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54 文字を読み上げるためのカード その2

前回の続きとなります。片面が文字、片面が絵というカードはよく市販されていますし、50音表もさまざまなものが存在します。その中であえてカードを手作りしているのは、「操作をしやすくする」というためだけではありません。

 

左の写真が、「よくある」50音表です。これで学んでいくとどういうことが起こるかというと、『あ』を見て「あひる」と読んだり、『い』を見て「いえ」と読んだりする子どもが育ちがちです。「自分の名前の頭文字=自分の名前」と思っている子どももいることでしょう。すなわち、「あ」という一つの音に『あ』という一つの文字が対応するという、ひらがなの最大のメリットがわかりにくくなってしまうということになります。

 

「一つの音に一つの文字」というと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、漢字などは「犬(いぬ)」のように「複数の音に一つの文字」ですし、ローマ字などは「TA(た)」のように「一つの音に複数の文字」となります。意外かもしれませんが、ひらがなというのは世界的に見ても学びやすい文字だと言われています。

 

読字障害(ディスレクシア)というものがあります。これは使用する文字によって大きく違っていて、イタリア語や日本語では起こりにくく、英語では頻発する、と言われています。これには明確な理由があります。アルファベット全般がそうですが、『A』という文字は、実際には「ア」と発音することが多いにも関わらず、「エー」と読んでいます。ひらがなの場合、『あ』は「あ」でしかありません。ここで混乱が生じるのが1つ目の理由。英語が『TEA』のように複数の文字で1つの音を表しているのが2つ目の理由。そして、英語ならではの理由としてあるのが、『A』という文字を、非常にたくさんの発音で読む、ということがあります。「C『A』T」「POT『A』TO」「『A』LWAYS」。同じ『A』なのに、読み方が全く違います。それに対し、『あ』は「あ」でしかありません。これがひらがなの学びやすさとなります。

 

話は戻りますが、せっかくのそういったひらがなの特徴があるので、一音一文字の原則を十分に身につけ、『あ』を「あり」と読むことがないようにしていきたいところです。

 

※特殊音節、漢字といったものは例外となります。『きゃ』などは1つの音を複数の文字で表しますし、「おと『う』さん」「せんせ『い』」などは発音と表記が一致していません。「O(お)」という音も、時と場合によって『お』や『を』と書き分けたりします。ひらがなの表記も、この辺りがつまずきやすいところです。漢字も、音読み、訓読みというように時と場合によって読み方が異なるため、つまずく子が出てきます。丁寧に教えていく必要があります。

※なお、イタリア語は英語よりも文字と発音の規則性が明確なため、ディスレクシアが起きにくくなります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)