100 マズローのハンマー
この「本校の教材教具」もついに100回目を迎えました。今回は、教材教具を活用していくうえでの注意点、「落とし穴」について確認していきます。
アブラハム・マズローはアメリカの心理学者です。マズローといえば特別支援教育の世界では「欲求の5段階のピラミッド」で有名です。今回はそのマズローが言った「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」という言葉を紹介します。
ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える、というのは「ハンマーを持ったら叩いてみたくなる」ということでもありますし、「物事のすべてがハンマーによって解決するように思える」ということでもあります。先入観の話です。
これを教材教具にあてはめてみると、「子供のために作った教材教具」であったはずが、「教材を使うこと自体が目的」になりかねないし、「子供のすべての課題が教材によって解決するように思えてしまう」ということです。他にもっとよい方法があるかもしれないのに、教材教具を工夫してしまったがゆえに他の選択肢が思いつかなくなり、何が何でも教材教具で物事を解決してしまいたくなる。結果、子供を見る視点が狭くなってしまいかねないということです。
教材教具と限らず、特別支援教育の世界にはさまざまな指導法、方法論があります。教員がそれらを身につけると、子供に使いたくなるし、それで子供の課題が解決するように思えてきます。果たして本当にそうなのか? 一人一人の子供の教育的ニーズに最適なものなのか? 教材教具を工夫すればするほど、陥らないようにしたい落とし穴です。
(本校特別支援教育コーデイネーター)