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2022年5月の記事一覧

178 〇だけの型はめ(小)

「3鉄球入れ(鉄球とアクリルパイプ)」「95 筒入れ課題のバリエーション」でも紹介してきましたが、子どもの学習の中で、「入れる」ということは、非常に大きなポイントとなります。同様に、「はめる」ということも、重要な学習となります。いわゆる型はめの学習ですが、多くのものがおもちゃ屋や本屋などで市販されています。しかしながらそれらは子どもにとって難しすぎる、ということも多いのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

もっとも簡単な型はめは、「〇だけの型はめ」となります。かつて「6丸の型はめ」でも紹介したのですが。今回のは子どもの手のひらに収まるサイズのものです。また、枠と高さをそろえていて(10ミリ)、一度はめると、もう取れないようになっています(「終わり」の理解が十分でない子どもは、何度も入れたりはめたりする)。

「〇」というのは△や□と異なり、角を合わせる必要がありません。子どもにとって非常に取り組みやすい活動となります。一方、「球」と異なるのは、球が360度、どの方向でも枠に入ったのに対して、〇は水平になるように方向づける必要がある、ということです。基本的には「球を入れる」よりも難しい活動です。しかしながら「手を持ち上げることが難しい」という子どもにとってみれば、球を操作するよりも、「〇をはめる」方が取り組みやすいでしょう。活動の難しさは子ども一人一人に異なります。そこに合わせて教材教具を工夫していきます。

177 ビー玉落とし(小)

前回紹介したビー玉落とし(大)は箱作りから始めたもので、大掛かりなものでした。大きな手の動きを引き出すにはどうしても大きな箱が必要だったからなのですが、市販品の箱を活用して作成することもできます。小さなサイズならば、百円均一の店で売っている箱でも作成できます。

 

 

 

 

 

 

最初から箱があれば、ふたが落ちないようについたてをして、ふたを作るだけです。引き出したい子どもの手や目の動きに合わせて、横一列に穴をあける、放射状に穴をあけるなど、穴のあけかたを工夫していきます。

 

 

 

 

 

 

「一面のビー玉を全部落としたら終わり」といった使い方のほか、あえて目をつぶったうえで「教員が置いた1個のビー玉を、探り当てて落とす」など、多様な使い方が考えられます。

(本校特別支援教育コーディネーター)

176 ビー玉落とし(大)

視覚障害特別支援学校で活用されている教材を参考にした、ビー玉落としです。身体が動かしにくい子どもの中には目の見えにくさがある子どもも多く、視覚障害特別支援学校での取り組みが大きな参考になることがあります。広い面にちりばめられたビー玉を指で押して落としていくわけですが、目の使い方だけでなく、手の使い方の練習にもなります。「押したら」「落ちて、音が鳴る」という、因果関係理解の学習にもなります。

 

 

 

 

 

 

ビー玉落としについては市販の作成キットを取り寄せることもできるのですが、ここでは一から自作してあります。まずはA3サイズのMDF板を用い、大きな箱を作ります。ここで既成の木箱(大きなホームセンターなどで売っている)を使うなどすると、作成のハードルが下がります。木箱にふたをするわけですが、ふたが落ちないように、木箱の内側についたてをするのがポイントです。また、ついたては木箱全体の高さよりも1センチほど低くし、ふたをしたときに段差ができて、ビー玉が転がり落ちないようにします。

木箱の高さですが、低すぎると、ビー玉が落ちた時の衝撃や音が弱く、子どもにとって「自分がしたこと」と「その結果」の因果関係に気づきにくくなります。しかしあまり高くしすぎると音が大きくなりすぎ、子どもがびっくりしてしまい、発作などを誘発しかねません。この辺は子ども一人一人に合わせて調整していきます。

 

 

 

 

 

 

ふたには、ボール盤を使ってビー玉が通る穴をあけていきます。ここでは、直径20ミリの穴をあけています。なお、穴のあけかたはランダムにしたり、放射状にしたりと、引き出したい子どもの目の動き、手の動きに合わせて調整していきます。穴の裏側から、ゴムひもを木工用ボンドで固定して完成となります。ビー玉は散らばってしまいがちなので、タッパーなどでまとめておくと便利です。

(本校特別支援教育コーディネーター)

 

175「探り当てる」教材

人間の感覚には、様々なものがあります。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といったいわゆる「五感」のほか、分類の仕方にもよりますが、揺れ、回転、加速などを感じる前庭感覚、筋肉への力の入り具合や、関節の曲がり具合などを感じる固有感覚といったものです。

今回取り上げるのは触覚です。触覚とひとことで言ってもさらに細かく分かれていきます。ごく狭い意味での触覚のほか、圧覚、冷覚、痛覚、振動覚などがあり、子どもによってはそれぞれに感じやすさ、感じにくさが違っていることがあります。冷たさは感じやすいけれど、人に触られるのは感じにくい等です。

今回は、それらの中でもごく狭い意味での触覚、すなわち「触り分ける」力を育てるためのものです。触覚は全身の皮膚にはりめぐらされていますが、自分の身体と、外の世界との境界になる、非常に重要な感覚です。これが過敏であったり、逆に感じにくかったりすると、自分の身体がどこまでで、どこからが外の世界なのかがわかりにくくなるということで、身体の動かしにくさといったことにも影響することがあります。前庭感覚や固有感覚とともに、身体の動きを見ていくうえで、真っ先に整えていきたい感覚となります。

触覚へのアプローチはさまざまなものがありますが(手遊び、マッサージ、お腹に指で書かれた字を当てる、小麦粉粘土を扱う等)、これは見えなくなっている箱の中から、特定の形のものを取り出すものです。見えないので、触覚に頼った活動になります。

 

 

 

 

 

 

市販の教材でなくとも、身の回りのもので同じ目的の活動を設定することもできます。袋の中に入れた「ぬいぐるみ」「せんたくばさみ」「ペン」などを、探り出すといった活動です。身近な物で工夫しながら、それぞれの子どもの課題に応じた活動を行っていきます。

(本校特別支援教育コーディネーター)