㊺弁別のステップ(その1)
同じ内容の同じ教材教具を使っていたとしても、弁別のやり方によって学習の難易度は大きく変わってきます。このあたりはおよそ、『Ⅱ見分ける学習の教材』『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』にかかってきます。
最初のやり方は、『分ける』ことです。これは「パターン弁別」ですとか、言語療法の世界では「ふるい分け」だとか呼ばれることがあります。子どもの手元に型はめなどのペグがあり、向こうに枠の選択肢があります。もっとも一般的な学習の形となるでしょう。いわば、形を『見分けて』います。
次のやり方は、『選択する』ことです。これは「対応弁別」ですとか、言語療法の世界では「選択」だとか呼ばれることがあります。手元に〇△□といった複数のペグがあり、向こうに1つだけ枠の選択肢が提示されます。この場合、いわば形を『見比べて』います。
この両者は実際に体験してみるとわかるのですが、圧倒的に後者の『選択する』ことの方が難しいです。理由としては、『選択する』ためには教員が「これを選んで」と選択肢を見せるまで待つ必要があること(見て待つ姿勢)。その選択肢を一時的に記憶したうえで選ぶ必要があること(視覚性の短期記憶)。教員が提示したものを選ぶ必要があること(相手に応じる力)。視線の動きが『分ける』際よりも複雑になること、等があります。
教材をどうやって置くか? というただそれだけのことなのですが、子どもにとっては学習の難易度が大きく変わります。教員は、その都度学習を難しくも簡単にもし、子どもにとって程よい難易度を保っていきます。
参考文献:矢口養護学校小学部「“S‐S法”によることばの遅れとコミュニケーション支援」明治図書出版
(本校特別支援教育コーディネーター)