2021年4月の記事一覧
121 書字をしやすくする教材
身体の動かし方につまずきのある子供にとって、「書く」ということは非常に難しい学習となります。運動の発達は首の座りといったことから進んでいき、肩、肘、手首、指(小指側から親指側へ)とだんだん身体の末端へと進んでいきます。指を上手に使えることで「書く」ことができるようになっていくわけですが、どうしても道具を握りこみがちで、自在に筆記具を扱いにくい子もいます。
⑫「トーキングエイドライト」のような機械を使っていく、という方法もあるのですが、「自分の名前は書いてみたい」という子供もいます。そのための道具には、写真にも写っていますように、様々な物があります。子供の手の様子、身体の動きによって使いやすい道具は一人一人異なってきます。基本的には細いものよりも、持ち手の部分にある程度の太さ、丸みがある方が持ちやすいという子供が多いようです。また、長すぎるものも扱いにくいことが多いようです。
特別な道具を使わなくても、「プリントの四隅をセロテープで机やホワイトボードに固定する」「すべり止めシートを使う」といった、ちょっとした工夫で書きやすくなることもあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
120簡単につくれるマトリクス
前回119で紹介したマトリクスは、かなり手間がかかったものでした。とはいえ教材は手間暇をかけることが目的ではありません。子供が使いやすければ、子供が学べればそれでよいのであって、教員が出来栄えに満足するために作るのではありません。今回はマトリクスを簡単に作る方法を紹介します。『Ⅱ見分ける学習の教材』となります。
百円均一の店を活用するとよいでしょう。色と形、3×3のものであれば、
・透明(あるいは白)磁石3個、赤・青・黄色の磁石4個ずつ
・動物や食べ物などのシール、3種類を4枚ずつ
・ホワイトボード
・油性マジックペン
・30センチ定規
があれば十分です。
(1)ホワイトボードに4×4の枠を書きます。
(2)磁石にシールを貼ります。
(3)並べます。
完成です。
子供によっては、これで十分に学習することができます。必要に応じて、「すべらせる動きで操作できるようにする」「手で握りこめるサイズにする」といった要素を加えていったのがこれまでに紹介してきたものです。
支援は多すぎても、少なすぎても「その子」には合いません。その子一人一人に合った教材教具を工夫していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
119不随意運動が入りやすい子のためのマトリクス
マトリクス(属性分類の表)については「②二次元属性分類(色と形のマトリクス)」「㉓色と形以外のマトリクス」「㉕三次元属性分類(マトリクス)」「114栄養素のマトリクス」で紹介してきました。今回は身体を動かそうとすると自分の予期しない動きになってしまう子供たち、すなわち不随意運動が入りやすい子供たちのが扱いやすいように加工したマトリクスを紹介します。『Ⅱ見分ける学習の教材』として考えています。
マトリクスに用いるペグは、50mm×50mm×5mmのMDF材を3枚重ねて、厚みが15mmになるようにしています。厚みが5mm、10mmでは操作がしにくい子供も、15mmになるとだいぶ扱いやすくなります。また、ペグには磁石を内蔵しています。適度な重みがついて操作がしやすくなるほか、枠に鉄板(ホワイトボードの中身)を入れてあるために貼りつき、ふとした子供の動きでペグが枠から外れないようになっています。
枠自体も1つ1つの穴を電動糸鋸でくり抜いてあり、操作しやすくなるように工夫しています。
(本校特別支援教育コーディネーター)
118お金を数える/支払う教材
子供にとって身近なお金は硬貨であり、硬貨は6種類あります。1円玉、五円玉、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉です。なお、五円玉だけは漢数字しか書いていなくて、算用数字の表記がないため、子供が戸惑いやすいことに注意が必要です。そのため、学習に使用する五円玉に算用数字の「5」をシールで貼ってわかりやすくすることがあります。今回紹介するものはお金の桁をそろえるためのもので、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』となります。
MDF板に3か所の穴を開け、ラミネイト加工した黒画用紙を挟んだうえで、もう一枚の板で底をふさいでいます。また、500円と100円玉、50円と10円玉、五円と1円玉がセットになるようにイラストをつけています。
使用方法としては、
・硬貨の弁別を行う
・硬貨を数える
・教員が取り出してみせたのと、同じだけの硬貨を取り出す
・〇百〇十〇円、といったように教員が言っただけの硬貨を取り出す
・おつりが出にくくなるように硬貨を取り出す
といったことが考えられます。
実際のところ、身体の使い方が苦手な子供たちが、お店で硬貨を出すという場面は想定しにくいところがあります。財布をそのままお店の人に渡す、お札だけを出す、クレジットカードやプリペイドカードを使用するなど、様々な会計の仕方があるでしょう。どんどんとキャッシュレスの時代になってきています。
一方で、スマートフォン上の数字だけを見ていてお金の量的な感覚が身につくのか? 「あのお菓子なら2個、あのお菓子なら3個買える」「あと〇円であのおもちゃが買える」だとか、そういった感覚が身につくだろうか? という疑問もあります。
硬貨を始めとする現金を扱うことは今後の時代の中で少なくなっていくのかもしれませんが、学校の中でじっくりと、その扱いになじんでおくことは必要なのではないでしょうか。
(本校特別支援教育コーディネーター)