タグ:Ⅳ文字や数を身につける際の教材
61 文字を読み上げるまでに その3
前回の続きとなります。文字面で「『これ』は何ですか」という問いに答えられて、「読み上げることができた」と言えるでしょう。
ただ、ここで注意したいのは、「読めなかったとき」です。ここまでの学習で「絵を見て『か』と言うこと」「身振りを見て『か』と言うこと」はできているはずです。ですので、読めなかったとしても、カードを裏返して絵を見たり、先生がやる身振りを見たりすれば、なんと読むのかを思い出せるはずです。
ところが、実際の場面ではどうでしょうか。子どもが思い出せていないとき、子どもが思い出す前に「『か』でしょう!」と大人が言ってしまい、それを聞いて子どもが「か」と言っていることはないでしょうか。それでは耳で聞いて同じように言っているだけであって、「文字を読み上げている」とは言えません。
ポイントとしては、「『か』と最初に言ったのが誰か」ということになります。実は大人が最初に言ってはいませんか? 子ども自身が「どう読むのか」を思い出すことが何よりも大切で、それを可能にするために身振りなり、絵なりといった、読み方を思い出すためのヒントをたくさん学習していくわけです。
文字を読みあげるためには、それぞれの子どもに応じた、色んな学習のやり方があります。59~61では、それらのやり方の一つを例として紹介してきました。
(本校特別支援教育コーディネーター)
60 文字を読み上げるまでに その2
前回の続きです。絵の面で確実に選択できるように学習していきます。「身振り+音声」での提示でできるようになったら、「音声だけ」「身振りだけ」の提示でも選択できるように学習していきます。
また、絵の面を見て「これは何ですか」と聞かれて読み上げるということも行っていきます。この時点では、文字を読み上げているのではなく、絵を見て読み上げるので十分です。発語が出にくい子どもの場合、絵を見て身振りを行っていきます。
絵の面で「身振り+音声」「音声だけ」「身振りだけ」のいずれでも確実に選択できるようになったら、カードを裏返して文字の面を使っていきます。ここでも「身振り+音声」「音声だけ」「身振りだけ」の順を追って学習していきます。
ここで何よりも大事なのは、「子どもが自分で正誤を確認できる」ということです。「『う』はどれですか」と聞かれて、間違ったカードを選んだとしても、カードをめくって絵の面を見れば合っているかどうかがわかります。ここで、いよいよ文字の面を一枚ずつ見て「『これ』は何ですか」と聞かれて読み上げるということを行っていきます。これができてはじめて「文字を読み上げることができた」と言えるでしょう。
(本校特別支援教育コーディネーター)
59 文字を読み上げるまでに その1
単語の意味を取る前に、まずは文字を読み上げます。今回紹介するのは、53から55にかけて紹介した文字カードを駆使した、文字の読み上げの教え方です。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
文字を読み上げるためには、どんな基礎・基本の力が必要になるでしょうか。まずは、「『あ』と『め』、『す』と『む』、『れ』と『ね』など似通った文字を見分ける力」が必須となります。㊸で紹介した細部視知覚のこととなります。①で紹介した形態構成で言えば、4~6分割くらいのパズルはできていてほしいところです。
次に、そもそもの「わかる力」「イメージする力」の育ちとなります。目途としては、相手の身振りをその場で模倣したり、大小を比較できたりするくらいの力です。
その他にも、しりとりや「うま→まう」「うし→しう」など単語を逆に言うときに使う、日本語の一音ずつを捉える力(音韻意識)。物事を記憶する力などが必要になってきます。また、日ごろ繰り返し使っている名前カードや日課カードなどを読み上げていることなども、「そろそろ一文字ずつを勉強していく時期」のタイミングとなってきます。逆に言うと、いくら字を勉強してもなかなか身に付きにくいという場合、ここにあげたどこかの力がつまずいているのかもしれません。そういう時は、いったん基礎・基本に戻って学習してみるとよいのではないでしょうか。
では、いよいよ文字カードを使っていきます。最初は、絵の面を並べていきます。
「『あ』はどれですか?」「『い』はどれですか?」と身振りを交えて発問します。これは文字を学ぶための基礎・基本ができていれば、選択できるはずです。逆に言うと、これができなければ文字を学ぶのはまだ早い、ということになるのではないでしょうか。
(特別支援教育コーディネーター)
58 文字の意味を取る教材
53において、「文を読み上げること」と「文の意味が分かること」には大きな違いがある、ということをお伝えしました。今回は、文の意味を取っていくことの教材を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使っていきます。
ありがちな状況としては、子どもが文字から意味を取っているのではなく、教員が思わず「言ってしまっている」言葉を「聞いて」子どもがわかってしまっているという展開です。そこで大事になってくるのは、「意味を取っていないとできない」教材を用意することです。例えば、以下のようなプリントが考えられます。
左のプリントは、文字を読み始めた頃に用いる教材で、単語を読み上げたあと、該当する絵を指していきます。また逆に、絵を見て、該当する単語を選んでいきます。右のプリントはかなり学習が進んだあとのものになります。ここでは「みずにうく」ものですが、「どうぶつ」「たべもの」「なつ」「とぶ」など、テーマに沿って単語を選んでいきます。
絵カードで行っていた、各種弁別を単語で行うということも勉強になります。「単語カードで色の弁別をする」というだけでも、かなり難しい学習になります。
また、〇×で答える学習も考えを深めやすくなります。
「×」と答えた場合、「じゃあ本当は何?」などと確認していきます。こんな風に、子どもが単語や文の意味を取る力を高めていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
57 0から5までのサイコロ
今回紹介するのは、「0から5までのサイコロ」です。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
サイコロというのはすごろくに使うなど数の学習の時に活躍することの多い教材なのですが、一般的な1から6のサイコロというのは扱いにくいことがあります。数量の理解の基本は「5のまとまり」「10のまとまり」の理解になるところ、どうしても「6」の扱いに困るのです。本来であれば、「6」という数量は「5と1」として教えたいところです。
そこで、サイコロの6面のうち、「6」にあたるところを「0」にし、「0から5までのサイコロ」にしてしまいます。そうすると出てくる数字が5までとなり、子どもが「5のまとまり」を意識しやすくなってきます。「0」の概念の導入ともなります。
市販品としての「0から5までのサイコロ」はなかなか手に入りにくいようです。一部の算数セットに含まれているほか、立方体の木に自分で書く、無地のサイコロ(市販されています)に書き込む、といった入手法があります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
53 文字を読み上げるためのカード その1
今回紹介するのは、文字を読み上げるようになるためのカードです。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。
繰り返しカードを読み上げれば、文字を読み上げられるようになるわけではありません。そもそも、「文字が読める」ことと「文字の意味が分かる」ことは大きく違います。例えば、英語で「I can’t get no satisfaction」という文があったとして、これを「読み上げる」ことと、「意味が分かる」ことには大きな違いがあるはずです。ひらがなも同じで、子どもが「り」「ん」「ご」と一文字ずつ読み上げることができたとしても、そのとき子どもの頭の中に『りんご』のイメージが浮かんでいるとは限りません。
ただ、教員がそのときに「そうだね、りんごだね」などと言ってしまっていて、子ども自身が「読んでわかっている」のではなく、実際には「聞いて分かっている」というときもあります。今回は「読んでわかる」のはひとまず置いておいて、「読み上げる」までのステップとなります。
カードそのものは㉖の「立体トランプ」と同じ作り方です。厚みをつけ、磁石を埋め込んでいます。操作がしやすくなる、重みがつく、カードがばらけないなど、様々なメリットがあります。
この文字カードは「あ」から「を」までの46音、そして濁音の中でも使用頻度の高い「が」「だ」の全48枚で構成されています。片面が文字、そして裏面が絵になっています。右の写真は一覧になっている50音表です。
(本校特別支援教育コーディネーター)
52 具体物からカード、ことば、文字へ
今回紹介するのは、具体物からカード、ことば、文字へと至るステップです。すべての発達のステージにかかってきます。例えば「くだもの」「どうぶつ」「のりもの」の種類の弁別を行う際、ミニチュアなどの具体物を用いて弁別する場合と、単語カードを用いて弁別する場合とでは、難易度は大きく異なります。具体物が簡単で、単語は難しいです。
これは普段の日常生活でも言えて、例えば「トイレに行く」ということを子どもに分かってほしい場合、どうすればいいでしょうか? 一番わかりやすく伝えるのであれば、紙オムツを手渡したり、いつも使っているトイレ用のバッグを手渡したりすることでしょう。次に、そのトイレバックや、便器を写真に撮って作ったカードを手渡すことが効果的でしょう。その次くらいに、『トイレ』のマカトンサインや、トイレを示すシンボルのカードを見せることになるでしょう。
「トイレに行くよ」といった言葉かけですとか、『トイレ』という単語カードを見せるとかは、さらにそのあとの、かなり難しい働きかけとなります。大切なのは、これらの伝え方のどの段階で子どもが理解しているのかを把握しておくことになります。1つの段階でわかるようになったら、その次の段階を目指していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㊾大小を並べる教材
これまで、再認(選ぶこと)と再生(言うこと)の違いですとか、弁別のステップですとかを紹介してきました。今回紹介するのは、「大小」「長短」「軽重」といった、比較概念を子どもに教えていく際のステップとなります。このあたりはおよそ、『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』にかかってきます。
比較概念とは何でしょうか? 例えば、子どもは「象は大きい」「ありは小さい」と絶対的に理解しています。しかし、象は地球よりも「小さい」ですし、ありは細菌よりも「大きい」です。あくまで2つのものを比較して成立するのが比較概念です。この辺、「色」「形」「陸海空」「季節」といった絶対的な概念とは異なるところになります。ここでは「大小」を取り上げますが、「長短」「高低」「軽重」「多少」「暑さ」「強さ」「可愛さ」なども同じような比較概念です。
最初は、大小を分けることを学びます。まずは、大きいことと小さいことの区別がつかなければ始まりません。そして、「どっちが大きい(小さい)」という学習に進みます。右側の画像の真ん中の〇は、一番小さい〇からすると「大きい」ですが、一番大きい〇からすると「小さい」です。このように、物事を比較して捉えることを学んでいきます。
ここで、「もっと大きい(小さい)ものを知っている?」「他に大きい(小さい)ものは?」といった対話を重ねていくことも、非常に重要となります。深い学びへとつなげていきます。
いくつもの物を比較できて、はじめて可能になるのが最初の写真の、「ピンクタワー」を横に並べる(順序付ける)学習になります。こうやって大小や長短といったものを順序付けることを「大小の系列化」「長短の系列化」等といい、様々な教材があります。枠を用意してあげたり、ミニチュアを用意して「のぼれるように階段をつくるよ」といった言葉かけをしてあげたりすると、順序付けるということにイメージを持ちやすくなるようです。
大小の学習は、「分ける」「比較する」「順序付ける」と進みます。大小から高低、長短等を経て、「多少」を順序付ける力があって、数の学習に進むことができるようになります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㊴積み重ねボックスの活用
「いちごとばななの具体物を分ける」といった同じ内容の弁別であったとしても、どうやって分けるのか、といったことで学習の難易度は変わってきます。㊱の木枠の活用のところでも紹介したように「操作のしやすさ」というのも影響してくるのですが、操作のしやすさを抜いて考えたとしても、だいぶ違いがあります。このあたりはあらゆる発達のステージで共通してきます。
例えば、左の写真の弁別と右の写真の弁別とでは、分けているものは同じです。同じなのですが、どちらの方が「入れる」「分ける」ということがわかりやすいでしょうか? おそらくは、多くの子どもが右側の方がわかりやすいはずです。左側のボックスは浅く、右側のボックスは深いです。浅い入れ物よりも、深い入れ物の方が、「入れた」「分けた」ということの実感が持ちやすくなります。
他にも、いろんなサイズのボックスが市販されています。「手の上がりにくさ」とか色んな条件がからむので一概には言えないのですが、深い入れ物、そして面積的に狭い入れ物の方が、わかりやすいことが多くなります。逆に言うと、大きい紙の上に置き分けていく、といった形の学習は非常に難しくなります。次の写真だと、かなり難易度が上がります。
皿に「置く」枠に「はめる」箱に「入れる」。子どもがやっている動きは同じだとしても、容器によって日本語そのものが変わっていきます。置くよりも、入れる方がわかりやすいはずです。
(本校特別支援教育コーディネーター)
㊱木枠の活用
今回紹介するのは、教材を活用するための木枠です。あらゆる発達のステージで使っていきます。手指に力が入りにくい子どもの場合、教材を箱に分け入れていくことが困難になります。ミリ単位の、ほんのちょっとした段差であっても腕を持ち上げるのに苦労し、弁別すること、考えることに集中できなくなることがあります。そのため、できるだけ教材を持ち上げることなく、「すべらせ」「はめる」ことで学習できるように教材を整えています。
また、不随意運動が入りやすい子どもにも効果的です。百円均一の店で売っている半透明の積み重ねボックス(㊴で紹介)なども様々な大きさ、深さがあって一人一人の子どもに合わせやすいのですが、すべり止めを敷いたとしても、どうしてもガチャガチャと動いてしまいます。
そこで、上の写真の木枠となります。百円均一の店のA3サイズのMDF板を何枚か貼り合わせ、10センチ四方の大きさで穴をくり抜いています。また、底をもう一枚の板でふさいでいます。10センチ四方の大きさで穴を開けることで、弁別用の枠としてだけでなく、同一規格で作った様々な教材を固定することもできます。
(本校特別支援教育コーディネーター)