2020年10月の記事一覧
96 位置把握の教材(ステップ可変)
⑬でも紹介した位置把握の教材です。図形の合同や相似の見分け、黒板を見て書き写すこと、文字や数量を見分けることなど、さまざまな学習の基礎となっていきます。およそ、『Ⅱ見分ける学習の教材』として用いることを想定しています。
筋疾患があるなど、「教材を持ち上げにくい」子供のために作成してある教材です。各種ペグを「すべらせて」入れることができるようになっています。土台の枠、色の台紙、上の枠という3つのパーツからなります。85や87の教材の、磁石を省略してあるようなものです。作成方法はほぼ同じになっています。
百円均一のMDF材(A3サイズ)を材料としており、土台の枠はそれを半分に切ったもの(A4サイズ)を使用しています。また、上の枠はさらにそれを半分に切ったもの(A5サイズ)です。
上の枠と台紙を交換することにより、難易度を加減することができます。たとえば、上の枠を交換して選択肢を減らすことで、難易度を下げます。
逆に、オールカラーだった台紙を「白黒」あるいは「黒一色」に変更することにより色というヒントをなくし、難易度を上げます。このように難易度を加減する中で、今の子供にとってちょうどよい難易度を保っていきます。
上の枠の交換で、数量の学習や、弁別用、形態構成の枠といったことに用いることもできます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
95 筒入れ課題のバリエーション
「物を入れる」ということは、あらゆる学習の基礎になってきます。「入れる」から「はめる」「置く」「合わせる」等へ。箱に入れる、缶に入れる、くるくるチャイムに入れるなど様々な「入れる」活動がありますが、今回は「筒」に絞って紹介していきます。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』となります。
「筒」ということでは百円均一の店で売っているパスタ入れでも麦茶入れでも何でもよいのですが、安定した土台を用意しやすいこと、入れる具体物にちょうど合うサイズを指定できること、透明度が高いことから、アクリル製のものを使うことがあります。
※アクリルにも、衝撃で割れやすいというデメリットがあります。
現在、校内に存在するアクリル筒の種類は5種類ほど。
内径15ミリのもの、20ミリのもの、25ミリのもの、45ミリのもの、55ミリのものです。それぞれ「ちょうど合う」ものがあって、内径15ミリでは単3電池が(空気抵抗を受けて)ふわりと入っていきます。内径25ミリでは、単2電池が合います。45ミリではくるくるチャイムのボールやゴルフボールが。55ミリでは大きめのサイズのステンレス球がちょうど入ることになります。また、キャラクターの指人形などを弁別していく際にも、程よいサイズ感となります。
これらのアクリル筒は大きなホームセンターにもなかなか売っていなくて(売っていても高さが合わないことが多々)、業者に発注しています。詳しくは本校コーディネーターまでお問合せください。
(本校特別支援教育コーディネーター)
94 一対一対応(数の保存概念) その4
前回の続きになります。具体物の「多い/少ない/同じ」の学習を丁寧に進めていくこと、そしてそれを確かめる方法として一対一対応を身につけていくことが、その先の数詞や数字を駆使した学習につながっていくことをお伝えしてきました。
一対一対応をするということは、牛でもねずみでも、大きい羊も小さい羊も、好きなキャラクターも嫌いなキャラクターも、そんなことは関係なく、「一つのものは一つ」として「数の観点からすると等価値」であるという抽象的な思考ができることでもあります。
「〇〇マンは大好きだから、こっちのほうが強い!」「牛さんの方が大きいから、こっちがすごい!」といった感覚では、数量同士の比較、一対一対応はできないわけです。色も形も大きさも好きかどうかも関係なく、「数」ということだけに注目することですので、かなり難しい思考になります。ですので、基本的には小学校1年生の算数は具体物同士の一対一対応から始まります。それができてはじめて、ドット(・)に置き換えたり、数詞(イチニサン)に置き換えて比較したり、数字(123)に置き換えて比較したりということができるからです。
よく見るとどのフィギュアもみんな違うのですが、数の観点からすると「みんな等しい」。この思考を育てます。
「数『だけ』に注目する」というのはかなり難しい思考です。そこにたどり着くために、これまでに紹介してきたようなマトリクスや弁別といった学習を通して「色に注目する」「形に注目する」「大きさに注目する」といった練習をしていくわけです。
また、一対一対応を学ぶためには、そもそも「動かしても、数は変わらない」という数の保存概念が成立していないと困難です。具体物を動かして比較しますから。
これが成立していないとき、子供は「これいくつ?」と言われて「1、2、3、『3』」と答えたとしても、その位置を変えてもう一度聞かれたときに、また「1、2、3」と数えなおしてしまいます。身体のつまずきがある子供の場合、公園での砂場遊び、積み木遊びといった経験が不足しがちなことから、「動かしても量は変わらない」という感覚が身に付きにくくなります。それが算数の学びにくさといったことにつながっていくのですが、だからこそ、特別支援学校では教材を工夫し、内容を工夫し、一人一人の子供に合わせて授業を工夫していくことになります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
93 一対一対応(数の基数性) その3
前回紹介した一対一対応からのステップですが、身体の動き、特に手の使い方が苦手だと具体物を操作する経験も不足しがちです。具体物の量を比べたり、取り出したりといった学習が十分でないままに数字の学習を進めていくと、どういうことになるでしょうか。
たとえば、ということで以下のような課題が難しくなりがちです。
「12の大きさはこのぐらい。では20の大きさはどのくらい?」
で20の大きさの丸を書いてもらいます。この場合、書くことの難しさから課題に取り組みにくいことがあります。そんなときには以下のような課題もあります。
「『8』はどのへん?」
これらの課題は、加減算をサクサクとこなしているようにみえる子供であっても、意外と難しいことがあります。数字の背景にある、量の感覚が十分に身についていないためです。具体物を使うような課題はとっくにクリアしている…と思いつつも、少しだけ振り返ってみて、具体物同士の「どっちが多い」の比較、「『4』と〇〇〇」「『5』とグループの友だちの数」といった数字と数量の比較なども復習してみてはどうでしょうか。
(本校特別支援学校コーディネーター)