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2020年6月の記事一覧

79 触知覚を育てる教材

今回は触知覚を育てる教材を紹介していきます。触「知」覚と言っているからには一般的な意味での触覚とは少し違って、点字のように「触ってわかる」「触り分ける」ことを目的としています。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』として使うことを想定しています。

 

 

 

 

 

 

これまでに紹介してきた教材の活用ともいえるのですが、例えば⑰の球と輪の弁別、㉙の市販の型はめなどを、ペグを袋や箱に入れ、「視覚に頼らず」触り分けて取り出していきます。球と輪の違いを触り分けたり、〇△□の違いを触り分けたり、各キャラクターのフィギュアを触り分けたり…。触り分ける力を高めていく中で、散髪や爪切りが苦手、服のタグが嫌といった触覚の過敏が調整できるようになったり、見て分かる力が高まっていったりすることがあります。

 

同じく触知覚を高めるためのものとして、「お腹や背中、手に文字や数字を書いてもらい、それを当てる」といった学習もあります。また、数量を触覚に頼ってあてる、といった学習もあります。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

78 磁石の両極を活用した「種類」の弁別教材 その2

前回の続きとなります。30ミリの面取りドリルを用い、ボール盤でランダムに穴を開けていきます。ここでは8か所に開けています。

 

 

 

 

 

 

もう一枚の板を重ね、先ほど30ミリで開けた穴のところに、今度20ミリの面取りドリルで穴を開けていきます。要は、重ねた板の同じ位置に穴を開けるということです。

 

 

 

 

 

 

20ミリの穴を開けた板と、まっさらな板とを貼り合わせます。そして20ミリの穴に強力磁石を固定していきます。この時、磁石のS極とN極の向きを調整します。

 

 

 

 

 

 

ラミネイトした紙を間に挟んだうえで、30ミリの穴を開けた木が一番上になるように貼り合わせます。最終的に、板は3枚重ねとなります。磁石に百円均一の店の立体シールを貼り付けて完成となります。これで、「違うところに磁石を置こうとしても、反発するので置けない」教材が完成します。76の色のマッチングの教材もそうですが、2択までならこのやり方で表現することができます。子供が間違えたときに、教材そのものが間違えたことを教えてくれます。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

77 磁石の両極を活用した「種類」の弁別教材 その1

前回とほぼ同じ作り方の教材です。前回は色のマッチング用でしたが、今回は種類の弁別用のものを作成していきます。『Ⅱ見分ける学習の教材』として想定しています。

 

材料を購入します。材料として適切なのは、質のほかに、「安価であるもの」「同じものが継続して手に入るもの」になります。特に「同じものが継続して手に入る」というのは重要で、同じ材料を使って教材を作っておくと、「別の目的で作ったこの枠に、この教材が入った」など、予想外の互換性が出ることがあります。

 

今回購入したのは「MDF板(A3サイズ)」「磁石(8個入り)」「各種シール(今回は虫と食べ物)」あたりです。その他、「ボンド」「ドリルの刃(20mm,30mm)」「電動糸鋸」「ボール盤」「ラミネイトフィルム」「ラミネーター」などを使用します。

 

 

 

最初に、磁石のS極とN極を入れ替えます。磁石はかなり強力なテープで枠に固定されているので外すのが大変なのですが、ゆでるとテープが剥がれます。ただし、ゆですぎると磁石の枠がゆがんでしまうので、加減が必要です。70度程度のお湯で、数分ゆでると外れるようです。製品によっても異なるかと思いますので、ご確認ください。

 

 

 

 

 

 

磁石についていたテープのねばねばをシールはがし等で落とします。そして磁石の表裏を入れ替え、接着剤で再固定します。これで磁石の準備が完成となります。また、A3サイズのMDF板を適切なサイズに切ります。今回はA4で使っていくので、半分にします。

 

種類の表札を作成します。10センチ四方のMDF板を半分に切って使用しています。印刷した紙をスティックのりで仮止めし、周囲を梱包用テープで巻きます。①の形態構成と同じ作り方です。表札のサイズに、板をくり抜いていきます。その他の教材にも共通するのですが、ドリルで穴を開けたうえでそこに電動糸鋸の刃を通し、くり抜いています。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

76 磁石の両極を活用した「色」のマッチング教材

百円均一のお店で売っている磁石を、同じ色の枠にはめこんでいく教材です。『Ⅱ見分ける学習の教材』として使うことを想定しています。サイズとしてはA4大で、A3大のMDF板(中密度繊維版)を半分に切って使用しています。

 

 

 

 

 

 

一見すると特に特徴のない教材に見えますが、この教材は実物を触ってみることで「あれ?」と子供が小首をかしげるようにできています。同じ色の枠には磁石が貼りつくけれど、異なる色の枠には絶対に入らないのです。「失敗することのない」教材になっています。そうするために、磁石の中身を一回取り外し、S極とN極を逆転させるということを行っています。次回、作成法を詳しく紹介します。

 色の学習の中でこの教材を使うのは、㉔「カラーコーン重ね」の次くらいのステップになります。同じ色を一か所に積み重ねていく「カラーコーン重ね」とこの教材だと、こちらの難易度の方が高いです。ただ、手指の操作といった理由で、こちらの方がやりやすいという子供もいることでしょう。一人一人、違ってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

75 プリント教材とその活用(ことばの学習のプリント その2)

前回の続きとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

これまで紹介してきた様々な学習の総決算的なプリントとなります。「物の名前」「色」「形」「大きさ」「季節」「絵の細部」「陸海空」など、様々な属性に焦点をあてて思考していきます。これも「適切な答えを選んでいるか」ということは特に問題としておらず、「どうしてそう考えたのか」ということを問いかけていきます。教員からすると「正しい」答えを選んでいても、理由を聞いてみると不思議な理由だったり、教員からすると「間違った」答えであっても、子どもなりによく考えた結果だったりすることがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

「強さ」「大きさ」など比較概念の場合は、「選ぶプリント」「比較するプリント」と進んでいきます。これらも適切な答えであるかどうかは特に問題とはしていなくて、「どうしてそう考えたのか」「強いものには他にどんなものがあるか」「もっと強いのは何か」といったことをやりとりしていくきっかけにしています。

 

子どもが「あれ?」と考え込む題材を選ぶことがポイントで、「先生とお母さんはどっちが強い?」「先生とお母さんはどっちがかわいい?」とか、答えがあってないような質問をしていきます。もっともな理由を言う子だとか、「これは答えられない」と答える子どもだとか、様々な答えが返ってきます。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

74 プリント教材とその活用(ことばの学習のプリント その1)

58において、「文字を読み上げていること」と「書いてあることの意味が分かること」の間には、大きな違いがあることを紹介しました。今回は、様々な「ことばを育てる」プリント教材を紹介します。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として用いることを想定しています。

 

 

 

 

 

 

この2枚のプリントは似ていますが、子どもからするとかなり難易度が異なるものになっています。絵を見て単語を選ぶことと、単語を見て絵を選ぶこと。多くの子どもにとっては、前者の「絵を見て単語を選ぶ」ことの方が難しいでしょう。

 

これは特定の文字を選択するプリントです。「め」と読み上げるためには、「あ」「ぬ」といった形が似通った文字との見分けがついている必要があります。なお、〇を書くことが難しい子どもの場合、あらかじめプリントをホワイトボードにセロテープで貼り付けておいて、磁石を置いていくことで選択できるようにします。

 

 

 

 

 

 

 

季節に関する言葉なども、プリント化して学習することができます。書くことが難しければ磁石を使います。文字の獲得がまだである子どもは、絵で学習していきます。これらのプリントは「正しい答え」を答えてもらうためのものではありません。教員と子どもとで「これってどういうの?」「見たことある?」「他にはどんなのがある?」「先生はこう思う」といったやりとりを重ね、その子自身がどう考えているのか?ということを深めていきます。

 

また、プリントを用いるメリットには「その時、その場で子どもが言ったことを教員が書き込んでいける」といったこともあります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

73 輪抜き/輪通しの教材

④で紹介した輪抜きの教材ですが、今回は輪抜きに使う棒やペグの工夫を紹介していきます。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。最も簡単に手に入る組み合わせは、百円均一のお店で売っている「キッチンペーパーホルダー」と、輪になっているものなら何でも、というところになるでしょう。今回の棒は、安定感を出すために太さ20ミリ長さ200ミリの木材を、土台に差し込んで作成してあるものです。

 

輪抜きは、「ここ(輪を持った時点)からここ(輪が抜けるところ)まで」という、終わりに向けて運動を持続させていく学習になります。子どもにとって、「何をすればよいのか」というのが明確になります。また、身体の動かし方が苦手な子にとっては、手首等の使い方の練習にもなってきます。

 

以下の教材は、手首の使い方、目の使い方を練習するために特に工夫してあるものです。穴が板の中心にあるものから始まり、徐々に持ち手が長くなっていきます。持ち手が長くなるにつれ、手首の動きや、目の使い方を調整する必要が出てきます。

 

 

 

 

 

 

次の教材は、持ち手をL字状にしたものです。これを上手に抜く、あるいは棒に通すといった場合、かなり手首や目の使い方を調整する必要があります。

 

 

 

 

 

 

このように輪抜きの教材といっても、何を用いるのかということにより、だいぶ難易度は変わります。子どもの学習の目的に合わせて選択していくことになります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

72 押したら鳴る教材

今回は百円均一のお店などで売っている、市販の教材を紹介します。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。子どもの分かる力の発達を考えていくとき、最初に考えられるのが㊼「保冷剤」や63「アリスのティーパーティー」のような教材で、「触ること」「揺れること」「回ること」など何らかの感覚に気づくことです。その中でも、文字や本、絵、動画のような「見る」教材には子どもはなかなか気づきにくいということは繰り返し紹介してきました。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、握ったら音が鳴る教材です。「音が鳴ったことに気づく」ことが最初の気づきだとすれば、「握ったから音が鳴る」という気づきは、その次のステップの気づきとなります。これを『因果関係の理解』と言い、㊽「積み木倒し」と同じような目的となります。同じような目的の学習に、押したら扇風機が回るスイッチ、押したら振動するスイッチ、触ったら画面が変化するタブレット端末のアプリなどがあります。

 

「こうしたらこうなる」という経験を積み重ねる中で子どもの予測する力が育ち、「これはこういうものだろう」ということが見ただけでわかるようになっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

71 さまざまな反射と教材教具(非対称性緊張性頸反射)

緊張性迷路反射、対称性緊張性頸反射に続き、非対称性緊張性頸反射の紹介となります。これは、英語の頭文字をとって「ATNR」と呼ばれることが多いです。「対称性緊張性頸反射」に名前が似ていますが、「非対称性」ですので、「首の(左右の)角度をきっかけに」「緊張が入る」「反射」です。

 

この反射では

・首が左右に向くと、傾いた方の手足が伸展し、逆側の手足が屈曲

します。

 

 

 

 

 

 

この反射が存在しているのは、母胎の中で手足の筋肉を使う練習をするためだったり、生まれてくるときに産道を通るためだったりするようです。大人になっても「いざ」というときに用いられていて、例えば弓を引く姿勢、野球のピッチャーのフォーム、バレーのアタックをするときのフォーム、フェンシングのフォームなどで自然と利用されています。

 

 

 

 

 

 

この反射が学習や生活に及ぼす影響は大きく、「見た方向に手が伸び」ます。良いことのように聞こえますが、物に手が届いたとしても、今度はそれを自分の方に持ってくることが困難になります。取りたいものがあって、取ろうとして顔を向ければ向けるだけ、手が遠ざかってしまうということになります。

 

また、全身が非対称の姿勢になっていくので、脊柱の変形を誘発しやすいということも起きます。どうやって抑制していくか?ということになると、⑥で紹介した丸の型はめのようにお腹の前に手を持ってくるような学習、66で紹介したような身体の正中線を越えて手を動かしてボールを筒に入れるような学習が効果的なのではないでしょうか。これらの動きを子どもが自分からやる、というのはなかなか難しく、教材を駆使して活動の目的を明確にすることになります。

 

以上、68から数回にかけて子どもの反射のことを紹介してきました。子どもの姿勢、特に頸の角度が身体の動きに与える影響は大きいものです。それに対して様々なアプローチの方法がありますが、教材教具を用いることでもアプローチしていくことができます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

70 さまざまな反射と教材教具(対称性緊張性頸反射)

前回まで紹介してきた「緊張性迷路反射」と一緒に起こることの多い反射で、「首の(前後の)角度をきっかけに」「緊張が入る」「反射」です。似たような名前の反射に「『非』対称性緊張性頸反射」がありますが、これは首の左右の角度によって緊張が入ります。

この反射も人類が進化してくる過程で獲得してきた反射で、

・首が前方に傾くと上肢が屈曲して下肢が伸展し

・首が後方に傾くと上肢が伸展して下肢が屈曲します

 

 

 

 

 

 

仰向けになると首がのけぞることが多いし、うつ伏せになると首が前方に傾くことが多いので「緊張性迷路反射」と連動しやすいのですが、あくまでも首の角度に依存しているので、枕を入れるなどして首の角度を変えることで調整することができます。

 

この反射が強く出ていると、教材に手を伸ばそうとしたときに、どうしても見続けることができず、首を後方に傾けながら手を伸ばさないといけないという状況になります。やはり、66~67で紹介したような、床のボールを拾うような活動が効果的かもしれません。一方、この反射は首を前後に動かすことで手足を交互に「曲げる」「伸ばす」ことができるので、これを利用して室内を移動する子もいます。「バニーホッピング」です。

 

子どもには様々な反射があり、学習や生活に必要な身体の動きに影響しています。それぞれの反射が良い、悪いというのではなく、子どもたち一人一人の生活に合わせて利用するときは利用し、強く出すぎて子どもがそれに困っているときは調整していく、ということになります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

69 さまざまな反射と教材教具(緊張性迷路反射その2)

前回の続きとなります。緊張性迷路反射や対称性緊張性頸反射が強く残りすぎていると、学習や生活の中で不都合なことも起きてきます。「体が前方に傾くと伸展緊張が抜ける(屈曲する)」ので、67のように床のボールを拾おうとして身体を前方に傾けると、手が伸びにくい。ボールを見ようとして顔を近づけようとすればするだけ肘が身体に引き付けられてしまって手がボールに届かない、といったことが起きます。

 

 

 

 

 

 

これは普段の生活でも同様で、靴を脱ごうとして前がかりになろうとすればするだけ手も指も伸ばしにくくなります。適度に身体を起こした状況であれば、手は曲がりすぎることも伸びすぎることもなく、操作に集中しやすくなります。一方、このトーキングエイドを操作している写真で身体を起こしすぎる(リクライニングしすぎる)と、手も足も、突っ張ってしまって操作どころではなくなってしまうことでしょう。

 

これらを踏まえて、子どもにとって扱いやすい教材、「見るとき」「聞くとき」「操作するとき」「食べるとき」それぞれで学習しやすい姿勢を探っていきます。

 

なお、緊張性迷路反射を抑制していくために、以下のような学習もあります。「うつ伏せで伸びる」「大人にしがみつきつつ後方に倒れる」「仰向けで曲がる」というように、反射の逆をやっていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

とはいえ身体の動かし方が苦手な子どもたちにとってかなり難しい活動になります。そのため、66~67のボールを拾って入れる活動のほか、これまで紹介してきたような様々な教材を見て、操作することそのものが、非常に重要な身体の取り組みになってきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

68 さまざまな反射と教材教具(緊張性迷路反射その1)

「口周りをつつかれると、その指に吸い付く」など、赤ちゃんには様々な反射があります。それらの反射の中には大人になるまでに見られにくくなるものもあれば、残り続けるもの(熱いものを触ったら手を引っ込めるなど)もあります。

 

身体の動かし方が苦手な子どもたちが教材教具を活用していくにあたり、特に関係してくるのが

・緊張性迷路反射(きんちょうせい/めいろ/はんしゃ)

・対称性緊張性頸反射(たいしょうせい/きんちょうせい/けい/はんしゃ)

・非対称性緊張性頸反射(ひ/たいしょうせい/きんちょうせい/けい/はんしゃ)

となります。これらの反射は大人も「なくなっている」のではなく、咄嗟の時には出てきます。ただ、日ごろは抑制しているということになります。

 

まずは緊張性迷路反射です。難しい名称ですが、「迷路(前庭感覚)への入力をきっかけに」「緊張が入る」「反射」です。具体的に言うと、身体が後方に傾くと伸展緊張が入りやすくなり、前方に傾くと伸展緊張が抜けて屈曲しやすくなります。

 

子どもが抱っこされるとき、横抱きなどちょっと身体(正確には頭)が後方に傾くと、一気に背中が反り返ることがあります。そういう時、支援者の胸に身体を預けるように前方に傾くことで、力が抜ける、といったことはないでしょうか。そういう時に見られる反射になります。

 

 

 

 

 

 

後方に傾ききった姿勢は「仰向け」で、前方に傾ききった姿勢が「うつ伏せ」です。ですので、仰向けというのは伸展緊張が入りやすく、うつ伏せは伸展緊張が抜けやすい姿勢になります。なお、なぜこの反射が存在しているのかというと、「首」や「お腹」など身体の前面にある急所を外敵にさらさないためです。仰向けになりそうだと伸展緊張が入ることで、くるりと回ってうつ伏せになれるようになっています。

 

この辺、恐怖心とセットになっていることもあり、子どもの中には怖くて、どうしても仰向けになれない子もいます。そこには人類の長い進化の歴史が背景として存在します。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

67 鉄球入れの活用 その2

前回の続きとなります。今度は、床に置かれたボールを拾い、教員が差し出した筒に入れていく、ということを行っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

本校だけとは限らず、地域の学校などを回っていくと腹筋をはじめとした身体の前面の筋肉を上手に使えていないという子どもを見かけることがあります。小さい頃のはいはい、雑巾がけ、ジャングルジム、身をかがめて黒板を拭くことなど多様なアプローチが考えられるのですが、本校の子どもたちのことを踏まえ、安定した姿勢で取り組めるものとして設定したのが今回の活動になります。

 

床の鉄球を拾っていくのですが、これがなかなかうまくいかない子がいます。反射(緊張性迷路反射、対称性緊張性頸反射)の影響で、身体が前方に傾くと腕が曲がりやすくなったり、力が抜けてしまいやすくなったりするからです。ボールを拾おうとして力を入れようとするとどうしても股関節が伸び、反り返っていきやすくなります。

 

 

 

 

 

 

しかし、だからこそ「ボールを拾う」「筒に入れる」という分かりやすい活動の中で、それらの反射を抑えて、股関節を曲げつつ床を踏みしめ、腕を伸ばすということを行い、自分の身体の動かし方を学んでいきます。

 

筒の位置を調整することで、子どもが「立ち上がる」動きを学べるようにもしていきます。鉄球と筒を駆使し、子どもにとっての「立ち上がる目的」を明確にしていきます。

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

66 鉄球入れの活用 その1

③でわかる力を育てるための教材として紹介した鉄球入れですが、今回は身体の動きを学習するための教材として紹介していきます。

 

問い合わせの多いこの鉄球ですが、正確にはステンレス球です。さびにくくなっています。高品質のステンレス球(本来の用途は自動車のベアリング)は45ミリのサイズで1個5000円くらいしてしまうため、なかなか手を出しづらいところがあります。本校にあるものは、ほとんどが比較的安価な健康グッズを流用したものになっています。

 

 

子どもが自分の身体の動きを整えていくとき、「こう動くといいよ」と口で言われても難しく、教員に身体の動きを誘導されてもやっぱりよくわからない、ということがあります。

 

そこで、「体幹を保持する力を整える」ということが課題である子どもの場合、「ボールを取る」「入れる」という目的が明確な活動を設定する中で、必要な動きを学んでいけるようにしていくことがあります。この時、鉄球の重みがあることで固有覚(筋肉や関節の感覚)に入力され、子どもも「自分の手がどうやって動いているのか」ということをつかみやすくなります。

 

ボールの位置、筒の位置は少しずつ子どもから遠ざけていき、「自分で姿勢を崩す」「そしてそれを戻す」「体幹をひねる」ことの中で、動きを整えていきます。

 

 

 

 

 

 

この鉄球入れの場合であれば、5個入れれば筒がいっぱいとなります。子どもにとって活動の終わりに見通しも持ちやすくなる、といった面もあります。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

 

65 繰り上がりの支援 その2

前回の続きとなります。

 

C  4(加数)を分解して10を作るやり方

 

 

 

 

 

 

もっとも一般的なやり方で、「7はあと3で10」「4を3と1に分解」「10と、あと1だから11」というように、「7+4」を「7+(3+1)」「(7+3)+1」「10+1」と操作していきます。ただし、この場合は『10までの合成と分解』が理解できている必要があるため、前回紹介したようなやり方よりもハードルが上がります。

 

D 5のまとまりをつくるやり方

 

 

 

 

 

 

その他に、「5のまとまり」を重視して、「7を5と2に分ける」「4はあと1で5」「2を1と1に分解」「5が2つと、あと1だから11」という考え方もあります。これだと、『5までの合成と分解』が理解できていれば計算することができます。「7+4」を「(5+2)+4」「5+(1+4)+1)」「5+5+1」と操作していきます。手続きとしては、煩雑になるでしょうか。順を追った処理が得意な子であれば、やりやすいかもしれません。

 

前回紹介したような、「指を使う」「ドットを書く」といったやり方は、算数科の内容を積み重ねていくということを考えると、推奨しにくいところがあります。しかしながら計算をすることの目的が『自分で答えを出すことで、自信をつける』ということだったり、『「計算だけ」がどうしても苦手』だったりすればどうでしょうか。子どもによって、時と場合によって、適切な繰り上がりのやり方は変わってきます。無理に自分で計算せず、計算機を使うことが適切である子もいるでしょう。

 

大人になってしまうと20までの加減算や九九は暗記してしまい、自分自身が「どうやっているのか」を意識しにくくなります。しかしながら繰り上がり一つを取り上げても様々なやり方があり、子どものそれまでの学習の積み重ねや得意不得意を踏まえて選択していくことになります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

64 繰り上がりの支援 その1

今回は教材そのものではなく、支援の仕方を『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として紹介していきます。10をこえる足し算、「繰り上がり」の話になります。

 

例えば、「7+4」という問題があった場合、答えは「11」になります。この答えに至るためには、いったいどのくらいのやり方があるでしょうか?

A 指で数え上げる

 

 

 

 

 

 

B ドットや〇を書いて数え上げる

 

 

 

 

 

 

 

これらのやり方で、「答えが出る」ことに間違いはありません。しかしながら正確に答えが出るか? その後の学習の積み上がりは? といったことを考えていくと、どうでしょうか。特に身体の動きにつまずきがある子の場合、「正確に数える」こと自体が困難であることがあります。数えながら指を動かしていくうちに、どうしてもずれていきやすいのです。

(本校特別支援教育コーディネーター)

63 アリスのティーパーティー

今回紹介するのは、本校のオリジナル教材「アリスのティーパーティー」です。長年使用されている教材になります。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として紹介していきますが、場合によっては「回転しながら文字を読む」といった目的でも使っていけます。

 

遊園地における、いわゆる「コーヒーカップ」と似通ったコンセプトの教材です。安定した土台と、回転する上部に分かれていて、座位が取りにくい子どもでも、安全に取り組むことができます。「前庭感覚」を楽しむ教材です。

 

 

 

「前庭感覚」というのは、頭の傾きや、動きをとらえる感覚です。「頭の傾き」や「頭の動き」というのは生物にとってとても重要な情報ですので、これをとらえる「前庭感覚」というのは、かなり早くから子どもに備わってきます。

しかしながら「前庭感覚」とひとことで言っても、実際にはいくつかの感覚の集合体となります。たとえば、大人の中でも「ジェットコースター(加速)の得意不得意」「コーヒーカップ(回転)の得意不得意」「絶叫遊具(落下)の得意不得意」など、千差万別のはずです。

加速は好きだけれど落下系はどうしてもだめだとか、回転だけはどうしてもだめだとか、色んな人がいます。子どもも同様で、ブランコ(加速)は好きだけれどトランポリン(落下)は苦手だとか、回転遊具は好きだけれど車いすの急発進は苦手だとか、色んな子どもがいます。中には、エレベーターのふわりとする感覚がどうしても苦手だったり、足が地面から離れるだけでもものすごく怖くなったりする子もいます(重力不安)。仰向けになることでも不安になりやすい子がいます。

 

今回の「アリスのティーパーティー」は前庭感覚の中でも、「回転」にアプローチする教材となります。なお、「アリスのティーパーティー」の名称は、上部のタライに「不思議の国のアリスの絵がプリントされていることに由来します。

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

62 ハンドスピナー

今回紹介するのは、市販品の「ハンドスピナー」です。大好きな子どもも多いかと思います。該当する発達のステージはこの教材を使用する目的によって変わるのですが、今回は『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として紹介していきます。

 

長時間回転し続けるハンドスピナー。じっと見入っている子どもも多いのですが、どうしてなのでしょうか? そもそも「見る(視覚)」というのは難しい感覚のはずです。㊼で紹介しましたように、子どもが最も気づきやすいのは「前庭感覚(揺れ・傾き・加速・回転)」「固有感覚(力の入り具合、関節の曲がり具合)」「触覚」のはずです。

 

 

「見てわかる」というのは難しいことです。なのに、多くの子どもがハンドスピナーを好きですし、ドアの開閉が好きな子もいます。TVの番組や、タブレットの映像が好きな子もいます。

 

これは「見る」といっても、見ることの働きが「色や形を見分ける」ことと、「光や動きを感じる」こととでは、大きく違うからです。子どもが好きな視覚情報というのは、多くは「光っているもの」「動いているもの」になるでしょう。実際のところ、「色や形」と「光や動き」とでは、目の中でも使っている部分が違います。「色や形」を見ているのは、眼球の中心のほんの少しの部分で、『中心視』と言います。「光や動き」を見るのはその他の周辺部分で、『周辺視』と言います。見ることの学習は、光や動きに気づくことから始まり、色や形を見分けることへと進んでいきます。

 

 

 

 

 

 

 

中心視と周辺視とでは、得意・不得意があります。大人はそれを自在に切り替えていて、キャッチボールをするときなど、物の動き全体を捉える必要があるときには周辺視を、パズルをするときなどには中心視を使っています。特に文章を読むときには、全体を大まかに捉える周辺視と、個々の文字を見分ける中心視を円滑に切り替える必要があります。

 

また、すごく暗い星を見る時などには、目の中心で見ようとしても難しくて、目の端の方で見たほうが見えやすいということがあります。「光や動き」を捉えやすいのが、周辺視の特徴だからです。

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

61 文字を読み上げるまでに その3

前回の続きとなります。文字面で「『これ』は何ですか」という問いに答えられて、「読み上げることができた」と言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

ただ、ここで注意したいのは、「読めなかったとき」です。ここまでの学習で「絵を見て『か』と言うこと」「身振りを見て『か』と言うこと」はできているはずです。ですので、読めなかったとしても、カードを裏返して絵を見たり、先生がやる身振りを見たりすれば、なんと読むのかを思い出せるはずです。

 

 

 

 

 

 

ところが、実際の場面ではどうでしょうか。子どもが思い出せていないとき、子どもが思い出す前に「『か』でしょう!」と大人が言ってしまい、それを聞いて子どもが「か」と言っていることはないでしょうか。それでは耳で聞いて同じように言っているだけであって、「文字を読み上げている」とは言えません。

 

ポイントとしては、「『か』と最初に言ったのが誰か」ということになります。実は大人が最初に言ってはいませんか? 子ども自身が「どう読むのか」を思い出すことが何よりも大切で、それを可能にするために身振りなり、絵なりといった、読み方を思い出すためのヒントをたくさん学習していくわけです。

 

文字を読みあげるためには、それぞれの子どもに応じた、色んな学習のやり方があります。59~61では、それらのやり方の一つを例として紹介してきました。

 (本校特別支援教育コーディネーター)

 

60 文字を読み上げるまでに その2

前回の続きです。絵の面で確実に選択できるように学習していきます。「身振り+音声」での提示でできるようになったら、「音声だけ」「身振りだけ」の提示でも選択できるように学習していきます。

 

 

 

 

 

 

また、絵の面を見て「これは何ですか」と聞かれて読み上げるということも行っていきます。この時点では、文字を読み上げているのではなく、絵を見て読み上げるので十分です。発語が出にくい子どもの場合、絵を見て身振りを行っていきます。

 

 

 

 

 

 

絵の面で「身振り+音声」「音声だけ」「身振りだけ」のいずれでも確実に選択できるようになったら、カードを裏返して文字の面を使っていきます。ここでも「身振り+音声」「音声だけ」「身振りだけ」の順を追って学習していきます。

 

 

 

 

 

 

ここで何よりも大事なのは、「子どもが自分で正誤を確認できる」ということです。「『う』はどれですか」と聞かれて、間違ったカードを選んだとしても、カードをめくって絵の面を見れば合っているかどうかがわかります。ここで、いよいよ文字の面を一枚ずつ見て「『これ』は何ですか」と聞かれて読み上げるということを行っていきます。これができてはじめて「文字を読み上げることができた」と言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

(本校特別支援教育コーディネーター)

59 文字を読み上げるまでに その1

単語の意味を取る前に、まずは文字を読み上げます。今回紹介するのは、53から55にかけて紹介した文字カードを駆使した、文字の読み上げの教え方です。およそ『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として使うことを想定しています。

 

文字を読み上げるためには、どんな基礎・基本の力が必要になるでしょうか。まずは、「『あ』と『め』、『す』と『む』、『れ』と『ね』など似通った文字を見分ける力」が必須となります。㊸で紹介した細部視知覚のこととなります。①で紹介した形態構成で言えば、4~6分割くらいのパズルはできていてほしいところです。

 

 

 

 

 

 

次に、そもそもの「わかる力」「イメージする力」の育ちとなります。目途としては、相手の身振りをその場で模倣したり、大小を比較できたりするくらいの力です。

 

その他にも、しりとりや「うま→まう」「うし→しう」など単語を逆に言うときに使う、日本語の一音ずつを捉える力(音韻意識)。物事を記憶する力などが必要になってきます。また、日ごろ繰り返し使っている名前カードや日課カードなどを読み上げていることなども、「そろそろ一文字ずつを勉強していく時期」のタイミングとなってきます。逆に言うと、いくら字を勉強してもなかなか身に付きにくいという場合、ここにあげたどこかの力がつまずいているのかもしれません。そういう時は、いったん基礎・基本に戻って学習してみるとよいのではないでしょうか。

 

では、いよいよ文字カードを使っていきます。最初は、絵の面を並べていきます。

 

 

 

 

 

 

「『あ』はどれですか?」「『い』はどれですか?」と身振りを交えて発問します。これは文字を学ぶための基礎・基本ができていれば、選択できるはずです。逆に言うと、これができなければ文字を学ぶのはまだ早い、ということになるのではないでしょうか。

 (特別支援教育コーディネーター)