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カテゴリ:Ⅰ.手や目を使う基礎を整える教材

195 ラジカセ(+ウゴキんぐ)

前回、ラジカセを紹介しました。機能がシンプルなこと、ボタンの数が限られていることも、子どもが学ぶ上ではメリットとなります。しかしながら、それでもボタンがいくつかあり、ラジオも聞くことができ、複雑といえば、複雑です。

そこで、ラジカセとコンセントとの間に、「ウゴキんぐ」をはさみます。「ウゴキんぐ」はコンセントにつないで使う、あらゆる電化製品をスイッチ化することができる機械です。

 

 

 

 

 

 

ここで肝心なのは、「ウゴキんぐ」で制御できるのは、「電流のON/OFF」だけである、ということです。したがって、「コンセントにつないだだけ」で動き始める機械でなければ意味がありません。例えば、最近のTVをスイッチ化しようとしてもうまくいきません。

スイッチ化しやすいのは、コンセントにつないだだけで動かせる機械。すなわち、掃除機ですとか、ミキサーですとか、そういったものになります。ラジカセもそのひとつで、「再生ボタンを押したまま」「早送りボタンを押したまま」で固定できますので、手ごろに、扱いやすいスイッチ教材となります。

これらは、CDやデータで行おうとしてもできません。ラジカセだからこそできることです。なお、その他の機械はというと、「掃除機」「ミキサー」のほか、「扇風機」「電動のマッサージ器」などが教材にしやすいでしょう。昔ながらのトースターも使えるかもしれません。すなわち、アナログの、コンセントにつないだだけで動く機械です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

194ラジカセ

ラジカセを身近で見なくなって久しくなりました。カセットテープからCD、MD、データ、配信と、学校の授業で使われる音源も時代とともに変わってきました。今回はだいぶ昔に使われなくなった、「カセットテープ」そして「ラジカセ」を教材として扱うことを紹介します。ちなみにですが、ラジカセはいまでも新品が売っています。カセットテープも市販されています。

 

 

 

 

 

 

ラジカセ(カセットテープ)と、CDやデータとでは何が違うでしょうか? 大きな違いは2つあります。1つには、音を止めても、また続きから音楽が始まるということです。当たり前のことのようですが、CDやデータではこうはいきません。曲を飛ばしたり、止めたりしているうちに、何がどの曲だったのか、どこがどうつながっているのか、よくわからなくなってしまいがちです。もう一つは、ボタンがアナログであるということ。再生ボタンや停止ボタン、早送り、巻き戻しボタンを押したときに、力強い手ごたえ(固有感覚への入力)と音がする、ということです。液晶の画面を触れるのとは比較にならないくらいの、強いフィードバックが返ってきます。これらの理由から、子どもによっては、「ボタンを押したら音楽(や声)が流れる」「何をしたらどうなる」ということの因果関係を学ぶ、非常によい教材となります。

テープの爪は、折っておきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

192長方形の型はめ 6連 ランダム

前回の続きになります。「長方形だけの型はめ」に続くものとしては〇△□同様に2連、3連にといったことが考えられますが、長方形ともなると、すでにかなり「図形を見分ける」「手を操作する」力が育っていることが想定されます。そこで、今回紹介するものは一気に6連。しかも図形の方向を、あえてランダムにしてあります。こうすることで、長方形だからこそ、多様な角度で手首を動かす必要性が生まれます。

 

 

 

 

 

 

型はめパズルというと、算数科の内容として、図形の学習に向けたものと思われがちではないでしょうか。しかし設定の仕方によっては、日々の生活動作の向上に向けた、手首の使い方を学ぶための教材ともなります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

191長方形の型はめ

178「〇だけの型はめ(小)」179「△だけの型はめ」「□だけの型はめ(小)」では、円、正三角形、正方形の型はめを紹介しました。これらは、〇△□の違いはあれど、いずれも重心が図形の中心にあるという特徴があります。

 

 

 

 

 

 

「三日月の形」のような図形と異なり、入れやすいのです。

 

 

 

 

 

 

「〇△□」と「三日月」のような図形との間には大きな難易度の差があります。その間に位置するのが、星の形や、今回紹介する長方形、すなわち直方体の型はめになります。

 

 

 

 

 

 

長方形の場合、正方形と違って、入る方向が限定されます。正方形は「ぐるぐる回して」いると、なんとなく入ってしまうということがありましたが、長方形の場合はかなりじっくりと方向や角を見分けないと、型に入りません。

〇△□、正六角形、長方形、正ではない六角形、星の形、三日月の形など、世の中には様々な図形があります。大人からすると、どれも似たもののように感じてしまうかもしれません。しかし子どもからするとそれら一つ一つの間に、大きな難易度の差があるのかもしれません。子ども一人一人の今の力、次の課題を見据えながら、丁寧な支援を行っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

190重みのあるぬいぐるみ

前回「ウェイトブランケット」で紹介しましたように、固有感覚への入力、圧迫、重みといったものは、子どもの気持ちの安定や、運動発達に大きく影響していきます。一方、ウェイトブランケットも便利なのですが、金額的なことや、重すぎて取り扱いが難しいといったことが気になります。

そこで、今回紹介するのは、古くなったぬいぐるみをリメイクするという方法です。様々なやり方があると思いますが、ここでは一度お腹を切って綿を取り出し、大型のビー玉を入れたゴム手袋をいくつも入れたうえで、再度綿を詰めています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとした工夫で、子どもが膝に抱えやすいぬいぐるみになります。子どもが側臥位になる際に、背中にあてるといった目的でも使われます。

※重みのあるぬいぐるみは、市販もされています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

189ウェイトブランケット

人には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など様々な感覚があり、それぞれが重要な役割を果たしています。その中でも姿勢・運動ということになると、「視覚」「前庭感覚」そして「固有感覚」がポイントとなってきます。「固有感覚」というと聞きなれないかと思いますが、自分の手足がどう曲がっているか、動いているか、どのくらい力が入っているかということ。すなわち筋肉や関節の状態をモニターする感覚となります。

この感覚が整っていないと、そもそも自分の身体がどうなっているのか、どのように動いているのかがわかりにくいということですので、寝返りをする、座る、立つといった様々な場面に影響していきます。また、固有感覚を感じにくいということは、自分の身体がふわふわとしてしまうということ、極端に言うと「自分の身体がそこにある」ということに気づきにくいということでもあるようです。結果、気持ちもふわふわと落ち着かないものになっていきがちです。

今回紹介するのは、ずっしりと重いブランケット、すなわち「ウェイトブランケット」です。人は、誰かにぎゅっと抱きしめられると落ち着いたり、自分で自分の身体を抱きしめることで落ち着いたりすることがあります。固有感覚と、子どもの情動とが密接に結びついているからです。

 

 

 

 

 

 

子どもとの関わりの第一歩はぎゅっと抱きしめてあげること…なのですが、いつも抱っこというわけにもいきませんし、触覚や前庭感覚が過敏で、抱っこが苦手という子もいます。ほんのささいなことなのですが、座っているときにウェイトブランケットなどで膝の上に重みがかかることで、気持ちを落ち着けて活動できるという子どもがいます。うつ伏せ時に、腰のあたりに重みが加わることで落ち着く子どももいるようです。なお、似たような目的のものとして、「重量のあるベスト」なども市販されています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

188〇だけの型はめ 4連 5連 ランダム

前回紹介したのは、〇だけの型はめの3連まででした。今回はさらに穴の数を増やしたものを紹介します。なお、〇だけの型はめ/〇だけの型はめ(2連)/〇だけの型はめ(3連)はそれぞれ難易度に大きな違いがありました。〇だけの型はめならできるけれど、2連になったら難しくなる。2連までならできるけれど、3連になると、急に難しくなる。そんなことがありました。

 

 

 

 

 

 

しかし3までをクリアすると、その先の4連、5連といった課題は一気にクリアしていくケースが多いようです。むしろ、このあたりからは「全部入れればそれで終わり」ではなく、「左端から順に入れていく」といった、数の学習の基礎としての要素が加わってきます。

穴の位置をランダムに配置した教材もあります。〇だけの型はめが「点」。前回と今回消化した2連、3連、4連、5連の教材が「線」的に空間を捉えるものだとすれば、ここでは「面」としてとらえていくことになります。シンプルな「〇だけの型はめ」ですが、一人一人の子どもの課題に合わせた、様々なねらいがあります。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

187〇だけの型はめ 2連 3連

178「〇だけの型はめ」は非常に基本的な学習ですが、では、そのあとはどこに続いていくでしょうか。例えば、〇ができたから□、□ができたから△といった方向性があります。また、型はめのペグのような円盤状のものから、電池のような円柱状のものを入れるようにしていく、といった方向性もあるでしょう。この場合、だんだんと入れるものを長くし、いずれは棒を筒に入れるような力をつけていきます。

そして今回紹介するのは、1枚の「〇だけの型はめ」ができたところで、2枚の型はめ、3枚の型はめへとステップアップしていく教材です。

 

 

 

 

 

 

これは、一見すると簡単に見えるかもしれません。「〇だけの型はめ」ができたのであれば、2枚になっても、3枚になっても違いがないように見えるかもしれません。しかし実際のところ、同じようにボールを入れる課題であったとしても、「縦に5個入れる」ことと、「横に5個入れる」のとでは難易度が大きく異なります。横に入れていく方が圧倒的に難しいです。活動に空間的な広がりが生まれるからです。

 

 

 

 

 

 

今回紹介した教材も同様です。1枚の「〇だけの型はめ」ができることと、2枚の「〇だけの型はめ」ができることとの間には、大きな違いがあります。なお、2枚できることと、3枚できることの間にも大きな違いがあるようです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

186ボール入れ 平面 枠あり

3「鉄球入れ」95「筒入れ課題のバリエーション」でも紹介しましたが、「ボールを入れる」というのは非常に重要な学習となります。市販の玩具で言えば、「くるくるチャイム」といったあたりです。しかしながら、「ボールを持ち上げて」「入れる」という、その動きそのものが難しい、という子どもたちもいます。空間の中の一点(穴の位置)をねらうというのは、ことのほか難しいものです。

そのためくるくるチャイムの入り口をセロテープ等で狭くし、ボールを固定する、という支援の仕方があります。こうすることで、手にちょっと力を入れれば、ボールを押し込むことができます。

 

 

 

 

 

 

その次のステップとして用意したのが、今回の教材です。百円均一の店で売っていた箱を枠として使用します。その中に、箱の大きさに合わせてカットしたMDF板(厚さ5ミリ)を5枚重ねて入れてあります。MDF板には、直径50ミリの穴を開けてあります。こうすることで、「ボールを入れる」という活動が、平面上の活動になります。手の動きとしても子どもの負担が軽減されます。また、箱が枠になっているため、ボール等が転がっていってしまうことが少なくなります。

 

 

 

 

 

 

178「〇だけの型はめ(小)」の一歩手前くらいの課題になるでしょう。

(本校特別支援教育コーディネーター)

181型はめパズルの作り方 後編

前回の続きになります。

④ふちどったところに、電動ドリルで穴をあける

電動糸鋸の刃を通すためです。糸鋸の刃のサイズにもよりますが、直径8ミリほどの太さのドリルであければ十分でしょう。なお、くりぬいた部分をペグとして利用する予定がなければ、中央に穴を開けてしまって構いません。また、ドリルで穴を開ける場合は下に不要な木を敷いておきましょう。そうしないと、穴を開ける際、木の下側の状態が悪くなってしまいます(バリができる)。

 

 

 

 

 

 

⑤穴を開けたところに電動糸鋸の刃を通す

ちょっと難しいですが、穴に刃を通したうえで、機械に固定します。この辺は用いる機械により、固定の仕方が変わります。

 

 

 

 

 

 

⑥線にそって、電動糸鋸でくりぬく

線に沿って一周します。慣れていないと、線にそって切ることや、△や□を切る際の方向転換が難しいでしょう。何度か練習したうえで挑戦してみてください。

 

 

 

 

 

 

⑦黒い色画用紙をラミネイト加工したものをはさみ、もう一枚の板を底にして接着する

木のままでも構いませんが、土台の枠の中を黒くすると、子どもが枠の存在に気づきやすくなるとともに、教材としての質感が一気にあがります。大きな手間ではないので、おすすめするポイントです。

 

 

 

 

 

 

なお、ここでは〇△□の木を用いました。しかし、たとえばスプーン、はさみなど、身近なもの、どんなものであっても、それをふちどり、くりぬいてしまえば、型はめパズルとすることができます。また、同じ要領で様々な教材を木に固定することができます。テープカッターなど、「教員が押さえていなければ扱えなかった」ようなものを子どもが一人で扱えるようになったりすることもあります。ちょっとした工夫で、子どもの可能性は広がっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)