カテゴリ:Ⅳ.文字や数を身につける際の教材
㊷文字ブロック各種
文字に関する教材は、タブレット等を使っていくことも含め、色んなものが市販されています。しかしながら手先の使い方が苦手な子にとっては操作がしにくいことが多く、本校でも様々な工夫をしています。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
左のものは、百円均一の店で売っている立方体の木の、6面すべてに文字を書いています。子どもによって違うのですが、一定の大きさの立方体であることで、操作がやりやすくなることがあります。また、6面すべてに文字があるので、毎回「表」を探す必要がなくなります。
これは百円均一の店で売っている木片(3×3×1センチ)に、ボール盤で直径20ミリ深さ5ミリの穴を開け、強力磁石を埋め込んでいるものです。木工用ボンドで固定します。なお、全く同じやり方で「②マトリクス」の2つ目の教材が作られています。磁石があるために教材がばらけず、ホワイトボードの上で並べやすくなります。
これは市販の文字スタンプに上の写真と同じ立方体の木を貼り付け、子どもが持ちやすいようにしたものです。指先で教材を扱うことは難しくても、手掌全体で持てるサイズにすることで、子どもが自分自身で教材を操作できることがあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介㉝「立体迷路の文字への応用」
今回紹介するのは、⑨で紹介した立体迷路と同じ方法で作った教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として想定しています。
使っている素材、製作方法は⑨と同じ(百円均一の店舗のMDF材を使用)ですが、教材がかさばりすぎないようにA3大のMDF材を半分に切り、A4サイズにして使用しています。文字の基礎となる「線」の学習用の教材、文字そのものの教材があります。
書字には、非常に細かい指先の動きが必要とされます。「点結び」「なぞり書き」など紙と鉛筆を用いた学習方法もありますが、枠の中で積み木などのペグを操作することにより、段階を追って、スモールステップで学んでいくことができます。「凹の溝の中を指で動かす→凸の上を指で動かす→ペン先でペグを動かす→紙の上で実際に書く」といった具合です。
また、書くことをスモールステップで練習していくのと同時に、⑫のトーキングエイドのように、代替の機器を用いていくことなども検討していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㉕三次元属性分類(マトリクス)
今回紹介するのは、色、形、数量など3つの属性を組み合わせていく「三重分類」の教材となります。②と㉑の二重分類で取り扱っていた属性は「色」「形」「数量」「大きさ」「陸海空」などのうちから2つでしたが、ここでは3つの属性を取り扱います。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
作り方としては②や㉑で紹介したものに近いのですが、三次元属性分類にするための「3つめの表札」を入れるために、土台となるMDF板を二重にしています。そのうちの一枚の上方に5センチ四方の穴をあけることで(ここでは「色」の表札が入っている)、「色、形、数量」という3つの表札を入れることができるわけです。なお、マトリクスの本体を2~3個同時に使用するのもポイントです。ここでは色3種、形3種、数量3種、3×3×3の27種のペグを配置していく表を実現しています。
この教材は実際にやってみるとわかるのですが、かなりワーキングメモリに負担がかかりますし、抽象的な思考を要求されます。抽象的な思考というのは、「すいか」「ぶた」といった実際のものの、色、形、数量、大きさ、熱さ、速さなど特定の属性を取り出して考えていくことです。そうやって整理して物事を考える力をつけていくことで、言葉や数を理解していくといった基礎が整っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介㉒「筆をつるすなわとび」
今回紹介するのは、字を書くことを補助する教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
身体の使い方につまずきがあると、字の形は知っているのに、書いて表現することが難しい、という状況になりがちです。タブレット等の情報端末などで「書く」経験をすることもできますが、やはり、できればお正月などは本物の筆と紙を用いて書初めの体験をしたいところです。
今回紹介するのは、「手をイメージ通りに動かしにくい」「手に力が入りやすい」子どもが字を書きやすくするための道具です。百円均一の店舗で売っている、何の変哲もない「なわとび」です。これをカーテンレールからたらし、書初め用の筆に接続。ギリギリ筆先が紙につかない高さに設定します。すると、なわとびの持つ適度な張力によって子どもの手が浮き、自在に筆を動かしやすくなる、ということがあります。力を入れると筆先が紙につき、力を抜くとまた離れていきます。
※ただの紐では伸縮性に欠けるため、力を入れても紐が伸びません。また、衣類に使われているようなゴム紐だと、伸縮しすぎて手の重さを支えることができません。購入費用なども考えると、もっとも効果的だったのがなわとびでした。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑲「つまむ用のおはじき」
今回紹介するのは、前回同様に特に字を書くことに直結する、手の使い方の学習用の教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
箸や鉛筆といったものの使い方を練習する際、もっともシンプルなのは「箸や鉛筆を繰り返し練習する」ことです。しかし、いくら練習していっても、なかなか上手にならないことや、独特で動かしにくい手の使い方を学習してしまうことがあります。十分に手の使い方の基礎が整っていないままに細かすぎる操作を行っているためです。箸や鉛筆を用いていくのであれば、親指と人差し指を伸ばし、中指・薬指・小指を曲げて『ピストル』の形を作れるくらいに手指が使えているとよいでしょう。
実際の手指の使い方の練習ですが、⑱で紹介したボルト外しのほか、粘土遊び、おもちゃの操作など、様々なものがあります。ここで紹介するのは「おはじき」を使ったやり方で、おはじきを一つずつ、つまんでいきます。つまんだおはじきは、もぞもぞと手を動かして、薬指と小指に送り込んでいきます。親指と人差し指でおはじきを操作し、薬指と小指で保持し、中指がそれらの仲立ちをしていきます。薬指と小指にいくつかのおはじきをためこんだら、今度はまたもぞもぞとおはじきを人差し指と親指の方に送り出していき、容器に戻していきます。これらの一連の流れを行うことで、各指の分離した使い方を学んでいきます。
※何枚かの硬貨を持って、一枚ずつ自動販売機に入れていく際などにも必要な力となります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑱「ボルト外し」
今回紹介するのは、特に字を書くことに直結する、手の使い方の学習用の教材です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
ホームセンターなどで売っている、ボルトとナットの組み合わせとなります。子どもの手のサイズに合わせて用意していきます。箸を使う、鉛筆を使うといった「手の使い方」の発達を見ていくと、最初は手全体で物を掴んでいたのからだんだんと各々の指がバラバラに動かせるようになり、最後は親指と人差し指で物をつまめるようになっていきます。この際、よく見ていくと、手の指の中で「親指と人差し指は物を操作するために」使われ、「小指と薬指は動かす指を支えるために」使われ、「中指はその双方の目的で」使われていることがわかります。
このボルト外しでは、小指と薬指でボルトの本体を支え、中指、人差し指、親指でナットを回していきます。「ナットを外す」と目的を明確にする中で、支える指の動きと、操作する指の動きを分離させていくわけです。
なお、字を書く、箸を使うなどの際にどうしても小指と薬指が「浮いて」しまう場合、消しゴムの破片などを小指と薬指の中で持つことで、小指・薬指と、中指・人差し指・親指を分けて使うことがしやすくなることがあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑭「数量学習用の石(半具体物)」
今回紹介するのは、石です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使っていきます。
数量を学習するための半具体物には、いろいろなものがあります。タイル、算数セットのブロック、棒などなど。それらの中でも、操作のしやすさから考えると立方体。そして適度な重み、子どもの手の中に収まるサイズ、1個当たりの費用といったことを考えると、百円均一の店舗で4個セットで売っている「ストーンアイスキューブ」の使い勝手がよいようです。
立方体なのでそろえやすく、「5のまとまり」や「10のまとまり」を作る際も、セロテープなどで巻いて固めることができます。
特定の半具体物だけでの理解にならないように、棒、ブロック、ミニチュアの具体物といった、様々なものから「数量」という属性を取り出して考えていくことを促していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑫「トーキングエイドライト」
今回紹介するのは、福祉機器の「トーキングエイドライト」です。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使っていきます。
「トーキングエイド」は既にタブレット型の後継機が発売されており、校内で使用している子どももいるのですが、ここではあえて旧型を紹介していきます。
筆記が難しい子ども、発語が難しい子どもにとって、文字入力をし、それを読み上げてくれるこの機械は、非常に貴重なコミュニケーション手段になることがあります。もちろん、新型には文字だけでなく絵を選んで文を作る機能などもあり便利なのですが、「ボタンを押す手ごたえ」「押した→声が出た!」という実感となると、旧型に軍配があがるようです。
なお、ボタンを押すと声が出るおもちゃというのは、たくさんあります。しかし新作旧作を問わず、この機器で重要なのは文字情報として残り、推敲できるということです。音はすぐに消えてしまいますが、文字として残ると、子どもが考えを深めていくきっかけとなります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑩「A3のホワイトボード、磁石」
今回紹介するのは、市販品そのものを使った、使い方の工夫となります。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』あたりを想定しています。
なんとか字や絵を書くことができるけれど、手に力が入りすぎ、プリントがぐちゃぐちゃになってしまう…といった子どもたちがいます。市販品のすべり止めもあるのですが、なかなか高価なものです。A3大のホワイトボードを用い、プリントの四隅をセロテープで貼り付ける…。たったそれだけのことで、一気に書きやすくなることがあります。
また、書字が難しくても、選択肢に〇をつけていったり、あるいは正解のところに磁石を置いていき、教員が代わりに〇をつけていく、といった形で学習する子どももいます。
いずれにしろ、ただ答えを書いて〇か×かを確認するのではなく、「どうしてそう思ったのか?」「例えばどんなことがあるのか?」「他には何があるのか?」といったことを問いかけながら、子どもの考えが深まるように学習していっています。
(本校特別支援教育コーディネーター)