2022年1月の記事一覧
161パズルボックス
158回でも「可変型はめ」を紹介しましたように、形態構成、位置把握、マトリクスなど、これまでいくつもの「空間を捉える」学習の教材を紹介してきました。しかし、それらはあくまでも平面、縦×横の2次元のものでした。
このパズルボックスは、市販のものですが、縦×横だけでなく、そこに高さの要素が加わるため、3次元の空間を捉える教材となります。2次元から3次元に変わるということは、子どもからすると、非常に大きな難易度の違いになることがあります。特に横になっていることが多く、身体を起こす機会の少ない子どもにとってはそれが顕著です。遠近感とか、高さといったものを捉える力は、やはり身体を起こし、教材教具をたくさん扱うことによって育っていきます。
それらの力は、算数科などの学習にも影響していきます。例えば左の図形は立体的な捉え方が育っていると、平面の図形でありながら立体的に見えます。しかしながら身体の動かし方が苦手な子どもの中には、どうしても立体に見えず、3つの四角系(正方形1つ、平行四辺形2つ)に見える、ということがあります。パズルボックスといった基礎的な学習を通して、目や手を育てることが、将来の学習を支えていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
160可変輪抜き
前回の続きとなります。159で紹介した輪抜きは、低くとも、高くとも、一方向でした。運動の開始から、終わる(輪が抜ける)までは一直線。運動の方向付けも一方向です。今回紹介するのは、分岐を伴う輪抜きです。
この教材は、上に向けて運動を起こした後、棒にそって途中で横方向に運動を切り替える必要があります。大人からすると当たり前のような気がしますが、子どもにとっては自分の運動を途中で切り替える、すなわち2つの運動をつなげるというのは、かなり難しいことです。
なお、輪抜きができたから何なのか。それが何につながるのか、という声も耳にします。これは例えば、「一方向の輪抜き」が「スプーンで食べ物を口に運ぶ」シンプルな運動に相当するとすれば、「二方向の輪抜きができる」ということは、「スプーンで食べ物をすくって、それを口に運ぶ」という、2つの運動をつなげる準備になっていくということを意味します。それらの「見通しをもった活動」の練習を、「輪を抜く」という目的がわかりやすい学習の中で行っているわけです。
なお、分岐する数は増えれば増えるだけ難易度は上がります。一方向、二方向、三方向と全部の教材を用意すればよいのですが、それも煩雑です。そこで、一つの教材で、難易度を自在に変えて、子どものそのときの状況に合わせられるようにしたのが以下の教材です。
塩ビパイプをつなげ、その場で難易度を変更し、分岐を増やせるようにしてあります。
(本校特別支援教育コーディネーター)
159長い輪抜き
輪抜き/輪通しの教材は、4回や73回で紹介してきました。今回紹介するのはそのバリエーションで、90センチの高さがあるものになります。およそ「Ⅱ見分ける学習の教材」として使うことを想定しています。
輪抜きはシンプルですが奥の深い課題で、その高さ、あるいは2方向、3方向といった分岐の有無により、難易度が大きく変わってきます。高さだけを取り上げても、高ければ高くなるだけ、難易度が上がります。これは「高くなれば、運動のコントロールが難しくなる」というのが難易度が上がる理由の一つではあるのですが、それだけではありません。以下の2枚の写真をご覧ください。
左の物は輪抜きの棒が低く、右の物は高くなっています。この場合、「抜く」という運動をすることにはどちらも変わりがないのですが、運動を始める位置(一番下)と輪が抜ける位置(棒の終端)の距離が違います。距離が違えば、時間もかかります。右側の輪抜きを実施するためには、そこまで自分の運動を持続し、方向づけるための「見通し/わかる力」「注意を持続する力」が要求されることになります。輪抜き課題は分岐の有無も重要な視点で、これは次回紹介します。
(本校特別支援教育コーディネーター)
158可変型はめ
難易度を調整できるようにした、型はめの教材です。ベースとなっている型はめパズルは市販のものですが、市販品そのものを使用すると「選択肢が多すぎる」「枠が浅すぎ、『はまった』という感覚がつかみにくい」「ペグを持ち上げなければならず、筋力が弱い子が扱えない」といった難点が上がってきます。
そこで、市販品のペグはそのまま使い、枠だけを新たに作成しました。土台となっているものは、前回と同様にA3大のMDF板を重ねて接着し、A4台にくり抜いたところに鉄板(ブラックボードパネルの中身)を挟み込んだものです。左側の枠は一体型、右側の枠はさらにひと手間を加えることで、〇△□といった選択肢の位置を自在に変えられるようになっています。およそ、「Ⅰ目や手を使う基礎を整える教材」から「Ⅱ見分ける学習の教材」として使うことを想定しています。
市販品をそのまま使うだけでなく、ちょっとした手間をかけることで、一人一人の子どもの「今の力」に合わせた難易度設定をすることができます。場合によっては、「〇だけの型はめ」にすることもできます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
157プリントの固定用枠
74~75回、80~81回等で紹介しましたように、プリント学習は、使い方によっては子どもとのやりとりを充実させる、非常に効果的な教材となります。しかし不随意運動が入りやすいなど手指の使い方が苦手な子どもにとっては、プリントがあちこちに動いてしまって扱いにくいということがあります。
そのため、「⑩A3のホワイトボード、磁石」「121書字をしやすくする教材」では、ホワイトボードにセロテープでプリントを固定する方法、プリントがすべりにくくなる道具といったものを紹介してきました。
しかしセロテープを毎回使うのは煩雑ということ、すべりどめの道具では磁石が扱いにくいといったこともあり、さらに工夫を加えたのが次の教材となります。
土台となっているものは、「144〇×でのプリント回答システム」で紹介したものと同じで、A3大のMDF板を重ねて接着し、A4台にくり抜いたところに鉄板(ブラックボードパネルの中身)を挟み込んだものです。
プリントを固定するために、上記のものと同じA3大のMDF板を半分に切ってA4サイズにし、その内部をさらにくり抜いています。なお、角の部分は斜めに切ることで、プリントが固定されやすくなりました。さらに教材の質を高めるならば、枠の四隅に強力磁石を埋め込むことで(ボール盤を使い、磁石のサイズぎりぎりの高さでくぼみを作る)、さらに強力にプリントが固定されます。教科書なども、ラミネイト加工したうえで固定することができます。
(本校特別支援教育コーディネーター)