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2021年6月の記事一覧

130棒と木枠での5と10の合成と分解

「数の合成と分解」は算数の学習の、非常に大きな基礎となる内容です。「5を2と□に分ける」「2と3で□になる」。これらを頭の中で自由自在に思い浮かべ、操ることができてはじめて足し算や引き算を使いこなしていくことができるようになります。「数の合成と分解」の理解が十分でないと、計算にあたって指を使ってしまうというようなことになりがちです。

数の合成と分解の理解にあたっては、小さいころからおもちゃなどを使ってたくさん遊んだり、砂場で砂を分けたり、合わせたりした経験が土台となっていきます。また、目で空間を捉える力も重要になっていきます。身体の動かし方につまずきがある子にとってはその両方ともが育ちにくく、結果、数の合成と分解の理解が難しい、さらには算数科の内容の習得全体に影響してくる、ということがあります。

 

 

 

 

 


今回紹介するのは、5と10の合成と分解について、「長さ(連続量)」に置き換えることで直感的に捉えることができるようにしている教材です。長さの棒は市販品で、枠だけを教員が作っています。

「2と4で『5』になるのか?」「5と4で『10』になるのか?」といったことを、「枠にはまる/はまらない」「空間が余っている/ピッタリ」といったことで、手ごたえで確認することができます。主として、『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。

129ひもの結び方の教材

「くつひもを結ぶ」というのも、非常に難しい課題です。ひもを結ぶために中腰になるということ自体が難しいわけですが、それは椅子に座るなどすることで補うことができます。また、身体の動かし方が難しい子が何から何まで自分で行う必要はなく、「人に頼む」というのも重要な力です。そもそもくつひもを必要としない靴を選ぶ、ということも選択肢としてあがってきます。

 

 

 

 

 

 

とはいえ、ひもの結び方を実際に練習していくならば…というのがこの教材です。板目表紙で靴を作成し、子供が操作しやすいようにしています。

ここでは靴ひもは一色ですが、場合によっては二色に分けて、ひもとひものの空間関係がわかりやすいようにすることもあります。支援は少なすぎず、多すぎず、その子一人一人に合わせていきます。

また、ひもの代わりに、モールなど硬めで、形が変化しにくい素材を使うこともあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

128ひらがな学習用の枠

「126線学習用の枠」では、円、三角、十字といった、様々な線の学習に向けての教材を紹介しました。今回は、それらの線の学習の総決算、ひらがなという複雑な線を捉えるための教材を紹介します。『Ⅳ文字や数を身につける際の教材』として考えています。

ここでは、「り」と「よ」という2つの文字があります。どちらの文字の方が捉えにくいのか、ということだと、これは「よ」の方が難しいという子供が多いでしょう。「り」は2本の線がそれぞれ独立していますが、「よ」は同じく2本の線でできているものの、2本の線が一点で接し、さらには途中でぐるりと回る中で交差していきます。

 

 

 

 

 

 

他にも、「あ」「め」「ぬ」「す」「れ」「わ」「ね」など、子供が捉えにくいひらがながあります。これらの複雑な線による文字は「字を見る」だけではなかなか捉えることが難しく、「書く」こと等を通して学んでいくことになります。しかし、身体の動かし方が難しい子どもたちにとって、「書く」ことこそとりわけ難しいことになります。立体的な枠を使い、最初は「指を使ってペグを移動させる」ことから始め、「棒を使ってペグを移動させる」など、書くことへ向けた学習を進めていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

127各種スイッチ教材と因果関係の理解

「48積み木倒し」「72押したら鳴る教材」でも物事の因果関係の理解に向けた教材を紹介してきました。因果関係の理解というのは、「ボタンを押したらブザーが鳴る」「積まれている積み木を触ったら倒れる」といったように、「何かをしたら」「何かが起きる」ということに見通しが持てるということです。

 

 

 

 

 

 

因果関係の理解は様々な教材を通して学ぶことができますが、今回紹介するのはスイッチによるものです。スイッチ教材といっても、様々なものがあります。前半の「何かをしたら」ということについては、レバー式のもの、ボタン式のものなど。また、「何かが起きる」ということについては、「ぬいぐるみが動く」「扇風機が回る」「音が出る」など。それらの組み合わせにより、子供にとっての分かりやすさが変わってきます。『Ⅰ手や目を使う基礎を整える教材』として使うことを想定しています。

例えば「赤外線センサーで水が流れるトイレ」があるとします。これもある意味スイッチ教材の一種であるわけですが、子供にしてみると赤外線センサーよりも、レバーを倒したり、ボタンを押したりした方が「自分が何かをした」ということに気づきやすいでしょう。したがって、「赤外線センサーで水が流れるトイレ」などは因果関係の理解がわかりにくいということになります。

また、ボタンを押すようなスイッチだったとしても、その結果が「ボタンを押して10秒後に、ぬいぐるみの目が一瞬だけ動く」といったものだったらどうでしょう。これもまた、子供にとって因果関係の理解がわかりにくいということになるでしょう。

「何かをしたら」「何かが起きる」ということについて、子供にとってわかりやすいものから、徐々に学習を積み上げていきます。それらの小さな見通しの積み重ねが、毎日の生活の中での、見通しを持った行動につながっていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)