本校の教材教具
145はさみの補助具 その2
「142はさみの補助具」で紹介したものは、基本的にカスタネットばさみなどを使うお子さん、両手を別々に動かすことが難しいお子さん向けのものでした。
今回紹介するのは、自分で紙を持ってはさみを操作する子向けの補助具です。紙を自分でもつとき、やはり難しいのは紙がぐにゃぐにゃになってしまって、はさみでうまく切りにくいという状況です。
ここでは、紙を2枚の木の間にはさみこめるようにすることで、紙の張力を保ち、はさみの刃が立ちやすいようにしています。また、板を裏返すことで、右利きの子も、左利きの子も使えるようになっています。なお、実際には2枚の板ではさむだけでは紙の張力を保つことは難しく、セロテープも併用しています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
144〇×でのプリント回答システム
⑩「A3のホワイトボード、磁石」でも紹介しましたが、プリントをホワイトボードに固定する(セロテープ等で)ことにより、子どもは学習しやすくなります。こうすることで「失敗することを嫌がる」子どもにとっても学びやすくなります。なぜならば、磁石を置くことで選択していく中で、答え合わせの際に教員に「〇」だけをつけてもらうことができるからです(間違っていた場合は磁石をずらすだけでよい)。プリントに、決して「×」がつきません。
しかしながら問題は「毎回セロテープでプリントの四隅を固定するのが煩雑」ということです。また、授業中にテープカッターを子どものそばに置くのも怖いものです。さらに言えば、不随意運動が入りやすい子どもの場合、動かしているうちに磁石がずれてしまいます。
そこで編み出したのが、プリントのフォーマット(問題文の位置、〇×の位置)を定めたうえで、上から厚紙や板をかぶせるだけでプリントを固定できるシステムです。土台はA3大のMDF板を重ねてくり抜き、ブラックボードパネルの鉄板をはさみこんであるものです。鉄板をはさむのは、磁石を使えるようにするためです。
また、上にかぶせるものは、板目表紙で作ってあるものと、木で作ってあるものがあります。最終的には木で作るほうが速いし、強度があるかと思われますが、板目表紙であればカッターを使って作成できます。なお、土台は新たにつくったのではなく、これまでに紹介してきたものの流用となります。A4サイズの板が入る規格なので、応用することができます。他の教材もそうですが、10センチ四方、A4サイズなど、教材の規格が統一されていると、様々な場面で教材を応用させていくことができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
143ロープを引っ張る
「手で姿勢を支える」学習は、道具の使いやすさなど日ごろの生活や学習のしやすさに直結するだけでなく、転倒したときにとっさに手が出ることなど、歩行の安定といったことにもつながる重要な学習です。「高ばい」「雑巾がけ」「体育館の天井から下がったロープにつかまって揺れる」「上り棒にのぼる」「ジャングルジム」など様々な学習が考えられますが、身体の動きにつまずきがある子どもの場合、なかなか取り組むことが難しいです。
そんな中、例えば「大きなマットをロープで引っ張る」といった活動が考えられます。両手でロープを交互に引っ張り、たぐりよせていきます。重さは水の入ったペットボトルなどで調整しています。手の力だけでなく、体幹を整える学習ともなります。
活動のバリエーションとして、井戸のように、ロープを引っ張って天井まで物を上げる、というのもあります。この辺、バケツなどを使い、中に入れるものの重さで難易度を調整していきます。「天井に上げるまで」なので、活動の終わりもわかりやすいです。教室内で手軽に取り組める活動になります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
142はさみの補助具
はさみを扱うにあたり、はさみそのものの操作も難しいのですが、問題になりやすいのは切る対象(多くは紙)をどのように固定するべきか?ということです。多くは教員が両手で引っ張り、紙が張ったところを子どもが切っていく、ということになるでしょう。しかし、やはりそれでは子どもが「自分自身で切った」という実感を持つことは難しいのではないでしょうか。
最初の工夫はこれです。木の板を2つ置いて、セロテープを使ってその間で紙を固定しています。これでも教員が木を押さえる必要があったので、木を切りぬいて専用の補助具を完成させました。およそ、「カスタネットばさみを自分で押せる」けれど「一人で切るのは難しい」くらいの手の操作の段階にある子ども向けとなります。
何枚か重ねて厚みをつけた板を、U字状にカットしてあります。やはり、セロテープで紙を固定します。板なので重みがあり、ちょっとした子どもの手の動きでは動かないようになっています。なお、この補助具を使った場合、「直線切り」はできるのですが、「曲線切り」は難しいです。もっと子どもが「できた」と思える支援ができるように、工夫を重ねていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
141六面体の教材
子どもがカードを黒板やホワイトボードに貼る際、磁石がついていない面を黒板等に向けてしまって、なかなかうまくいかない…ということがあります。であれば、すべての面に磁石がついていればどうなるでしょうか? どの面にも同じ絵を貼ってあげれば、すごく扱いやすい教材になるのではないでしょうか? そのようなコンセプトから作られたのが、この教材になります。
磁石の反発を押さえてボンドで固定するために、かなり多くの木、本などで重みをつけて強引に押さえてつけています。
実際に作成してみると六方向に働く磁力が互いに打ち消し合い、貼りつく際の磁力が弱くなってしまいました。木のサイズがもう少し大きければ、磁力の干渉の具合が変わってくると思われます。しかし木が大きすぎると重くなりすぎ、また手に収まりにくくなるでしょう。それぞれの子どもの課題に合わせて、教材教具の工夫を行っていきます。
完成品です。同じ絵と絵が、どの面同士であってもくっつきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
140ひもで絵を描く教材
特別支援教育でよく活用される教材の中で、「輪ゴムで図形を作る」ものがあります。線、図形への意識を高めるために便利なものなのですが、肢体不自由校においてはそもそも手の使い方が苦手で、扱うことが難しいという子どもを多く見かけます。
そんな中、県立塙保己一学園の特別支援教育コーディネーターに紹介していただいたのが、右の写真の教材となります。「フィロ」という商品名になります。ペン先を差し込んでいくことで線を描くことができます。もちろん自由に絵を描くことにも使えるのですが、2つ用意して図形の見本合わせてとして活用することもできます。輪ゴムを使うよりも、子どもにとって手指の操作面での負担は少ないようです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
139箱椅子を組み合わせて作る平均台
バランスを取って歩く、というのは身体の動かし方が苦手な子どもにとって、非常に重要な課題です。安定した床の上を歩くだけでなく、その子の力に応じて、芝生の上を歩く、柔らかいマットの上を歩くなど、様々な面の上を歩いていきます。
発展的な課題として「平均台」があります。しかし通常の平均台は幅が狭いものが多く、歩行が不安定な子どもが使うにあたっては難しいところがあります。「巧技台」を組み合わせて平均台として使うというのもあるのですが、本校の備品にはありません(そのためイラストです)。そのため身近な物を活用していくのですが、例えば箱椅子(収納用のスツール)を使うという方法があります。本を大量に入れると重さと安定感がでるため、子どもにとって安心して取り組みやすくなります。なお、最初の段階では平均台は壁に沿って設置すると、子どもが不安感を持ちにくくなります。クランク状に設置するといった工夫もできます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
138名画の分割パズル
一枚絵の分割パズルは、二分割のものからはじまり(二分割も、切片がぎざぎざのもの→まっすぐなものへ)、分割する回数を増やせば増やすだけ難易度があがっていきます。また、身近なキャラクターや家族の写真などを使えば子どもにとって取り組みやすくなります。
今回紹介するのは、意図的に、極端に難易度を上げた分割パズルです。およそ「ひらがなを見分ける基礎を育てる」といった目的であれば6~8分割のものができればよいのですが、チャレンジ精神が高く、難しい課題を好む子どものために作成されたものです。意図的に、子どもにとってなじみの少ない絵を選んでいます。なお、このパズルは大人であっても達成が難しく、10分以上かかっても作れない教員がいました。子どもが取り組む場合、下絵の上に重ねていくという形をとることになります。
高難易度のパズルとしては、名画を使う他にも「集合写真」などがあります。子どもにとって身近な物を教材にしていくのが教材づくりの基本ですが、必要に応じ、あえて身近でないものを使うこともあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
137数字と数量を対応させる型はめ
切片がぎざぎざになっており、数量と数字が正しく合わないとはまらないという、二分割パズルです。同じ二分割でも、一枚絵を二分割したものなどとは難易度が大きく異なります。
決してこの教材だけで数量と数字が対応できるようになるわけではないのですが、様々な数の学習の教材の1つとして押さえています。材料としては百円均一の店で扱っている、6枚セットのMDF板です。電動糸鋸で、フリーハンドで切断してあります。
なお、数字の読み方のヒントとして、数字の面の裏に、「136 数字の歌カード」で紹介した絵を貼りつけてあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
136数字の歌カード
数字が読めることが、数がわかるということではありません。数量(・ ‥ …)をことばに置き換えたものが数詞(イチ ニ サン)、数詞を文字に置き換えたものが数字(123)ですので、数の学習の基本は「数量がわかる」ということです。しかしながら、数字もまた、数の概念を構成する要素のひとつですので、学んでいく必要があります。
ここでは「53 文字を読み上げるためのカード その1」などと同様に、各数字に対応した絵がヒントになるようにしています。「♪かかしの…」「♪たぬきの…」といった、数字の歌をモチーフにしています。なお、算用数字において「数字のジュウ」は存在しないため(漢数字には『十』があるけれど、算用数字ではあくまでも「1」と「0」を使って『十』を表現する)、独自に「数字のゼロ」の絵を作っています。
(本校特別支援教育コーディネーター)