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<4.知的障害特別支援学校の教科1段階後半の教材>

 

 

 ここで整理しているのは、国語科や算数科のいわゆる「1段階」の後半。つまり「ことば」や「かず」を扱いはじめていく頃の教材となります。主に「見分ける」「見比べる」といった「視覚」が学習の中心とはなっていきますが、まだまだ「はめてわかる」「入れてわかる」といった「手ごたえ(固有感覚)」が学習に及ぼす影響も大きく、できるだけ型はめにしたり、重みをつけて教材そのものに質感があるようにしたりしています。

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1段階国語算数後半

1段階後半 教材紹介①代表性の弁別のカード

 

 

 

 

 

 

用途

1段階前半の教材のところでも紹介しましたが、「代表性の弁別」という学習があります。「りんご」の絵と「バナナ」の絵の弁別を行うとしても、「それぞれが全く同じ絵」である場合と、「りんごはりんごであってもそれぞれが異なる絵」である場合とでは、難易度が大きく異なります。

 

 

 

 

 


前者(まったく同じ絵同士)の場合、たとえ絵を弁別できていたとしても、それぞれを子どもが「バナナ」や「りんご」であると認識したうえで分けているかどうかはわかりません。〇と△を分けるように、赤と黄色を分けるように、鉄球と積み木を分けるように、シンプルに「それらが違うから」分けているだけかもしれません。一方、後者の場合は「皮のついたりんご」「かじられたりんご」「青りんご」「カットリンゴ」それぞれ異なる絵ですが、その特徴的な部分を捉え、「同じもの」として分けています。ここで重要なのは、後者はそれぞれの絵を『りんご』という『意味』で捉えているということです。この時点で一般名詞としての「りんご」はまだ身についていないかもしれませんが、「意味」として捉え、同じものとして扱うことができているということです。これが、言葉の理解に至る、非常に重要な力となります。

入手方法

カードの作り方は1段階前半で紹介しました。厚さ5mmのMDF板を90mm×60mmにカットして材料にします(A3から25枚切り出せます)。印刷した紙を貼り、梱包用テープ(重量用)で巻き上げます。

その他の教材例

 

 

 

 

 

 

左は「いぬ」「くるま」という、具体物での代表性の弁別です。右のように、カード(2次元)と具体物(3次元)を織り交ぜた代表性の弁別もあります。

1段階後半 教材紹介②終点が明確な絵本

 

 

 

 

 

用途

絵本、といっても様々なものがあります。特段のストーリーがなく、音の響きや絵そのものに親しむような絵本。繰り返しのある展開から、最後に「うわー」と大きな展開があるシンプルなストーリーの絵本。起承転結的な複雑なストーリーのある絵本。それぞれに特長があります。それらの無数の絵本の中から、子どもの発達に応じて選択していくことになります。

ここで紹介するのは、「繰り返しの展開から、最後に大きな展開がある」絵本です。こういった絵本には以下のような特長があると考えられます。

・子どもの世界観の中で、キャラクターが親しみやすいこと

・「いっしょにいこう」と繰り返しの展開であること

・積み木のようにキャラクターが縦に積みあがっていくこと

・最後に、「うわー」と崩れ落ちること。これもまた積み木に近しいこと

・話がリセットされ、また最初に戻ること

もっとも、単に「わかりやすければよい」「親しみやすければよい」というものでもありません。子どもの成長に伴い、次のステップとしてあえてわかりにくい絵本を使うこともあります。例えば、おじいさんやおばあさん、まごといった登場人物が農作物を抜く絵本がありますが、これもまた、話の構造としては似ています。しかしキャラクターの親しみやすさはどうでしょうか。また、「横につながっていく」という点ではどうでしょうか。これはボール入れ等とも重なるのですが、「縦(積み木的)」の方が「横」よりもわかりやすいのではないでしょうか。

その他の教材例

さまざまな絵本があります。様々なストーリーがあります。子どもに合わせて選択していきます。

1段階後半 教材紹介③形を無視した色の弁別(色の一次元属性分類)

 

 

 

 

 

 

用途

色の弁別になります。ただ、1段階の前半で紹介したもの

 

 

 

 

 


とは異なり、1つ1つの形が異なっています。また、このあたりから、色の学習に積み木だけでなく、「だるま(赤)」「ひよこ(黄色)」など、意味のあるものも教材として使っていきます。こうすることで、学習の難易度は格段に上がります。子どもにとってみると「ひよこ」はひよこですが、色の学習の場合、「ひよこであること」を無視して、特定の属性である「色だけ」に注目しないといけないからです。特定の属性(ここでは色)に注目することを抽象、特定の属性(ここでは色以外のすべて。形、味、種類、大きさ等)を無視することを捨象といいます。

例えばですが、赤と黄色で「だるまは赤」「ひよこは黄色」と色の弁別をしているときに、「黄色いだるま」を渡されたら、子どもはどうするでしょうか? 多くの子どもは、「だるま」という意味、本来は無視するべき情報に引っ張られて、「黄色」ではなく「だるま」の方に分けるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 


色、形、そして数などを学習していく場合、「子どもの興味・興味があるから」とキャラクターものや動物、果物などを使うことがあります。しかし、本当にそれが学びやすいのかどうか、いまいちど検討したいところです。「色」「数」等に注目したいのであれば、それ以外の情報はできるだけ「薄い」方が学びやすいです。子どもが好きなキャラクターよりも、むしろ関心のない積み木、数ブロックなどの方が学習に向くことがあります。

その他の教材例

対となる学習に「色を無視した形の弁別」といったものがあります。後に紹介します。

1段階後半 教材紹介④名詞型はめでの対応弁別

 

 

 

 

 

 

用途

1段階前半でも詳しく紹介しました、選択、つまり対応弁別です。通常の弁別や、市販のパズルをどさりと渡されて取り組むのとは異なり、「相手が提示した枠に対応して」該当するものを選択していきます。気持ちのコントロールが苦手な子どもの中には、「自分はこれをはめたいんだ!」と相手に合わせにくいこともあります。しかし、だからこそ、こういった型はめのような「互いにそれほど重要ではない」場面で、相手に合わせること、自分の気持ちをコントロールすることを学んでいきます。これが例えば給食の場面ですと、「たべる/たべない」が互いに切実で、後に引けなくなりがちではないでしょうか。

また、この対応弁別ですが、「見比べる」視線コントロールの学習、身振りの学習、物の名前の学習、視覚性の記憶の学習といったことに応用することもできます。どういうことかと言いますと、例えば枠を教員が提示する際、絵を隠して提示します。

 

 

 

 

 

 

そのうえで、「『おにぎり』はどれ?」と口頭で伝えたり、「『これ』はどれ?」とおにぎりをにぎる仕草で伝えたりします。選択が難しい場合、枠をめくって絵を確認できるようにします。また、枠を提示する際に、すごく遠くに提示する、複数提示するといった学び方もあります。

 

 

 

 

 


子どもの視界内に枠と選択肢がおさまらなくなると、難易度がかなり上がります。視覚性の短期記憶に頼る必要が出るためです(正確に言うと、純粋な映像ではなく『わに』『らいおん』等の「意味」で記憶する子もいるはずです)。このあたりだとまだ早いかもしれませんが、2つ、3つの枠を同時に提示して、記憶の容量にアプローチするといった学び方もあります。

作成方法

1段階前半で詳しく紹介しました。型はめ化するのが難しい場合は「親子カード」、それも難しければ通常のカード等を扱っていきます。

その他の教材例

この対応弁別の話は、カードを使った学習など、その他の教材でも同じです。

1段階後半 教材紹介⑤名詞型はめでの指差しの理解(指差し対応弁別)

 

 

 

 

 

 

用途

(以降、詳しくは「感覚と運動の高次化からみた子ども理解」宇佐川浩著、学苑社 等をご参照ください)教材例④におきまして教材の使い方、つまり「選択」「対応弁別」を紹介しました。ここでは、名詞型はめのステップアップした使い方としまして、「指差し対応弁別」を紹介します。

そもそも、指差しとは何でしょうか。

 

 

 

 

 


これは何でしょうか。何かと言われれば、「指」としか言いようがありません。しかし、これらは「何を意味して」いるでしょうか。

 

 

 

 

 


左の写真で言えば「車の鍵」を、中央の写真であれば「りんご」を、右の写真であれば「ペン」を表しているかと思われます。が、冷静に考えると、どの写真もあくまでも「指」が映っているのに過ぎません。しかしその方向が少し変わっただけで意味が変わる、切り替わる。これが「指差し」というものの凄さであり、子どもにとっての理解の難しさとなります。子どもにとって、それはあくまで「指」なのですから。

指差しは「言葉の前の言葉」とも言われます。「指」というものが、「時計」ですとか「ペン」ですとか、別の物を意味する。別の何かが、別の何かを意味する。これは『アメ』という音が、『雨』という事象を意味するのと似たような構造になります。空から水が振ってくる現象と、『アメ』という音には、本来何の関係もありません。同じ事象であっても『レイン』と言ってもよいですし、『ユイ』と言ってもよいわけです。言葉の理解というのは、本来何の関係もない「音」と「物事」とをつなげていくということであり、つまり「指差しの理解」と非常に近しい力になります。

※『ざあざあ』のようなオノマトペとなると実際の音に基づくため、子どもにとってわかりやすくなります。『ぶーぶー(車)』『わんわん(犬)』等。

以上を踏まえ、「指差し対応弁別」となります。「対応弁別」では型はめの枠が提示され、そこに子どもがペグを選択して合わせていました。今回は、教員の指差しを見て、それに応じて選んでいきます。もしも指差しの理解が難しい場合は、枠を一つ取り出して提示し、「対応弁別」の形式に戻します。そうやって「指差し」ということの意味がわかるように促していきます。

なお、この「指差し対応弁別」ですが、とても苦手だという子どもが一定数、います。「わからないからできない」のではなく、「わかるからこそ応じたくない」子たちです。ワンステップ前の「対応弁別」もそうでしたが、この学習は「相手に合わせる」学習です。自分のペースでやりたいのに、どうして教員が言うとおりにしないといけないのだろう、ということです。さらに「対応弁別」であればまだ「枠に合わせる」ということで受け入れられても、「指差し」となると「人に合わせる」ことになり、とても苦手だということがあります。これらは型はめの提示の仕方ですが、少しの提示の工夫で、活動の難易度は大きく変わっていきます。子どもがやりやすくすることもできれば、あえて難しくすることもできます。

その他の教材例

 

 

 

 

 


まったく同じセッティングで、「教員が視線で伝え」それを見て子どもが型はめのペグを選択する、という学習もあります。これはかなり難易度が高いです。とはいえ「最後に型はめをする」ということにより、子どもにとって「相手の目を見る」「相手の視線を読む」ことへの目的がうまれます。

1段階後半 教材紹介⑥名詞型はめでの応答の指差し(対応弁別ポインティング)

 

 

 

 

 

 

用途

⑤で紹介したのは「指差し対応弁別」ということで、「指差しの理解」に関することでした。今回は逆に指差しを子どもが表出すること、教員の求めに応じて「応答の指差しを行う」ということを紹介します。

上記の写真では、教員からバナナが提示されています。子どもはそれを見て、バナナの枠を指差します。正答であった場合、教員からバナナのペグを渡され、はめこみます。これを、「対応弁別ポインティング」と言います。あるいは「バナナはどれ?」といった言葉かけを受けて指差しをし、枠にはめることもあります。いずれにしろ、質問に対し「指差しで応じる」学習です。これができるということは学習全般に及ぼす影響が非常に大きいです。色んな質問に選択で答えることができるようになったということだからです。また、これができるような頃になると、イエス/ノーの表出も明確になっていることでしょう。

他にも、教材紹介④の対応弁別の設定にしたうえで、選択肢のペグに透明なカバーをし、カバーの上からペグをトントンしたら、カバーを取る⇒ペグを枠にはめこむ、という流れで取り組むこともあります。こちらの方が、「対応弁別ポインティング」よりもわかりやすいかもしれません。

 

 

 

 

 

 

なお、この設定で透明なカバーをしない場合、「ねこはどれ」と聞かれた子どもは指差しで選ぶことなく、ペグを直接手に取ることでしょう。これらのように、「最後に型はめをする」という活動の目的(終点)が明確な中で、子どもにとって「指差しをする」ということに必然性を持てるようにしていきます。また、丁寧にスモールステップを刻んでいきます。

1段階後半 教材紹介⑦切片がまっすぐな2分割形態構成

 

 

 

 

 

 

用途

1段階の前半㊲で紹介した2分割の形態構成は、「切片がぎざぎざの」ものでした。そのため、「絵が合わない」限り、枠には入りません。しかしこの「切片がまっすぐな」形態構成の場合、絵が合っていなくとも、入ります。つまり、「間違える余地がある」ということです。そのため、切片がぎざぎざである場合よりも、かなり難易度が上がることになります。この学習に取り組めるくらいですと、相当に「目を使って」物を捉えていることになり、周囲の人や物事に向けるまなざしも、かなり強いものになっているのではないかと思います。それに伴い、物事の見通しを持つ力、人と関わる力なども高まってきているのではないでしょうか。

作成方法

「切片がぎざぎざ」の場合とほぼ同じになります。材料は枠の作成に用いるのがA3サイズのMDF板(厚さ5mm)です。これを半分に切ってA4サイズにする、さらに半分に切ってA5サイズにするなどして用います。A4サイズであれば、2枚ある板のうち、片方に100mm強の正方形で線を描きます。これは本当に「ごくわずかに」100mmよりも大きめです。穴が小さいとペグが入りませんし、穴が大きすぎると「はまった」感覚が失われます。そして、□の線の中にドリルで穴を開け、そこに電動糸鋸の刃を通し、くり抜きます。

 

 

 

 

 


ペグの方ですが、まずは材料として6枚セット、100mm四方・厚さ6mmのMDF板を使用しています。これを1方向に切って100mm×50mm(長方形)にして用いるのですが、電動糸鋸や、普通ののこぎりで切ることもできますし、大量に作成する場合、テーブルソーで一気に切るというのもよいでしょう(危険なので機械に詳しい方に使い方を習ってください)。

 

 

 

 

 


なお、MDF板を十字に切って、50mm四方にしたものも、様々な用途で用います。4分割パズル、6分割パズル、9分割パズル、12分割パズル、16分割パズルのほか、位置把握やマトリクスのペグなどです。冷蔵庫の常備菜並みに、ストックしてあると便利な素材です。

参考までに、「A3サイズのMDF板」「6枚セットのMDF板」「6枚セットのMDF板を半分/4分割したもの」「25個入り強力磁石」「4個入り18mmネオジム磁石」「カードに使う60mm×90mmの木片」「120mm×90mmの木片」などをできるだけ用意し、いつ百円均一の店で廃番になっても困らないようにしています。

ペグの作成は、まず100mm四方のサイズで、パズルにするための絵を印刷します。その絵を、半分に切ります(線を引くのであれば、裏面に引くとよいでしょう)。その紙をスティックのり、あるいは梱包用テープを丸めたもの(セロテープでは貼りつきません)で仮止めし、梱包用テープ(重量用)で巻き上げます。この際、巻き方にはちょっとしたコツがあります。テープを斜めにカットし、テープの断面が子どもの指に引っかからないようにします。

 

 

 

 

 


2分割パズルにする絵としましては、「家族の顔」「友だちや先生の顔」「その子の好きなキャラクター」などが向いているかと思われます。また、この際、「背景をカットすること」「絵が絵の中におさまっていて、はみでていないこと」などがわかりやすくするポイントとなります。逆に言うと、難しくするのであれば「子どもにあまりなじみのない絵」「背景を入れる」「絵の一部分だけをパズルにする(絵が「閉じて」いない)」といったやり方があります。

 

 

 

 

 


その他の教材例

 

 

 

 

 


2分割→3分割に進む場合は、「切片ギザギザの3分割を作る」「3分割のうち1つをあらかじめはめておき、残る2つをはめるようにする」といったステップがあります。また、形態構成には「見本を用意する」「台紙を用意する」といった支援もありますが、2分割や3分割では子どもがそれらを見て参考にすることは難しく、支援にはなりがたいことがあります。それらが効果的になるためにはそもそも「見本」「台紙」を見ながら操作する力が必要で、おそらく9分割くらいから支援として効果的になるのではないでしょうか。

1段階後半 教材紹介⑧種類の弁別の型はめ

 

 

 

 

 

 

用途

「①代表性の弁別のカード」「④名詞型はめでの対応弁別」といった学習を通して、「物事には名前があるということ」になじんできました。ただ、物の名前というのは「犬」「猫」などの一般名詞に限りません。例えば『わんわんと鳴く、あの生き物』は単に『犬』であるだけではありません。様々な名前があります。一般名詞としては確かに「犬」ですが、「クドリャフカ」「パトラッシュ」「ハチ公」「獅子丸」などそれぞれの固有名詞もあります。また、「コーギー」であり「哺乳類」であり「生物」であり、「有機物」でもあります。それら様々な名前を持つ中で、種類は「動物」ということになります。

これら様々な名前の中で、子どもにとって捉えやすいのは「固有名詞」と「一般名詞」になります。これより細かくとらえ過ぎても、広くとらえ過ぎても、わかりにくくなります。細かく行くと「コーギー」「柴犬」「ラブラドールレトリバー」といった犬種になっていきますし、広く行くと「ペット」「食肉目」「哺乳類」「脊椎動物」といったことになっていきます。「コーギーだね」「哺乳類だね」と言われても難しいですが、「犬だね」と一般名詞で言われればわかりやすい、ということです。それ以上にわかりやすいのは「わんわんだね」というオノマトペです。

※また、「犬」を指して「耳だね」「口だね」「牙だね」「しっぽだね」などと細部のことを言われても子どもにはわかりにくいので、注意が必要です。

そして、一般名詞(ここでは犬)の次にわかりやすいのが、「種類(動物)」ということになります。ここでは一般名詞レベルでは「別のもの」として弁別していた「犬」「猫」「パンダ」「ブタ」といったものについて、みんな同じ「動物」としてくくっていく、という学習をしていきます。「犬」と「パンダ」は明らかに違うものですが、動物という観点からすると同じである。その思考の柔らかさ、広さを引き出していきます。

作成方法

基本的には1段階前半で紹介しました、「名詞型はめ」と同じ方法で作成されています。

 

 

 

 

 


<ペグの作成>

・まず、ペグを作成します。素材となるのは240mm×80mm程度に切った厚さ5mmのMDF板で、2枚重ねに接着します。

・印刷したイラストを用意し、絵の周囲をはさみで大さっぱに切ります。この際、イラストぴったりに切るのではなく、周囲にある程度の遊びがある方がよいと思われます。

・切った紙を2枚重ねのMDF板の上に置き、電動糸鋸で切り抜きます。上記「果物」の場合は「りんご」「レモン」「バナナ」「すいか」「ぶどう」の5種作成しています。

・「りんご」等になる2枚重ねのMDF板について、片面と、側面を白いアクリル絵の具で塗ります。もう片面は、木のままにしておいた方がよいと思われます。表裏をわかりやすくするためと、木のままの方がすべりがよいためです。

・絵の具が乾いたら、断面が毛羽立っているはずです。それを、紙やすり(400番程度)でなめらかにします。絵の具→紙やすりの工程は何度か繰り返します。

・なめらかな白い板ができあがったところで、側面だけをニスで保護しておくと便利です。このあと絵を描く部分にはニスを塗らないように注意しましょう。描けなくなります。

・前述のイラストを再度用い、白い板に絵を書き写します。模写が難しい方ははさみで絵を切り、鉛筆でなぞる→油性マジックでさらになぞる、という工程をたどってください。

・アクリル絵の具で塗装します。この際、水は使いません。

・絵の具が乾いたら、油性マジックで再度線をなぞります。

・ニスで絵を保護します。何度も筆を動かすのではなく一方向にサッと塗ってください。塗り残しがありましたら、乾いてからもう一度塗ってください。何度も筆や刷毛を動かすと、絵の具がにじんできます。これでペグが完成となります。

<枠の作成>

・枠を作ります。ここではA3サイズで厚さ5mmのMDF板を1/4にカットしたもの、つまりA5サイズの木を使っています。

・A5サイズのMDF板のうち、2枚を接着します。なお、木工用ボンドは「広く薄く」のばしながら使うのが基本です。大量に使えばよいというものでもありません(ボンドが多すぎると木が反ってきます)。

・できあがったペグ(ここでは「りんご」「レモン」「バナナ」「すいか」「ぶどう」)を2枚重ねのMDFの上に置き、そこそこ先の丸い鉛筆でなぞります。

・なぞった線の中にドリルで穴を開け、そこに電動糸鋸の刃を通し。くり抜きます。

・完成品のペグを撮影し、実物よりも少しだけ小ぶりに印刷します。そしてラミネイト加工します。

・A5サイズのMDF板をもう一枚用意し、MDF板→ラミネイトしたもの→2枚重ねMDF板

の順番で接着します。ラミネイト加工したものを敷くことで、ペグのすべりがよくなり、スポリとはまるようになります。これでようやく完成です。乗り物、動物も同様に作成されています。

その他の教材例

 

 

 

 

 


まずは枠を使わずにペグだけを用いる、という使い方があります。枠があると「種類の弁別」というよりも単に型はめとなっている可能性がありますが、こちらは確実に種類の型はめとなります。また、そこに種類の弁別用のカードを渡す、3次元のミニチュアを渡すなどして揺らしをかけていきます。

 

 

 

 

 


「枠を使わずにペグだけを用いる場合」と同程度の難易度として、種類の弁別のカードがあります。また、具体物での種類の弁別を行うこともあります。カードの方がわかりやすいか、具体物の方がわかりやすいかは、子どもによって異なります。基本的には具体物→カード→文字の順で学習が進んでいくのですが、実際には「具体物よりも、カードの方が視覚情報として安定している」ためか、カードで取り組む方がわかりやすい場合も多いです。また、具体物の場合、それそのものに気を取られやすく(押すと音が鳴るなど)、学習に向きにくいものもあります。

最終的には3次元、2次元を織り交ぜて学習していきます。

1段階後半 教材紹介⑨大小の弁別を伴う型はめ

 

 

 

 

 

 

用途

物事には様々な属性があります。1段階前半では「色」「形」について紹介しました。ここでは、いよいよ「大小」について紹介していきます。

大小を扱う前に、「抽象的な思考(実際のものから「高低」「速さ」「味」「価値」「重さ」「数」など特定の属性を取り出して思考すること)」の第一歩としてはやはり、「色」と「形」が考えられます。なぜならば「色」と「形」は《①見てわかる》ということと、《②他の物と比べるまでもなく赤は赤、丸は丸であるといった絶対的な属性である》という2つの条件を満たしているからです。

どういうことかと言いますと、「価値」「確率」「密度」などは見ただけではわかりません。一方で「長さ」「高さ」などは見ることができますが、比較概念です。例えばキリンの首は「長い」でしょうか? この世に「絶対的に長いもの」「絶対的に低いもの」などは存在しません。キリンの首はブタの首よりも「長い」かもしれませんが、青函トンネルよりも「短い」です。青函トンネルはキリンの首よりも「長い」かもしれませんが、国道4号線よりも「短い」です。それが比較概念です。東京スカイツリーなども絶対的に「高い」わけではありません。六甲山よりも「低い」です。

※絶対的な属性としましては、「色」「形」のほかに、「種類」「季節」「陸海空」「数量」などがあります。既に紹介しました「種類」はともかく、季節などの属性はかなり難易度が高いものになります。

比較概念の第一歩となるのが、「大小」です。長短、高低などよりも直感的に捉えやすい属性となります(子どもによっては触って分かる「温冷」「軽重」「滑らかさ」の方がわかりやすいかもしれません)。大小には体積的な3次元の「大小」と面積的な2次元の「大小」とがあります。

 

 

 

 

 


「大小が比較概念である」とはお伝えしましたが、実際には子どもは自分の身体をベースにした基準を持っており、「大きい」も「小さい」も絶対的に捉えていることが多いです。象は確かに山と比べたら「小さい」のかもしれませんが、子どもにしてみればあくまでも「象は大きい」「アリは小さい」。そういう世界です。そして、今回の型はめで求めるのは、そのくらいの理解になります。比較概念としての、本当の意味での大小を学習するのはもう少し先となります。

今回の教材は型はめであり、これができたからといって子どもが「大きい」「小さい」ということをわかっているとは言えません。ただ、「入る/入らない」といったことを通して、大小の感覚を身につけていきます。そして子どもがはめたときに、支援者は「大きいね」「小さいね」という言葉をさりげなく添えていきます。

作成方法

基本的には前回の「種類の弁別を伴う型はめ」と同じ作成方法になります。「車の絵」「りんごの絵」などでペグを作っていたものを、直径70mmと50mmの円にしただけです。細かい絵を描く必要がないので、作成は「種類」よりもこちらの方が容易です。

なお、これは「大小の弁別を伴う弁別」であり、「色」という要素は不要です。そのため、土台側の枠には色をつけていません。

 

 

 

 

 


他の教材

 

 

 

 

 


枠を使わず、ペグだけを用いて純粋に弁別を行います。この時点で子どもはまだ「大きい」「小さい」という言葉を知っている必要はありません。「こっちじゃなければこっち」といった、2分法的、消去法的な思考で分けていることが殆どかと思われます。ただ、分けた後で「どっちが大きい?」といった質問に答えるなどする中で少しずつ「大きい」「小さい」ということに親しみ、やがて大小を「比較する」そして「複数のものを比較しつつ、大小の順で並べる」といったことに進んでいきます。およそ大小の学習のゴールとしては、「具体物10個を大きい(小さい)順に並べる」といったあたりになるでしょうか。

 

 

 

 

 

 

1段階後半 教材紹介⑩大小の弁別を伴う型はめ(色の捨象、形の捨象)

 

 

 

 

 

 

用途

⑨で紹介した「大小の弁別を伴う型はめ」ですが、あちらは形も色も同じで「大きさだけが違う」ものでした。そのため「大きさ」に注目しやすい教材になっていました。一方、こちらの教材の場合、左写真では「大きさと色が」違います。右写真では「大きさと色と形が」違います。したがって、左写真の教材を扱う場合、子どもは「色」を無視しなければならないし、右写真の教材を扱う場合、子どもは「色と形」を無視しなければならず、⑨のときよりも難易度が上がります。

今回の教材のように、特定の事物から「大きさ」といった属性だけを取り出すことを「抽象」。逆に、「色」「形」のような属性を無視することを「捨象」と言います。これらを自由自在に扱い、切り替えることが「抽象的な思考」の土台となってきます。

 

 

 

 

 


正直、この写真のような学習は、かなり難しいです。色や形が妨害刺激になり、「大きさに注目する」ということに気づきにくくなるためです。そのため型はめ化し、学習の目的を明確にしています。

 

 

 

 

 


これら抽象と捨象の関係は、色、形、大きさといったことだけにとどまりません。例えば数の学習で、子どもの興味関心を引き出すためと言って「子どもの好きなキャラクター」の絵やフィギュアなどを用いることがありますが、それらの情報は数の学習にとって不要な情報であり、無視するべき情報となります。そのキャラクターを子どもが好きであれば好きであるだけ、「情報として強く」なりすぎ、無視することが難しくなります。むしろ、子どもにとって何の興味もない「石」を使った方が学びやすいという場面もあります。つまり学習の目的(終点)が明確であれば、学習はシンプルであればシンプルであるだけわかりやすくなるということです。えてして教員は活動を盛り上げよう、子どもに言葉をたくさんかけよう、等と学習を複雑にしがちですが、ほんとうにその動き、その言葉かけが子どもにとっての支援になっているのか、いまいちど考えてみたいところです。


このように「大きさ」「色」「形」「キャラクター性」など、1つの属性を増やす、減らすといったことで学習の難易度は大きく変わります。学習の難易度は高すぎては論外ですが、難易度が低すぎても学習になりません。その子にとって、程よいところを探っていきます。