2020年7月の記事一覧
83 数量の取り出しの教材 その2
前回の続きになります。これまでも繰り返しお伝えしてきましたように、「できた」「できない」を子供自身が確認できるという状況を作っていくことが重要となります。教員が「合っている」「合っていない」を教えていくと、子どもは教材ではなく、教員の顔色を見て正誤を判断するようになってしまいます。
例えば、ということで手軽に用意できるのが、百円均一の店で売っている鶏卵のホルダーです。中身の、黄色い部分だけを使うことが多いです。このホルダーは10個入りであることが数の学習に向いていて、子供は取り出した具体物をホルダーに置いていき、数量を確かめます。
一定の数量を繰り返し取り出す、という学習も行います。毎回「いち、に、さん」と数えながら数量を取り出しているのでは十分に身についているとは言えず、数えるまでもなく数量を捉える力を、手の感覚として身につけていきます。
いずれにしろ、「3取って」と言われながら4つ掴んでしまった場合、全部置きなおして最初からやり直すのではなく、手の中にある具体物を1つだけよける、といった力が重要となります。
子どもの数量の感覚は比較的3までは身に付きやすいのですが、4以上となるとなかなか難しいことがあります。5以上の数量を感覚的に捉えるのは大人でも難しいので、6からは「5といくつ」という風に捉えるようにおぼえていきます。数量の5のまとまり、10のまとまりをつかむ力が、数の概念の中でも、特に重要な力となってきます。
そのため、さまざまな数量の中でも、特に「5を取り出す」力は大切です。石を取り出して5個ずつセロテープでまとめる、棒を取り出して5本ずつ輪ゴムでまとめるなど、「5」という数量の感覚を手でつかんでいきます。
76~78で紹介したように、磁石の反発を利用したやり方で、指定された数量しか入らない枠というものもあります。合っているのかどうかを磁石の反発という手ごたえ(固有感覚)が教えてくれるので、子どもが自分自身で答えを確かめることができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
82 数量の取り出しの教材 その1
80でも紹介しましたが、身体の動かし方につまずきがあると、耳を使って覚える「数唱」や「九九」を唱えることはできても、その数がどのくらいの量なのかということを感覚的につかみにくい、ということが起きやすくなります。「百まで数えられる」「九九が言える」けれど、たくさんの具体物の中から「3取って」「4取って」等と言われると困ってしまう、といったことです。今回はそんな時に用いる教材を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
数を学ぶ前には、大きさ、長さ、高さ、重さ、冷たさなどを分け、比較し、順序付けるといったことを丁寧に行っていきます。そのうえで、「〇個取って」と指定された数量を取り出すような学習に進んでいきます。
また、そもそものところとして、カードを使って数量の「〇」と「〇〇〇」を見分けるといった学習もあります。数量も大小あたりと同じで、分け、比較し、並べます。
そしてその中に数字や数詞をまぜこんでいき、数の概念を整えていくということも行います。
そして数量の取り出しを行います。やはり、⑭で紹介したストーンアイスキューブが手になじみやすいでしょうか。百円均一のお店で、4個セットで販売されています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
81プリント教材とその活用(かずの学習のプリント その2)
前回の続きとなります。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として用いることを想定しています。
足し算、引き算といったプリントも、数字を扱うだけでなく、数量を織り交ぜていきます。こうすることで、数字の背景には数量があるのだという数の感覚を高めていきます。
また、このように、ただ単に式の答えを出していくだけでなく、一工夫していきます。「先生の数」など「あれ?」と子どもが考え込む要素を入れていきます。答えは1つではありません。他にも、「7」と「いまのお腹のすき具合」や、「5」と「先生の怖さ」とかを比較したりしてみても面白いかもしれません。様々なものを数に置き換え、考えることを学んでいきます。
また、これらのプリントに取り組むに際しては、数字を書いた磁石を置いていく、該当する式の上に磁石を置いていくなどして、子どもの負担を減らしていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
80プリント教材とその活用(かずの学習のプリント その1)
今回は、様々な「かずの力を育てる」プリント教材を紹介します。『Ⅲ言葉やイメージを広げていく際の教材』『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として用いることを想定しています。
「かずの力」と言いますが、数の概念というのは
・12345…という「数字」
・イチ、ニ、サン、シ、ゴ…という「数詞(数詞を順番に言っていくのが数唱)」
・〇 〇〇 〇〇〇 〇〇〇〇…という「数量」
この3つから成り立っています。数字を数詞に、数詞を数量に、数量を数字に、といったようにこれらを相互に変換できてはじめて「数の概念が成立している」と言えるのですが、身体の動かし方につまずきがある子の場合、どうしても「物の見えにくさ」や「操作経験の不足」があることから、「数字が読めたり、数唱ができたり」していても、数量の理解が進みにくいということがあります。
そこで「4個取って」「3個取って」といった数量の取り出しの学習を行っていくのですが、例えば、ということで以下のように特定の数量を〇で囲んでいくといった方法もあります。
また、「多い/少ない」を学習していくことも重要です。この時「数量同士」「数字同士」を比較していくだけでなく、「数字と数量」「数字と数詞」「数詞と数量」を比較していく中で、それぞれが相互に変換できるということを学んでいきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)