2022年4月の記事一覧
173「その子ども」に合った数図の扱い
「数図」というものがあります。算数の授業の中で「数を一目でわかる」ようにしたもので、左上から「1、2…」となり、「5で折り返す」のが基本です。数字(123)数詞(いち、に、さん)とともに、数量を表すものとして算数科の学習の、基本中の基本の内容となります。
数図の学習の際には、表記された数量を読み取るだけでなく、「数字を見て数量を書き込む」「数詞を聞いて数量を書き込む」といったことも行われます。しかしながら、身体の動かし方が苦手な子どもにとっては「書く」ことが困難で、なかなか学習が進みにくいということがあります。シールを貼る、スタンプを押すということでも同様の学習に取り組むことが可能かと思われますが、ここでは磁石と、立体の枠(百円均一の店で売っている、卵ホルダーの中身)を使う方法を紹介します。
ここでは、「157プリントの固定用枠」を使用。ブラックボードパネルが底に敷いてあるため、磁石を扱うことができます。なお、教科書も冊子形式では扱いにくいため、各ページを切り離してラミネイト加工したうえで固定しています。書見台を使う方法もありますが、十分には本が開きにくいし、その上で磁石を操作したり、書き込んだりするのが難しいためです。
子どもは磁石を操作し、数図と同じ内容の操作を行っていきます。プリントに書きこむのであれば、子どもが操作した通りに教員が代わりに書き込みます。書くか、補助具を使うか。一人一人の子どもに検討していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
172「その子ども」に合った数ブロック
いわゆる「算数セット」には「数ブロック」が入っていることがあります。黄色と白で、磁石が内蔵されている、おなじみの教材です。小学校の低学年で用いられることが多いですが、身体の動かし方が苦手な子どもにとっては扱いにくさがみられることもあります。特に不随意運動が入りやすい子どもにとっては、1個1個の数ブロックが小さすぎることと、磁石の磁力の弱さがネックになりやすいようです。
そこで、百円均一のお店で売っている木片(30ミリ×30ミリ×15ミリ)にの上下にそれぞれ直径20ミリ深さ5ミリの穴を開け、磁石をボンドで固定したうえで黄色と白の紙を貼り、梱包用テープで巻きあげたものが上記の教材になります。適度な大きさと重さ、磁力があり、ホワイト(ブラック)ボードの上で使うことで、不随意運動が入りやすい子どもにとっては扱いやすい教材となります。
一方、重いものを持ち上げにくい、力が入りにくい子どもにとっては、従来通りの数ブロックの方が扱いやすいでしょう。学びやすい教材/学びにくい教材は子どもそれぞれによって異なり、それぞれの子どもに合わせた工夫を行っていきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
171「とまと」と「まとと」
「一文字ずつを読み上げる」ことができても、「単語として意味を取る」ことについては難しい子どもがいます。また、本HPで紹介している「こしとくひらがなアプリ」などを駆使して一文字ずつ打つことはできても、単語を思い浮かべ、それを打つことが難しい(多くは「きつね」が「ねつき」などと逆転する)子どもがいます。それらのつまずきの背景要因は子どもによりさまざまですが、「音を心の中で操作する力」すなわち「しりとり」や「〇のつく言葉の列挙」「単語の逆唱」などの際に用いられる、「音韻意識(日本語の一音ずつを意識し、操作する力)」につまずきがあるという場合が多いようです。
様々な支援が考えられますが、今回紹介するのは、その中でも「勝手読み」が多い場合。すなわち「ねずみ」と書いてあるのに、「ねず」まで行ったら「ねずこ!」と読んだり、極端な場合、「ねずみ」の「ね」だけ、あるいは「きつね」の「ね」だけを見て「ねずこ!」と読み取ってしまう子への支援です。
ここでは、「とまと」カードを5枚、「とまま」「まとと」など「トマトではない」カードを5枚、それぞれ用意してあります。それぞれの単語カードの裏には「〇」なり「×」なり、子ども自身が「『とまと』であったのか否か」を確認できるようにしてあります。教員と一緒に単語を読み上げながら、これが『「とまと」なのか?』とその正誤を確認していきます。
同じようなテーマで、プリント化することもできます。絵と、どこか一か所だけ間違っている単語を提示し、「どこが間違っているのか」「ほんとうは何なのか」ということを問い、正確に読み上げること、一文字ずつを意識することを促していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)
170さわってわかるひらがな
文字の学習は、これまでも様々な機会に紹介してきました。「目で見分ける」学習と、「音を聞き取る」学習とが合わさって、「文字を読む」ことができるようになっていきます。しかしながら身体の動かし方が苦手な子どもの中には目を使うことが苦手な子どもも多く、「あ」「め」「ぬ」、「り」「い」「こ」、「れ」「ね」「わ」といった各文字の見分けがつきにくい、といったつまずきが見られることがあります。
これらのつまずきに対する支援として、「目で見る」だけでなく、文字の形、とりわけ「す」「ぬ」「ね」のように複雑に線が交差する文字について、それらの線を「触って」確認できるようにする、といったことが考えられます。具体的には線の交差が実感できるように「モールで文字を作る」「粘土で線を作って文字を作る」といったことです。今回紹介するのは市販の教材で、文字の線が単に印刷されているだけでなく、ざらついていて、線を指で辿る中で触覚的にも感覚が入ってくるようになっているものです。
学習は見るだけ、聞くだけではなかなか進んでいきません。実際に身体を動かすこと、複数の感覚を活用しながら学んでいくことが重要なのですが、身体の動かし方につまずきがあると、そこが難しくなりがちです。教材教具を工夫する中で、それぞれの子どもの学びやすさを追求していきます。
(本校特別支援教育コーディネーター)