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カテゴリ:Ⅲ.言葉やイメージを広げていく際の教材

60 文字を読み上げるまでに その2

前回の続きです。絵の面で確実に選択できるように学習していきます。「身振り+音声」での提示でできるようになったら、「音声だけ」「身振りだけ」の提示でも選択できるように学習していきます。

 

 

 

 

 

 

また、絵の面を見て「これは何ですか」と聞かれて読み上げるということも行っていきます。この時点では、文字を読み上げているのではなく、絵を見て読み上げるので十分です。発語が出にくい子どもの場合、絵を見て身振りを行っていきます。

 

 

 

 

 

 

絵の面で「身振り+音声」「音声だけ」「身振りだけ」のいずれでも確実に選択できるようになったら、カードを裏返して文字の面を使っていきます。ここでも「身振り+音声」「音声だけ」「身振りだけ」の順を追って学習していきます。

 

 

 

 

 

 

ここで何よりも大事なのは、「子どもが自分で正誤を確認できる」ということです。「『う』はどれですか」と聞かれて、間違ったカードを選んだとしても、カードをめくって絵の面を見れば合っているかどうかがわかります。ここで、いよいよ文字の面を一枚ずつ見て「『これ』は何ですか」と聞かれて読み上げるということを行っていきます。これができてはじめて「文字を読み上げることができた」と言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

59 文字を読み上げるまでに その1

単語の意味を取る前に、まずは文字を読み上げます。今回紹介するのは、53から55にかけて紹介した文字カードを駆使した、文字の読み上げの教え方です。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

文字を読み上げるためには、どんな基礎・基本の力が必要になるでしょうか。まずは、「『あ』と『め』、『す』と『む』、『れ』と『ね』など似通った文字を見分ける力」が必須となります。㊸で紹介した細部視知覚のこととなります。①で紹介した形態構成で言えば、4~6分割くらいのパズルはできていてほしいところです。

 

 

 

 

 

 

次に、そもそもの「わかる力」「イメージする力」の育ちとなります。目途としては、相手の身振りをその場で模倣したり、大小を比較できたりするくらいの力です。

 

その他にも、しりとりや「うま→まう」「うし→しう」など単語を逆に言うときに使う、日本語の一音ずつを捉える力(音韻意識)。物事を記憶する力などが必要になってきます。また、日ごろ繰り返し使っている名前カードや日課カードなどを読み上げていることなども、「そろそろ一文字ずつを勉強していく時期」のタイミングとなってきます。逆に言うと、いくら字を勉強してもなかなか身に付きにくいという場合、ここにあげたどこかの力がつまずいているのかもしれません。そういう時は、いったん基礎・基本に戻って学習してみるとよいのではないでしょうか。

 

では、いよいよ文字カードを使っていきます。最初は、絵の面を並べていきます。

 

 

 

 

 

 

「『あ』はどれですか?」「『い』はどれですか?」と身振りを交えて発問します。これは文字を学ぶための基礎・基本ができていれば、選択できるはずです。逆に言うと、これができなければ文字を学ぶのはまだ早い、ということになるのではないでしょうか。

 (特別支援教育コーディネーター)

57 0から5までのサイコロ

今回紹介するのは、「0から5までのサイコロ」です。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

サイコロというのはすごろくに使うなど数の学習の時に活躍することの多い教材なのですが、一般的な1から6のサイコロというのは扱いにくいことがあります。数量の理解の基本は「5のまとまり」「10のまとまり」の理解になるところ、どうしても「6」の扱いに困るのです。本来であれば、「6」という数量は「5と1」として教えたいところです。

 

そこで、サイコロの6面のうち、「6」にあたるところを「0」にし、「0から5までのサイコロ」にしてしまいます。そうすると出てくる数字が5までとなり、子どもが「5のまとまり」を意識しやすくなってきます。「0」の概念の導入ともなります。

 

市販品としての「0から5までのサイコロ」はなかなか手に入りにくいようです。一部の算数セットに含まれているほか、立方体の木に自分で書く、無地のサイコロ(市販されています)に書き込む、といった入手法があります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

56 吹きゴマ

今回紹介するのは、呼気を調整する力を学ぶための吹きゴマとなります。一定時間、口をすぼめてそっと息を吹き続ける呼気のコントロールというのは運動面からみてもかなり難しい力で、およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

この吹きゴマは市販品になります。色とりどりなので、色の弁別に用いたり、教員が吹いたのを注視するために用いたりすることもあります。

 

 

 

「息を吐く」「息を吹く」というのは呼吸器系を整えたり、円滑に口周りの筋肉を使ったりするうえで、重要な学習になります。他にも「ピンポン玉を吹いて動かす」「ラッパ」「シャボン玉」「風船を膨らませる」「お祭りでよく見る『吹き戻し』」などいろいろなものがあるのですが、この吹きゴマは少ない呼気でもコマがくるくると回るので、子どもにとっても意欲的に取り組みやすい教材となります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

55 文字を読み上げるためのカード その3

前回まで紹介してきましたように、『あ』を「あり」と読んでしまうのは適当ではありません。一方で「よくある50音表」のように絵と一緒にイメージで文字をおぼえていく、ということの効果も重要です。そのため、ここでは『き』は「き(木)」の絵、『め』は「め(目)」の絵、『て』は「て(手)」の絵といったように、一音ずつで成立する言葉の絵を選んでいきます。

 

 

 

 

 

 

また、絵を選ぶ際には、「身振り化できる絵である」ということも重要です。子どもたちの中には、文字を読むことができても、発音することが難しい子どもがいます。そんなとき、読めているかどうかを身振り化してもらうことで判断することができます。また、絵と同様に、身振りをおぼえることで、発音を思い出すヒントにもなります。

 

こうした条件を踏まえて絵を選んでいくと、「木」「目」「手」「歯」「蚊」「毛」「背」「血」「火」「矢」「湯」「輪」あたりが出てきます。しかし、足りません。「絵」「田」「津」「戸」「藻」「炉」などは言葉として存在しますが、身振り化しにくかったり、そもそも子どもが言葉を知らなかったりします。

 

そこで、「あ(驚く)」「い(口を横に引く)」「う(お腹を押さえる)」「え(小首をかしげる)」「お(納得する)」といったように、擬音なども含め、ジェスチャーありきで絵を選んでいきます。こうやって完成したのが今回の文字カードです。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

54 文字を読み上げるためのカード その2

前回の続きとなります。片面が文字、片面が絵というカードはよく市販されていますし、50音表もさまざまなものが存在します。その中であえてカードを手作りしているのは、「操作をしやすくする」というためだけではありません。

 

左の写真が、「よくある」50音表です。これで学んでいくとどういうことが起こるかというと、『あ』を見て「あひる」と読んだり、『い』を見て「いえ」と読んだりする子どもが育ちがちです。「自分の名前の頭文字=自分の名前」と思っている子どももいることでしょう。すなわち、「あ」という一つの音に『あ』という一つの文字が対応するという、ひらがなの最大のメリットがわかりにくくなってしまうということになります。

 

「一つの音に一つの文字」というと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、漢字などは「犬(いぬ)」のように「複数の音に一つの文字」ですし、ローマ字などは「TA(た)」のように「一つの音に複数の文字」となります。意外かもしれませんが、ひらがなというのは世界的に見ても学びやすい文字だと言われています。

 

読字障害(ディスレクシア)というものがあります。これは使用する文字によって大きく違っていて、イタリア語や日本語では起こりにくく、英語では頻発する、と言われています。これには明確な理由があります。アルファベット全般がそうですが、『A』という文字は、実際には「ア」と発音することが多いにも関わらず、「エー」と読んでいます。ひらがなの場合、『あ』は「あ」でしかありません。ここで混乱が生じるのが1つ目の理由。英語が『TEA』のように複数の文字で1つの音を表しているのが2つ目の理由。そして、英語ならではの理由としてあるのが、『A』という文字を、非常にたくさんの発音で読む、ということがあります。「C『A』T」「POT『A』TO」「『A』LWAYS」。同じ『A』なのに、読み方が全く違います。それに対し、『あ』は「あ」でしかありません。これがひらがなの学びやすさとなります。

 

話は戻りますが、せっかくのそういったひらがなの特徴があるので、一音一文字の原則を十分に身につけ、『あ』を「あり」と読むことがないようにしていきたいところです。

 

※特殊音節、漢字といったものは例外となります。『きゃ』などは1つの音を複数の文字で表しますし、「おと『う』さん」「せんせ『い』」などは発音と表記が一致していません。「O(お)」という音も、時と場合によって『お』や『を』と書き分けたりします。ひらがなの表記も、この辺りがつまずきやすいところです。漢字も、音読み、訓読みというように時と場合によって読み方が異なるため、つまずく子が出てきます。丁寧に教えていく必要があります。

※なお、イタリア語は英語よりも文字と発音の規則性が明確なため、ディスレクシアが起きにくくなります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

53 文字を読み上げるためのカード その1

今回紹介するのは、文字を読み上げるようになるためのカードです。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

繰り返しカードを読み上げれば、文字を読み上げられるようになるわけではありません。そもそも、「文字が読める」ことと「文字の意味が分かる」ことは大きく違います。例えば、英語で「I can’t get no satisfaction」という文があったとして、これを「読み上げる」ことと、「意味が分かる」ことには大きな違いがあるはずです。ひらがなも同じで、子どもが「り」「ん」「ご」と一文字ずつ読み上げることができたとしても、そのとき子どもの頭の中に『りんご』のイメージが浮かんでいるとは限りません。

 

ただ、教員がそのときに「そうだね、りんごだね」などと言ってしまっていて、子ども自身が「読んでわかっている」のではなく、実際には「聞いて分かっている」というときもあります。今回は「読んでわかる」のはひとまず置いておいて、「読み上げる」までのステップとなります。

 カードそのものは㉖の「立体トランプ」と同じ作り方です。厚みをつけ、磁石を埋め込んでいます。操作がしやすくなる、重みがつく、カードがばらけないなど、様々なメリットがあります。

 

 

 

 

 

 

この文字カードは「あ」から「を」までの46音、そして濁音の中でも使用頻度の高い「が」「だ」の全48枚で構成されています。片面が文字、そして裏面が絵になっています。右の写真は一覧になっている50音表です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

㊾大小を並べる教材

これまで、再認(選ぶこと)と再生(言うこと)の違いですとか、弁別のステップですとかを紹介してきました。今回紹介するのは、「大小」「長短」「軽重」といった、比較概念を子どもに教えていく際のステップとなります。このあたりはおよそ、『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』にかかってきます。

 

 

 

 

比較概念とは何でしょうか? 例えば、子どもは「象は大きい」「ありは小さい」と絶対的に理解しています。しかし、象は地球よりも「小さい」ですし、ありは細菌よりも「大きい」です。あくまで2つのものを比較して成立するのが比較概念です。この辺、「色」「形」「陸海空」「季節」といった絶対的な概念とは異なるところになります。ここでは「大小」を取り上げますが、「長短」「高低」「軽重」「多少」「暑さ」「強さ」「可愛さ」なども同じような比較概念です。

 

 

 

 

 

 

最初は、大小を分けることを学びます。まずは、大きいことと小さいことの区別がつかなければ始まりません。そして、「どっちが大きい(小さい)」という学習に進みます。右側の画像の真ん中の〇は、一番小さい〇からすると「大きい」ですが、一番大きい〇からすると「小さい」です。このように、物事を比較して捉えることを学んでいきます。

ここで、「もっと大きい(小さい)ものを知っている?」「他に大きい(小さい)ものは?」といった対話を重ねていくことも、非常に重要となります。深い学びへとつなげていきます。

 

いくつもの物を比較できて、はじめて可能になるのが最初の写真の、「ピンクタワー」を横に並べる(順序付ける)学習になります。こうやって大小や長短といったものを順序付けることを「大小の系列化」「長短の系列化」等といい、様々な教材があります。枠を用意してあげたり、ミニチュアを用意して「のぼれるように階段をつくるよ」といった言葉かけをしてあげたりすると、順序付けるということにイメージを持ちやすくなるようです。

 

大小の学習は、「分ける」「比較する」「順序付ける」と進みます。大小から高低、長短等を経て、「多少」を順序付ける力があって、数の学習に進むことができるようになります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

㊻弁別のステップ(その2)

前回、弁別のステップとして「パターン弁別」「対応弁別」をお伝えしました。さらにその後のステップがあります。このあたりもおよそ、『Ⅱ見分ける学習の教材』『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』にかかってきます。淑徳大学の発達臨床研究センターで開発されたもので、以下、難易度順に紹介します。

 

3番目のステップが、「指差し対応弁別」です。教員が枠を指差しし、それを見たうえで該当するものを選択していきます。これができるためには、相手の指差しの意図を理解する必要があります。

 

 

 

 

4番目のステップが、「対応弁別ポインティング」です。3番目までと違って、今度は型はめの枠の方が子どもの手元に来ます。教員が示したペグを見て、それがどの枠に入るのかを指さしで答えます。先ほどのは指差しの理解でしたが、今度は自分で指差しを行うことになります(応答の指差しの表出)。

 

 

 

 

5番目のステップが、「指差しー指差し対応弁別」です。これは教員が指差しで指定したペグを見て、そしてそれがどこに入るのかを自分でも指差しで示します。指差しの理解と、指差しで応じること、その両方を同時に行う必要があります。最初の「パターン弁別(分ける)」と同じ教材を使ってはいますが、難易度が全く違っているのがわかります。

 

 

さらなる応用としては、指差しだけでなく、教員がじっと見ているペグを選ぶといった「相手の視線を読む」学習なども行っていきます。

 

以上のように、よくある型はめの教材なども、指差しの理解と表出といったところまでねらって使っていくことができます。この辺りが十分に達成できれば、「相手を見る力」や「相手に合わせる力」などが高まり、身体模倣、身振りサインの学習なども円滑に進みやすくなることでしょう。

 

また、今回の弁別のステップは型はめを使って紹介しましたが、これらは色の弁別、単語カードの弁別など、あらゆる学習で応用していくことができます。

 

参考文献:宇佐川浩「感覚と運動の高次化からみた子ども理解」学苑社

(本校特別支援教育コーディネーター)

㊹重さと色の分類

物事には、「色」「形」「種類」「大きさ」「速さ」「濃さ」「重さ」「硬さ」「滑らかさ」など、様々な属性があります。その中で最も気づきやすいのが「色」と「形」である、ということをお伝えしてきました。しかし実際の気づきやすい属性というのは、子どもによって異なります。例えば脳性麻痺のあるお子さんの場合、色には気づきやすくても、形には気づきにくいということがあります。色は一点を見れば判断できますが、形は輪郭を目で追っていく必要があるからです。また、形の理解に際しては積木などをたくさん触って確かめることから学んでいくことが多いのですが、手指を動かしにくいために、それらの経験が不足しやすいという側面もあります。このあたりはおよそ、『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』にかかってきます。

 

 

 

 

 

 

具体的には、「色」と「形」よりも、「色」と「重さ」「大きさ」「滑らかさ」「冷たさ」といったことに気づきやすい子どもたちがいます。基本的には、見て確かめるのではなく、触って確かめることができる属性になります。その中でも、特に「重さ」と「冷たさ」は少ない手の動きで確かめることができるので、わかりやすいようです。

 

 

 

 

 

 

この教材は、イースターエッグに紙粘土をつめたものと、つめていないものです。重いものと軽いものの弁別を行い、色の弁別を行い、やがて「赤くて重いもの」「軽くて黄色いもの」といったような二語文の内容の学習に進んでいきます。なお、缶コーヒーなどの大きい缶と小さい缶を駆使し、お湯/水/凍らせるということ、重さを分けるということで、「大きくて重くて冷たい」といった三語文の内容に深めていくこともできます。

(本校特別支援教育コーディネーター)