タグ:Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材
㊴積み重ねボックスの活用
「いちごとばななの具体物を分ける」といった同じ内容の弁別であったとしても、どうやって分けるのか、といったことで学習の難易度は変わってきます。㊱の木枠の活用のところでも紹介したように「操作のしやすさ」というのも影響してくるのですが、操作のしやすさを抜いて考えたとしても、だいぶ違いがあります。このあたりはあらゆる発達のステージで共通してきます。
例えば、左の写真の弁別と右の写真の弁別とでは、分けているものは同じです。同じなのですが、どちらの方が「入れる」「分ける」ということがわかりやすいでしょうか? おそらくは、多くの子どもが右側の方がわかりやすいはずです。左側のボックスは浅く、右側のボックスは深いです。浅い入れ物よりも、深い入れ物の方が、「入れた」「分けた」ということの実感が持ちやすくなります。
他にも、いろんなサイズのボックスが市販されています。「手の上がりにくさ」とか色んな条件がからむので一概には言えないのですが、深い入れ物、そして面積的に狭い入れ物の方が、わかりやすいことが多くなります。逆に言うと、大きい紙の上に置き分けていく、といった形の学習は非常に難しくなります。次の写真だと、かなり難易度が上がります。
皿に「置く」枠に「はめる」箱に「入れる」。子どもがやっている動きは同じだとしても、容器によって日本語そのものが変わっていきます。置くよりも、入れる方がわかりやすいはずです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㊱木枠の活用
今回紹介するのは、教材を活用するための木枠です。あらゆる発達のステージで使っていきます。手指に力が入りにくい子どもの場合、教材を箱に分け入れていくことが困難になります。ミリ単位の、ほんのちょっとした段差であっても腕を持ち上げるのに苦労し、弁別すること、考えることに集中できなくなることがあります。そのため、できるだけ教材を持ち上げることなく、「すべらせ」「はめる」ことで学習できるように教材を整えています。
また、不随意運動が入りやすい子どもにも効果的です。百円均一の店で売っている半透明の積み重ねボックス(㊴で紹介)なども様々な大きさ、深さがあって一人一人の子どもに合わせやすいのですが、すべり止めを敷いたとしても、どうしてもガチャガチャと動いてしまいます。
そこで、上の写真の木枠となります。百円均一の店のA3サイズのMDF板を何枚か貼り合わせ、10センチ四方の大きさで穴をくり抜いています。また、底をもう一枚の板でふさいでいます。10センチ四方の大きさで穴を開けることで、弁別用の枠としてだけでなく、同一規格で作った様々な教材を固定することもできます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㉟立体トランプ
今回紹介するのは、立体のトランプです。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
トランプやウノといったカードゲームは楽しいものですが、なにぶん、肢体不自由の特別支援学校に通っている子どもたちは手が使いにくいことが多く、なかなか平面のカードは扱いにくいという現状があります。そのため、百円均一のお店で売っているトランプを1センチ厚のボード(これも百円均一のもの)に貼り付け、子どもが持ちやすいように改造しています。また、そのままではカードがばらけてしまうし、軽すぎて扱いにくいので、磁石を内蔵しています(百円均一の強力磁石を2枚入れる)。
なお、図版は市販のままだと子どもに親しみにくいことがあり、オリジナルのものにしています。スペード、クローバー、ハート、ダイヤをキャラクターに変更したほか、数字をひらがなに変更したものも作っています。
磁石を内蔵する方法については、磁石のサイズにカッターでボードをくり抜き、そこに磁石を押しこんでいます。そのうえでセロテープで磁石が動かないように固定し、トランプの両面でボードをはさみこみ、その周囲を梱包用テープで巻きます。なお、梱包用テープですが、百円均一のものよりも、ホームセンターで売っている一巻き300円くらいするものの方が取り扱いやすいようです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㉜絵カードの規格とその作り方 その3
用意した絵を印刷します。印刷した絵を切ります。また、同時に板目表紙(厚紙)を絵と同じ大きさ(ここでは50ミリ×83ミリ)で切って用意していきます。
板目表紙の表裏に、絵の面と字の面を仮止めします。そしてその周囲を梱包用の透明なテープで巻いていきます。裏面まで包み込むように巻きます。このとき、セロテープを使用しないことと、梱包用のテープは1巻き300円くらいのものを使うのが重要となります。セロテープはあっという間に劣化してしまうため、安価すぎる梱包用テープは静電気の影響で巻きにくいためです。なお、本を保護するフィルムでもよいのですが、値段が高すぎるでしょうか。
なお、「りんご」のカードなどは、同じものを「色の弁別」「形の弁別」「種類の弁別」「大きさの弁別」「おいしさの弁別」「重さの弁別」など、用途ごとに作ることになります。50音や種類でカードを整理すれば1枚で済むのですが、用途ごとに作っておく方が毎回の用意が簡単でしょう。そのため、「この『りんご』は形用? 色用? 大きさ用?」とわからなくなりがちです。
そんなときのために、用途ごとに小さいシール等で目印をつけ、整理しやすくしておくという工夫があります。例えば季節の弁別用のカードは青シール、可愛さの弁別用のカードは青の上に黄色のシールを重ねる、といったことです。
ここまで準備してあると、子どものわかる力、その時の状況によって即座に子どもに合った課題を提供しやすくなるのではないでしょうか。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㉛絵カードの規格とその作り方 その2
何のために作るのか、という目的によりカードの仕様も変わってきます。動物、乗り物、食べ物の弁別といったことであれば、カード化するまでもなく、百円均一の店で売っている磁石に、同じく百円均一の店で売っているシールを貼り付ける方がはやいでしょう。また、市販されている様々な「のりもの」「たべもの」などのカードを買ってくる方がはやいでしょう。
しかし「カードで色の弁別を行う(赤=ポスト、トマト、いちご等)」「家族や担任の顔で弁別を行う」といった目的の場合、市販品では絵が揃いにくいことがあります。操作のしにくさもあるでしょう。そのため、カードを自作していくことになります。
まずは、絵を用意します。これも用途によりますが、将来的に「単語で弁別する」ということに発展させたいということを踏まえ、表に絵、裏に単語のカードを作っていきます。カードのサイズは縦50ミリ×横83ミリくらいですが、このあたりは子どもの手の大きさなどにより変わってくるでしょう。
ここで、例えばカードで「形の弁別」を行うのであれば
・まる ・さんかく ・しかく ・みかん ・てれび ・やま ・ぼーる ・せんえん ・やね ・とまと ・とうふ ・あんぱんまん ・ぽすと ・たいや ・おさら ・じゅうえん ・しょーとけーき ・おにぎり
「熱さの弁別」を行うのであれば
・あつい ・つめたい ・あめ ・れいぞうこ ・おゆ ・おふろ ・らーめん ・なべ ・おちゃ ・すとーぶ ・ざるそば ・しげる ・かきごおり ・すいどう ・こおり ・ひ ・こんろ ・みず
といったカードを作っていきます。他に、「色」「長さ」「高さ」「重さ」「可愛さ」「強さ」「多さ」「季節」「おいしさ」「陸海空」など、様々な属性の観点でカードを作ることが考えられます。次回は実際に作っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㉚絵カードの規格とその作り方 その1
「絵カード」と言っても、用途ごとに適切な大きさがあり、重さがあり、硬さがあります。例えば十分に『見る』力が育った子どもであれば、紙に印刷されていたり、タブレット等の電子機器に表示されていたりする絵に気づくことができるかもしれません。一方で、見てわかる力がまだ育ち切っていない場合、ずしりと重いカードを持ち、まずはそこに具体物があるということに気づく、というところから学習を進めていく必要があります。
もっと気づきやすくしてある絵カードは、1センチ厚の木にボール盤で直径20ミリの穴を何か所かあけ、そこにいくつもの強力磁石を入れてあるものです。写真のもので、80グラム(磁石6個)になります。磁石10個くらいまでは内蔵することができ、その場合は110グラムとなります。これでトマト半個ぶんくらいの重さとなりますが、ここまで重くなると、子どもも「カードを手にしている」ことにかなり気づきやすいでしょう。なお、これ以上重くすると重すぎて操作がしにくくなることが考えられます。
その次に、百円均一の店舗のカラーボード(1センチ厚)に磁石を埋め込んでいるものがあります。2枚の磁石を埋め込んで20グラム。木製ほどではありませんが、ある程度の重みがあり、磁力もあるため、ただの紙でできているカードやタブレット等の電子機器に表示された絵などよりもだいぶ気づきやすくなります。
最後に、板目表紙(厚紙)に絵を貼り付け、梱包用のテープで巻いたものです。1枚あたり4グラムとかなり軽くなりますが、それでもある程度の厚みがあるために持ちやすく、ただの紙や、紙をラミネイト加工したものなどよりは扱いやすくなります。現実問題としてすべてのカードに磁石を内蔵して立体化することは難しいということもあり、次回はこのカードの作り方を紹介していきます。
たとえ同じ絵であったとしても、カードの質感(重み等)により、子どもにとっての気づきやすさはだいぶ変わってきます。実際には電子機器などでは絵が光ったり動いたりするために気づきやすくなることがあり、気づきやすさには様々な要因がからんできます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介⑯「意味のある位置把握課題」
今回紹介するのは、⑬で紹介した位置把握課題の中でも、ストーリー性のあるものです。子どもの親しみやすい絵本をモチーフにしています。『Ⅱ見分ける学習の教材』『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』として使っていきます。
枠は百円均一の店舗のMDF材を1/4にカットし、2枚を重ね合わせて使っています。窓のところだけ、ドリルで穴をあけて電動のこぎりの刃を通し、くり抜いています。窓のサイズは、およそ5センチ四方です。
食べ物たちのペグは、百円均一の店舗で6枚セットのものを使用しています。10センチ四方のものをカットし、5センチ四方にしています。これは、②のマトリクスのペグとして使っているものと同じ規格になります。ラミネイト加工した絵を、木工用ボンドで貼り付けています。
このように絵本を活用し、ストーリー仕立てにすることで学びやすくなる子どもがいます。一方でストーリー仕立てにすることで学習が複雑になり、逆にわかりにくくなってしまう子どももいます。左の写真の、ごくシンプルな教材の方がやりやすいという子どもたちです。学びやすさは子どもたち一人ひとり異なりますので、そこに合わせていくということになります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
教材紹介②「二次元属性分類(色と形のマトリクス)」
教材紹介②「二次元属性分類(色と形のマトリクス)」
今回紹介するのは、本校の教員が作った「二次元属性分類(色と形のマトリクス)」です。『Ⅱ見分ける学習の教材』として、あるいは『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』として使うことを想定しています。
子どもが教材を操作しやすいように、約5ミリの厚みのある板に、ラミネイト加工した絵を貼りつけています。絵をラミネイト加工してあるため、その上を板がすべりやすくなります。木製の枠については、百均のMDF板を土台にし、5ミリの太さのヒノキの棒を木工用ボンドで固定しています。
もちろん、子どもによって持ちやすさは違いますので、3×3センチの板に、磁石を埋め込んだものなど、さまざまなバリエーションがあり、自立活動室に置いてあります。
色と形のマトリクスですが、主な目的としては見分ける力を育てていくということになります。また、表の見方であったり、「あかいりんご」「きいろいくるま」といったように、二語文、すなわち言葉の学習としても扱っていきます。
物事には、いろんな属性があります。りんごであれば、「赤(色)」「丸(形)」「手のひらサイズ(大きさ)」「りんご(物の名前)」「食べ物(種類)」「常温(温かさ)」「おいしい(味)」など、さまざまな属性があります。それらの中で、一番わかりやすいのが、やはり目に見える『色』であり、『形』であることになりますので、まずは色、形に注目する学習を行っていきます。将来的には、色、形、大きさ、高さ、重さ、長さ、多さなど様々な属性に気付く力をつけたうえで、『数』に気付くという学習に進んでいきます。
(越谷特別支援学校コーディネーター)