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本校の教材教具

165バランスストーン

本校の校舎は平屋で、校舎内は車椅子で全校を回ることができ、基本的には段差というものがありません。ある意味、「不安定な足場の上を歩く」機会が少ないということでもあります。そのためハードルを使う、柔らかいマットの上を歩くといった形で多様な身体の動きを身につける学習を行っていくのですが、今回はそれらの中から「バランスストーン」を使った活動を紹介します。

 

 

 

 

 

 

広い庭にあるような、庭石を再現したような教材になります。バランスを取りながらそれらの上を歩いていきますが、自分自身でバランスを取ることが難しい場合、例えば壁に沿って設置し、子どもがいつでも壁に手をかけられるようにする、といった工夫があります。

 

 

 

 

 

 

また、予算的に購入が難しい場合は、「すべり止めのシート」と「ステンレスのボウル」を組み合わせることで、手軽に再現することもできます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

164かずカード

市販品、百円均一の店舗で売られている学習用カードの活用例となります。

 

 

 

 

 

 

このカードは片面に数量、片面に数字が印刷されています。このカードを用い、例えば数量の弁別、数字の弁別を行うということが考えられます。数量を並べる、数字を並べるというのが次に来るでしょう。しかし「カードの持ちにくさ」「数量の配置が5のまとまりを意識しにくい」といった、気になる点もあります。そこで、いくつかの工夫を施したものが、以下の写真になります。

 

 

 

 

 

 

まず、「数カード」を2組用い、テープで巻いてしまうという工夫です。こうすることでカードに厚みが出て、子どもが取り扱いやすい教材となります。また、右の写真では、5を〇で囲み、「5といくつ」で6~10の数量を把握しやすいようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

163数量学習用の半具体物 その2

「⑭数量学習用の石(半具体物)」に続き、数量を学習するための半具体物の紹介です。半具体物というのは、さまざまな具体物から「数量」という属性を取り出して考えるためのものです。そういってもわかりにくいので実際の例を紹介しますと、例えば「イチ ニ サン」といった数詞や「123」といった数字が発明される前の時代、自分の家で飼っている牛と、隣の家で飼っている牛の数を比較する必要があったとします。

 

 

 

 

 

 

この場合、どっちかの牛を移動させ、一匹ずつつき合わせれば比較できますが、とても大変です。また、「イチ ニ サン」と数えられれば便利ですが、まだ数詞は発明されていません。そこで、昔の人は「石」「ひも」などの半具体物を使って具体物の「数量」を抽出するということを考えました。そうすると、遠く離れたもの同士、動かせないもの同士であっても、多少を比較することができます。

 

 

 

 

 

 

この時の、牛という具体物から「数量」という属性を抜き出すために使った石が、「半具体物」となります。石と限らず、棒でも、おはじきでも磁石でもタイルでも数ブロックでも積み木でも何でも構いません。⑭では百円均一の店で4個セットで売っている「ストーンアイスキューブ」を紹介しました。やはり、子どもたちの手の使いにくさを考えると、このストーンアイスキューブの「適度な重さ」「立方体であるため机上で安定すること」「サイズ感」といったメリットは大きく、コスト面からも使い勝手の良さが際立ちます。また、セロテープで固めて「5のまとまり」「10のまとまり」を作るのも簡単です。

 

 

 

 

 

 

一方、それだけを使っていると、「それだけが数である」という誤解も生みがちです。先に紹介した棒、数ブロック等の他にも、例えば押し入れの奥に眠っている碁石なども、子どもの手に収まりやすく、適度な重さがあります。この辺、使いやすい半具体物というのは子どもによって異なるので、一人一人の子どもに合ったものを探っていきます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

162位置把握の提示法(3次元)

「161パズルボックス」では立体的に空間を捉えることについて紹介しました。今回は、13、16、96、106回で紹介してきた位置把握課題において、立体的に空間を捉える教材の提示の仕方を紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な位置把握課題がありますが、ここにあげているものは縦×横、もしくは高さ×横の、2次元的なものです。3次元的な位置把握課題となると、例えば縦×横×高さで立体的に積み上げた積み木を、同じように積み上げる、といったことが考えられます。ですが、これは手が使いにくい子どもにとっては非常に操作が行いにくい課題となります。また、見本の全体像が見渡しにくいということもあります。

 

 

 

 

 

 

そこで、右の写真のように、教材を提示するという方法があります。これは教材を作る段階で一定の長さのあるダボを利用しているため、穴が開いているペグをいくつか通して「高さ」を表現することができます。ペグを棒に差し込んでいるため、積み木のように倒れることもありません。

(本校特別支援教育コーディネーター)

161パズルボックス

158回でも「可変型はめ」を紹介しましたように、形態構成、位置把握、マトリクスなど、これまでいくつもの「空間を捉える」学習の教材を紹介してきました。しかし、それらはあくまでも平面、縦×横の2次元のものでした。

 

 

 

 

 

 

このパズルボックスは、市販のものですが、縦×横だけでなく、そこに高さの要素が加わるため、3次元の空間を捉える教材となります。2次元から3次元に変わるということは、子どもからすると、非常に大きな難易度の違いになることがあります。特に横になっていることが多く、身体を起こす機会の少ない子どもにとってはそれが顕著です。遠近感とか、高さといったものを捉える力は、やはり身体を起こし、教材教具をたくさん扱うことによって育っていきます。

 

 

 

 

 

 

それらの力は、算数科などの学習にも影響していきます。例えば左の図形は立体的な捉え方が育っていると、平面の図形でありながら立体的に見えます。しかしながら身体の動かし方が苦手な子どもの中には、どうしても立体に見えず、3つの四角系(正方形1つ、平行四辺形2つ)に見える、ということがあります。パズルボックスといった基礎的な学習を通して、目や手を育てることが、将来の学習を支えていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

160可変輪抜き

前回の続きとなります。159で紹介した輪抜きは、低くとも、高くとも、一方向でした。運動の開始から、終わる(輪が抜ける)までは一直線。運動の方向付けも一方向です。今回紹介するのは、分岐を伴う輪抜きです。

 

 

 

 

 

 

この教材は、上に向けて運動を起こした後、棒にそって途中で横方向に運動を切り替える必要があります。大人からすると当たり前のような気がしますが、子どもにとっては自分の運動を途中で切り替える、すなわち2つの運動をつなげるというのは、かなり難しいことです。

なお、輪抜きができたから何なのか。それが何につながるのか、という声も耳にします。これは例えば、「一方向の輪抜き」が「スプーンで食べ物を口に運ぶ」シンプルな運動に相当するとすれば、「二方向の輪抜きができる」ということは、「スプーンで食べ物をすくって、それを口に運ぶ」という、2つの運動をつなげる準備になっていくということを意味します。それらの「見通しをもった活動」の練習を、「輪を抜く」という目的がわかりやすい学習の中で行っているわけです。

なお、分岐する数は増えれば増えるだけ難易度は上がります。一方向、二方向、三方向と全部の教材を用意すればよいのですが、それも煩雑です。そこで、一つの教材で、難易度を自在に変えて、子どものそのときの状況に合わせられるようにしたのが以下の教材です。

 

 

 

 

 

 

塩ビパイプをつなげ、その場で難易度を変更し、分岐を増やせるようにしてあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

159長い輪抜き

輪抜き/輪通しの教材は、4回や73回で紹介してきました。今回紹介するのはそのバリエーションで、90センチの高さがあるものになります。およそ「Ⅱ見分ける学習の教材」として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

輪抜きはシンプルですが奥の深い課題で、その高さ、あるいは2方向、3方向といった分岐の有無により、難易度が大きく変わってきます。高さだけを取り上げても、高ければ高くなるだけ、難易度が上がります。これは「高くなれば、運動のコントロールが難しくなる」というのが難易度が上がる理由の一つではあるのですが、それだけではありません。以下の2枚の写真をご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

左の物は輪抜きの棒が低く、右の物は高くなっています。この場合、「抜く」という運動をすることにはどちらも変わりがないのですが、運動を始める位置(一番下)と輪が抜ける位置(棒の終端)の距離が違います。距離が違えば、時間もかかります。右側の輪抜きを実施するためには、そこまで自分の運動を持続し、方向づけるための「見通し/わかる力」「注意を持続する力」が要求されることになります。輪抜き課題は分岐の有無も重要な視点で、これは次回紹介します。

(本校特別支援教育コーディネーター)

158可変型はめ

難易度を調整できるようにした、型はめの教材です。ベースとなっている型はめパズルは市販のものですが、市販品そのものを使用すると「選択肢が多すぎる」「枠が浅すぎ、『はまった』という感覚がつかみにくい」「ペグを持ち上げなければならず、筋力が弱い子が扱えない」といった難点が上がってきます。

 

 

 

 

 

 

そこで、市販品のペグはそのまま使い、枠だけを新たに作成しました。土台となっているものは、前回と同様にA3大のMDF板を重ねて接着し、A4台にくり抜いたところに鉄板(ブラックボードパネルの中身)を挟み込んだものです。左側の枠は一体型、右側の枠はさらにひと手間を加えることで、〇△□といった選択肢の位置を自在に変えられるようになっています。およそ、「Ⅰ目や手を使う基礎を整える教材」から「Ⅱ見分ける学習の教材」として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

市販品をそのまま使うだけでなく、ちょっとした手間をかけることで、一人一人の子どもの「今の力」に合わせた難易度設定をすることができます。場合によっては、「〇だけの型はめ」にすることもできます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

157プリントの固定用枠

74~75回、80~81回等で紹介しましたように、プリント学習は、使い方によっては子どもとのやりとりを充実させる、非常に効果的な教材となります。しかし不随意運動が入りやすいなど手指の使い方が苦手な子どもにとっては、プリントがあちこちに動いてしまって扱いにくいということがあります。

そのため、「⑩A3のホワイトボード、磁石」「121書字をしやすくする教材」では、ホワイトボードにセロテープでプリントを固定する方法、プリントがすべりにくくなる道具といったものを紹介してきました。

 

 

 

 

 

 

しかしセロテープを毎回使うのは煩雑ということ、すべりどめの道具では磁石が扱いにくいといったこともあり、さらに工夫を加えたのが次の教材となります。

 

 

 

 

 

 

土台となっているものは、「144〇×でのプリント回答システム」で紹介したものと同じで、A3大のMDF板を重ねて接着し、A4台にくり抜いたところに鉄板(ブラックボードパネルの中身)を挟み込んだものです。

プリントを固定するために、上記のものと同じA3大のMDF板を半分に切ってA4サイズにし、その内部をさらにくり抜いています。なお、角の部分は斜めに切ることで、プリントが固定されやすくなりました。さらに教材の質を高めるならば、枠の四隅に強力磁石を埋め込むことで(ボール盤を使い、磁石のサイズぎりぎりの高さでくぼみを作る)、さらに強力にプリントが固定されます。教科書なども、ラミネイト加工したうえで固定することができます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

156長さの系列化(10まで)

前回の「高さ」の系列化の教材に続けて紹介するのは、「長さ」を順序付ける教材になります。素材にしているのは百円均一の店のA3サイズのMDF板で、「1」は3センチ四方。「10」は3センチ×10センチに設定してあります。厚みは5ミリです。

 

 

 

 

 

 

高さの時と同様、2組教材を用意することで、「自分で並べる」「見本を見ながら並べる」の難易度の調整ができるようにしてあります。

なお、「大きさ」「高さ」「長さ」には、難易度の差があります。「大きさ」「高さ」は、子どもによって逆転することもあるのですが、多くは「大きさ」が簡単で、「高さ」が難しくなります。そして、圧倒的に難しいのが「長さ」です。その理由ははっきりとしていて、「大きさ」や「高さ」を比べようとする場合、机なり、床なりが基準となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、「長さ」の場合、自分自身で一定の線を定め、そこを規準にして比較しなければいけません。非常に難しい活動となります。とはいえ、数の理解はさらに難しい活動です。子どもの発達に沿って、基礎・基本から丁寧に学習を積み上げていく必要があります。

(本校特別支援教育コーディネーター)