本校の教材教具
205 スピーテン
今回は市販の教材の紹介になります。市販の教材とは言いますが、現在は廃番になっているようです。
色分けされた半球を棒に通し、用紙の見本通りに再現していきます。目で見て状況を捉え、記憶し、手を使って再現する学習になります。ここで注意したいのは、教材が立体(3次元)であるのに対して、用紙の見本が平面(2次元)である、ということです。子どもはここで、「2次元の情報を3次元に変換する」ということを行っているのですが、紙に書かれたものを実物で再現するというのは意外なくらい、難しいものです。このあたりは、「地図(2次元)を見ながら移動する(3次元?4次元?)ことの難しさ」などに通じてきます。
そこで、必要な場合には同じ教材を複数用意することで、まずは「実物の見本を見て実物を再現する」という、3次元同士の学習から行い、「2次元の情報を3次元に変換する」ことに向かっていきます。一人一人の子どもがどこにつまずいているのか、丁寧に確認しながら学習を進めていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
204 ボール入れ 平面 枠あり 方向づけあり(長い距離)
前回紹介したものの続きとなります。前回紹介した教材は、ボールを転がし始める位置(運動の始点)からボールを落とす位置(運動の終点)までの距離が、およそ20センチでした。今回紹介しているものはその倍、約40センチの距離になっています。「距離が倍になっている」ということは、ボールを転がすという運動を2倍、持続させる必要があります。距離が伸びたということは、時間的にも運動を持続させる必要があるということです。また、「ここまでボールを転がしていく」という見通しについても、20センチの時よりも40センチの方が難しくなります。
これは距離が伸びれば伸びるだけ難しくなりますし、方向転換などが伴えば、さらに難しくなります。なお、作成にあたっては2つの箱をそれぞれ切断し、連結しています。中に入っているのはA3の板(45センチ×30センチ)を横に長く切ったものを、5枚重ねたものです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
203 ボール入れ 平面 枠あり 方向づけあり
186や、前回に紹介したボール入れと同じ要領で作成されている箱入りのボール入れの教材ですが、それぞれ目的がだいぶ異なります。
これまで紹介してきたものが「入れることを学ぶ」ための教材、「並べることを学ぶ」ための教材だとすれば、今回は「方向づけることを学ぶ」ための教材となります。
の大きな穴があります。ボールを落とすためには、大きな穴がある方向に向けて手を動かす必要がありますし、持続して動かし続ける必要があります。
これが例えばスイッチ教材などであれば、そのボタンをその場で、一瞬触ればよいかもしれません。しかしこの教材の場合は、特定の方向に向けて操作し続ける必要があります。運動の持続が求められるわけです。このあたり、「ボール入れ」の教材ではあるのですが、「輪抜き」などと目的が重なるものになります。そして輪抜きの場合は腕を持ち上げる必要がありますが、ボール入れにすることで、子どもの負担が少なくなります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
202 ボール入れ 平面 枠あり 2連/3連
186で紹介したボール入れの続きになります。百円均一で売っている箱を塗装し、その中に箱の内径のサイズに切ったMDF板を5枚重ねて入れています(深さは25ミリ)。使用するボールが45mmですので、このくらい深いと「穴に落ちた」ということを、子どもが実感しやすくなります。
何度か紹介してきましたが、筒へのボール入れのように「縦に連続して入れる」のと、「横に並べて入れる」のとでは、横に並べて入れる方が圧倒的に難しいです。
また「横に並べて入れる」となると、円柱状のペグ(前回201「アクリル棒さし(大)」で紹介したもの)を横に並べて入れる、金属製のリベットを並べて入れる、木工用のダボを並べて入れる、といった教材を見かけます。しかし、それら「長いもの」は子どもの手の中で扱いにくいことがあります。だからこそ練習のために取り組むことがあるのですが、ここでは手にスポリとおさまる、球を使っています。
しかし球だとゴロゴロと転がっていきかねません。そのため、箱の中に教材を固定することで、子どもが活動しやすいよう、子ども自身が工夫しながらやりきることができるようにしています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
201 アクリル棒さし(大)
11で紹介した「アクリル棒さし」の別バージョンとなります。アクリルの棒を入れる面をあえて広く取り、目と手の学習が深まるようにしています。使っているアクリル棒は、白が直径25mm長さ50mm。黒が直径15mm長さ50mmです。こういった特定のサイズのものは市販されていないので、業者に発注しています。→詳しくはお問い合わせください。
なお、ここでは太い棒を白、細い棒を黒というようにサイズごとに色を分けています。色の違いに気づきかけている子は、それが太さを見分けるヒントになります。
一方、子どもに合わせて難易度を調整していこうとすると、「難しくするのであれば」すべての棒を同じ色にするということが考えられます。また「易しくするのであれば」太い方だけ先に渡す(細い棒の穴には入らないのでミスがなくなる)、一本ずつ手渡す、といったことが考えられます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
200 野菜の水切り
この「本校の教材教具」コーナーも、ついに200回目を迎えました。200回目ということで紹介するのは、「野菜の水切り(サラダスピナー)」です。機械の目的外の使用になるのでご注意ください。
野菜の水切りの中には、子どもの好きなフィギュアなどを入れます。そしてボタンを押し込むと、フィギュアがぐるぐると回っていきます。意外なくらい、子どもが興味を持って活動することの多い教材となります。
子どもの目の使い方は、「動きや光」などを受け止める『周辺視』から、「色や形(いずれは文字や数)」を見分けていく『中心視』へと発達していきます。この野菜の水切りの活動は、そのうちの周辺視に焦点をあてたものです。詳しくは、「62ハンドスピナー」の記事をご確認ください。また、目の使い方の学習であると同時に、「押す」「動く」という因果関係の学習ともなります。
なお、野菜の水切りにはハンドルを回すタイプもあります。この辺だと、肘を中心とした身体の動かし方の学習ともなってきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
199高さによる数量の教材(積み重ねる)
今回紹介するのは、数量を並べる教材になります。185「高さによる数量の教材(棒に通す)」とほぼ同じコンセプトの教材となりますが、185が棒に教材を通していたのに対し、こちらは積み上げています。どちらの方がやりやすいかは、子どもによるでしょう。なお、使用している木材は正方形です。「棒に通す」のであれば円形でも大丈夫なのですが、こうやって積み重ね、並べていくとなると、正方形の方が並べやすいです。
185と同様に、5は5として固め、5のまとまりが意識できるようにしています。1、2、3といったところもそれぞれ接着していて、「5と1で6を作る」「5と3で8を作る」といった「5といくつ」で数を捉えるということが意識しやすくなっています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
198 横に長い輪抜き
これまで「4」「73」「159」「160」回で『輪抜き』の課題について取り扱ってきました。それらのほとんどが縦方向の輪抜きでしたが、子どもによっては横方向の方が手を使いやすい、という場合もあります。今回紹介するのは、横方向の輪抜きです。
この写真のように、縦方向の輪抜きは、使う棒を高くすれば高くするだけ高くなります。ある程度土台を作ってしまえば、安定感もでます。しかし、横に長くしていくと、そうはいきません。棒を伸ばすと、重心がずれて、簡単に倒れてしまいます。倒れないように大人が支えていれば大丈夫かもしれませんが、できれば子どもが自分の力でやりきってほしいところです。そこで、ここでは土台となる木に棒を貫通させ、横の長さを調整できるようにするとともに、伸ばした方と反対側に重りをつけることで、倒れないようにバランスをとれるようにしてあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
197色と形、半立体のマトリクス
これまでも「色と形」という2つの属性を組み合わせる表(マトリクス)の教材を紹介してきました。3×3、4×3、4×4、5×5など様々なものがありましたが、それらは基本的に50ミリ四方の木に、ラミネイト加工したものを貼り付けたものでした。
今回紹介するのは、若干視点が異なり、〇△□、そしてハートと星の形について、半立体の具体物をペグとして用いるものです。色合いをそろえるため、塗装には同じ絵の具を使用しています。また、ハートと星の形は適当な木片が見つかりにくいため、市販されている2ミリ程度の薄さのものを数枚貼り合わせて厚みを出し、それを塗装することでペグにしています。
従来の、印刷した絵が貼り付けられているものと、今回の教材とではどちらがやりやすいでしょうか? 目が見えにくく、形が捉えにくい子どもにとっては、今回の教材の方が「触って形がわかる」ために取り組みやすいかもしれません。一方、手を持ち上げにくい子どもにとっては従来の教材の方が、「すべらせて操作できる」ためにやりやすいかもしれません。これも、ケースバイケースになります。多様な子どものニーズに応じるために、同じ内容であっても、様々な教材を用意しています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
196〇だけの型はめ(大)
178で「〇だけの型はめ(小)」を紹介しました。今回紹介するのは、「〇だけの型はめ(大)」になります。「小」「大」と言っていますが、「小」が直径40ミリ、「大」が直径80ミリです。こういった極端にシンプルな教材はまず市販されておらず、自作する必要があります。
ペグの直径が倍になると、体積や重さは大きく変わります。子どもにとっては小さい方がやりやすいかもしれませんし、逆の子もいるでしょう。
さらに、ペグの厚みの違いによっても、子どもの達成度は変わってきます。ここでは10ミリ、20ミリ、30ミリを用意しています(厚さ10ミリの板を1~3枚重ねて塗装)。大きくて薄い、小さくて厚いなど、どれが子どもの手になじむかはケースバイケースです。どの教材にも言えることですが、一人一人の子どもに合わせていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)