは「重さ」「なめらかさ」「硬さ」「熱さ」のように「触って分かるもの」になるでしょう。

 

 

 

 

「大きさ」については様々な物が市販されていることをお伝えしてきました。いわゆる「ピンクタワー」のほか、入れ子、マトリョーシカなどです。「高さ」についても市販されているものがあるのですが、手の操作が苦手な子どもにとっては扱いにくい(すぐに倒れてしまう)ということがほとんどです。

 

 

 

 

 

 

そこで、穴に差し込むようにすることで、倒れないようにしたものがこの教材です。アクリル棒は幅が20ミリのものを使い、高さを50㎜、60㎜、70㎜、80㎜、90㎜と10ミリ刻みで調整してあります(穴の深さがシナベニヤ3枚分なので、これでちょうど1~5の階段状になります)。なお、アクリルの棒を切るのは業者に発注しています。詳細は本校コーディネーターまでお訊ねください。

また、アクリルの棒を白と黒の2色使い、穴を5×2の2行で開けることで、「自分で並べる」ことと、「見本を見ながら並べる」ことの両方ができるようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

153大小ペグさし その2

既に⑦⑧「電池入れ」⑪「アクリル棒さし」を紹介してきましたが、その改良版となります。⑦⑧⑪で土台に使っていた端材を、化粧板で表面を加工されたシナベニヤに変更しています。3枚を重ねて接着、そこに27ミリと18ミリのドリルで穴を開けたうえで、底をもう一枚の板でふさいでいるのは従来の作りかたと同じです。また、太い方のペグが縦50ミリ幅25ミリ、細い方のペグが縦50ミリ幅15ミリなのも従来どおりです。

 

 

 

 

 

 

化粧板なので表面がすべりやすく、ざらつかないこと。従来の板よりも重いので土台として安定すること。化粧板の色と穴の部分の色にコントラストが出るので、子どもが穴に気づきやすくなること、といったことがメリットとなります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

152 シリコンスプーン

身体を動かしにくい子どもにとって、食事の際に使う道具をどうするか、ということも重要な視点になります。食事を自分で食べる、すなわち自食する際に食具に求められることと、誰かに食べ物を口元に運んでもらう際に食具に求められることでは、その内容が大きく変わってきます。今回は、食べ物を口元に運んでもらった際に便利なスプーンを紹介します。

 

 

 

 

 

 

このスプーンの素材はシリコンになります。食べ物を上手に取り込むことが苦手な子どもの場合、金属製のスプーンだと歯がガチリとあたって、口腔内が傷つくことがあります。シリコン素材の場合、子どもも安心して口を閉じることができるわけですが、噛む力が強すぎると、スプーンそのものを噛みちぎってしまうこともあります。何にしてもそうですが、道具は子どもの実態に合わせて選んでいきます。

スプーンを選ぶポイントとして、本校の自立活動専任教諭からは2点があげられています。①スプーンのボール部の幅が口に合っているか。②スプーンのボール部の深さが浅めで、上唇で一回で取り込める深さになっているか。迷ったら、「浅め」を選べばよいとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

子どもの摂食の練習という視点に立つと、おそらくは大人が想像する以上に、子どもにとっての「適切な量」は少な目であるようです。すなわちスプーンの先に少しだけ、というくらいです。

なお、モデルの口の大きさからすると、上記のスプーンはそれでもまだ大きめです。繰り返しますが、「良いスプーン」は子ども一人一人にとって違うものです。スプーンを使う目的によっても変わってきます。その日、その時、その場面に応じて、適切なものを選択していきましょう。

(本校特別支援教育コーディネーター)

151単語、文指導のステップ その4

149回の続きです。「こしとくひらがなアプリ」を使って単語を打つ前に、「文字ブロックを並び替える」学習を行います。ここでは「すいか」を扱うとすれば、「す」と「い」と「か」の文字ブロックを渡し、「す」「い」「か」の並びになるように取り組んでいきます。

 

 

 

 

 

 

一文字ずつが読めるし、「すいか」とも言えているし、あっさりと進むだろう…と大人としては考えがちですが、ここでつまずく子どもは多いです。しかしこの「文字ブロックを並び替える」というステップを飛ばして、いきなり単語を書く、打つというのはさらに難易度が高いです。

直接単語を書く、打つというのは、いわば心の中に一音ずつを思い浮かべて、それを並べていくという作業です。非常に(おそらくは子どものワーキングメモリに)負担がかかります。文字ブロックの並び替えというのは、一音ずつを視覚化して操れるようにするということです。これを行うことにより、子どもにとって「音を操る」ということの意識が高まりやすくなるようです。

 

 

 

 

 

 

この「文字ブロックを並び替える」という活動のあとだと、「絵を見て単語を打つ」ことがスムーズにいきやすくなります。あるいは、子どもによっては直前に並べた文字の並びを視覚的に記憶して、それを再現しているのかもしれませんが…。

「子どもに発語があり」「一文字ずつを読み上げられれば」それで即、作文ができるようになるか。決してそうではありません。そして今回4回にかけて指導のステップを紹介してきましたが、すべての子どもに同じように効果的な指導方法はありません。

どのように考えながら単語を書いて(打って)いるのか? 子どもの頭の中は見えませんが、そこを推測しながら、一人一人の子どもに最適な支援を組み立てていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

150単語、文指導のステップ 番外編 特殊音節

「本校の教材教具」コーナーも150回目を迎えました。ご愛読ありがとうございます。

子どもに単語や文字の学習を教えていると、「あれ?」と思うことがあります。大人がイメージする音と、子どもが実際に聞いている音との違いです。

 

 

 

 

 

 

 

例えば「らいおん」ですが、これを文字を覚えたての子どもに打ってもらうと、「らいよん」となりがちです。また、草加市は本校の学区ですが、子どもに打ってもらうと「そか」となることがあります。「そうか」ではありません。

文字を学習済みの大人にとっては「先生(せんせい)」「お父さん(おとうさん)」「氷(こおり)」「小売り(こうり)」「行李(こうり)」「郡(こおり)」といった表記に違和感はないはずです。そしておそらくは、文字表記のイメージ通りに聞こえていることでしょう、しかし文字を学んでいる段階の子どもからするとどうでしょうか。

身近な「せんせい」という言葉からして、子どもは「せんせえ」と書きますし、子どもの耳にはそのように聞こえています。実際には大人にもそう発音していることが多いのですが、我々の頭は自動的に文字表記に合わせて変換してしまいます。

例えば、「おとうさん」の「う」は何と発音しているでしょうか? 「お」のはずです。このように実際の発音と文字表記が異なるのが「特殊音節」であり、子どもがつまずいていきやすいところです。ひらがなは本質的に、音と文字が一致しているので学びやすい文字言語です。しかし例外もあり、指導に当たっては丁寧に行っていく必要があります。

助詞の「を」「へ」「は」もそうです。「八戸へ行く(はちのへへいく)」「母は(ははは)」の分かりにくさは言うまでもありません。「を」についても、子どもに教える時に「WO」と強調したくなりますが、実際には「お」と全く同じ発音になっています。

「こ『お』り」「おと『う』さん」あたりも同じ発音なのに、文字表記になると変わってしまう。非常に難しいところです。※旧仮名遣いなど歴史的な経緯があるため。

また、漢字になると「林(リン、はやし)」といったように一つの文字に複数の読み方が出てきて、子どもの混乱に拍車をかけていきます。単語、文の指導に当たっては、それらの日本語表記のわかりにくさを十分に踏まえたうえで行っていく必要があります。

それでも、英語と比べると、だいぶ日本語の表記はわかりやすいようです。英語の場合、そもそも「A(エイ)」を「エイ」とは発音しません。「C『A』T(キャット)」「『A』LW『A』YS(オールウェイズ)」。ここに出てくる「A」は全部発音が違います。「発音の例外」が日本語よりもはるかに多く、これが英語圏の読字障害(ディスレクシア)の多さの要因となっているようです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

149単語、文指導のステップ その3

いよいよ「こしとくひらがなアプリ」などを使った、「書き」の学習に入っていきます。繰り返しますが、読むことと、書くことは違います。そして多くの場合、「読む」→「書く」という順序で学習は進んでいくのですが、子どもによっては「書く」方が、「読む」よりも得意という場合があります。子どもの学びの道筋は10人いれば10通りあり、みな違います。

基本的には「2文字→3文字→4文字」「濁音半濁音なし→濁音半濁音あり」「拗音促音(ゃゅょっ)なし→拗音促音(ゃゅょっ)あり」といったステップをたどります。しかしながらいきなりタブレット端末と「ひらがなアプリ」を子どもに渡し、「かえる」の絵を見せて、「書いて(打って)」と促しても、なかなか難しいことが多いでしょう。発語があり、文字が読めていればできそうなのですが、なかなかそうはいきません。

 

 

 

 

 

 

子どもの中には、心の中で音を操る力(音韻操作)が苦手な子がいます。その場合、「いちご」と聞けば「イチゴ」のことだとわかり、自分でも「いちご」と言えるとしても、「い」「ち」「ご」という、「いちご」を構成する一つずつの音に注意を向けられるとは限りません。なお、これができるからこそ子どもは「単語を逆に言う(いちご→ごちい)」ことができたり、「しりとり」ができたり、「〇のつくことば」を言えたりします。

文字を書くというのは、心に思い浮かべた単語を、一音ずつに解体して、順を追って一文字ずつに変換していくことです。これが、非常に難しいことになります。子どもによってはこの「心の中で音を操作する」ことが難しくて、「いぬ」と書くべきところが「ぬい」といった結果になってしまうことがあります。

※ほかにも原因があることがあり、一概には言えません。

そこで、「絵を見て単語を書く(打つ)」一歩前の学習として考えられるのが、「文字ブロックを並び替える」です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

148単語、文指導のステップ その2

前回の続きとなります。一文字ずつの読みを獲得した、その後です。

一文字ずつの読みから二文字単語の読み取り、三文字単語の読み取り、四文字単語の読み取り…と学習は進んでいきます。大人にとってはなかなか実感しにくいところですが、子どもにしてみると、初めて読む単語ばかりです。ですので、最初は「うし」「うま」「かめ」「いぬ」「ねこ」など種類を限定(ここでは動物)したうえで、二文字単語、なおかつ濁音や半濁音(「¨」や「°」がある字)を伴わないものを選んで学習するといったように絞って学習すると、子どもが単語の内容を予測しやすくなり、学びやすいことが多いでしょう。

子どもは最初のうちは、文字から直接意味を取ることは難しく、「う」「し」。「う」「し」。「う」「し」。「う」「し…」と何度も繰り返し読み上げ、自分で言った音を、耳で聞いて意味を取っていきます。このあたり、発語が難しい子どもが、文字の読み取りも難しくなっていくことの要因の一つとなります。

 

 

 

 

 

 

特定の種類の二文字単語の読み取りができるようになったところで、食べ物など他の種類の名詞、動作語などを扱っていきます。また、濁音や半濁音、三文字単語なども取り扱い、読み取れる単語の幅を広げていきます。友だちや家族、教員の名前、天気の名称、日課の名称などが、子どもが「読んで」「分かって」嬉しい単語でしょう。

 

 

 

 

 

この頃、プリント学習なども設定できるようになっていきます。〇をつけることなど書字が難しい場合、ホワイトボードにプリントを貼りつけて磁石を置くことで選択したり、「144〇×でのプリント回答システム」のようにプリントのフォーマットを定めて、枠を用意したりするとよいでしょう。

ここからさらに、二語文の読み取り、三語文の読み取り、文を読んで5W1Hの質問に答える…といったことに進んでいきます。

 

 

 

 

 

なお、どうしても単語の意味が読み取りにくい場合、「こしとくひらがなアプリ」を使うと、子どもがその単語を見てアプリに打ち込み、音声として再生して「耳で聞く」ことで、意味が取れるということがあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

 

147単語、文指導のステップ その1

143回では「〇×でのプリント回答システム」を紹介しました。今回は、「53~55文字を読み上げるためのカード」などを用いて一文字ずつを読み上げられるようになってから、簡単な文を読み取れる、あるいは「145こしとくひらがなアプリ」などで文を作れるようになるまでの学習を追っていきます。

「子どもに発語があり」「一文字ずつを読み上げられれば」それで即、作文ができるようになるかというと、そうはスムーズにいかないことが多いです。そこには「文字を読み上げる」ことと「文字を読んでわかる」のは違うということ、「文字を読むこと」と「文字を書く(打つ)」ことは違うということ、という2つの視点があります。

 

 

 

 

 

 

「58 文字の意味を取る教材」でも紹介しましたが、えてして起こりがちなのが、子どもが「りんご」の単語カードを「り」「ん」「ご」と一文字ずつ読み上げたとき、教員が「そうだね、『りんご』だね」と言っているケースです。この場合、子どもは自分自身で「読んだから」頭の中にリンゴのイメージが浮かんだのではなくて、教員が口にした言葉を「聞いて」イメージが浮かんでいる、ということがあります。すなわち、良かれと思って教員がやっていることが、子どもの学習の妨げになっているというケースです。

これを防ぐためには、教員が「りんご」と言ってしまうのは避け、「そうだね、じゃあ『それ』って」どういうもの?」といった発問をする必要があります。「うし」「はさみ」など身振り化できるものであれば、「そうだね、じゃあ『それ』をやってみて」といった問いもありえます。そうしてみると、意外なくらい、子どもは単語を読み上げていても、その意味がわかっているとは限らないということがわかります。十回ぐらい同じ単語を繰り返し読み上げてようやく意味としてつながったり、「動物だよ」「食べ物だよ」といったヒントがあってはじめて意味としてつながったりする子もいます。

教員の言葉を「聞いて分かる」力と、自分で「読んでわかる」力との間には、格段の開きがあります。「読む」となると、一文字ずつならわかっても、単語になったとたんに意味としてつながらなくなる子どもがいます。また、「うし」「うま」のような二文字単語なら意味として捉えることができても、「あひる」「きりん」などのように三文字単語になったとたんに難しくなる子もいます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

146こしとくひらがなアプリ

「こしとくひらがなアプリ」については、既に本校HPで紹介してきました。この「本校の教材教具」コーナーにおいて、あらためて紹介させていただきます。

ひらがなを学習するための教材としては、「53~55文字を読み上げるためのカード」「59~61文字を読み上げるまでに」「110文字ブロックの改良」「111文字入力装置の改良」において、「文字カード」「文字ブロック」「文字入力装置」を紹介してきました。

さらに改良を加えた教材が、今回の「こしとくひらがなアプリ」です。文字入力装置の改良を行った際、文字盤にラミネイト加工した紙を挟み込んだ結果、文字の入力に相当な指先の力を必要とするようになってしまったため、指先で触れるだけで操作できるように開発しました。原案・イラストが本校教員で、プログラミングは保護者が行っています(他の子たちにもぜひ使ってほしいとのことですので、今回紹介しています)。

 

 

 

 

 

 

 

音声による文字の読み上げ機能、単語の登録機能もあります。

なお、同じ絵を使った「文字カード」「文字ブロック」「文字入力装置」「アプリ」を紹介してきましたが、それぞれの良さ、使いにくさがあります。特にスマートフォンやタブレット端末の画面は、不随意運動の入りやすい子供にとっては思うように操作しにくく、アナログの教材の方が使いやすいということがあります。一方で筋疾患があり、アナログの教材が操作しにくい子にとってはスマートフォンやタブレット端末といったデジタル機器を駆使することで、表現の可能性が広がりやすいでしょう。いずれにしろ、教材ありきではありません。アナログの教材を使うから良い支援というわけでも、情報端末を用いるから良い支援というわけでもありません。あくまでも一人一人に合った支援を追求していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)