ブログ

2021年10月の記事一覧

148単語、文指導のステップ その2

前回の続きとなります。一文字ずつの読みを獲得した、その後です。

一文字ずつの読みから二文字単語の読み取り、三文字単語の読み取り、四文字単語の読み取り…と学習は進んでいきます。大人にとってはなかなか実感しにくいところですが、子どもにしてみると、初めて読む単語ばかりです。ですので、最初は「うし」「うま」「かめ」「いぬ」「ねこ」など種類を限定(ここでは動物)したうえで、二文字単語、なおかつ濁音や半濁音(「¨」や「°」がある字)を伴わないものを選んで学習するといったように絞って学習すると、子どもが単語の内容を予測しやすくなり、学びやすいことが多いでしょう。

子どもは最初のうちは、文字から直接意味を取ることは難しく、「う」「し」。「う」「し」。「う」「し」。「う」「し…」と何度も繰り返し読み上げ、自分で言った音を、耳で聞いて意味を取っていきます。このあたり、発語が難しい子どもが、文字の読み取りも難しくなっていくことの要因の一つとなります。

 

 

 

 

 

 

特定の種類の二文字単語の読み取りができるようになったところで、食べ物など他の種類の名詞、動作語などを扱っていきます。また、濁音や半濁音、三文字単語なども取り扱い、読み取れる単語の幅を広げていきます。友だちや家族、教員の名前、天気の名称、日課の名称などが、子どもが「読んで」「分かって」嬉しい単語でしょう。

 

 

 

 

 

この頃、プリント学習なども設定できるようになっていきます。〇をつけることなど書字が難しい場合、ホワイトボードにプリントを貼りつけて磁石を置くことで選択したり、「144〇×でのプリント回答システム」のようにプリントのフォーマットを定めて、枠を用意したりするとよいでしょう。

ここからさらに、二語文の読み取り、三語文の読み取り、文を読んで5W1Hの質問に答える…といったことに進んでいきます。

 

 

 

 

 

なお、どうしても単語の意味が読み取りにくい場合、「こしとくひらがなアプリ」を使うと、子どもがその単語を見てアプリに打ち込み、音声として再生して「耳で聞く」ことで、意味が取れるということがあります。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

 

147単語、文指導のステップ その1

143回では「〇×でのプリント回答システム」を紹介しました。今回は、「53~55文字を読み上げるためのカード」などを用いて一文字ずつを読み上げられるようになってから、簡単な文を読み取れる、あるいは「145こしとくひらがなアプリ」などで文を作れるようになるまでの学習を追っていきます。

「子どもに発語があり」「一文字ずつを読み上げられれば」それで即、作文ができるようになるかというと、そうはスムーズにいかないことが多いです。そこには「文字を読み上げる」ことと「文字を読んでわかる」のは違うということ、「文字を読むこと」と「文字を書く(打つ)」ことは違うということ、という2つの視点があります。

 

 

 

 

 

 

「58 文字の意味を取る教材」でも紹介しましたが、えてして起こりがちなのが、子どもが「りんご」の単語カードを「り」「ん」「ご」と一文字ずつ読み上げたとき、教員が「そうだね、『りんご』だね」と言っているケースです。この場合、子どもは自分自身で「読んだから」頭の中にリンゴのイメージが浮かんだのではなくて、教員が口にした言葉を「聞いて」イメージが浮かんでいる、ということがあります。すなわち、良かれと思って教員がやっていることが、子どもの学習の妨げになっているというケースです。

これを防ぐためには、教員が「りんご」と言ってしまうのは避け、「そうだね、じゃあ『それ』って」どういうもの?」といった発問をする必要があります。「うし」「はさみ」など身振り化できるものであれば、「そうだね、じゃあ『それ』をやってみて」といった問いもありえます。そうしてみると、意外なくらい、子どもは単語を読み上げていても、その意味がわかっているとは限らないということがわかります。十回ぐらい同じ単語を繰り返し読み上げてようやく意味としてつながったり、「動物だよ」「食べ物だよ」といったヒントがあってはじめて意味としてつながったりする子もいます。

教員の言葉を「聞いて分かる」力と、自分で「読んでわかる」力との間には、格段の開きがあります。「読む」となると、一文字ずつならわかっても、単語になったとたんに意味としてつながらなくなる子どもがいます。また、「うし」「うま」のような二文字単語なら意味として捉えることができても、「あひる」「きりん」などのように三文字単語になったとたんに難しくなる子もいます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

146こしとくひらがなアプリ

「こしとくひらがなアプリ」については、既に本校HPで紹介してきました。この「本校の教材教具」コーナーにおいて、あらためて紹介させていただきます。

ひらがなを学習するための教材としては、「53~55文字を読み上げるためのカード」「59~61文字を読み上げるまでに」「110文字ブロックの改良」「111文字入力装置の改良」において、「文字カード」「文字ブロック」「文字入力装置」を紹介してきました。

さらに改良を加えた教材が、今回の「こしとくひらがなアプリ」です。文字入力装置の改良を行った際、文字盤にラミネイト加工した紙を挟み込んだ結果、文字の入力に相当な指先の力を必要とするようになってしまったため、指先で触れるだけで操作できるように開発しました。原案・イラストが本校教員で、プログラミングは保護者が行っています(他の子たちにもぜひ使ってほしいとのことですので、今回紹介しています)。

 

 

 

 

 

 

 

音声による文字の読み上げ機能、単語の登録機能もあります。

なお、同じ絵を使った「文字カード」「文字ブロック」「文字入力装置」「アプリ」を紹介してきましたが、それぞれの良さ、使いにくさがあります。特にスマートフォンやタブレット端末の画面は、不随意運動の入りやすい子供にとっては思うように操作しにくく、アナログの教材の方が使いやすいということがあります。一方で筋疾患があり、アナログの教材が操作しにくい子にとってはスマートフォンやタブレット端末といったデジタル機器を駆使することで、表現の可能性が広がりやすいでしょう。いずれにしろ、教材ありきではありません。アナログの教材を使うから良い支援というわけでも、情報端末を用いるから良い支援というわけでもありません。あくまでも一人一人に合った支援を追求していきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

145はさみの補助具 その2

「142はさみの補助具」で紹介したものは、基本的にカスタネットばさみなどを使うお子さん、両手を別々に動かすことが難しいお子さん向けのものでした。

 

 

 

 

 

 

今回紹介するのは、自分で紙を持ってはさみを操作する子向けの補助具です。紙を自分でもつとき、やはり難しいのは紙がぐにゃぐにゃになってしまって、はさみでうまく切りにくいという状況です。

ここでは、紙を2枚の木の間にはさみこめるようにすることで、紙の張力を保ち、はさみの刃が立ちやすいようにしています。また、板を裏返すことで、右利きの子も、左利きの子も使えるようになっています。なお、実際には2枚の板ではさむだけでは紙の張力を保つことは難しく、セロテープも併用しています。

(本校特別支援教育コーディネーター)

144〇×でのプリント回答システム

⑩「A3のホワイトボード、磁石」でも紹介しましたが、プリントをホワイトボードに固定する(セロテープ等で)ことにより、子どもは学習しやすくなります。こうすることで「失敗することを嫌がる」子どもにとっても学びやすくなります。なぜならば、磁石を置くことで選択していく中で、答え合わせの際に教員に「〇」だけをつけてもらうことができるからです(間違っていた場合は磁石をずらすだけでよい)。プリントに、決して「×」がつきません。

 

 

 

 

 

しかしながら問題は「毎回セロテープでプリントの四隅を固定するのが煩雑」ということです。また、授業中にテープカッターを子どものそばに置くのも怖いものです。さらに言えば、不随意運動が入りやすい子どもの場合、動かしているうちに磁石がずれてしまいます。

 

 

 

 

 

 

そこで編み出したのが、プリントのフォーマット(問題文の位置、〇×の位置)を定めたうえで、上から厚紙や板をかぶせるだけでプリントを固定できるシステムです。土台はA3大のMDF板を重ねてくり抜き、ブラックボードパネルの鉄板をはさみこんであるものです。鉄板をはさむのは、磁石を使えるようにするためです。

 

 

 

 

 

 

また、上にかぶせるものは、板目表紙で作ってあるものと、木で作ってあるものがあります。最終的には木で作るほうが速いし、強度があるかと思われますが、板目表紙であればカッターを使って作成できます。なお、土台は新たにつくったのではなく、これまでに紹介してきたものの流用となります。A4サイズの板が入る規格なので、応用することができます。他の教材もそうですが、10センチ四方、A4サイズなど、教材の規格が統一されていると、様々な場面で教材を応用させていくことができます。

(本校特別支援教育コーディネーター)